落語

落語「英会話」「夢の酒」「高砂や」「松曳き」

よってたかって秋らくご'24 21世紀スペシャル寄席ONEDAY  2024年9月

秋と言っても残暑厳しいなか、ホール落語で気分転換。手練れ揃いのなか、この日は特に、声のいい白酒さんにパワーがあった。よく入った久々の銀座ブロッサム、やや後ろの上手寄りで4300円。仲入を挟み2時間。

開口一番は三遊亭ぐんまで、ぐんまちゃんステテコとかから「荒茶」。家康方の本多正信が、豊臣方の顔と髭で1㍍の加藤清正、福島正則、池田輝政、浅野幸長、黒田長政、加藤嘉明、細川忠興を茶に招くが、細川以外は心得がなくて… 三遊亭白鳥門下の二つ目で、ゆったりペース。
続いて2年半ぶりの三遊亭萬橘。がちゃがちゃした口調だけど、以前の印象ほど癖は強くないかも。浴衣を着ていて日本人みたいと言われる、自分は人気がなくて観客8人、一之輔と一緒だと800人、神頼みしようと娘と伊勢参りに出かけたら、線状降水帯発生で散々…と、動きたっぷりの愚痴も明るく「英会話」へ。知ったかぶりの父親が子供の英語テストをみてやるが、駄洒落みたいでめちゃくちゃ。相変らずの下から目線ながら、割と古典的なアプローチで軽みがあった。
そして見台を出して、早々に柳家喬太郎。ぐんまは師匠と違って誰が喋ってるかわかる、萬橘はにっぽり館もやって偉くて、なぜ人気が無いのかな、あ、下品だからか、今日は昼も三三、萬橘と一緒、楽屋弁当も一緒だった、歌武蔵兄貴は27歳年下の奥さんもらって元気で、あ、自分も下品だった、などと笑わせて、古典「夢の酒」。若旦那が夢で会う向島の色っぽいご新造の仕草が、さすがの巧さ! 焼き餅を焼く女房・お花の極端な未熟が際だって、可愛げがある。悠々とした感じ、いいなあ。

仲入後は飄々と柳家三三。少しふっくらしたかな? 後半は上品に、とマクラは短めに「高砂や」。2020年にも三三さんで聴いたネタで、安定感。
トリは6月にも聴いた桃月庵白酒。立川流法人化、残る円楽一門はどうするか…と毒をまじえつつのマクラで、下手袖から当の一門の萬橘が顔を出しちゃって爆笑。ネタはお初の「松曳き」。殿様が築山の赤松を移したいと言い出し、家老の三太夫が植木屋を呼ぶ。三太夫へ国元から「姉上死去」の書状が届き、殿様の姉と勘違いし…と筋はシンプルなんだけど、殿様、三太夫がよりによって、ともに大の粗忽者。全編、言い間違い、早とちりの応酬に笑いっぱなしだ。餅は餅屋と植木屋を呼ぶのに「餅屋、餅屋!」とか。ん?いやいや、という呼吸が絶妙でノリがよい。植木屋のなんでも「お~奉る」の早口もさらっと超絶技巧だし、古典を新鮮に聴かせる。高水準でした~

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談春「景清」「妲己のお百」

芸歴40周年記念興行 立川談春独演会これから  2024年7月

毎月、東京2回、大阪1回で24回、決して十八番ではなくその先を目指して、と銘打った独演会シリーズ。珍しい演目をたっぷりと。相変らず幅広い落語好きで、ほぼ満員の有楽町ホールの、やや後方、下手寄りで5000円。仲入を挟んで2時間強。

