歌舞伎

浅草歌舞伎「傾城反魂香」「男女道成寺」

新春浅草歌舞伎 第2部  2026年1月

観劇会に参加して、昨年から中村橋之助が座頭となり新鮮な花形公演へ。浅草寺にお参りしてから浅草公会堂に着くと、なんと当日になって、2月に襲名を控えた中村鶴松が理由不明のまま休演。急きょ中村莟玉が代役に立ち、第一部「藤娘」から第二部まで三演目出ずっぱりに。しかも初役の「吃又」おとくを立派に演じて、のちのち語り草になりそうな観劇となりました~ 中段やや上手寄りで9500円。休憩を挟んで三時間強。

急きょもろもろ確認があったからか、開場は遅れ気味。そんな緊張感もなんのその、お年玉年始ご挨拶の尾上近はゲラとのことで、いきなり笑っちゃったけれど、「床山さんまで一丸となって」と。
そして「傾城反魂香」。何回か観たなかでも、2012年平成中村座の片岡仁左衛門・中村勘三郎コンビの仲睦まじさが印象に残る演目だ。おとくは又平との対比で立て板に水を求められる役。莟玉はとてもぶっつけとは思えない安定感で大拍手! 修理之助の経験があるといっても出番は中盤までだし、つくづく歌舞伎役者恐るべし。造形はしっかり者というより、持ち前の可愛さが前面に出て、それもいい個性だった。対する又平の橋之助も誠実、生真面目な雰囲気が合っている。復活した中村橋吾が老け役・土佐将監を務めたのも嬉しい。

長めの休憩の後は「男女(めおと)道成寺」。映画「国宝」の「二人道成寺」同様、娘道成寺の書き替え作品で、舞台後方の長唄に加えて、下手の常磐津との掛け合いがひときわ華やかだ。
5月に辰之助襲名を控えた期待の左近は白拍子で登場するものの、「この辺りに住む」狂言師と露見。金の烏帽子がうまく落ちないアクシデントもありつつ、舞台袖に連行されるさまがコミカルだ。線の細さは否めないものの、もう一人の白拍子、莟玉ときびきび踊って美しい。
鮮やかな引き抜きを挟みつつ、羽根つき、毬つき、花笠、手ぬぐいと展開し、強力の橋之助、市川染五郎が花道から手ぬぐい捲きのサービス。この日もうひとつのびっくりで、なんと染五郎のサイドスローの直球をキャッチ! うきうきが最高潮となるなか、羯鼓(かっこ)、鈴太鼓から鐘の上できまって、幕となりました~ 

話題満載で歌舞伎好きの面々との懇親会も大盛り上がり。手ぬぐいは左近、莟玉連名の記念すべきお宝でした! ちなみに第一部で鶴松が予定していた「相生獅子」は、この日は中止で払い戻し対象となり、翌公演からは市川男寅が代演。
Pxl_20260118_045126716mp Pxl_20260118_052053934mp Pxl_20260118_052144157 Pxl_20260118_053154274portrait Pxl_20260118_075019560 Pxl_20260118_052501911 Pxl_20260118_140609745

歌舞伎「女暫」「鬼次拍子舞」「女殺油地獄」

寿新春大歌舞伎  2026年1月

2026年芝居始めは歌舞伎座、夜の部へ。浮き立つお正月気分はやっぱり歌舞伎座ならでは。中村七之助、松本幸四郎が健闘して嬉しい。ロビーで浄瑠璃の師匠にばったり、新年のご挨拶をしたり。前のほう中央のいい席で2万円。休憩2回で4時間強。

祝祭感あふれる北野天満宮社頭の「女暫」から。2015年に坂東玉三郎で観て以来だ。義仲愛妾の巴御前は颯爽と七之助。特徴ある声がよく目立って、役に合っている。ド派手な扮装、素の役者になっちゃう女鯰(坂東新悟)や、ラスト幕外で六方を教える舞台番(ご馳走で幸四郎)とのコミカルなやりとりが大らかで、文句なく痛快だ。15年ではそれぞれ七之助、中村吉右衛門だったんだなあ。
敵方は国崩し・頼朝弟の範頼にどっしり中村芝翫、雲斎に坂東巳之助、赤っ面腹出し成田五郎に大きく坂東亀蔵。いいもん方は義高にノーブル中村錦之助、紅梅姫に市川笑也、木曽公綱に中村松江。茶後見をなんと市川寿猿95歳!が危なげなく。大薩摩連中の三味線でまたまた鳥羽屋里松。

短い休憩の後は古風な長唄舞踊「鬼次拍子舞」。拍子舞とはリズムに合わせて、唄うように台詞をいいながら踊るものとか。尾上松緑、ベテラン中村萬壽が安定。
舞台は洛北の森で一面の紅葉が綺麗。山樵(やまがつ)に姿をやつした加茂明神帰りの平家の武将・長田太郎兼光と、敦盛遺愛の青葉の笛(須磨寺に実在!)を探る白拍子が、虫尽くしや手踊りを繰り広げ、ラストはぶっ返りで華やかでした。

