落語

落語「磯の鮑」「野ざらし」「猫忠」「一人酒盛」

第七十三回大手町落語~ザ・柳家!2022夏~ 2022年6月

柳家&実力者が豪華リレーの落語会。手練れ四人四様の古典をたっぷりと。年配客中心にいっぱいの日経ホール、前のほうで4400円。仲入を挟みたっぷり3時間。

前座は入船亭扇辰の弟子の辰ぢろで、長屋の嫁がやたら大仰な言葉遣いをする「たらちめ」。続いて二ツ目の柳家小もんで「弥次郎」。柳家小里んの弟子、小さんの孫弟子ですね。弥次郎がご隠居にホラばかりの武勇伝を語るんだけど、まだまだかな。
ここで柳家三三登場。本日のメーンのなかでは若手だもんなあ。寝ててもいいんですよ、でもイビキは困ります、ほかのお客さんが起きちゃうので、などと笑わせて「磯の鮑」。2019年に聴いた、与太郎が「師匠」に吉原行きを習う噺をサラサラと。滑稽で色っぽくて、いい。続いて柳家さん喬が、2019年に兼好さんで聴いた「野ざらし」。いい女の骨に会いたくて釣りに出かけた八五郎の、「サイサイ節」をうなったり、水たまりにはまったりの無茶ぶりが楽しい。「酔わずに歌えるか、市馬じゃないんだから」もノリノリです。

仲入後はその柳亭市馬。マクラもそこそこに2012年から久々、狐忠信のパロディ「猫忠」。おおらかな運びが心地良い。清元の師匠のところにいる男が、三味線にされた猫の子の正体を現して、から、岡田まい社中のお囃子が入っての名調子に拍手! トリは大好きな柳家権太楼。市馬が理事になって寄席の楽屋が禁煙になったと憤る。4月に不整脈で入院した75才、元気で何よりです。こちらも2019年に聴いた「一人酒盛」。振り回される留さんは気の毒なんだけど、どんどん酔払っちゃう身勝手な熊さんの、何ともいえない愛らしさが、さすがです。あ~、楽しかった。

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談春「山号寺号」「桑名船」「札所の霊験」

談春五夜・立川談春独演会 第四夜 2022年5月

意外に昨年お正月以来、久々の談春さん。珍しい演目の日を選んだら、ずしんと重かった。語りの力を前面に出していて、少し講談を意識してるのかな。浅草公会堂1F最後列で。仲入を挟み2時間。

いきなり師匠が登場し、「お楽しみとチラシに書いちゃった。落語と、最近聞いた銀座でもてる飲み方、どっちが聞きたい?」と振って、会場の拍手は銀座のほうだったけど、「山号寺号」へ。若旦那が浅草へ行くと聞き、馴染みの幇間が金龍山浅草寺と返してから、「おかみさん拭きそうじ」等々、アドリブをまじえ軽妙な言葉遊びがたっぷり。
そのまますっと、談志に勧められたという圓朝作「札所の霊験・上」へ。下級武士の水司(みずし)又市が紅葉狩りの帰り、根津遊郭で売れっ子・小増を見初める。郭の風習から、さっき言ってた銀座の飲み方を披露しつつ、噺はどんどん暗いほうへ。田舎者は嫌いと身も蓋もなくすげなくされ、金包みを叩きつけられた又市が、とうとう小増の真夫(まぶ)で上役のせがれを斬っちゃう。会場の空気が凍りついたところで、仲入。