屏風に座布団の高座に、いきなり師匠が登場。今日は予定の2席が笑いがないので、と言って「お楽しみ」は落語ではなくトーク。投稿しちゃダメ、そこは信頼があるから、と念押ししつつ、出演作の経緯や思惑違いや、役者への尊敬、志ん朝の思い出など。自意識だらけで斜に構えていて、でも細やかで愛嬌が漂う。ますます談志さん色が強まっているような。
いったん引っ込んでから「景清」。眼を患っている木彫り職人・定次郎、腕を見込んでいる旦那が聞けば、赤坂の日朝さま(円通寺)に願を掛けたが、満願の日に隣りでお参りしている女性の髪と白粉のにおいにふらふらとなり、仏罰てきめん、なんで俺を試すんだ、お前の世話になるか、と啖呵を切った、もう按摩になるという。旦那に諦めるなとなだめられて、きっと日朝が廻状まわしていると渋りつつ、今度は上野の観音さま(清水観音堂)に通うが、満願の日も目は開かず、やいカンコウ、と悪態をつく。俺はいいよ、年取ったおふくろが苦労して縞の着物を用意してくれて…というところで、ほろり。すると帰り道で雷にうたれ、目が開く。怖がって先に帰ってしまった旦那を脅かしに行き、お礼参りに徹夜で掘った観音を見せる。いい腕だ、さすが、あたしが目をつけただけのことはある、いや旦那、目をつけたのは観音さまだ。
元は上方落語で、歌舞伎荒事でお馴染み、頼朝襲撃と平家再興に失敗した武将・景清が、源氏の世を見るまいと京・清水寺に両眼を納めた、というエピソードに基づく。けんかっ早い定の造形、絶望や母への思いが、なんとも魅力的だ。

中入り後は夏らしく、講談ものの怪談「妲己のお百」。深川の売れっ子芸者・小さんが門付けする母娘を家にあげると、母はかつて端唄で名を馳せた峰吉だった。峰吉に出養生を世話して、娘およしを預かる。ところが小さん、実はお百という名で悪事を重ねてきた希代の毒婦で、およしを売り飛ばしてしまう。戻った峰吉が日々会いたがるのに閉口して、昔馴染みの小悪党・重兵衛に殺しを依頼。重兵衛は綾瀬に行く途中の土手で峰吉を手にかけ、深川へととって返すものの、駕籠は何故か蔵前に向かったり、千住に行ったり。はて恐ろしき執念じゃなあ。
妲己とは紀元前11世紀・殷王の寵姫で、鳥羽上皇を惑わせた玉藻前はその生まれ変わりとか。お百は18世紀半ばの秋田騒動をモデルにした講談に登場、黙阿弥が歌舞伎にもしている。美人で頭が良くて贅沢で、次々ターゲットを変えながら悪事を繰り返す。さすが迫真の語り、特に殺しをなんとも思わない小さんの造形がくっきり。殺しのシーンなどで照明を落とす演出もあって、ホントに怖かったです!
幕を開け直して、手締めとなりました。

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好二郎「真田小僧」「もう半分」

第五回サモワール落語会 2024年7月

 お馴染みになりつつあるロシア料理店で、今回は落語の会。大好きな三遊亭兼好さんの弟子で、二つ目の33歳。はきはきと聴きやすい好青年だ。

まず「真田小僧」。さん喬さんや談春さんで聴いたことがある前座噺。お小遣いをせしめる子供が、生意気で可愛い。
2席目は夏らしく「もう半分」。数年前に古今亭志ん輔で聴いた怪談だ。うって変わって謎の老人が実にいじましく、忘れ物のお金をせしめてしまった夫婦の子供に乗り移っちゃうところも凄まじくて、めちゃ怖かった~

終演後に各テーブルを回ってくれて懇親。神田伯山の襲名披露で各地に同行し、笛を担当したとか。噺家さんらしくて、期待ですね。
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落語「がまの油」「親子酒」「厩火事」「おせつ徳三郎」