休憩でお弁当をつつき、3演目目は雰囲気が一変して、近松の竹本名作「女殺油地獄」。今回は幸四郎が与兵衛のAプロで。2011年の染五郎時代に片岡仁左右衛門直伝で観て以来。2009年にシネマ歌舞伎で観た、前歌舞伎座さよなら公演の凄みある仁左衛門とはタイプが違うけれど、甘えん坊、見栄っ張りで短慮のダメぶり、怪しい目つき、かつ、いっぱいいっぱいな感じに磨きがかかった。
つくづく気の毒なお吉のAプロは、こちらも片岡孝太郎直伝の新悟。年をとるにつれ長身・細さが気にならなくなり、世話焼きの隣のおばちゃんの造形がいい。客席が慣れていないのか凄惨なシーンに息をのんでしまったけど、見せ場の海老反りでも健闘。母おさわにはベテラン中村梅花(七代目芝翫の部屋子)、妹おかちに澤村宗之助(九代目澤村宗十郎の部屋子)、実直な隣の七左衛門に錦之助。複雑な父・徳兵衛の中村歌六はもちろん巧いけど、最近ちょっと声が辛い。通りかかる小栗錦左衛門で松本白鵬(この演目は初!)がなんと駕籠のままスライド。残念ながら8日以降は休演となりました… 2011年のお吉は猿之助(当時亀治郎)だったんだなあ。
今の中核を感じる、なかなか充実の初春でした~
Pxl_20260104_064822912 Pxl_20260104_065116890mp Pxl_20260104_065908873 Pxl_20260104_082132414mp Pxl_20260104_130030238

2025年喝采づくし

2025年も素晴らしいライブパフォーマンスにたくさん出会えました。
なかでも頭抜けて凄いものを観た!聴いた!と圧倒されたのは、期せずして対照的なふたつ。クラシックの20代ふたり、クラウス・マケラ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団+アレクサンドル・カントロフ。そして御年81歳、「菅原伝授手習鑑」の15代目片岡仁左衛門による菅丞相。いや~、圧巻でした。

ジャンル別の演劇では、重厚なワジディ・ムワワド作・上村聡史演出「みんな鳥になって」の現代性、岩松了のスタイリッシュな「私を探さないで」での河合優実、蓬莱竜太「おどる夫婦」でのダンスが印象的だった。節目にもいろいろ立ち会えて、本公演に区切りをつけたイキウメ「ずれる」、大がかりな仕掛けは集大成としたケラリーノ・サンドロヴィッチ「最後のドン・キホーテ」、郷愁に終わらなかった東京サンシャインボーイズ復活公演「蒙古が襲来」がそれぞれ持ち味を発揮。ミュージカルでは閉場となる帝国劇場の「レ・ミゼラブル」ファイナルウイークも。
これからが楽しみなのは横山拓也「はぐらかしたり、もてなしたり」、加藤拓也「ここが海」。翻訳ものでは熊林弘高演出の古典的喜劇「陽気な幽霊」、サイモン・スティーブンス作・上村聡史演出の不穏過ぎる「スリー・キングダムズ」もよかった。

古典ではなんと言っても歌舞伎が、映画「国宝」で盛り上がって幸福な1年でしたね。ニザ様以外にも大イベント八代目尾上菊五郎・六代目菊之助襲名披露の極付「弁天娘」、南座に遠征した中村壱太郎「お染の五役」、次世代で鷹之資・染五郎の「棒しばり」や尾上右近の「春興鏡獅子」に拍手。中村莟玉、2026年に辰之助襲名を控える尾上左近も目立っていて期待大です。
文楽は人間国宝に加えてめでたく日本芸術院会員となった桐竹勘十郎が碇知盛、玉助が源九郎狐を遣った「義経千本桜」が素晴らしく、歌舞伎、テレビドラマでもフル回転した三谷幸喜の「人形ぎらい」も楽しかった。引き続き1年を通して、浄瑠璃の都一中さんにいろいろ教えて頂きました。
そして落語はさん喬「雪の瀬川」の粋と鮮やかさ、喬太郎「お若伊之助」の語り力。白談春はさすがに還暦目前で肩の力が抜けてきたかな。講談の春陽は落語から移した「御神酒徳利」にチャレンジ。どんどん格好良くなるなあ。

クラシックに目を転じると、オペラで加藤浩子さんのほろ酔いトークイベント立ち上げを手伝った、記念すべき年となりました。関係者の素顔、いろんな裏話を聴くのと並行して、舞台では「セビリアの理髪師」で世界のメゾ脇園彩、「ラ・ボエーム」でルチアーノ・ガンチを堪能。コンサートではマケラのほかにも、83歳リッカルド・ムーティ指揮・東京春祭オーケストラの圧倒的なイタリア魂に引き込まれ、リサイタルでリセット・オロペサ、”キング・オブ・ハイC” ハビエル・カマレナも聴けて満足。