後半は立川こはるが走って登場し、元気よく「桑名船」で空気を変える。フカが寄ってきて船が止まり、乗りあわせた講釈師が、代表して犠牲になる、最期に一席と、赤穂義士銘々伝、天保水滸伝、伽蘿先代萩等々。テンポよくまくしたてて拍手拍手。初代一龍斎貞山のエピソードを取り入れた噺で、談志が得意とし、六代目神田伯山も講談に移しているとか。ふうむ。
そして談春さんが登場し、いきなり「札所の霊験・下」。小増=お梅は商人七兵衛に身請けされるが、2度の火事に遭い高岡に。なにくれ世話になる僧侶・叡善(えいぜん)が激しい雨の降る日、実は又市だ、真夫を手にかけたと打ち明けてお梅を口説くシーンの、のどかな訛りの怖いこと。やがて七兵衛が乗り込んできて、薪割りからまたも高岡の殺人へ。凄まじすぎ。
又市の逃避行と、実際にあった「猿小橋の仇討ち」に至る長い物語の発端で、三遊亭円生が得意だったとか。善人が一人として登場せず、人間のむき出しの残酷さは「牡丹灯籠」とかを上回るかも。明日のいい席を売るよと、あえて軽く話して、三本締めで幕となりました。

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らくご「寄合酒」「代脈」「抜け雀」「ロボット長短」「品川心中」

よってたかって春らくご’22 21世紀スペシャル寄席ONEDAY 夜の部 2022年4月

ちょっと久々に有楽町よみうりホールの落語会。間違いない一之輔、三三に、馴染みのない噺家さんも加わっていて、寄席の雰囲気を味わう。やけによく受ける客席の、中央あたりで4200円。仲入を挟んで2時間半。

開口一番は 三遊亭楽太。高卒で入門して20歳そこそこらしいけど、堂々としたもの。「師匠は円楽です。腹黒いです。嘘はつきません」「初高座です(拍手)。この会場では。嘘はつきません」などと振って、角の乾物屋が気の毒な「寄合酒」。与太郎の愛されてる感じが心地良い。古風な語り口で先行き楽しみ。
しょっぱなは3年ぶりの三遊亭萬橘。やさぐれた癖の強さは変わらない。コアなファンが来ていて、やたら笑うし高座と会話しちゃうし自由だなあ。今週の村田諒太グロフキン戦の上品な観客のヒートアップ、落語だったら「受けろー」か、フラッシュ付きカメラはラウンドガールがお目当て、と話して「代脈」。先生はほかにいい仕事があって、それは噺家の考え方ね、などとくすぐりつつ、意外にさらさらと。
続いてお楽しみ春風亭一之輔が登場。落語協会は真打ち4人の披露中で、口上で女流の元ぴっかり☆・蝶花楼桃花の師匠・小朝が泣いちゃってびっくり、桃花が泣いてたのは披露目がネタおろしのせい、と笑わせて「抜け雀」。絵師と女房に振り回される、お人好しで正直な宿屋の主人の困り顔、ちょっとした間合いの仕草が愛らしくて絶品だ。衝立に描いた雀と松(待つ)に託した、でこぼこ夫婦、そして名人親子の情にしみじみ。

仲入りを挟んで、初めての林家きく麿。木久扇の弟子で、50歳くらいで風貌はごつめ。言語不明瞭な先輩の物真似は、寄席に通ってないとわからないなあ。新作「ロボット長短」は「長短」の気の長いほうの男がなんとロボットで、いちいちウインウインとまどろっこしい。巧かないけど、繰り返しが妙に可笑しい。届けに来た饅頭を取り出すところだけ、反則技にお下劣。油を差したら急に格好良く喋ったり、ユニークです。
気を取り直してトリは柳家三三。最後は普通の落語を、と最近も喬太郎で聴いた「品川心中」。板頭、紋日の解説から丁寧に入り、今日の顔ぶれや雀やロボットをちらりと入れ込みつつ、身勝手なお染と、恋仲気取りなのに世の役に立ってないと心中相手にされちゃう金蔵の関係に的を絞って。んー、身も蓋もないところが実に人間臭くて、ジャズが聞こえそうなクールな手触りは、一編の映画のようだ。いっぱしに構われたくて寝たふりする金蔵、遠浅の浜で身投げしようとするお染。人って愚かだなあ。

本日も面白かったです! 一之輔サイン入り文庫本を購入。

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落語「普段の袴」「ちりとてちん」「不動坊」「疝気の虫」「品川心中」