第38回COREDO落語会  2024年6月

久しぶりに山本益博主宰の落語会で、豪華メンバーを楽しむ。満席の日本橋三井ホール、ちょっと見づらい中ほどの上手寄りで5500円。仲入を挟んで2時間強。

いつも通り、まず山本さんが下手に登場して挨拶。のっけから16人抜きの真打昇進から間もない三遊亭わん𠀋が登場。圓丈門下の41歳だ。「がまの油」を、通販番組の要素をまじえて、もはや新作。ハキハキと聴きやすく、楽しみな噺家のひとりだな。
続いて桃月庵白酒。「トリがまだ来ていない」と笑わせ、長めの冴えたマクラから「親子酒」。父、息子が互いに禁酒の約束を破っちゃう。したたかに酔った二人の可愛げが、さすがです。
さらに三遊亭兼好が「トリがまだ来ていない」と畳みかけ、「あんなに長く悪口は話せない」ととぼけつつ、やっぱり長めのマクラから「厩火事」。髪結いをしている女房の、文句を言いつつ遊び人の旦那が好きな感じ、巧いなあ。

仲入を挟んで無事、柳家喬太郎が登場。「おせつ徳三郎 」。以前、正蔵さんで聴いた前半「花見小僧」、後半「刀屋」を通しで。大店の旦那と番頭が丁稚から、娘おせつと手代・徳三郎の馴れ初めとなった花見の様子を聴き出す前半は、滑稽に。後半、暇を出された徳三郎がおせつの祝言に殴り込もうとして、刀屋の主人がこんこんと説教する。結局、逃げ出した二人が大川に身を投げるが「お材木(お題目)」で助かる、というところを、桜のように散っていくサゲに。哀しくも鮮やかでした。

落語「新聞記事」「えーっとここは」「ガマの油」「壺算」「粗忽の釘」

よってたかって新春らくご’24 21世紀スペシャル寄席ONE DAY夜の部  2024年1月

雪は避けられ、先輩ご夫婦をお誘いして、年始恒例の落語会。落語好きが集まった感じの有楽町よみうりホール、2F最前列で4300円。遠かったけど見通しはよく、充実のメンバーで楽しめた。中入りを挟んで約2時間半。

前座は瀧川はち水鯉(はちみり)で「新聞記事」。天ぷら屋の竹さんが襲われた記事をトンチンカンに吹聴して、「犯人はあげられた」。鯉朝さん門下(カツベンの頼光さんも!)で、丸顔ではきはき。
続いて柳家喬太郎は、銀座に有名チェーン店があるのは違和感あるな~と振ってから、案の定の新作で「えーっとここは」。上司と部下が商談帰りにカフェに入り、「前はここ、何だったけ」に始まり、オムライスはトロッか論争などの世代間ギャップで存分に笑わせてから、謎の店主がどんどんサービスしてくれて、店の裏に出たらなんと…と妄想炸裂。昨年のネタおろしからオチが変わっているそうで、相変らず自由でいいな。
続いて春風亭一之輔。正月は寄席があって忙しすぎ、前に出る林家ペーの歌が凄くて、と愚痴っぽいマクラから「ガマの油」。お約束の言い立てで拍手をもらって御礼、この口上を覚えなら他の噺5作は覚えられる、しかも口上の間は笑いが無くてハイリスクローリターン、と笑いをとり、暴走気味に酔っ払って失敗しちゃって… 上手です。

中入りを挟んで三遊亭兼好が朗らかに。お正月に高級ホテルの落語会で出演したら、宿泊客の家族連れが贅沢で、この「よってたかって」ではたいてい中継ぎ、前半ふたりが好き勝手やった後、トリにつなげる役目だなあ、と苦笑しつつ「壺算」。欺される側の、気どって電卓たたきながらアレ?て感じが可愛くて好き。
トリは柳家三三で軽妙な「粗忽の釘」 。飄々と笑わせながら、前3人のネタを自在に拾い、まさかの壺算落ち。いまや貫禄さえ漂います。見事!
皆さん高水準で、超売れっ子で、たいしたものです。

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志の輔「送別会」「モモリン」「しじみ売り」

志の輔らくご in PARCO2024 2024年1月

正月恒例・立川志の輔1ヵ月公演。今年は古稀の節目、しかも北陸・富山出身とあって、例年と比べても思いがこもる。PARCO劇場の後ろの方で7500円。休憩を挟み3時間。

