歌舞伎

狐花

八月納涼歌舞伎 第三部 2024年8月

真夏の一夜を怖い歌舞伎で、としゃれ込んで話題の新作「狐花(きつねばな)葉不見冥府路行(はもみずにあのゆおのみちゆき)」。京極夏彦初の書き下ろし脚本、今井豊茂演出・補綴。凄惨な事件の連鎖、怪異を生むのは観る者の心理で、怖いのは生きている人間のほう、という主題はわかる一方、全体に説明が多くて、まったりとした運び。舞台一面、毒々しい曼珠沙華は印象的だけど、ケレンなど歌舞伎らしさはなし。ここは演劇的な感興が欲しい。こうしてみると南北、黙阿弥の凄さがわかるような。歌舞伎座中ほどの花道手前で1万6000円。休憩を挟んで3時間強。

時代は江戸末期、百鬼夜行シリーズの憑き物落とし(陰陽師)中禅寺秋彦の曾祖父、中禪寺洲齋(じゅうさい、松本幸四郎)が探偵役だ。一幕目は発端で、25年前の神職・信田家への押し込み・放火と美人の奥方・美冬(市川笑三郎)の拉致シーン。そして曼珠沙華が闇に浮かぶ荼枳尼天(だきにてん、貴狐天皇)の荒れ社前で、清明紋の洲齋と狐面の男(中村七之助)が問答をかわす。んー、抽象的。
そして公共事業で財をなした、いかにも悪者の作事奉行・上月監物(中村勘九郎)の屋敷。曼珠沙華柄の小袖の男の出現に、家臣・的場佐平次(市川染五郎)と辰巳屋(片岡亀蔵)、近江屋(市川猿弥)が、かつての悪事の露見を恐れている。並行して、奥女中・お葉(七之助が2役)と近江屋の娘(坂東新悟)、辰巳屋の娘(扇雀の息子、中村虎之介)は、結託して殺したはずの浮気男・萩之介の亡霊におびえている。すると案の定、辰巳屋と近江屋に萩之介が現れ、錯乱した娘たちがそれぞれ父を殺めちゃう。いやはや。

お弁当休憩を挟んで、二幕目はさらに悲惨です。冒頭と同じ社前で、中禪寺がなんとか狐面の男を止めようとするシーンがあり、上月家へ。的場の依頼で一連の事件を探っていた中禪寺は、萩之介がお葉に化けて娘たちを操り、何らかの復讐をした、次の狙いは上月家だと指摘。監物は慌てず、警護のため娘・雪乃(米吉)を屋敷内の牢に入れる。
そこへ萩乃介登場。この牢は25年前、監物が辰巳屋らと美冬を閉じ込めた因縁の場所、自分は失意の美冬が産んだ雪乃の双子の兄で、放下師や陰間茶屋に売られてきて…と語り、共に監物への復讐を決意。とんでもないと的場が2人を討ったところへ、監物が到着して、いきなり不忠者!と的場を斬り捨てちゃう。あれれ。駆けつけた中禪寺は瀕死の萩之介に、実は兄だと明かして悲しみに暮れる…
後日、監物を訪ねた中禪寺は25年前の押し込みについて、美冬だけでなく信田家の隠し財産を手に入れて成り上がった、しかし生き残ったあなたはなんと孤独なことか、と告げて…

ロングヘアの幸四郎はちょっと斜に構えた感じが、すべてを心得ている憑き物落としらしく、最近めっきり線が太くなった染五郎も安定。年増っぽい新悟と、趣里を思わせる風貌の虎之介のびっくりの身勝手さ、対照的に辰巳屋番頭・中村橋之助の切なさがいい。勘九郎は悪の権化に徹していたけど、スケール感はもうひとつか。
私は観ていないんだけど、納涼でよくかかったコメディ弥次喜多シリーズは杉原邦生、戸部和久、猿之助と脚本・演出が充実してたんですねえ。舞台って難しい。幸四郎さんは名だたる芝居好きで、よくわかっているはず。足を運びやすい遅い時間の上演、空席があったのは天候のせいでしょう。ガンバレ。

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裏表太閤記

七月大歌舞伎 夜の部「千成瓢薫風聚光(せんなりびょうたんはためくいさおし)裏表太閤記」  2024年7月

三世市川猿之助が1981年、奈河彰輔脚本、六世藤間勘十郎演出で初演した演目。秀吉の出世談を表、その影の敗者たちを裏として描く、歌舞伎王道の構成だ。ほぼ全面的に改訂を加え、八世勘十郎演出で43年ぶりに上演、と聞き足を運んでみた。お馴染みのエピソード「馬盥」や本水、宙乗りなどのケレン、華やかな舞踊と、伝統の要素をギュッと詰め込み、それでいて松本幸四郎のキャラのせいか、全体に若々しく、軽み、洒脱さがあって楽しめた。演出補の市川青虎や後見の市川段四郎も大活躍ですね。よく入った歌舞伎座の前のほう、上手寄りで1万8000円。休憩2回を挟んで4時間強。