ポップスではずっと聴きたかったファンクのCory Wongが文句なしに楽しく、星野源は奇跡的に6年ぶりツアー、追加公演最終日に行けて感動。貴重なサービス精神満載のサザンオールスターズ、Official髭男ismの爽快なスタジアム、相変わらずノリノリのEARTH WIND&FIRE+NILE RODGERS&CHICも充実していた。
ほかにもいろいろ、とても書き切れません。さあ、2026年も元気に定番、新機軸を楽しむぞ~

顔見世「醍醐の花見」「一條大蔵譚」「玉兎」「鷺娘」「平家女護島」

吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 2025年12月

「国宝」で盛り上がった2025年の歌舞伎納めは、思い切って八代目菊五郎襲名披露の京都南座に遠征。前夜に上七軒で楽しく過ごした翌日、夜の部の口上と弁天小僧は5月歌舞伎座で観たので、舞踊目当てで昼の部へ。玉三郎を迎えた道成寺で注目された六代目菊之助が、評判通り頼もしく、次々世代への期待が膨らむ。一方、「俊寛」はあえてダブルキャストの仁左衛門ではなく勘九郎、「一條大蔵」も幸四郎で、いずれも屈折がある難しい演目を健闘し、伝承を見守る気分。2026年も楽しみだなあ。1階9列の良い席で2万6000円。休憩3回で5時間たっぷり。

幕開けは華やかに「醍醐の花見」。昨夜、偶然ご一緒した鳥羽屋里松さん登場の長唄舞踊だ。北政所(ねね、扇雀)、まつ(上村吉弥=片岡我當の部屋子)らが控えるところへ悠々と秀吉(鴈治郎)が登場、北政所より淀殿(孝太郎)を気にして笑いを誘う。加藤清正(虎之介=扇雀の長男)、福島正則(鷹之資)、曽呂利新左衛門(頓知がうまい噺家の始祖、新之介=我當の長男)を筆頭に、みなで舞う。鷹之資が群を抜く切れ味。

短い休憩を挟んで「一條大蔵譚」。2016年に亡き吉右衛門のニヒルな造形を堪能した演目だ。導入の檜垣茶屋の場に続き、大蔵館奥殿の場で忠義一途で詰め寄る鬼次郎(愛之助)・お京(壱太郎)夫妻を常盤御前(七之助)ががっつり受け止め、清盛に身を任せた真意を語る。ちょっと粋過ぎるかな。そこへ現われた一條大蔵(幸四郎)が敵役・八剣勘解由(やつるぎかげゆ、松本錦吾)を仕留め、竹本にのった語り、ぶっかえりで本性を現す。痛快というより底の知れない人間性の怖ろしさ、なお阿呆のフリは続くという孤独の深さがつくづく凄い話だ。幸四郎さん、頑張ってた。

休憩でお弁当をつつき、お楽しみの変化物2題は菊之助の清元「玉兎」から。巨大な中秋の名月にうかぶ子供のシルエットが、まず可愛い。飛び出すと赤い下がり、袖無し、鉢巻で餅つき職人の姿。「かちかち山」の老人、老婆や狸も踊り分ける。体幹がしっかりして視線に色気さえ漂い、とても12歳には見えません。楽しみ~
続いて菊五郎が、待ってました長唄「鷺娘」。実はリアルは2010年に若き七之助さんで観たくらい。三下りのしっとりした曲調にあわせ、たおやかな白無垢、引き抜きで可憐な赤い着物の町娘に変わって恋のクドキ、再び引き抜きでピンクに変わり傘尽くしを賑やかに。やがてぶっかえりで鷺の姿に戻り、のたうつセメ、絶望まで、さすが破綻のない流麗さでした。終幕の凄みはこれからかな。

短い休憩の後、近松原作の「平家女護島 俊寛」。なにせ主人公がうらぶれ、よたよたの流人で地味なんだけれど、2010年の勘三郎の汗まみれ熱演、2020年吉右衛門の虚無感は目に焼き付いている。勘九郎はキャラに暗さがあって、吉右衛門さんに近い印象。情理を備えた上司・丹左衛門(巳之助)が制止するのも聞かず、頑なな瀬尾(坂東彦三郎=楽善の長男、11月に火災で急死した片岡亀蔵の代役で)にとどめを刺しちゃう。「弘近の船」のセリフには、目の前の丹波少将(隼人)と海女の千鳥(丸顔が可愛く、クドキに激しさもある莟玉)の幸せを願うというより、自分が清盛に恨まれたせいで妻・東屋が無残に首を討たれ、尊厳のかけらもない人の世に対する絶望が強く滲む。断崖絶壁の幕切れの虚無感。なかなかでした!