開演前、公演滑り出しなのに「千秋楽です」のアナウンスがあり、登場した師匠が「お客さんにとってはそうだと思って」と解説。まずは能登の被災地へ皆の拍手でエールを送る。
年齢を意識してか、新作「送別会」から。ネタおろしなのかな。定年の日に同期ふたりが、初任給で呑んだ思い出の蕎麦屋へ。シュールな造形ではなく、誰しもうなずく昭和あるある、いかにも神田あたりの蕎麦屋あるあるが軽妙だ。すとんとサゲて、映像は「これ、まだ持っていますか?」。
続いて2014年のパルコ初演でも聴いた「モモリン」。大事な全国中継の日に、人気ゆるキャラ衣装が脱げなくなっちゃった市長。威張った人格とほんわか外見のギャップ、追い詰められ感が生む笑いは、何度聴いても鉄板だ。「ギリギリ当選の」と畳みかけるギャグが冴える。終わって、毎年独演会をしている縁だというくまモンが登場、先ほどの映像で「まだ持っていますよ」という観客に、ハイタッチのサービス。仕草が絶妙に可愛い。

中入り後は舞台を暗くして、古典「しじみ売り」をじっくりと。初めてかと思ったら2010年、正蔵さんで短いバージョンを聴いたことがあった。義賊・鼠小僧次郎吉が手下と呑んでいると、少年が蜆を売りに来る。不憫に思って全部買って川へ放させ、さらにカネを与えようとするが、少年は受け取らない。訳を聞くと、売れっ子芸者だった姉が駆け落ちした旅先で、見知らぬ親分に難儀を救われたはいいが、そのとき貰ったのが御金蔵破りの小判だと見破られて…
凍てつく朝、辛いあかぎれの手、しっかり者の少年の健気さ、粋な親分と人情のぬくもり。師匠は志ん生版と違って、手下の身代わりでなく親分自ら重い決断をさせる。世の非情に憤る一方で、自分の罪にも向き合う。きれいな涙だけで終わらせない深い演出に、ぐっと引き込まれた。江戸情緒の下座が入るものの、ひな祭りとか合唱団とかの派手な演出はなし。語りのパワーで、どこか原点回帰を思わせる高座でした。美術は堀尾幸男。
いつもの三本で締め。千社札シールのお土産付きでした~
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落語「小言幸兵衛」「加賀の千代」「品川心中」

こはる改メ立川小春志真打昇進披露興行 2023年10月 

立川談春の弟子で、5月に立川流40年目にして初の女性真打となった小春志(こしゅんじ)。市馬やらさだまさしやら連日大物ゲストに招き、かつ師匠も聴いていないような大ネタに挑むという、チャレンジングな十公演の折り返しだ。この日のゲスト、春風亭一之輔が「陰のプロデューサー」だとお披露目で紹介。応援されているなあ、頑張ってほしいなあ、と思うことしきり。開演まで席でひとり単行本を広げるような、落語好きが集まった感じの有楽町朝日ホール、中段上手端で5000円。中入りを挟んで2時間強。

まず談春が、初日の口上でいきなり本人が「お招きいただき」と言い間違ってあきれた、今日の午前中に志の輔が終わったので後は適当に、などと憎まれ口をたたきつつ「小言幸兵衛」。3年ほど前に喬太郎のオンラインで聴いた笑える噺だけど、この日に談春で聴くと、いつまでも弟子にダメ出しせずにいられない自分を告白するようで、ちょっと切ない。
続いて一之輔が、洗濯を手伝って奥さんにダメ出しされる自虐ネタを振りつつ、「加賀の千代」。これも3年ほど前、一之輔のオンラインで聴いた噺だ。八五郎が可愛くて仕方ない隠居の造形が、なんともチャーミング。ダメな奴ほど可愛いんじゃないのと、ひねくれた談春をからかうような感じが、懐が深くて心地よい。客席が暗いのが談春らしい、志の輔だと真っ暗、というと、少し明るくなって、袖から談春が「これくらいでいい?」。じゃれてますな。