ビールとシャンパンを味わいつつ序幕、信貴山弾正館の場から。信長に反旗を翻した松永弾正(市川中車)が生駒の居城で追い詰められ、駆けつけた光秀臣下の四王天但馬守(市川青虎)に、実は光秀は息子(仰天!)と明かして、三日でいいから天下をとれと、足利家の白旗を託す。自らは名器・古天明平蜘蛛に爆薬を仕掛け、赤い照明とスモークのペクタクルに包まれて自害。松永といえば東大寺大仏殿焼き討ちなどのヒールで、大河ドラマでは吉田鋼太郎がねっちり演じた人物。あくの強さが中車に合っていた。

続く本能寺の場は、とにかく信長(坂東彦三郎)が光秀(尾上松也)をいじめ抜く。鉄扇で額に傷を負わせたり、明智の家紋・桔梗をいけていた馬盥で酒を飲ませたり(歌舞伎名場面)。所領を召し上げると言われてついに光秀がキレ、辞世の句「時は今、天が下知る皐かな」を詠んで(変の5日前に謀反を明かしたという句ですね)、信長を襲っちゃう。彦三郎さん、声が通って押し出しがいい。

そのころ愛宕山登り口・山中の場では、信長の嫡男・信忠(坂東巳之助)とその嫡子・三法師、母の小野お通(創作上の人物、尾上右近)が黒御簾の演奏をバックにのんびり酒宴の最中。光秀臣下の十河軍平(市川猿弥)と天狗に化けた家来たちが、土器(かわらけ)投げを合図に襲いかかり、お通と三法師だけが、なんとか逃げ延びる。巳之助は高貴な役柄も上手。右近が立ち回りしながら、槍の光で三法師をあやすのが可笑しい。

休憩でお弁当をつついて二幕目、備中高松塞の場で、竹本の義太夫節となり重厚な時代物へ。ところは秀吉の水攻めで落城寸前の高松城内。導入部分で家中の市川寿猿が「今年で94歳」とやんや。セリフも足取りもしっかりしていて、何よりです。
軍師・鈴木重成(松本幸四郎)が思案げに登場すると、一気に熊谷陣屋の雰囲気に突入。重成は家臣が生き延びるため、こともあろうに主君を討つと言い出して、息子・孫市(松本染五郎)に討たれる。ここからお約束、瀕死の長セリフとなり、わざと討たれた、本能寺の変を知ったので自分の首を差し出せば秀吉も和睦するだろう、と真意を明かし、孫市に手柄を託す。深謀と自己犠牲の悲劇。幕切れでは一転、秀吉に早替りした幸四郎が颯爽と再登場して、重成の忠義を讃える。
染五郎は溌剌としているけれど、大仰な仕草、かすれ声がちょっと心配。精進してほしいものです。幸四郎は孫市のことを「あんな当世風の」とけなしたり、秀吉として孫市に「いい父を持ったな」と誉めたりして笑いを誘い、余裕でした~

短い山崎街道の場で、舞台に勢いよく敷物を広げる大道具さんに拍手。続く姫路秀吉陣所の場で孫市、三法師とお通が合流し、広々した姫路海上の場へ。秀吉の大返しは陸路だと思うけど、そこは歌舞伎、自由です。嵐を鎮めようと、お通がヤマトタケル(澤瀉屋名場面!)の弟橘姫になぞらえて海に身を投じる。と、まさかの大綿津見神(松本白鷗)が現れてお通の自己犠牲を讃え、なんと一同は空を飛んで琵琶湖に至る。白鷗さんは座ったままセットで移動していたけど、凄いスケールです。

道中の場で、なんと通路、2階席まで使って秀吉家臣が光秀の残党を追い詰め、芝居小屋気分が盛り上がる。そして本舞台の幕が落ちると、派手な大滝の場。舞台中央奥にバシャバシャ本水が落ちる滝が出現し、セリフが聞こえないほど。秀吉、孫市と光秀が大立ち回りで、水にダイブしたり、霧のように吹いたり、やりたい放題。ついに光秀を討ち果たすのでした~

休憩後の大詰は一転、パステルカラーのファンタジーとなり、天界紫微垣(しびえん、天帝の在所)の場。常磐津をバックに、孫悟空(幸四郎が生き生きと)が見えない荒馬を操って暴れ回る舞踊だ。持て余した天帝(猿弥)、大后(市川門之助)から太閤の官位と金の瓢箪を授かり、黄金の国・日本へつかわされる。猿と呼ばれた秀吉と、その本陣を示す馬印「千成瓢箪」にちなんでいるんですねえ。専門のアクロバットが鮮やかだ。
テンポ良く幕が引かれ、お待ちかねの宙乗り。悟空は喜び勇んで3階へと飛び去っていく。猪八戒(青虎)もびっくりの宙乗り、沙悟浄(市川九團次)は飛び六方でド派手に後を追う。