襲名のちょっとシュールな祝幕は、南座用に仏トランクメーカーMOYNAT(モワナ)が提供、グラフィックデザイナー永井一正と日本デザインセンターによる原画で、連獅子がモチーフとか。ロビーには師走の風物詩、ご贔屓からの竹馬がずらり。面白かったです!
Pxl_20251221_010159260mp Pxl_20251221_012140920 Pxl_20251221_035356750mp Pxl_20251221_035833562mp

 

歌舞伎「當年祝春駒」「歌舞伎絶対続魂」

吉例顔見世大歌舞伎 夜の部  2025年11月

顔見世で、三谷幸喜作・演出の三谷かぶき三作目の初日に。ノンストップの笑いで歌舞伎俳優のコメディセンスを存分に引き出し、舞台人のほろ苦さ、心意気をみせる手腕はさすが。松本幸四郎、片岡愛之助、中村獅童という鉄板トリオはもちろん、次世代の中村莟玉、市川染五郎、中村鶴松、急きょ代役の橋之助らが生き生きして頼もしい。知人のおかげで10列中央の特等席で2万円、35分の幕間を挟んで3時間。

幕開けは長唄舞踊「当年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)」を短く。正月興行大詰「対面」の前に付けた曲がベースだ。門付け芸人・春駒に身をやつした曽我十郎(中村橋之助)、五郎兄弟(元気に中村萬太郎)が、小林朝比奈(扇雀の息子の中村虎之介)の手引きで工藤館を訪れ、「めでたやめでたや 春の始の春駒なんぞは」と祐経(中村歌六)に踊りを披露。「女のよれる黒髪に」と大磯の虎(下げ髪の中村米吉が華やか)らのクドキに続き、「淡竹(はちく)の竹馬 先のけ先のけ」と賑やかに。

休憩後は「歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)幕を閉めるな」。ベースは東京サンシャインボーイズが1991年に初演、数々のトラブルに見舞われながら「マクベス」をやり抜くバックステージ群像劇の傑作だ。ドラマ化、再演をへてコロナ禍の2022年には戯曲さながら、三谷が代演に次ぐ代演で乗り切り、テレビ中継での観劇でさえハラハラした。
歌舞伎版の設定は延享年間、伊勢の芝居小屋。座付作者・冬五郎(幸四郎)、頭取・三保右衛門(中村鴈治郎)、座元・半蔵(愛之助)らが忙しく準備する。演目は前年に大阪の人形浄瑠璃で大当たりをとった傑作「義経千本桜」の「四の切」。無断で歌舞伎化したら、よりによって原作者の竹田出雲(市川男女蔵)と弟子の半二(鶴松)が観に来ることに。しかも看板役者で忠信役・小平次(獅童)は泥酔、静御前のいせ菊(ごつ過ぎる坂東彌十郎が伸び伸びと)はアゴが外れていて、若手の赤福(中村歌之助)は自信喪失。そのうえ義経役のスター虎尾(染五郎)は馴染みの遊女(なかなか粋な坂東新悟)を出せとごり押し、いせ菊はキーとなる小道具の鼓を取り違え…
幸四郎の必死さ、愛之助のちゃらんぽらん、獅童の飛び道具ぶりが見事な当て書きだ。危機を救う五十鈴の苔玉に華があって素晴らしく、今回は意地悪な鶴松にも存在感。染五郎が見習い番吉との2役で大活躍だ。早替りで拍手を待つケレンがあればもっといいかも。
現代劇から骨つぎ玄福の浅野和之が期待通りの怪演で、真面目な大道具方の阿南健治とともに爆笑を誘う。飄々とした鴈治郎が歌舞伎らしい重しとなり、出番を削られたあやめの市川高麗蔵、そもそもお呼びでないベテラン琴左衛門の松本白鸚(座ったまま)が大物ながら役者の業を醸し出す。
バックステージものだけど、大詰めは回り舞台で表の劇中劇になだれ込み、さすがの爆発力。2025年のエンタメを代表する映画「国宝」の小ネタも散りばめ、大拍手でした~
開幕前にはホワイエを歩く三谷さんが観客から声をかけられ、客席にはサッカー日本代表監督の森保一さんの姿も。

Pxl_20251102_071522312mp Pxl_20251102_071444336 Pxl_20251102_072836418

歌舞伎「菅原伝授手習鑑」

秀山祭九月大歌舞伎 昼の部Aプロ 2025年9月

凄い舞台に出くわしてしまった。言わずと知れた丸本の三大名作、通し狂言「菅原伝授手習鑑」。吉右衛門ゆかりだと夜の「寺子屋」なんだろうけど、ここは御年81歳、15代目片岡仁左衛門の極め付け菅丞相を、と歌舞伎座へ。
まあ2010年、2015年にも観たしな、と思っていたら、ひときわ神々しく、そして幕切れの花道の引っ込みで頬にまさかの涙。歌舞伎役者が泣くのはあくまで演技、といった聞きかじりを超越した名優の存在感。花道すぐ脇、下手側のいい席だったこともあって圧倒されました~ ほかのキャストもオールスターで、舞台ならでは一期一会の感動を味わう。1万8000円、休憩2回で4時間半。