三遊亭円楽プロデュース 江戸東京落語まつり2022  2022年3月

主宰の六代目三遊亭円楽が1月に脳梗塞で倒れ、まさかのリハビリ中。東西の人気落語家52人が集結する一大イベント、5日間の4日目に足を運んだ。この日は3会場あるうちの大手町サンケイプラザ4Fの中ほどで、「落語協会のホール落語その2」と銘うった、実力個性満点の5人を堪能しました~ 贅沢過ぎる古典がたっぷり! 中入りを挟んでたっぷり3時間弱。

前座無しでいきなり、春風亭一之輔が登場です。高~い高座に上ると、最初にあがるなんて最近ない、楽屋ひとつだし、この会場で落語は初だって、そうでしょ平らで向いてないもの、と笑わせる。初めて入ったけど、確かにどう見ても宴会場でしたね。上野のababはアブアブ、オイオイは何かときいたら丸井だった、などと会場を十分に温めてから、以前youtubeでも聴いた「普段の袴」。ドジな物真似男が愛らしい。祝儀不祝儀の衝突シーンに爆笑。
続いて大御所・柳家さん喬。今日のメンバー、みな寄席に出てますからね、わたし落語協会常任理事です、などと宣伝して「ちりとてちん」。さん喬さんで聴くのは2回目だ。台湾名物を酒で無理矢理呑み込む、半可通の竹さんの苦悶の表情が可笑しすぎ。エグい噺が上品に聴けるのは、この人ならではですね。
がらりと元気になって林家たい平。笑点メンバーが円陣を組んで、昇太がこれからも番組のために骨を折って下さい!と言ったら、木久扇さんが本当に骨折、などと笑わせて「不動坊」。前に小太郎で聴いたけど、やっぱり安定感がある。風呂屋での色っぽさ、あんころ餅の馬鹿馬鹿しさ。

仲入後は大好きな柳家権太楼。ゆっくり上って、75歳で補聴器を買いに行った、先輩に免許返上を止められた、帰りに無免許で捕まったから、豪華客船で落語は難しい、学校寄席も喬太郎はいいけど(物真似!)こっちは古典だからシラケる、よく悋気は女の慎むところ、疝気は男の苦しむところと言いますが、よく言わねえよ!だからね、と振って「疝気の虫」。10年以上前に志らくで聴いた噺だけど、なぜか印象になくて新鮮。妙に丁寧な虫の物言いから、チントトサン、パッパッパ、11月23日の駄洒落などなど、もう爆笑。蕎麦の臭いによじ登るくだり、三味線が囃し立ててヘロヘロに。愛らしい!
そしてトリは再三いじられてた柳家喬太郎。感染第六波ならエノケンでしょ、などとお馴染み人を食った感じのマクラから、古典で「品川心中」上を滑らかに。権太楼さんに刺激されたかな? 遊郭の人間模様は割にさらさら、裏がすぐ海で波音が聞こえてという江戸情緒がいい。いやー、たっぷりでした。

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落語「代脈」「お見立て」「粗忽長屋」「妾馬」

第29回COREDO落語会  2022年1月

落語ファンが集まる感じの会で、いつも通りプロデューサー山本益博さんが入り口でお出迎え。ところが開幕の挨拶で、春風亭昇太さんがコロナから復帰して間に合った一方、今朝、三遊亭兼好さんから発熱の連絡があり、春風亭一之輔さんが代打ちで2席、とのことでびっくり。まあ、悪くないけど。日本橋三井ホール、中ほどで5500円。仲入を挟み2時間半。