…と、それが天下人となった秀吉の夢だった、というオチで、ラストは栄華を極める大阪城大広間の場。ここへきて大物の北政所(中村雀右衛門)、淀殿(市川高麗蔵)と家康(中車)が登場。舞台後方に長唄連中がずらりと並び、前田利家(松也)、毛利輝元(右近)、宇喜多秀家(染五郎)、加藤清正(巳之助)が勢揃いして、めでたく三番叟を舞い納めました~

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「於染久松色読売」「神田祭」「四季」

四月大歌舞伎 夜の部 2024年4月

花道外側のいい席で、当代随一、半世紀をへても衰えないニザタマの熟練の色気を堪能する。よく入った歌舞伎座、絶好の花道すぐ外の席で1万8000円。休憩を挟んで3時間。

演目2本は21年2月に観た組み合わせの再演で、まず「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」から「土手のお六・鬼門の喜兵衛」。南北ならではの陰惨な設定、悪党の所業だけど、華のある愛嬌に衰えはなく、素晴らしい。
導入の柳島妙見の場の舞台は北斎も信仰したという深川の法性寺、通称妙見堂。手代がフグを食べに行くチャリ場をテンポ良く。舞台が回って暗~い小梅莨屋(たばこや)の段で、ご両人登場。伝法な玉三郎の「悪婆」お六は台詞の緩急が絶妙、仁左衛門の喜兵衛にけだるい凄みがある。悪事の支度で緊張が高まり、カミソリをくわえたニザ様の見得に拍手。髪結の亀吉は成駒屋次男の中村福之助が手堅く。
続く瓦町油屋の場は浅草の質屋の店先。2人は行き倒れをネタに主人の太郎七(坂東家の長男、彦三郎)を脅すけど、居合わせた山家屋清兵衛(端正な錦之助)にやり込められちゃう。前段から一転、お六の愛らしさ。籠をかついで花道をすごすご引き上げる幕切れの、照れ隠しのおかしみで沸かせる。

休憩後の舞踊「神田祭」は一転して華やか。浅葱幕が落とされると、いなせな鳶頭の仁左衛門、揚げ幕からは艶やかな芸者の玉三郎が登場。帯を直しあったり、ほおを寄せたり、ご両人がいちゃいちゃするだけなんだけど、若々しく粋な風情に客席がぐっと浮き立つ。投げ節から木遣りへ、下手に陣取る清元連中も布陣が若返った感じ。筆頭の清美太夫は1980年生まれ、声に張りがあっていい。観ておいてよかった!

短い休憩を挟み、舞踊「四季」で締め。歌人で大正三美人と言われた九條武子のオムニバスだ。ぱあっと明るい長唄「春 紙雛」は豪華に菊之助、愛之助コンビ。五人囃子で萬太郎、種之助らが加わり、人形ぶりをまじえて可愛く。「夏 魂まつり」は大文字焼と竹本を背景に、茶屋の亭主の芝翫、舞妓の児太郎、若衆の橋之助、太鼓持の歌之助らが京都の夏をみせる。玉三郎の直後に観ると児太郎はまだまだかなあ。
「秋 砧」は照明を落とし、孝太郎が帰らぬ夫への情念をじっくりと。李白「子夜呉歌」を元にしたそうで、紗幕越しの月光と箏の演奏が深い。ラストはぱっと派手なアクションになって「冬 木枯」。松緑と坂東亀蔵がコミカルなみみずくに扮し、木の葉が人に変じた廣松、福之助、鷹之資、男寅、莟玉、玉太郎が躍動、彦三郎の長男の亀三郎と音羽屋の眞秀があどけなく。松緑の長男、尾上左近が中央でお人形のように可憐で、目を引いた。伝統を踏まえたファンタジーが面白かった~

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「松竹梅湯島掛額」「教草吉原雀」

第三十七回四国こんぴら歌舞伎大芝居  2024年4月

昨年の内子座に続く遠征で、日本最古の芝居小屋に足を運ぶ。令和の大改修(耐震補強)、コロナ禍をへた5年ぶりの開催だ。折しも桜が満開で、祝祭感あふれる素晴らしいシチュエーションを満喫。幸四郎、壱太郎ものっていたのでは。2階前のほうで1万6000円。休憩を挟んで2時間強。