明るく長閑な「加茂堤」で中村歌昇の桜丸、妻・八重の坂東新悟が笑わせたあと、休憩を挟んで「筆法伝授」。学問所の場で御簾があがり、しずしずと仁左衛門が登場。Bプロでは菅丞相を演じている松本幸四郎が、「伝授は伝授、勘当は勘当」で畏れ、嘆く。悲運を悟って源蔵を巻き込むまいとする菅丞相。まさに伝授を目撃する思い。
門外の場で中村橋之助の梅王丸がきびきびと一子・菅秀才(中村秀之介)を救いだす。御台所・園生の前に心優しい中村雀右衛門、源蔵妻・戸浪に中村時蔵、敵側の三善清行にきびきび坂東亀蔵。源蔵を邪魔する下世話な希世の市村橘太郎が、コミカルでいいアクセントだ。

長めの休憩のあと、いよいよ「道明寺」。丞相暗殺を企む偽の迎えに、人形が身代わりとなるシーンで、仁左衛門は瞬きしないどころか、全く足下を見ずに段を降りていく。どれだけ鍛錬し続けているのか。生身の俳優が見せる奇跡。そして本物の迎えがきて養女・苅屋姫(尾上左近)との別れでは、目を合わさずに肚(はら)で哀切を表現、としつつ静かに涙。知人によると初日から涙だったそうです。
苅屋姫は浅はかにも斎世親王と駆け落ちし、菅丞相左遷を招いたことで自らを責めている。すでに姉・立田の前(安定の片岡孝太郎)はこともあろうに敵側となった夫・宿禰太郎(尾上松緑)の手にかかり、この先も菅丞相ひとりのためにいくつもの死が待つ運命を思わずにいられない。
弱冠19歳の左近がなかなかの姫さまぶりをみせ、父の松緑は憎々しいけど、出てくると歌舞伎らしさが増す感じ。三婆に数えられる気丈な伯母・覚寿の中村魁春は意外にも初役だそうで、歌右衛門も演じていないとか。化粧は年配のほうが合っているかな。奴宅内の中村芝翫がコミカルにひと息つかせ、判官代輝国の尾上菊五郎はあくまでりりしく。さらに敵側・土師兵衛に中村歌六と贅沢でした。

Pxl_20250915_013228425

 

歌舞伎「大森彦七」「船弁慶」「高時」「紅葉狩」

七月大歌舞伎 昼の部 2025年7月

團十郎を座頭に、新歌舞伎十八番の四演目を一挙上演する意欲的な企画に足を運んだ。七世團十郎が構想、「劇聖」九世が完成させたという新十八番は、写実的な「活歴」とか能由来の舞踊とか、成田屋得意の荒唐無稽な荒事などとはまた違う。明治期に、時代の変化で消えかねなかった歌舞伎というエンタメを、生きながらえさせた工夫だったのかな。團十郎の鮮やかな変化2題と、シュールな「高時」が印象的だった。なかなかよく入った歌舞伎座、前のほう中央の良い席で2万円。休憩3回でたっぷり4時間。

 「大森彦七」はあの福地桜痴作、明治30(1897)年初演の活歴物だ。常磐津と竹本による舞踊劇でもあり、石川耕士補綴版で26年ぶりの上演とか。舞台は南北朝時代の松山街道。楠木正成の息女・千早姫(友右衛門の次男・大谷廣松が児太郞代役でひたむきに)が鬼の面をつけ、父を自害の追い込んだ大森彦七(市川右團次)を狙う。度量が大きい彦七は姫に正成の菊水の宝剣を返して逃がし、狂乱を装って追手を誤魔化す。
狂乱の体の舞踊、特にラストは馬も踊り、彦七が馬にまたがったまま花道を引っ込むのが爽快。右團次さんは武士らしいけど、ちょっとセリフが聞き取りづらいかな。

ランチ休憩のあとから三作は河竹黙阿弥作で、まず「船弁慶」。後方に長唄連中がずらりと並ぶ松羽目物で、能では2008年に観たもの。緩急のある構成に引き込まれる。團十郎が前シテ・静御前と後シテ・平知盛で存在感を発揮、特に静御前の能面風という白い化粧と金の烏帽子、色鮮やかな唐織の壺折が華やかで、客席からふうっと溜息が漏れる。
お馴染み大物浦。義経(りりしく中村虎之介、扇雀の息子で27歳)、弁慶(大活躍の右團次)と家臣(市川九團次、廣松、中村歌之助、研修出身の市川新十郎)が船出を待っており、都へ返される静が辛さを堪えて静かに「都名所」を舞い、烏帽子がことっと落ちる演出。続いて舟長(中村梅玉)と舟人(坂東巳之助、次男の中村福之助)が登場、間狂言風に船出を祝う「住吉踊り」をきびきびと。達者な動きに気分が変わって、いい。
武庫山からの風が吹き付けると演奏が激しくなり、いよいよ白い波模様の衣装、青い隈取りが恐ろしい知盛の霊が現われ、一行に襲いかかる。「其時義経少しも騒がず」、弁慶が数珠を摺って撃退。ラストは「幕外」となり、知盛が渦潮にのまれて廻りながら花道を引っ込む。切なくもダイナミック。九世の薫陶をうけ、六代目尾上菊五郎が磨き上げた演出なんですねえ。

