能・狂言

薪能「二人袴」「大般若」

第十五回飛鳥山薪能  2017年10月

天候に恵まれ、中秋の名月を愛でつつ、野外の薪能に足を運んだ。4月の夜桜能に続き、季節感+伝統芸能で心が豊かになる。しかも予想外にド派手な演目で、なんだか得した気分。
JR王子駅にほど近い飛鳥山公園内野外舞台、前方中央のSS席で8500円。恒例行事とあって団体客も。寒かったけど、落語「王子の狐」を思わせる幸寿司のお稲荷さんを売っていたり、携帯カイロを配ってくれたり、地元あげての手作り感が嬉しい。休憩を挟み約2時間。

まず中村雅之・横浜能楽堂館長の解説、八木光重・王子神社神主のお祓い、花川與惣太・北区長らの火入れ式があって、狂言「二人袴」。若い聟(万作の弟子・内藤連がきびきびと)が挨拶のため、舅(人間国宝の野村万作)を訪ねるが、気恥ずかしいと言って兄(野村萬斎)に付き添ってもらう。兄は門前で待つが、太郎冠者に見つかってしまい、舅に会うことに。祝儀の長袴が1枚しかないので、聟と交互につけて誤魔化すものの、ついに2人同時に招き入れられ、なんと袴を半分ずつ着用。酒を飲むうち、ひとさし舞えと言われて…
現代的な、めちゃ頼りない聟、招かれて大らかに「迷惑だあ」と叫ぶ兄に爆笑。思い余って、袴を前後に裂いちゃうアクションも派手だ。4月にも観た86歳の万作さん、礼儀とか言いながら、自分が呑みたいだけでは、と思わせる、飄々とした雰囲気がいい。

休憩後は再び中村館長の解説後、能「大般若」。意外にも一大スペクタクルで、びっくりするやら、面白いやら。
タイトルは三蔵法師が求めたお経のこと。若い三蔵法師(ワキ、御厨誠吾)が天竺へ向かう道中の流沙河(りゅうさが)で、怪男(前シテ、松木千俊)に出会う。男は「実はお前は前世で大願かなわず、ここで7度命を落としている。自分は川に住む深沙大王だ。今度は経を与えよう」と教える。
大王ノ眷属(うそぶきの面が面白い)の間狂言を挟み、いよいよ後半。まず、しずしずと一畳台が置かれ、華やかな朱の衣装をまとった飛天2人が舞い、長い袖を翻し、三蔵法師を支えて難所を越える。続いて、なんと頭に龍の絵(龍戴)を載せた龍神2人が礼拝すると、ひときわ巨大な龍(大龍戴)を載せ、7つの髑髏を首にかけた大王(後シテ)が登場! 恐ろしい真蛇の面で威圧感が凄い。笈(おい)から経を取り出して三蔵法師に授け、共に高々と読み上げる。大詰めでは1列になった神たちが、順に回るダイナミックなシーンも。台に乗った大王の神通力で、「十戒」のように河が割れるさまを表現してるんですねえ。ついに大願がかない、意気揚々と行く三蔵法師が一度振り返ると、大王が羽団扇を掲げて見送る。
お馴染み「西遊記」に先立つ物語で、1983年に梅若玄祥さんが復曲したとのこと。大王を祀っているのが深大寺で、西遊記ではカッパの沙悟浄に転じたとか。あの首飾りはそういう意味だったのか… 知らなかったなあ。

今回の能舞台は屋根は無く、後方にリアルな松。虫の音に加え、時折都電の音も聞こえてくる大らかなシチュエーションだ。拍手のタイミングがだいぶ早いのもご愛敬。また飛鳥山は江戸時代の桜の名所、人気行楽地であり、明治になってからは王子製紙を興した渋沢栄一が住んだんですね。いろいろと勉強になりました~