ツアーのお土産で地元のお菓子等を受け取り、まず「松竹梅湯島掛額」。2009年に吉右衛門、福助!で観た演目。前半の吉祥院お土砂の場は馬鹿馬鹿しいコメディで、駒込が舞台。源平の時代設定だけど当然、江戸にしか見えない。「天神お七」からグニャグニャへ、お七(壱太郎)を助ける紅屋長兵衛=紅長の幸四郎が柔らかくチャリを演じて、なかなかの安定感だ。お七が片思いする吉三郎に染五郎、その若党の十内に亀鶴と、若々しく。母おたけの雀右衛門、お七を探しに来る釜屋武兵衛の鴈治郎が舞台を締める。上方特有の花道付け根の「空井戸」も活躍。
後半の四ツ木戸火の見櫓の場は一転、竹本となり、壱太郎オンステージで人形振り。客席上が平成の大修復で復活した格子状の「ブドウ棚」になっていて、一面に雪が降り注ぐのが美しい。小屋全体が夢世界だ。

休憩後は華やかに、長唄舞踊「教草吉原雀」。柔らかい半太夫節、哀しげな大津投げ節、流行の小唄を取り入れている。吉原雀は遊郭の事情通のこと。鳥売りの雀右衛門と鴈治郎が放生会の謂れに始まり、「その手で深みへ浜千鳥、通い慣れたる土手八丁」と「鳥尽くし」にのせて客の様子、花魁道中、「そうした黄菊と白菊の、同じ勤めのその中に」と「花尽くし」にのせて間夫との痴話喧嘩などを生き生きと見せる。鳥刺しの幸四郎が加わって賑やかな手踊りの後、ぶっ返りとなり、雀の精と鷹狩りの武士の正体をあらわし、派手に立廻りで幕。楽しかったです!

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ヤマトタケル

スーパー歌舞伎 三代猿之助四十八撰の内 ヤマトタケル 2024年3月

立師・市川猿四郎さんのワークショップに触発されて、澤瀉屋渾身の舞台へ。戯曲の含蓄、ダイナミックなエンタメ性、そしてあっぱれ市川團子自身のドラマも重なって、有名なラストの宙乗り飛翔シーンにぐっときた。休憩2回を挟み4時間強の大作だけど、たるみは無い。新橋演舞場、前のほう正面のいい席で1万6500円。

1995年の祖父・猿翁と、2012年の伯父・猿之助襲名・團子初舞台の映像を、ざっと予習してからの観劇。映像でも十分面白かったけど、リアルだから伝わってくるものが、さらに大きい。
演目はいわずとしれた記紀の日本武尊伝説をベースに、哲学者・梅原猛が書き下ろして1986年に初演、本公演で上演1000回を迎えた。主役のタケルは第12代景行天皇の皇子というから、実在したとすれば4世紀ごろか。誤って双子の兄を殺して父に疎まれ、過酷な熊襲、さらには蝦夷の平定を命じられる。超人的な戦果をあげるも、切望した大和への帰還を目前にして、滋賀・伊吹山で倒れてしまう。
単なる英雄譚ではない。私たちが生きる現在は古代からの地続きであり、鉄とコメ=先進性に対する反発や、進んでいるがゆえの傲慢が身を滅ぼすというメッセージは、普遍的だ。それでも革新へと突き進まずにはいられない、亡き猿翁の強烈な自負も横溢。ちょうど読んでいる古代史小説にも連想がつながって、深い。

演出は隈取りや附け、早替り、ぶっかえりなど歌舞伎の妙味がたっぷりだ。加えて1幕熊襲の国での、二階建てセットで樽をぶんぶん投げちゃうアクロバットや、2幕焼津の、京劇にヒントを得たという旗を使った火の表現がスペクタクル。宝塚もびっくりのキンキラ衣装にはうっとり。装置は朝倉摂、耳に残る曲は長沢勝俊、浄瑠璃は鶴澤清治だったんですねえ。

キャストはなんといっても、タイトロールの市川團子に引き込まれた。いま二十才、未熟だからこそのエネルギーと、まっすぐに父を求めて報われない切なさが義経を思わせる。ボロボロになっていく最期に至っては、アメリカンニューシネマのよう。相棒タケヒコの中村福之助と手下ヘタルベの歌之助兄弟、そしてヒロイン兄橘姫・弟橘姫の中村米吉も、若さが伸びやかだ。もちろん叔母・倭姫の市川笑三郎、熊襲兄タケルの市川猿弥ら脇は盤石。市川中車の帝は、宿縁を乗り越えて息子を支える経緯を思わずにはいらない、凄い役です。老大臣・市川寿猿はなんと93歳、初演以来38年全公演に出演してきたとか。そして猿四郎さんは蝦夷・相模の国造ヤイレポでした。

團子の猿之助襲名が楽しみになりました~

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浅草歌舞伎「十種香」「源氏店」「どんつく」「熊谷陣屋」「流星」「魚屋宗五郎」