休憩を挟んで「高時」。鎌倉14代、最後の執権・北条高時(巳之助)の横暴さ、愚かさを、竹本にのせて描くダークファンタジーだ。滅びゆく権力の虚しさ。
まず北条家門前で浪人・安達三郎(福之助)が高時の愛犬(名演)を打ちすえて縄にかかる導入があり、奥殿内へ。幕開け、出家姿の高時が横向きで、どんより柱に寄りかかっている珍しい演出だ。民を顧みず遊興に耽り、それでも楽しめない厭世感。愛妾(代役で市川笑三郎)相手に飲んだくれていて、三郎は死罪だとあっさり。家臣に「御当家二代の御命日」なのにと諭されて扇子を取り落とし、なんとか思いとどまる。
大薩摩が入って後半、がらりと雰囲気が変わって明かりが消え、不穏な雷鳴と稲妻。綱につかまって天狗8人が乱入し、ぴょんぴょんジャンプしちゃってアクロバティックだ。高時はすっかり誑かされ、田楽法師が来たと喜んで必死に舞い、宙づりにされたり逆立ちで持ち上げられたり、ヘロヘロ。舞の名手がぎこちなく踊るのも難しいだろうなあ。ラストは我に返り、長刀を抱えて悔しげに虚空を睨む。いやはや。

仕上げは一転、舞台いっぱいの紅葉が華やかな「紅葉狩」で理屈抜きに楽しむ。2008年に初めての南座で、玉三郎の前年初演作「信濃路紅葉鬼揃」(毛振り付!)に圧倒されたのが懐かしい。能を下敷きにした明治の作品のバリエーションだったんですね。團十郎が更科姫、実は戸隠山の鬼女。上手下手にシンプルな見台の常磐津と長唄、上方の御簾に房付見台の竹本と、三方掛け合いで贅沢だ。
前半は平維茂(貫禄の松本幸四郎)と家臣(廣松、愛嬌のある虎之介)が散策の途中、幔幕を張り巡らせた更科姫の一行に誘われる。團十郎の赤姫、やっぱり大柄で目立つなあ。呑気な家臣たちが明るく踊り、勧められるまま呑んだくれちゃう。姫は局(豪華代役の中村雀右衛門が重厚)との連舞や、曲芸的な二枚扇(頑張りました!)を披露。維茂も寝入ったのを見届け、恐ろしい本性を垣間見せるのがホラー的だ。
山神(市川新之助12歳が達者)が足拍子も軽やかに姫の正体を警告し、維茂が目覚めたところへ、鬼女が襲いかかる。鬼の逆立った茶髪、隈取り、キンキラのぶっ返りと、激しい立ち回りが派手。名刀・小烏丸に押され、巨大な松の枝に乗って、きまりました~

Pxl_20250721_071245926 Pxl_20250721_014259720  Pxl_20250721_030639590Pxl_20250721_030553706

 

團菊祭「義経腰越状」口上「弁天娘女男白浪」

團菊祭五月大歌舞伎 夜の部 2025年5月

八代目尾上菊五郎、六代目菊之助襲名披露のめでたい芝居を楽しむ。江戸情緒の定番・弁天小僧はもちろん、平均年齢11歳の可愛い勢揃いやら、松緑ゆかりの珍しい演目やらが楽しい。歌舞伎座1階、前の方のいい席で2万3000円。休憩3回でたっぷり4時間強。

幕開けの「義経腰越状 五斗三番叟」は義太夫狂言で、二世松緑が得意としたとか。義経(=豊臣秀頼)が頼朝(=徳川家康)に拒絶され、こともあろうに遊興三昧、という設定。なんとかしようと忠臣・泉三郎(=真田幸村)から軍師に推挙された五斗兵衛(=後藤又兵衛)が主役なんだけど、時代物らしからぬ飄々としたキャラでユニークだ。
冒頭、雀踊り(「べらぼう」で吉原のダンスバトルに出てきました)の群衆にまぎれて現われた家臣・亀井六郎(尾上左近)が、義経に諫言するけど追い返される。そこで五斗(尾上松緑)が登場。周りは大時代な武将なのに、ひとり顔も装束もいたって普通。しかも、おどおどして頼りない。裏切り者の錦戸太郎(坂東亀蔵)、伊達次郎(赤面の種之助)兄弟から好きな酒を勧められ、「かかに止められている」とか言って固辞するものの、結局ぐいぐい呑んじゃう。「滝呑み」なんかも披露してぐでんぐでん、もちろん義経との対面は台無しだ。なんともコミカル。
ところが、へのへのもへじ顔の竹田奴たちが、奇声をあげピョンピョン跳ねながら追い払いにくると、とたんに大暴れ。悠々と三番叟を舞い、凧揚げ、紙相撲などで奴をあしらっちゃう。最後は奴たちを馬にして悠々と引き上げる。大らかでした!