中入りを挟み、3人並んでご披露となり、小春志が寄せの一之輔を出待ちして、披露興行について相談したエピソード等々。談春が相変らず小言を言いつのって面倒臭く、一之輔が困るさまがリアルに可笑しい。最後に一之輔が小春志の肩をポンとたたいて、「一緒に頑張りましょ」。
というわけで締めくくりは、当の本人が「品川心中」。喬太郎や三三で聴いたことがある郭噺だ。元気ではきはきの、こはるイメージからすると難しい! 女郎と客が命がけで駆け引きする色気と凄み、どっちもどっちの愚かしさ、波音が聞こえてきそうな江戸情緒等々、正直、すべてはこれからかな、と感じたけれど、思えば一年も充電してたり、ガッツは十分だ。おめでとー。

ロビーにはのぼり旗や花が並び、前の方の席にはタカラジェンヌのようなグループもいて、華やかでした。

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落語「手紙無筆」「夏の医者」「野ざらし」「夫婦に乾杯」「五目講釈」

特撰落語会 柳家喬太郎・柳家三三 二人会 2023年7月

安定感抜群、人気の二人会。夏恒例の杉並公会堂、中央前の方の良い席で3800円とお得。珍しく11:30にスタート、三部制のせいかトントンと進み、中入りを挟んで2時間。

前座は金原亭駒平が爽やかに「手紙無筆」。きっちりしている。元小劇場の俳優で、2018年に金原亭世之介に入門。世之介の師匠は金原亭馬生で、志ん生の息子さんなんですねえ。
続いて三三さん登場。鬢が白くなって貫禄がついた感じ。いつもどおり前の話をいじりながら、ゆったりと「夏の医者」。農夫が倒れ、息子が急いで山向こうの医者を迎えに行く。「チシャ(レタス)」あたりだろうと山を越える途中、うわばみに飲まれ、下剤をまいて脱出。薬箱を忘れて取りに戻るが… ちょっとお下劣な空想談はお手の物だ。
続いて1年前同様、正座が難しいと見台を置いて喬太郎。膝の負担を軽くするためか、痩せた感じでパワーはいまいちな気がしたけど、鈴本とかいろんな企画の落語会とか、変わらずスケジュールぎっしりの様子。今日も高円寺で出演してきた、朝から落語なんてやるもんじゃない、と笑わせつつ、サイサイ節も軽快に「野ざらし」。師匠さん喬さん、兼好さんで聴いたことがある噺。巧い。

仲入後、再び喬太郎。さっきマクラで、落ち「新町の幇間、ああ馬の骨か」の「太鼓は馬の皮で」を仕込み忘れた、皆さん、貴重な経験ですよ、と告白。爆笑を誘ってから「夫婦に乾杯」。2013年以来の噺だ。古臭い設定だけど、仲の良い夫婦が可愛らしく、会話が擬音になっちゃうのはやっぱり面白い。
最後は三三で、「五目講釈」。こっちは2012年以来ですね。お馴染み居候の若旦那の脳天気な造形と、いろんな有名演目がごちゃごちゃになり、擬音までまざっちゃうリズミカルな言い立てが、余裕たっぷりで爽快。充実。

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談春「粗忽長屋」「棒鱈」「お若伊之助」

談春浅草の会 2023年5月

意外にも1年ぶりの談春さん。気温上昇のなか大賑わいの浅草寺を抜けて、浅草公会堂。前から2列目の超良い席で4000円。休憩を挟み2時間ほど。

今回は「真打昇進予行演習」と銘打ち、冒頭にご挨拶があってびっくり。幕が開くと、神妙に立川こはると並んで座っていて、大拍手が巻き起こる。談春がちょっとジェラシーを見せたり、「小春志(こしゅんじ)っていいにくい」と悪態をついたりが、いかにもで楽しい。いやー、本当にめでたい。
で、こはるがまず、師匠がさらっと「柳家」の矜持を、と注文した「粗忽長屋」。シュールな噺にも、相変わらず勢いと愛嬌があって楽しみだなあ。続いて談春さんが、だいぶ前に2回ほど聴いている「棒鱈」。野暮天=田舎侍と喧嘩っ早い江戸っ子との対比が、さすがに見事。