新春浅草歌舞伎  2024年1月

初歌舞伎は、尾上松也ら7人が10年の節目で卒業するという浅草歌舞伎。松也、中村米吉ら古典の大役にチャレンジする俳優陣の、若々しさに未来を感じて気分が明るくなる。観客の若め、着物姿や女性ひとり客も目立つ浅草公会堂で、各部9500円。

第1部は米吉が、時代と世話とで大奮闘。可愛いイメージだったけど、いい感じで貫禄が出てきたのが発見でした。中央あたりの良い席、休憩3回を挟んで3時間半。
まず中村歌昇がお年玉年始ご挨拶で、曲芸の難しさを力説してから、竹本の浄瑠璃で、文楽で2回観た「本朝廿四孝」の十種香の1幕。花作り簑作に化けているはずが、なぜか裃姿の武田勝頼(端正な中村橋之助)を挟んで、上手座敷に恋しい婚約者・勝頼の絵姿に見入る可憐な「赤姫」八重垣姫(米吉)、下手座敷に渋い黒の着物で敵に潜入中の濡衣(坂東新悟)と、重厚な様式美だ。勝頼は本物だと知った八重垣姫が、「柱巻き」などの振りで情熱的にかき口説く。前髪の貴公子・勝頼と寄り添う姿もきれい。橋之助は格好良いので、もうちょっと存在感がほしいな。
後半は非情な父・謙信(歌昇)が登場して、勝頼を塩尻へ使いに出し、討手ふたりに後を追わせちゃう。どうする八重垣姫、というところで幕。

休憩を挟んで「与話情浮名横櫛」から源氏店の1幕。2015年の玉三郎・海老蔵、昨年のニザタマが目に焼き付いている演目だから、どうかな、と思っていたけれど、お富の米吉がなかなか粋で世話物らしい伝法さがあって、引き込まれた。対する与三郎の中村隼人は、格好つけているのは悪くないし、片岡仁左衛門に教わったという形は見栄えするんだけど、なぜか肝心の色気がない。んー、残念。
蝙蝠の安五郎の松也が秀逸。下世話な小悪党の難しい役だけど、崩れすぎていない。コメディリリーフ番頭藤八の市村橘太郎も同様で、全体が上質な印象に。終盤、多左衛門の中村歌六パパが出てくるとぐっと歌舞伎らしい空気になるのも、面白かった。

1部の〆はお目当ての「神楽歌雲井曲毬」、通称どんつく。常磐津にのった風俗舞踊で、太神楽がテーマだけに初春らしくめでたい。荷持どんつくの坂東巳之助の、足の運びからして抜きん出て格好いいのが、三津五郎譲りでさすが! 亀戸天神が舞台だけど、今回のために浅草寺の背景を新調したそうで、気合い十分だ。
まず田舎者どんつくと太神楽の親方(歌昇)、太鼓打(中村種之助)が賑やかに鹿島踊。続いて田舎侍(松也)、若旦那(橋之助)、子守(中村莟玉)も踊り、白酒売(新悟)が言い立て。歌昇の曲芸・籠毬は失敗が多く、ちょっと残念。
どんつくのリードで一同「其様ええなら、おんらもええ」と声を合わせ、だんだん速くなるところが楽しい。実は先日習っただけに、一緒にくちずさみたくなっちゃう。芸者と大工(隼人)の艶、どんつくの滑稽なおかめから、最後はどんつくと親方の黒赤尽くしで軽やかでした~

日を改めて第2部を鑑賞。松也の頼もしさを実感した。休憩3回で4時間。
この日の年始ご挨拶は、中村種之助が上手に。そして幕開けは「一谷嫩軍記」から熊谷陣屋1幕。2012年先代團十郎の名演にはじまり、吉右衛門、芝翫、幸四郎、仁左衛門と観てきた演目だ。初役の歌昇は、亡き吉右衛門譲りの幸四郎から習ったとのこと。花道の出、竹本にのった「物語」、「制札の見得」と武張った感じは頑張っていたけど、大薩摩が入っての幕切れは、涙が先にたって虚無感、余韻が物足りないかな。10年、20年かけて磨いていくのでしょう。
妻相模の新悟、藤の方の莟玉、義経の巳之助(大河ドラマの円融天皇だものなあ)も健闘。後半でやはり、弥陀六実は宗清の歌六パパが出てくると、一気に舞台が締まる。

続く「流星」は、種之助がひとりで務める黙阿弥作詞の清元舞踊。リズミカルで巧いし、なんとも愛嬌があっていい! 流星が牽牛と織女に、雷夫婦の喧嘩を報告する、というそれだけなんだけど、なんと端唄にかぶれた亭主、威勢良く鳴らせという女房のいさかいがヒートアップし、子供の雷が止めに入り、隣の婆雷まで闖入するさまを、面を付け替え付け替え踊り分けて、思わず笑っちゃう。