お楽しみ口上は七代目菊五郎が披露し、梅玉さんを筆頭に、ひとり柿渋色の裃の團十郎が楽屋話で笑わせ、松緑、噛んで含めるような玉三郎、大御所楽善さんという顔ぶれ。やっぱり團十郎は華があるなあ。

メーンは待ってました「弁天娘女男白浪」。言わずと知れた五世菊五郎初演の、音羽屋代々の当たり役。序幕の浜松屋見世先、八代目の弁天がちょっと真面目でテンポが速めなのは、この人らしい。南郷力丸の松也が格好よく、日本駄右衛門の團十郎も堂々。鳶頭の松緑、主人・幸兵衛の歌六と初役が多い。
続く稲瀬川勢揃いが傑作で、子供世代の御曹司たち五人がうち揃い、微笑ましいやら頼もしいやら。弁天にきりっと菊之助、忠信利平に亀三郎、赤星十三郎にちっちゃな梅枝、南郷力丸にぐんぐん背が伸びる眞秀、日本駄右衛門に端正な新之助。
二幕目は大人世代に戻ってアクションに次ぐアクションだ。極楽寺屋根立腹の場で弁天が大立廻りの末に最期をとげ、ダイナミックな「がんどう返し」。極楽寺山門の場で日本駄右衛門が追手を蹴散らし、滑川土橋の場でついに七代目が青砥左衛門藤綱として悠々と登場。八代目と並んで、川に落とした十銭を拾うエピソードののち、最後はセット上方の日本駄右衛門に情けを示して華やかに幕。

Pxl_20250504_070422299 Pxl_20250504_090827814 Pxl_20250504_085346805 Pxl_20250504_125314382

 

 

歌舞伎「彦山権現誓助剣」「春興鏡獅子」「無筆の出世」

四月大歌舞伎 夜の部  2025年4月

講談師の登場が話題の夜の部に足を運んだところ、それも面白かったけど、なんといても尾上右近の舞踊に引き込まれた。歌舞伎の継承に期待が持てる気分。変化に富んだ演目の並びもよかった。歌舞伎座、前のほう中央のいい席で1万8千円。休憩2回で3時間半。

まずは定番の「彦山権現誓助剣」から杉坂墓所と毛谷村。2009年の吉右衛門、2020年の仁左衛門ときて、今年お正月には菊五郎襲名を控えた菊之助で観たヒーロー六助だが、今回は幸四郎の偶数日(奇数日は仁左衛門)をチョイス。初役の際、吉右衛門さんに教わったとかで、剛直さがなかなか。得な女武道のお園で片岡孝太郎がはまっていた。敵役の微塵弾正に中村歌六、母お幸は人間国宝・中村東蔵、孫の弥三松は可愛い中村秀之介(歌昇の息子、7才)。

お弁当休憩の後、「春興鏡獅子」を意外に初めて拝見。こちらも人気の石橋物の長唄所作事だ。9世市川團十郎が依頼して、福地桜痴作、三世杵屋正治郎作曲で明治26(1893)年に初演、後に新歌舞伎十八番に加わった。小姓弥生と獅子の精は6代目尾上菊五郎の当たり役。ひ孫にあたる今年32才の尾上右近は幼いときから映像を見て憧れ、自主公演で研鑽を重ねて本興行初役を射止めたという。
舞台は江戸城の大奥。新年の「お鏡曳き」の余興で弥生が踊る。「牡丹の花びらのように」だそうで、川崎音頭の手踊りから茶袱紗や塗扇、二枚扇を使って、また時鳥を目で追う振りなどが可憐。獅子頭を手にすると魂が宿って蝶と戯れはじめ、いったん花道を引っ込む。
胡蝶の精でともに12才の坂東亀三郎(彦三郎の息子、市村羽左衛門のひ孫)と尾上眞秀が登場。杵屋勝四郎(唄)・巳太郎(三味線)以下の長唄にのり、バチを使う鞨鼓や鈴太鼓で可愛く花に戯れる。迫力ある大薩摩で雰囲気が一転、お能同様に囃子方の激しい乱序となり、花道から獅子の精が登場して勇壮な狂いをみせる。深山ではなく、将軍家の眼前に現われた千代田城の獅子だ。毛振りをただ振り回すのではなく、勢いのなかで表情をかえてみせるのが凄い。細部まで探究しているさまが伝わる。歌舞伎座上演を飛び級と受け止め、手獅子と弥生の衣装を新調したとか。その気合いやよし。 