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能「定家」

銀座余情 大槻文蔵人間国宝認定祝賀 能「定家」  2017年9月

GINZA SIX地下3Fに今春オープンした観世能楽堂の会に行ってみた。コンパクトで縦長のスペース、正面中ほどで1万1000円と高め。休憩を挟んで3時間弱。
まず歌人の馬場あき子が客席前で、「定家の魅力」と題して解説。物語は俊成の息子で若きホープ・定家と、俊成の弟子で後白河院の第三皇女・式子(しょくし)内親王という、歌人同士の忍ぶ恋だ。「玉の緒よ」など、詞章に散りばめられた百人一首や古今集などを説明してくれる。なんだかヒットソングで構成したミュージカルみたいだなあ。
舞台はまず仕舞。「花筐(はながたみ)」を観世銕之丞(てつのじょう)で短く。世阿弥の狂女ものだそうです。

休憩を挟んで眼目の能「定家」。金春座の棟梁で世阿弥の娘聟、金春禅竹の作とされている。2時間の大曲だけど、ロビーで対訳(500円)を仕入れて読むと、意味がよくわかって飽きません。
前半は旅の僧(ワキ、福王茂十郎)が都で時雨にあい、雨宿りしたところで、里女(前シテ、大槻文蔵)と出会う。ここは定家が建てた「時雨の亭(ちん)」だと教え、石塔に案内する。内親王の墓で、定家の執心が葛となって巻き付いていた。
初冬の冷たい時雨と涙のつながりが美しい。文蔵が葉と引廻し(幕)で覆った作り物の墓の後ろに姿を消して中入。茂山あきら(大蔵流)の間狂言の時間を使って、緋色の衣装から、やつれた「痩女」の面、薄い黄と水色の衣装に替える。
後半はまず作り物の中から声がして、後見が幕を払うと、
式子内親王の霊(後シテ)が座っている。腕を重ねて囚われの風情。僧が読誦する「薬草喩品(ゆほん)」で葛から解放され、作り物から出て、序の舞へ。緩やかで上品だ。しかしラストは再び、墓を回って葛にからまれたことを表現、俯いてはかなく消えてしまう。

大槻文蔵は大阪を本拠にしており、2016年に人間国宝。小鼓も人間国宝の大倉源次郎でした。

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「八句連歌」「雲林院」

第十一回日経能楽鑑賞会  2017年6月

老夫婦ら大人が集まった感じの、国立能楽堂・正面で9000円。休憩を挟み2時間半。
まず狂言「八句(はちく)連歌」。シテ(借り手)は和泉流の最高峰、人間国宝の野村萬が生き生きと。アド(貸し手)で次男・九世野村万蔵と、互いに「萬」「万蔵」と呼び合うのが面白い。シテはアドの連歌仲間から金を借りっぱなしなので、言い訳をしておこうと家を訪ねる。大蔵流だと、アドがシテを訪ねる設定とか。今回の方が誠実で、気持ちがいいかも。
アドは当初「また借りに来たか」と、扇で顔を隠して居留守を使うけど、シテが言付けた、庭の花にちなむ発句が面白いので、急いで姿を現す。
そこから風雅な歌の応酬となって、誉めたり意見したり。歌の文句にひっかけて、借金をめぐる駆け引きもあり、最後はアドが借状を渡してチャラにしちゃう。シテはいったん固辞するものの、アドが借状をひっこめかけると、慌てて受け取って笑わせる。
いつの世も、カネの貸し借りは世知辛いものだけど、「笠碁」ばりの同好の士の関係が微笑ましい。

休憩を挟んで能観世流「雲林院」(世阿弥作)。桜の花の下、伊勢物語の2枚目・在原業平が夢に現れて、二条の后(きさき)との禁断の逃避行を物語る。実に優美で、色っぽいなあ。前シテ老人と後シテ業平の霊は、お待ちかね人間国宝の名手、梅若玄祥。あらかじめロビーで参考揺本を買ってみたら、詞章から衣装、仕舞まで、よくわかって面白かった!
前半は伊勢物語ファンのワキ芦屋公光(平安後期の歌人がモデルらしく、芦屋には公光町という地名や祠があるそうです)が、夢のお告げで京紫野の雲林院(後の大徳寺塔頭。1707年に再建、こちらも地名になっている)を訪ねる。満開の桜を手折ろうとして、現れたシテと古歌をひきつつ、やりとりした後、「花を惜しむも乞うも情あり」と合意しちゃう。優雅です。
シテが「昔男となど」と、自ら業平だと強く示唆して去り、アイ狂言へ。これは謡本とは別なんですね。
後半はワキの夢に現れた若々しい美男姿のシテが、情熱的に恋を回想する。「緋の袴」「藤袴」の鮮やかな色彩感、裾をちょっと持ち上げたり、「降るは春雨か落つるは涙か」と扇をかざしたりする仕草に、繊細な色気が漂う。大詰めは太鼓入りの序の舞で盛り上がりました~