最後は黙阿弥作「新皿屋舗月雨暈」から魚屋宗五郎を2幕で。2016年に芝翫襲名直前のパパ橋之助で観た、生世話ものだ。宗五郎の善人ぶりが寅さん的な愛おしさで、松也がうまく造形。妹お蔦の死に沈んでいたが、同僚のおなぎ(米吉)から、お家騒動に巻き込まれた非道な経緯を聞いて怒り心頭、禁酒の誓いを破ってどんどん酩酊しちゃう。あげく酒樽で格子を壊し、花道で見得を切るあたりが痛快だ。
後半は泥酔して磯部の屋敷に乗り込み、岩上(悪役もいける巳之助)相手に大暴れ。家老(歌昇)に「酔って言うんじゃございませんが」と台詞を聞かせる。終盤、酔いから醒めたらすっかり恐縮して、殿様(隼人)に詫びられて納得しちゃう展開はあんまりだと思うけど… 女房おはまの新悟が、典型的な世話女房ぶりでなかなかの安定感。もうちょっと背が低かったらバランスがいいのになあ。

ロビーの一角に気取ったフォトスポットを設けたり、終演後に皆で並んで、能登半島地震への寄付を募ったり、花形らしくて良かったです!

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流白浪燦星

流白浪燦星(ルパン三世) 2024年1月

 歌舞伎好きからよかったと聞き、新作歌舞伎「流白浪燦星」を配信で鑑賞。おなじみモンキー・パンチ「ルパン三世」を、戸部和久のオリジナル脚本・演出で。戸部氏は2019年「風の谷のナウシカ」が良かった、歌舞伎脚本・演出の戸部銀作の息子さんですね。ナウシカ同様、原作へのオマージュと「楼門五三桐」「青砥稿花紅彩画(白波五人男)」など歌舞伎の名場面をうまくミックスしていて、楽しめる。原作の無常観とかハードボイルド感とか、もうちょっと大人っぽさが欲しいとは思ったけど。2023年12月23日、新橋演舞場での公演。休憩2回を挟み3時間半。4220円。

時は安土桃山時代。御所から「卑弥呼の金印」入手のカギとなる宝刀「雄龍丸」を盗み出した大泥棒・流白浪燦星(片岡愛之助)と次元大介(なんと市川笑三郎)が、対となる「雌龍丸」を持つ初代・石川五右衛門(尾上松也)に対決を挑む。のっけから南禅寺山門の「絶景かな」の名シーン!  大川端風の峰不二子(市川笑也)、さらに因縁の銭形刑部(市川中車)が登場して、お馴染みの追かけっこに。
金印の超常パワーが欲しい太閤・真柴久吉(いまだに北条時政をからかわれる坂東彌十郎)と近習・長須登美衛門(中村鷹之資がりりしく)、そしてカラクリ人形で大金持ちとなった唐句麗屋銀座衛門(安定の市川猿弥)も刀を狙う。牢名主九十三郎(現役最高齢93才の市川寿猿さん!「四千両」ですね)の手助けで、つかまっていた五右衛門を釜茹での刑から救い出した流白浪は、五右衛門なじみの傾城・糸星太夫(尾上右近、実は長須の姉)が金印をつかさどる「饒速日(ニギハヤヒ)一族」の生まれ変わりと知って…。

早替り、登場人物そろってのだんまり、「籠釣瓶」オマージュの豪華な花魁道中、天下一の大泥棒の名をかけた流白浪と五右衛門の本水を使ったバシャバシャ立廻り、さらに幕切れは格好良く五人男から稲瀬川勢揃いのツラネ。もちろん盆やセリも駆使して、歌舞伎ならではの演出が盛りだくさんだ。お馴染みルパン主題歌とかを和楽器で聴かせるのも楽しい。なんやかんやで斬鉄剣の誕生秘話というおまけも。

役者陣は愛之助が真っ赤な羽織に「ふーじこちゃーん」とノリノリで、軽薄な感じがぴったり。松也に色気があり、やけに格好つけるところ、右近とのからみもいい。これから歌舞伎の中心を担う役者として期待! 2幕目冒頭で演目を解説する親切な通人は、まさかの緑のマモー姿で衝撃。堂に入った片岡千壽さん、秀太郎さんのお弟子さんなんですね~ 寿猿さんがお元気で、次元に「むしりが似合うじゃねえか」と言ったりするのはめでたいけど、五右エ門役者の思い出は澤瀉屋の現状を思うとちょっと複雑。

深読みするとニギハヤヒは古代、神武の大和朝廷に破れた出雲系王権を思わせる。歌舞伎の五右衛門はもともと、秀吉の明出兵で戦死した宋素卿の遺児というトンデモ設定だし、アウトロー視点が歌舞伎とルパンの世界観を結びつけているんだなあ。一方、猿弥さんのロボット長者ぶりや、報復の連鎖を絶ち、朝鮮出兵を終結させるというテーマは現代的で、作り込んでいます。金印に至る設定が難解で、観ていて集中力が途切れちゃったのは残念だったけど。