短い休憩を挟んで「無筆の出世」は、講談の人間国宝・神田松鯉(伯山の師匠)の口演を竹柴潤一が脚色した新作。名も無い庶民・治助(尾上松緑)が無筆である負い目のバネに、努力と「仇を恩で返す」生き方で幕府の要職にまで出世するサクセスストーリー。松緑が取り組む講談シリーズ第三弾だ。実直さが松緑にぴったりだし、場面ごとに紗幕前で松鯉本人が導入していく新しい演出が面白い。
幕開けは夏の隅田川。治助が主人の手紙を川に落とし、紺屋職人の久蔵(坂東亀蔵がきっぷよく)が乾かしてくれる。その折、内容を目にした大徳寺の住職・日栄(播磨屋の中村吉之丞が安定)が「手紙を届けたら試し切りにされる」とんでもない内容だと教えて、治助を寺男にする。時は移り紅葉の季節。日栄の碁仲間、祐筆の夏目左内(市川中車)が気の利く治助を気に入って中間に雇いいれる。そして冬。夜な夜な砂箱で必死に字を学ぶ治助の努力に感じいって、左内自ら字や学問を教えるようになる感動のシーン。妻の藤(市川笑三郎)もこれを励ます。
それから30年。四書五経を習得した治助は侍になり、左内の跡を継いで祐筆、ついには勘定方奉行にまで出世しちゃう。とある春の日、屋敷の花見にかつての主人・佐々与左衛門(中村鴈治郎)を招く。すると床の間に因縁の手紙が! 与左衛門は動揺、酔っ払っていたとはいえ酷いことをしたと詫び、切腹しかかるが…
もとは松鯉が古書店で12世田辺南鶴の速記本をみつけ、復活した演目とか。大詰め、与左衛門が生きてきた長い後悔の人生と、二人の関係性は単なる美談に終わらせず、もっと深める余地がありそう。講談師が一月通して歌舞伎座に出るのは初だそうで、講談ファンでもある私としては定番化に期待します~

Pxl_20250406_063302071 Pxl_20250406_063256947 Pxl_20250406_103412914

南座「伊勢音頭恋寝刃」「於染久松色讀販」

三月花形歌舞伎 午後の部  2025年3月

若手中心の春の南座、桜プログラムに足を運んだ。入口でお楽しみ袋をもらったら、中身は俳優のフィギュアカード。冒頭には「憚りながら手引き口上」があり、この日は中村福之助。ここだけは写真撮影もOKで、ファンサービスが頼もしい。舞台はいまや中堅として成駒屋を引っ張る中村壱太郎、そして南座花形は3年ぶりという中村米吉が存在感を発揮していた。1F中央あたりの良い席で1万2000円。休憩1回で3時間弱。

まず片岡仁左衛門監修の「伊勢音頭恋寝刃」。文楽で2回ほど観た刃傷ものだ。実際の事件からわずか3日で書き上げたという勢いがある。伊勢古市油屋店先の場では遊郭の中居・万野(壱太郎)が、御師・福岡貢(南座花形は初参加の中村虎之介、上方の「ぴんとこな」をチャーミングに)に満座の中で恥をかかせる。壱太郎が年増の艶と憎たらしいいけずさを存分に。恋人・油屋お紺(米吉が期待通り可愛く)は胡弓にのせて、哀しい愛想づかしを聞かせる。
続く油屋奥庭の場で、激昂した貢が次々に人を斬り捨てちゃう。虎之介が健闘。もう少し凄みが欲しいけど。ほか、貢の家来筋・喜助で中村福之助が頑張り、横恋慕する油屋お鹿に茶目っ気たっぷり市川猿弥(ちょっと目立ち過ぎ?)、名刀を狙う岩次に市川青虎。

休憩後は「於染久松色讀販 お染の五役」。壱太郎オンステージで、竹本と常磐津にのって五役を早替りで見せる。女形の大役「お染の七役」のうち、大切の道行を独立させた舞踊だ。松プログラムでは鬼門の喜兵衛(敵役)になるところを、この日は雷で。物語としてはお染久松の心中物で、文楽「新版歌祭文」は3回観ているし、悪党・土手のお六たちに焦点を絞ったニザタマバージョンの歌舞伎も観たけれど、この日は舞踊の華やかさ、ケレンを楽しむ。
浅草・質店油屋の娘・お染(壱太郎、町娘)が横恋慕する番頭に連れ去られ、恋仲の丁稚・久松(同、若衆)が追う。菜の花咲き乱れる隅田川のほとりでは久松の許嫁・お光(同、田舎娘)がさまよう。「見渡せば のどかなる世の景色かな」で、なぜか雷(同、道化)が下界に転落。ラストは久松の家来筋、土手のお六(悪婆)が再会したお染と久松を捕手から逃がす。
この人はやっぱりお六に迫力があって、いいなあ。ほか、お光を介抱する猿回しに虎之助、米吉。

プログラムの対談で、壱太郎がそれぞれ「学校」が違う、と言っていて興味深い。福之助は澤瀉屋のスーパー歌舞伎や玉三郎、虎之助は中村屋なんですねえ。みんな頑張れ!
ロビーには花形お約束の撮影スポットやメッセージボードも。開幕前にインバウンドのフードコートと化した錦市場を見学しました~
Pxl_20250308_055947723mp Pxl_20250308_081510692 Pxl_20250308_063945745 Pxl_20250308_082015661Pxl_20250308_050451550

より以前の記事一覧