開口一番は益博さんリコメンドの春風亭与いち。昔はいい加減な医者がいて、何をきいても葛根湯とか、最近の「見なし陽性」と変わらない、と笑わせて「代脈」。1998生まれ、一之輔弟子の二ツ目です。When the nightと歌い出す呼吸が巧い。表情とか師匠そっくりで楽しみです。
続いてその師匠が飄々と登場。鈴本平日昼はお客が一ケタ、兼好の高い声を真似、「次女」とのツイッターのやりとりで笑わせ、昇太の人柄をからかい、兼好が木乃伊取りをネタ出ししていて、今日、圓生全集読んだけど覚えられないので、別の郭噺で、と「お見立て」。男女の化かし合いの感じがワルっぽい雰囲気にぴったり。杢兵衛の訛り(千葉ならお手のものか)をさんざん強調しておいて、終盤「なんだ、言えるんじゃないか」というあたり、いい呼吸だ。
前半ラストは本日の笑点収録から復帰したという昇太。62歳!だけど自宅療養で肌がすべすべに、自分はそそっかしくて地元静岡の仕事に前日行ってしまい、大正琴を聴く羽目に、桂米團治襲名に呼ばれたら人間国宝・米朝さんの着物を忘れててびっくり、と振って「粗忽長屋」。新作のイメージが強いけど、プロデューサーのリクエストで古典。シュールでテンポがよくて、キャラに合っている。楽しそうな長屋だなあ。

長めの仲入後は、袴に着替えて再び一之輔。今は士農工商とか教えんのかな、とか言いつつ「妾馬」。母の愛情や兄の後悔でじっくり泣かせる談春らと違い、ヤクザな八五郎の勢いが際立って、実に格好良い。門番とのやりとりからマイペース、酔っ払っての都々逸が粋です。充実してました!

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2021喝采づくし

マスク着用、かけ声禁止は続くものの、関係者の熱意でステージがかなり復活した2021年。素晴らしい作品に出会えました。

個人的な白眉は、思い切って長野まで遠征しちゃったOfficial髭男dismのコンサート。期待通りの王道ロックバンドらしさに、蜷川さん風に言えば「売れている」者独特の勢いが加わって、ピュアな高揚感を満喫! 私はやっぱり配信よりライブだなあ、と実感。対照的に、名曲を誠実に、余裕たっぷりに聴かせる桑田佳祐コンサートも気持ちよかった。

並んで特筆すべきは、野田秀樹「フェイクスピア」かな。仮想体験の浅薄を撃つパワー溢れるメッセージが、高橋一生の抜群の説得力、そして演劇ならではの意表を突く身体表現を伴って、ストレートに胸に迫った。演劇ではほかにも、ケラさんの不条理劇「砂の女」が、まさに観ていて息が詰まっちゃう希有な体験だったし、栗山民也「母と暮らせば」は富田靖子演じる母に、問答無用で泣いた~ 岩松了さん「いのち知らず」、上村聡史「斬られの仙太」、渡辺謙の「ピサロ」…も記憶に残る。

古典に目を転じると吉右衛門、小三治の訃報という喪失感は大きい。けれど、だからこそ、今観るべき名演がたくさん。なかでも仁左衛門・玉三郎は語り継がれる話題作「桜姫」2カ月通しの衰えを見せない色気もさることながら、「土手のお六・鬼門の喜兵衛」をたっぷり演じた直後の一転、他愛ない「神田祭」の呼吸に目を見張った。
落語は喬太郎の、トスカに先立つ圓朝作「錦の舞衣」、さん喬渾身の長講「塩原多助一代記」で、ともに語りの高みを堪能。まさかの権太楼・さん喬リレー「文七元結」がご馳走でしたね~
文楽界はめでたくも勘十郎がついに人間国宝に! 与兵衛が格好よかった「引窓」は、私としては勘十郎さん仲良しの吉右衛門ゆかりのイメージがある演目で、今となっては二重に感慨深い。玉助さんが松王丸、師直でスケールの大きさを見せつけ、ますます楽しみ。

オペラ、ミュージカルは依然として来日が少ないので、物足りなさが否めない。それでも新国立劇場のオペラ「カルメン」「マイスタージンガー」は日本人キャストも高水準、演出にも工夫があって充実してた。ミュージカル「パレード」の舞台を埋め尽くす紙吹雪も鮮烈でしたね。
2022年、引き続きいい舞台を楽しんで、心豊かに過ごしたいです!