ちなみに配信の仕組みはわかりにくく、かなりイライラした。決して安くないのだし、使い勝手の改善を強く希望。利用したのは歌舞伎オンデマンド連携の配信プラットフォーム「MIRAIL(ミレール)」。ほかにHuluも。

「妹背山婦女庭訓」

10月歌舞伎公演 通し狂言「妹背山婦女庭訓」 第二部  2023年10月

初代国立劇場さよなら特別公演のラストは、エキセントリックなキャラばかり(プログラムの大島真寿美さんの解説より)の大定番「妹背山婦女庭訓」の後半。揃い踏みの大詰めに、これまでの感謝と新生国立劇場に向けた期待がこもって感慨深かった。それだけに御大・菊五郎さんの休演が残念だったけど。本館大劇場のやや後ろ上手寄りで1万4000円。休憩2回を挟み3時間半。

序幕は布留の社頭の場「道行恋苧環」で、日本画のような舞踊から後半、子供っぽい恋のバタバタが笑いを誘う。近松半二ものとして、軽快な竹本連中の安定ぶりが嬉しい。季節らしい紅葉のセットに、俳優陣は次代を背負うメンバーが揃う。橘姫の米吉が以前よりほっそりした感じで、優しくて、いい赤姫ぶり。モテモテ求女(実ハ藤原淡海)の梅枝はノーブルで謎めいているけど、やっぱり女方のほうが光るな。セットが明るくなって、元女を追いかけるお三輪の菊之助登場。この2人と並ぶと、ちょっと貫禄が多めか。

休憩でお弁当をつつき、いよいよお三輪の悲劇となる二幕目・三笠山御殿の場。入鹿の歌六は声に張りがあって、怪物というより生き生きした造形が面白い。鱶七(実ハ金輪五郎)の芝翫は金襴の武将姿に転じ、長袴を引き裂いてかついで引っ込んじゃったり、相変わらず芝居ならではの奇想が、おおらかでいい。謎の登場人物、豆腐買おむらの時蔵が余裕たっぷりだ。玄蕃に彦三郎、弥藤太は萬太郎。
短い休憩を挟んで大詰・三笠山奥殿の場。十握の宝剣が龍に変じるところがちょっとチープだけど、最後はまた紅葉いっぱいの入鹿誅伐の場となって、アクロバティックな立ち回りが痛快だ。菊之助による采女(うねめ)局の八咫鏡が威力を発揮し、代役・時蔵の鎌足が焼鎌をふるってあれよあれよ。上演は稀だけど、入鹿のラスボスぶり、物語がいきなり大状況に転じる「セカイ系」のストーリーは現代的です(再び大島真寿美)。大判事は権十郎。芝翫が劇場の未来への期待を語って、大団円となりました。

偶然にも隣に座ったお年寄が、国立劇場の設計・監修に当たったかた、御年93歳!で、「閉場前に観ておきたくてね」と。花道の位置、全自動の回り舞台・スッポンに抵抗した旧世代俳優とのバトルなど、楽しく思い出を聴かせて頂きました~
プログラムには役者たちが、国立劇場への思いを綴った色紙を寄せていて、どれも個性的で面白い。東蔵の「企画の若々しさ」とか、9月に亡くなった猿翁のどでかい「感謝」とか、右近のお茶目なびゃんびゃん麺(56画)や七之助の「バイバイ」とか、丑之助(菊之助の息子)の几帳面な安徳帝の絵、対照的に眞秀(寺島しのぶの息子)の不思議な赤い草木の絵とか。

思えば、個人的には2003年の志の輔さんから始まり、文楽鑑賞でずいぶん通った劇場です。軸は住太夫さん、簑助さんから最近は玉助さんになりました。歌舞伎ではなんといっても2012年、先代團十郎の熊谷が忘れられないし、2016年開場50年の3ヵ月連続忠臣蔵通しが見応えたっぷりだった。2019年に菊五郎さんの正月公演初日を体験して、格好良い吹き抜けのロビーで、めでたい鏡開きを見物したのは、文句なしに楽しかったなあ。この年は菊之助&梅枝の関扉も良かったし、2020年コロナ初期の大変な状況で、文珍さんを聴いたのも、今となっては懐かしい… ずいぶん先になりそうだけど、新開場を楽しみに。それまで厳しいだろうけど、伝統芸能を応援するぞ~

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四月大歌舞伎「与話情浮名横櫛」「連獅子」

鳳凰祭四月大歌舞伎 夜の部 2023年4月

歌舞伎座新開場十周年と銘打った公演。毎公演一世一代の感がある、貴重な40年来のニザタマコンビ「切られ与三」に、初歌舞伎座の知人夫妻と足を運ぶ。2022年に延期となり、なんと今回は直前の3日間、御年79歳の人間国宝・片岡仁左衛門が体調不良で中止しただけに、登場シーンから盛り上がりがひとしお。お着物、外人さん、アーティストっぽいかた等々で賑わう1F中央前の方、良い席で1万8000円。休憩2回で3時間半。