玄祥さんは満70歳の来春、祖父らの隠居名「梅若実」を四代として襲名するとか。でもまだまだチャレンジ精神旺盛とのことで、嬉しいです。地謡で梅若紀彰も登場。

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夜桜能「絃上」「仏師」「西行桜」

第25回奉納夜桜能 第二夜  2017年4月

まさに満開の桜と月のもと、薪能を鑑賞。風が吹くとすごく寒かったけど、風情は満点だ。靖国神社、由緒ある木造の能楽堂前にパイプ椅子を並べた席の、下手寄り前の方で1万1500円。休憩を挟み2時間弱。フジテレビと社団法人夜桜能(松元崇会長)主催。

18:40から経営者らが務める火入れ式があり、まず舞囃子「絃上(けんじょう)」。中国伝来の琵琶にまつわる伝説を描いたそうで、梅若長左衛門が直面(ひためん)で、平安文化を開花させた村上天皇の霊となり、爽やかに早舞をみせる。
続いて狂言の「仏師」。仏師を探し、都で呼ばわりながら歩く田舎の者(野村萬斎)に、お馴染みスッパ(野村万作)が、なんと自ら仏像になりすまして、お代をせしめようとする。田舎者の修正要求に、スッパがあたふた応えて大騒ぎ。正統ドタバタコメディだなあ。

休憩で参集殿に避難して風をよけ、甘酒を買って少し暖まる。 後半はシチュエーションにぴったり、世阿弥が和歌を元につくった能「西行桜」だ。西山にある西行庵では老木の桜が満開。西行法師(森常好)は煩わしいと、能力(のうりき=寺男、声がいい深田博治)に花見禁制を言いつけるものの、はるばる訪ねてきた花見の人々を受け入れ、桜のために暮らしを乱されたと詠む。すると夢に桜の精(梅若玄祥)が現れ、桜に咎はない、と諭し、花の名所をたたえて静かに「太鼓序の舞」を舞う。
昼の賑やかさから一転、夜が更けて、古木に見立てた作り物から、翁の面をつけたシテが登場する。白と金の衣装が美しく、悠々とした雰囲気。杖を持つ演出でした。

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「三番叟」「乱」「若菜」

大手町座第20回記念公演 亀井広忠義プロデュース能楽舞台「三番叟」  2016年12月

ステージに柱4本を立てただけのシンプルな舞台で、能狂言を楽しむ。観る者のイマジネーションを引き出し、おおらかな空気を醸していて気分がいい。能楽師・葛野流太鼓方の亀井広忠プロデュースによる、2日連続公演の2日目だ。年配中心ながら若い女性もけっこう目立つ日経ホール、下手寄りで9000円。休憩を挟んで約2時間。

まずおめでたい「翁」の後半で、狂言師がつとめる「三番叟」を野村萬斎で。杉信太朗の笛がぴりりと響き、広忠の太鼓や3人の小鼓にのって、揉ノ段ではきびきびと回り、烏飛び。鈴ノ段では黒式尉の面をかけて。文楽のようなコメディタッチは無し。
休憩を挟んで舞囃子「乱(みだれ)」。能「猩々(しょうじょう)」の舞だそうで、紋付姿のシテ梅若紀彰と観世喜正が、秋の一夜、酔って波と戯れる猩々を相舞で。爪先立ちの流れ足やら、首を細かく振るやら、能とは思えない動きの連続でびっくり。特に紀彰さんが本当にチャーミング! 大鼓は人間国宝の亀井忠雄、地謡が4人。
最後は狂言「若菜」で、こちらは長閑な春。果報者の大名(石田幸雄)と茶坊主・かい阿弥(人間国宝の野村万作)が野遊びに出掛け、早咲きの梅を眺めたり、鶯を餌差竿で突いたり。そこへ大原女たちが長寿祈念の若菜摘みに現れ、ともに酒宴で謡い舞う。大原女はなんと狂言師5人が派手な着物、花を挿した大原木=薪を頂いて。恥ずかしがって帰りかけたりするのが面白い。おおらかだなあ。万作さんは謡ったり跳ねたり、とても85歳とは信じられません。鍛え方が違います。後見には孫の裕基の姿も。