 

三三・兼好「子ほめ」「湯屋番」「三方一両損」「館林」「富久」

特撰落語会第二部 三三・兼好二人会  2021年12月

安定感抜群のふたりが古典を2席ずつ。個性の違う、それぞれの巧さにひたる贅沢な時間でした。10月の小三治さん急逝は悲しいけれど、中堅が盛り上げてくことでしょう。初めての古めかしい東京教育会館一ツ橋ホール、下手寄り中ほどで3800円。何だかよく笑う観客だったな。10分の仲入りをはさみ2時間半。エイフル企画主催。

開口一番は三遊亭ごはんつぶで「子ほめ」。圓丈門下、天どんの弟子。25歳とは思えない落ち着きで、声も通ってた。
そして柳家三三がいつものひょこひょこ歩きで登場。兼好はまじめな会津人らしくない、などと相変わらず人を食ったマクラから「湯屋番」。流れるような運びが心地良い。「古典でサービスって言わないほうが」とか、番台のおバカなひとり芝居を熱心に見物しちゃう客とかが剽軽で、さすがの高水準。
続いて三遊亭兼好が勢いよくあがり、がらっと賑やかに。今の会津人は戊辰政争で亡くならなかった人の子孫、今年は眞子さまも日大理事長も救えなかった、一生懸命やったのは大谷の応援くらい、落語家は大谷と違ってすぐ見下しちゃうから駄目、白鳥ファンとか、などと笑わせて「三方一両損」。ポンポンと江戸っ子らしいテンポ、無茶で愛らしい左官金太郎のキャラが最高。大工熊五郎をいちいち町名から呼ぶとか。訴えをきいた大岡越前がぼそっと「こいつら面白い」とつぶやくのもいいなあ。

仲入後は兼好さんで久々の「館林」。調子に乗っちゃう素人剣術で笑わせといて、シュールな幕切れにまた呆然。相変わらず一筋縄じゃない。
最後は三三で、季節感たっぷりの「富久」。火事と富くじという禍福に翻弄される、弱い庶民を理屈抜きに生き生きと。もしかすると理不尽なコロナもこんなことかも、と思えてくる。登場人物のキャラを際立たせつつ、「三方一両損」の一節とか、聞こえてきた夕焼けチャイムまで取り入れちゃう余裕っぷりがさすが。

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鶴瓶「山名屋浦里」「お色直し」

笑福亭鶴瓶落語会  2021年11月

鶴瓶さんの独演会。いつもの漫談「鶴瓶噺」を皮切りに、じっくり2席で充実。老若男女、ファンが集まった感じのサンシャイン劇場、中ほど下手端で6000円。キューちゃんのお土産付きです。休憩を挟んで2時間。主催はニッポン放送。

鶴瓶噺はナイナイの矢部浩之から「5歳の息子が落語にはまって」とチケットを頼まれたけど、これが自分ではなく喬太郎ファンで…という爆笑エピソード等々、相変わらずの愛らしさ。そして1席目はちょうど中村屋が赤坂で、歌舞伎版を上演中の「山名屋浦里」。安定です。
仲入後は初めて聴く「お色直し」。元花魁と若い衆の夫婦が、金に困って安女郎屋を開く。亭主は「直す」=延長を促す一方で、女房がもてると気が気でなく… 志ん朝さんも得意だったという郭噺だけど、色っぽいというより亭主の駄目ぶりが味わい深かった。三味線や太鼓で賑やかに〆となりました。

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コレド落語会「金明竹」「真田小僧」「代書屋」「母恋いくらげ」「文七元結」

第28回COREDO落語会 2021年11月

永遠のライバル、柳家権太楼と柳家さん喬によるなんと名作「文七元結」のリレー! 山本益博主催ならではの贅沢企画を堪能する。日本橋三井ホール、前のほう下手寄りで5500円。仲入を挟んで3時間。

益博さんの挨拶、開口一番・安定の春風亭いっ休(一之輔のお弟子さん)「金明竹」のあと、さん喬があがってテンポ良く「真田小僧」。続く「代書屋」の権太楼が相変わらず愛らしい。前半のラストは柳家喬太郎で、お馴染み「母恋いくらげ」の動物形態模写に爆笑。この噺が今日ばかりはちょっと前振りに感じられるのが、贅沢過ぎ。