仲入後は談春で、初めて聴く「お若伊之助」をたっぷりと。円朝晩年の、笑いあり優しさありの因果談だ。日本橋・生薬屋の娘お若は評判の美人で、一世を風靡している一中節を稽古したがり、浅草の鳶頭の紹介で、もとは武士である師匠・伊之助に来てもらう。これがいい男で深い仲になってしまい、母親は別れさせて、お若を根岸にある叔父さんの道場に隔離する。そこへ性懲りなく伊之助が通ってくるときき、怒り心頭の鳶頭が両国にある伊之助の住まいへ駆け込んでドタバタに。結局、頭と道場主の先生が見張っていて、短筒で撃つと、それは伊之助ではなく狸だった。お若が産み落とした双子の狸とともに、根岸・西蔵院の御行(おぎょう)の松の根元に葬ったとさ。
最近よく聴いている一中節が出てきて、師匠がイケメンという設定に往事の流行ぶりを再認識。上品な浄瑠璃で、ここから豊後節、さらに常磐津、清元、新内などが派生するんですもんねえ。この噺にはもっと続きがあるそうです…

ロビーではこはるちゃん自ら、秋の襲名公演のチケットを売ってました。がんばれー

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志の輔「まさか」「狂言長屋」「百年目」

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ 志の輔らくご in PARCO 2023  2023年1月

立川志の輔が正月吉例で、毎回趣向を凝らす独演会。今年は狂言とのコラボで、この人独特の実直さとあいまって、また楽しい。聴衆も期待感いっぱいのPARCO劇場、前のほう下手寄りで7500円。休憩を挟んでたっぷり3時間。

出だしのマクラで、談志さんを思わせる軽妙な小噺。電話がかかってきて子どもが出て、「お父さんいる?」「いらない」。「かぐや姫の結末ってどうだったかな」「解散したんじゃない?」。笑うポイントは人それぞれ、という振りから「まさか」。そろばん塾の先生の息子が結婚するときき、お祝いに訪れた男が「まさか」を連発して珍事に。
同じ「まさか」でも意味はいい悪い、いろいろ。ニヤリとしたところで、いったん引っ込み、映像が流れる。なんとパルコの近くに「間坂(まさか)」という坂があって、その名の小さい石碑が立っているのです。こういうマメ知識がまた志の輔らしい。

続く「狂言長屋」は、長屋の面々が自殺しかけた狂言師を助ける。きけばお抱えの座を得るため、殿様に「無常」のテーマで新作をみせるのだけど、苦心した作をまず家老に披露したら、こともあろうにライバルに売ってしまい、絶望したとのこと。皆が無常についてワイワイくだらない話をするうち、セットががらりと変わって松羽目に。なんと大蔵流のホープ、茂山逸平と囃子方が登場し、志の輔もしずしずと加わって狂言を上演! 長屋の面々のおかげで見事にしおうせました、とさ。
本物登場というスペシャルな祝祭感、サービス精神がさすが。2009年パルコ初演作。改めてきっちりお稽古したんだろうな~ 映画化もされた「歓喜の歌」を2008年に聴いたときの、合唱団とのコラボが嬉しかったのを思い出します。

仲入をはさんで大ネタ「百年目」。志の輔では2013年以来。旦那の説教の、現代ビジネスマンに通じる説得力が際立つのは変わらない。三本締めで幕となりました。

ロビーにはめでたい菰樽など。グッズ販売はかつてより控えめだけど、素敵なデザインの手ぬぐいとメガネケースを購入しました~

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