眼目の「与話情浮名横櫛」は木更津海岸見染の場から。お江戸育ちのお富・坂東玉三郎の貫禄、そして与三郎・仁左衛門の軽やかな若旦那ぶりが盤石だ。2015年に観た市川海老蔵(当時)は、ちょっと無理してたもんなあ。
ニザ様、「やっとお上からお許しがでて」と客席に降りて(コロナ禍以来初らしい)、ぐるりと歩いちゃって大拍手。実子に跡取りを譲ろうと、わざと放蕩している気の良さがにじむ。そして運命の出会い! じっと無言で見つめ合ってからの練り上げられた流れ、タマ様の「いい景色だねえ」がまさに、と思える。潮干狩りの浮き立つ空気や、幇間(市村橘太郎)、鳶頭(代役で坂東亀蔵がきびきび)のいかにもな造形も楽しい。
一転暗くなって、上演は珍しいという赤間源左衛門別荘の場。やや身も蓋もない展開ながら、シルエットになった二人の年齢を感じさせない色っぽさ。この場を出してドラマとして盛り上げようという心意気が感じられる。
休憩を挟んでいよいよ源氏店の場。タマ様の粋な落ち着きぶり、対するニザ様のほうは、タカリのくせに育ちの良さがのぞく拗ねた感じがさすが。音楽的なセリフ回しが見事だ。なんでも細い足を、コンプレックスからトレードマークにしようと思った演目とか。滑稽な藤八(片岡松之助)がいいバランスだ。
左團次さん休演で多左衛門に回った河原崎権十郎も、大店の番頭にはまっていて立派。チンピラ蝙蝠安の片岡市蔵はちょっと卑屈過ぎたかな。

長めの休憩の後、本興行では初という尾上松緑、左近親子の「連獅子」。これがなかなかの見物でした。17歳左近ちゃんの必死さ、指先にこめた力。松緑の家族というと、どうしても複雑な心情を連想しちゃうんだけど、そんなことは関係ないラストの毛振りパワー! 客席も途切れなく拍手を送ってた。そういえば2018年、当時13歳のいっぱいいっぱいの染五郎にも感動したなあ。
加えて間狂言「宗論」の権十郎、板東亀蔵にメリハリと品があって大満足。杵屋勝四郎以下の長唄陣、笛や太鼓も何故かイケメン揃いでした。

大向こうがようやっと全面解禁となり、十周年記念緞帳の東山魁夷「夜明けの潮」の青緑も爽やか。地下を含め、お土産もいろいろ新調されていて、芝居見物を満喫しました~

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2022喝采づくし

いろいろあった2022年。エンタメを振り返ると、やっぱり特筆すべきはコンサートで、ドームを巨大ディスコに変えたブルーノ・マーズ、そして年末のピアノ一台の矢野顕子。全く違うジャンルだけど、どちらもライブのグルーブを存分に味わいました。

そしてようやく実現した、團十郎襲名の「助六」。いろいろ批判はあっても、この人ならではの祝祭感が嬉しかった。ほかに歌舞伎では「碇知盛」の菊之助、梅枝が頼もしく感じられ、初代国立劇場さよなら公演がスタートした文楽「奥州安達原」は玉男、勘十郎、玉助らが揃って充実してた。

オペラは新国立劇場で意欲作が多く、なかでもバロック初体験のグルック「オルフェオとエウリディーチェ」の、音楽、演出両方の端正さが忘れがたい。ともに読み替え演出のドビュッシー「ペレアスとメリザンド」、ヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」も洒落ていた。問題作「ボリス・ゴドゥノフ」は衝撃すぎたけど… クラシックの来日ではエリーナ・ガランチャの「カルメン」が格好良かった。

演劇は野田秀樹「パンドラの鐘」、トム・ストッパード「レオポルトシュタット」が、それぞれ今の国際情勢に通じるメッセージ性で突出していた。井上ひさし「紙屋町さくらホテル」やケラ「世界は笑う」の「表現すること」への情熱や、ともに2人芝居だった温かい「ハイゼンブルク」と不条理をねじ伏せる「建築家とアッシリア皇帝」、そして相変わらずひりつく会話劇の岩松了「クランク・イン!」などが心に残った。

語り芸のほうでは期せずして、喬太郎と三三で「品川心中」を聴き比べ。どちらも高水準。一之輔の脱力も引き続きいい。講談の春陽「津山の鬼吹雪」も聴きごたえがあった。

これからも、のんびりエンタメを楽しめる日々でありますよう。

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