仲入りのあと両師匠と益博さんが椅子に座り、微妙な駆け引きを感じさせつつ、公開じゃんけんで順番を決めちゃって、いよいよ「文七元結」へ。前半は権太楼がトントンと運び、山場の吾妻橋のところでバトンタッチ。さん喬が文七になりきって呆然と登場、一気に噺に引き込んでしっとり締めくくる。いやー、貴重な高座でした。
来年の干支、寅の絵柄の、権太楼さんサイン入り手ぬぐいをゲット。凄かった!

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さん喬「塩原多助一代記」

さん喬十八番集成特別企画~塩原多助一代記 全編通し公演~  2021年9月

三遊亭圓朝作の立志伝、前半「ふたりの角右衛門」から後半「青の別れ」「炭屋塩原」を珍しい通しで。73歳の師匠が中入りを挟み、終演予定をなんと1時間近く押しちゃう3時間と、渾身の長講。これはひょっとすると、ちょっと事件だったかも。年配客中心にまあまあの入りの銀座ブロッサム、後ろの方で4500円。

開口一番は二ツ目の柳家さん光。「どうも避けられる、名前がサンミツだから」「権太楼の弟子、間違えてキャスティングされたかも」と振って、短く「新聞記事」。
続いてさん喬さんが登場、マクラ無しで語り始める。前半は正直、登場人物が多くて複雑なうえ、テンポがイマイチで入り込めない。でも後半、多助が江戸に出てきてからは笑いと泣きがノってきて、ラストの朝焼けが冴え冴えとスケール大きく、達成感がありました~
さん喬さんは本所生まれの江戸っ子、洒脱でなめらかな印象があるけど、今回はなにしろ全編上州訛り。今夏の高座を病気療養で休演したそうで、どうやら最近はすっかり復活したとはいえ、挑戦だったのでは。

この演目は明治11(1878)年初演、井上馨邸で明治天皇に自ら口演もしたという圓朝の代表作。明治25(1892)年には5代目菊五郎主演で歌舞伎座にかかり、のちに修身の教科書にも採用されたとか。いろんな要素がてんこ盛りで、少なくとも3回ぐらいに分けるべきかも。
特に上州・沼田を舞台にした前半は怪談調で、じっくり聞きたいところ。発端では四角四面な多助の実父・角右衛門が勘平風に、そうとは知らず元家来の右内を撃ち殺す。助けられた豪農・角右衛門がカネを用立て、幼い多助を引き取る。
多助は幸せに成長して養父をよく助けるが、右内の元妻おかめと、悪党一味にさらわれていた娘おえいが家に入り込むと、運命が暗転し、因縁めく。女2人は田舎暮らしや、真面目な多助に不満を持ち、いい仲になった侍親子と唐突にも多助殺害を計画。その多助の危機を、可愛がっていた馬の青が救う。幽霊より怖い人間の業が、圓朝らしいなあと思ってたら、びっくりのスプラッタシーンが展開! 多助は江戸へと逃げ出す。

後半は安定の人情噺に。一文無しの多助が身投げしかけるところを、通りかかった炭屋善右衛門が文七元結風に助けて、雇い入れる。伏線として、多助が道普請にやたら関心を持つシーンが可笑しい。
やっと再会した実父から、養父の家を捨てたと拒絶される大泣きシーンを乗り越え、多助は勤勉と超絶倹約、嫌みのない人柄で独立するまでに成功。私財を投じて道普請をして尊敬され、大店の娘お花に見初められちゃう。ついに実父も誤解を解いて、再び子供みたいに大泣き。大詰め婚礼の日には、かつて悪党から救った取引先が十三艘の船いっぱいに、祝いの炭俵千両を届ける。カタルシスだなあ。
多助は実在の人物で、木炭の粉を再利用した炭団の発明で知られるんですね~ いやー、ずっしりの高座でした。

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