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桂文珍「定年の夜」「旅立ち」「寝床」狂言「舟船」

桂文珍大東京独演会vol9~大好評リクエスト寄席!ネタのオートクチュール~ 2016年4月

風の強い連休の初日に文珍さんへ。駄洒落のなかに、幅広い時事ネタへの関心と皮肉を織り交ぜ、うまく力が抜けた大人の高座だ。文楽でお馴染み国立劇場小劇場の、上手寄り前の方で5000円。中入りを挟み2時間強。

入口で61席のリストを配り、聴きたい3席をアンケートし、師匠と82年入門の一番弟子・桂楽珍が登場して、「1位は老婆の休日でした」などと紹介。寄せ文字でリストを書いた垂れ幕を吊るして、客席からもリクエストを聞く。壺算と言われて粗筋を解説し、「あ、だいたいしゃべっちゃった」などと笑わせ、結局、別の6席「本日のおすすめ」を示して演目を決定。
なーんだ、と苦笑したところで、いったん引っ込み、楽珍の「島んちゅの唄」。故郷・徳之島の方言や投票率などをふってから、帰省して妻に島唄を聴かせるが、「煙草(みち節)」など大人っぽい歌詞ばかり、という話。

続いて師匠が、まず出来立てほやほやという「定年の夜」で、情報に振り回される世相を活写する。定年祝いの席なのに、妻や娘はスマホをいじってばかり。ふてて居酒屋へ行き、やはりスマホを観ていたら画面に吸い込まれ、謎の「情報の海」へ。ビッグデータやIT企業の盛衰から、どうでもいい情報について、都知事公用車問題をとりあげるワイドショーを皮肉ったり、羂索と検索をひっかけて、例えの「蜘蛛の糸」でピース又吉の芥川賞にちょっと疑問を呈したり。GPSで奥さんに居場所を突き止められるというオチ。知的だなあ。
続いてネット通販で僧侶を呼べる状況を語ってから、多死社会を描く「旅立ち」。セレモニーホールを舞台に、葬儀を一般商品のように営業する可笑しさから、採用面接へ。元文学部教授が低い声で古典の1節を暗唱して、妙に説得力があるのが笑えます。

中入り後、意外に狂言となり、大蔵流若手の茂山宗彦、逸平兄弟の「舟船」。主人と太郎冠者が、西宮に出掛ける途中、神崎の渡しで「ふな」か「ふね」かで言い争う、と、これだけの話。ゆったりとしたテンポと声の良さが素敵。
トリは再び師匠で、パワハラの話と前置きして、喬太郎で聴いたことがある古典「寝床」。さらさらと軽妙でした。

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能「碇引」

奉納梅若第三十八回 成田山蝋燭能  2015年5月

新緑の成田山新勝寺で、毎年5月第3土曜に開催するという能楽に足を運んでみた。1944年、54世梅若六郎が「碇引」を奉納されて以来続いているそうです。今年と来年は改築の都合で屋外の薪能ではなく、光明堂で蝋燭を使う形式。4階の広い講堂のようなスペースにパイプ椅子を並べた見所の、中央あたりで4000円。休憩をはさみ2時間半。

