俺のミヤトガワ
俺のミヤトガワ 2025年4月
毎回お題を掲げて古典、新作を織り交ぜるらくご@座主催「俺の」シリーズに初参加。今回のテーマは「宮戸川」だ。聴いたことがないと思ったら、特に後半は後味が悪過ぎるため滅多にかからない演目だそうです。柳家三三が三遊亭白鳥との「両極端の会」で披露した新作が企画のきっかけ。個人的には三遊亭兼好がよかったかな。紀伊國屋ホール、後ろの方で4000円。仲入を挟み二時間強。
開口一番は兼好門下・三遊亭けろよんがはきはきと「桃太郎」。本編、まずは柳亭小痴楽が「宮戸川・上」。「芸協がコンプラ委員会を作った。会長はいいかもしれないけど」と憤慨しつつ、「お花半七」として口演される馴れ初めを。帰りが遅れて家を閉め出された小網町の半七が、霊岸島の叔父宅へ向かうと、同じ目に遭った幼なじみのお花が強引についてきちゃう。半七が恐れた通り、「みなまで言うな、任せとけ」が口癖の叔父は二人が恋仲だと早合点し…。昭和のガキ大将が大人になったような小痴楽、下世話だけど愛嬌があって可笑しい。お花も叔母さんも強烈でした。
続いて兼好が「小痴楽は足立区の高校生になっちゃう」などと笑わせてから、「宮戸川(下・改作)」。本来、二人が夫婦になったのち、お花が行方不明になり、一年後、半七が乗り合わせた船頭が、かつて女をさらって宮戸川に捨てたと告白するというもの。まさかの夢オチなんだけど、救いようのない凄惨さで、兼好は今回、全く別のほんわかした新作に。半七の父親がお花との結婚をなかなか許さない、実は昔、お嬢さん育ちのお花の母親に振り回されたから…。楽屋では「できてない」と言っていたらしいけど、さすがに軽妙で拍手。
仲入後は柳家三三で「バック・トゥ・ザ・半ちゃん」。大好きな「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のストーリーを解説してから噺に入ると、なんと人間国宝(!)になった暴れん坊・白鳥に三三が稽古してもらっているという設定。叔父さんが堅物で半七についてきたお花を追い返しちゃうので、三三が筋が違うと突っ込むと、白鳥は「お前はただの行儀のいい中堅真打だな」。爆笑。その後、半七が父親兄弟とお花の母親の青春時代に紛れ込み、映画そっくりの展開に。前の演者のネタをいじったりして笑わせつつ、映画を踏まえた「落雷」オチまで見事な展開だ。複雑で、ちょっと凝りすぎな気もするけど。
3人のエンディングトークも。小痴楽が「三三は前の2人の噺に合わせて、稽古していた登場人物の名前や商売を細かく変えていた」と感心しきり。リアルならではの噺家の創造性と切磋琢磨。ハイレベルでした!