1部はまず仕舞2番。演目のクライマックスを謡いだけ、袴姿で演じるものだ。「竹生島(ちくぶしま)」は梅若英寿、「羽衣」は梅若美和音と、孫世代がりりしく。
続いて梅若会の連吟「融(とおる)」。男女20人ほどが並んで、クライマックス部分を謡う。
2部で法楽・火入れ式となり、僧侶と裃姿の小泉成田市長が厳かに、舞台四隅の蝋燭に点火。ただし照明も使うので、陰影がゆらめくような効果はない。
続いて狂言「磁石」。田舎者が大津の市場で、すっぱ(詐欺師)を出し抜き金をもって逃げる。すっぱが追いかけて脅すと、田舎者はなぜか自分は磁石の精だと言い出し、太刀を奪って反撃する。シテは人間国宝・山本東次郎、アドは山本泰太郎、山本凛太郎。シュールな話のようだけど、演者が見えにくかったし、筋もよくわからなくて残念。

休憩を挟んで、いよいよ成田縁起能「碇引(いかりびき)」。明治期、成田山は参詣客相手のビジネスなどで栄え、旦那衆の間で能楽の稽古が盛んだった。大野屋を定宿にしていた、国文学者で「鉄道唱歌」などを作詞した大和田建樹が、成田鉄道全線開通を記念してこの謡を作り、昭和になって梅若六郎が能にしたそうです。ただし今回は40年ぶりの上演とあって、梅若玄祥が型づけをした、ほぼ新作とのこと。
ある者(ワキ、宝生欣哉)が初めて成田山参詣に向かう道すがら、草を刈る2人連れ(ツレ、次代を担う梅若長左衛門、梅若紀彰)に出会って付き合ってもらう。花束を背負っているのが可愛いな。寺に着くと、額堂に大碇が納められており、九十九里の海底で漁を邪魔していたものを、不動明王の力で引き上げたという。
間(アイ)で山本凛太郎が、平安時代、寛朝大僧正が不動明王に祈願して平将門の乱を納めたと、開山の由来を語る。そして先ほどの2人連れが、今度は白い面をつけ、ご本尊に仕える矜羯羅(こんがら)童子、制吒迦(せいたか)童子という本来の姿で現れる。続いて、ひときわ音楽が高なり、ついに不動明王(シテ、人間国宝の梅若玄祥)が登場。碇を引き上げるさまを綱で表現する。面は成田山に現存するものだそうで、けっこう怖く、赤い衣装が鮮やかで、オーラがみなぎる。
後ろに控える笛は杉信太朗、小鼓・幸正昭、大鼓・亀井広忠、太鼓・観世元伯。さすがの大迫力でした!

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能「男舞」「八島」

能とシェリーを楽しむ会「男舞」「八島」   2014年3月

日本・スペイン交流400周年記念と銘打ったシェリーの伝道師、中瀬航也さんの会に足を運んだ。初めてのセルリアンタワー能楽堂は、客席が小さめで音ががんがん迫ってくる。正面席で5500円。

テンポの速い素囃子「男舞」で幕開け。大鼓・亀井洋佑、小鼓・森澤勇司、笛・栗林祐輔。そのあと中瀬さんのお話「武家のもてなし。能とシェリー」で、本日のテーマの由来を聞く。まず東インド会社の貿易船指揮官、ジョン・セーリスの「日本渡航記」を紹介。1613年に能を観る記述があり、その宴に持ち込んだ「スペイン産葡萄酒2瓶」がシェリーらしい。当時、長い船旅や気温の変化に耐える酒はシェリーだった、セーリスに国書を託したイングランド王ジェームズ1世もシェリー好きだった、王家が贈るので名門イートン校の学長は今でもシェリーに詳しい、といった薀蓄が面白い。
続いて喜多流能楽師・大島輝久さんのレクチャー。足利義満の庇護のもとで発展した能は、秀吉ものめりこんだように武士と縁が深く、家康が武士社会の式楽(公式行事の芸能)と定めた。喜多流の初代は七つの時に秀吉に褒められたことから七大夫と名乗り、大阪夏の陣に出陣。その後、2代将軍・秀忠に認められて派を興した。歴史的には新しい流派だが、動きがダイナミックで、最も武家に好まれる芸風。本日のシテの友枝家は細川家のお抱えだったそうです。
ラストはいよいよ舞囃子「八島」。本当は1時間40分ほどかかるけど、この日はクライマックスの20分だけ観る。シテ方喜多流能楽師・友枝雄人、地謡は大島さんのほか佐々木多門、友枝真也。朧月の春の夜に、旅僧が義経の亡霊に遭遇する「夢幻能」で、激しい戦いを再現する勇猛な「勝修羅もの」だ。笛が鋭く、足踏みの音が重く響く。剣を抜き、最後は橋掛かりの中ほどで一回りして終わりました。

閉幕後はイタリアンに場所を移して、シェリーパーティー。面白かったです。

伝統芸能の今2012「六道の辻」「龍神」

伝統芸能の今2012  2012年9月

歌舞伎囃子方で三響会(田中家三兄弟の会)の田中傳次郎が演出、能狂言と歌舞伎が融合するイベントに足を運んでみた。浅草公会堂の2階最前列右寄りの席で6500円。市川猿之助、片岡愛之助とスターが揃い、ファンらしき中年女性が目立つ。小児がん患者と家族の支援、途上国へのワクチン普及を対象にしたチャリティー公演で、開幕前にロビーで出演者が寄付を呼びかけていた。

演目はまず茂山逸平作の新作狂言劇「源平騒乱・六道の辻」。閻魔大王(猿之助)が亡者を地獄へ連れこもうと狙うところへ、平忠度(茂山逸平)がやってきて、俗物ぶりを発揮、金銀を差しだしてなんとか極楽へ逃れようと画策する。颯爽とした源義平(愛之助)も、清盛を討つため極楽行きを目指していて大騒ぎ。結局、金銀は募金箱へ、というオチで、傳次郎のチンという鐘の音が笑いを誘う。
逸平の格段に声が通るところはさすがだ。後方に控える能楽一噌(いっそ)流笛方の一噌幸弘が驚異的で、リコーダーや角笛などを次々に持ち替えるばかりか、3本ぐらい同時に吹いちゃう。人間国宝なのに、型破りな人だなあ。

10分の休憩後、出演者が並んで30分を超える座談会。まずチャリティーの趣旨説明、3・11後に渋谷駅前で突発的に募金活動をした思い出など。逸平が飄々として、いい感じだ。一噌幸弘が加わってしょうもない駄洒落で笑わせた後、サプライズゲストとして三味線の上妻宏光が登場。猿之助ゆかりの大河ドラマの旋律を混ぜた「津軽じょんがら節」、そしてオリジナルを1曲聴かせてくれました。

20分の休憩を挟んで猿之助振付の創作「龍神」が15分ほど。逸平の語りに続いて演奏があり、一噌幸弘がまた息が長くてびっくり。幻想的な照明のなか猿之助が白い衣装、緑の髪、頭に龍を載せた姿で現れ、鮮やかな跳躍を披露。楽しい会でした。
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狂言「重喜」能「兼平」

7月普及公演 狂言「重喜」能「兼平」 2012年7月

先月に続いて国立能楽堂へ。この日は夏の日差しがまぶしい。正面後ろ寄りの席で4800円。まず佐伯真一・青山学院大教授が30分ほど話す。飄々とした語り口で義仲と兼平、巴はきょうだいのような関係、などと解説。

まず狂言で和泉流「重喜(じゅうき)」。「弟子七尺を去って師の影を踏まず」と諭された新発意(しんぼち)が、住職の頭を剃るのに竹竿の先に剃刀を結びつけたものだから、さあ大変。地謡も入って楽しい演目だ。シテ・住持(じゅうじ)は人間国宝・野村萬。子方・重喜で登場した野村眞之介が可愛い。萬さんの孫で9歳ぐらい、滑り出しは声が不安定だったけど、だんだん調子が出た。

休憩のあと能・金剛流「兼平」。平家物語をもとにした作者不詳の作品だそうです。旅の僧が琵琶湖で老船頭の柴舟に乗せてもらい、粟津原に着く。アイ狂言で渡守から、この地での義仲、兼平の最期の様子を聞き、さきほどの船頭は兼平の亡霊だったと気づく。後半は「平太(へいだ)」の面をつけ、甲冑を表す衣装の兼平の霊が登場。捨て身の合戦、壮絶な自害のさまを語る。ラストは動きが激しいですね。シテは種田道一、ワキ・旅僧は森常好。