講談

講談「中山安兵衛婿入り」「髪結新三」

噺小屋in池袋《番外編》水無月の独り看板 神田春陽  2019年6月

2012年に初めて聴いた講談が春陽さん。以来、蝋燭怪談やら真打ち昇進やらゴールデン街やら、いろいろ楽しませて頂いて、今回はなんと東京芸術劇場シアターウエストでの独演会が満員! 素晴らしい。古典芸能好きのメンバーと最後列、オリジナルプログラム付きで3500円。中入りを挟んで約2時間。

早めに着いて知人とお喋りなどしていたら、なんと開幕前に飛び入りゲストが登場。神保町でも急に頼まれてた、カンカラ三線の岡大介だ。「今日は聴きに来たんだけど」といいながら「東京節」を朗らかに。前座は女流で田辺凌天(りょうてん)が「矢取勘左衛門」。
そして春陽さん。得意の西武線沿いに住んでいた貧乏暮らし、池袋で先輩に教わったこと、池袋の隣が高田馬場…と振って、「義士銘々伝」から「中山安兵衛婿入り」。武士の豪快さが気持ちいい。安兵衛が馬場の仇討ちに加勢したとき、通りかかった築地鉄砲洲の堀部金丸の妻娘が通りかかり、襷を貸す。この気丈さがまず見事。後日、長屋に婿入りを頼みに来て、断ったら自害というので、安兵衛は断りきれず、呑んだくれて離縁になればいい、と実行しちゃう。無茶苦茶だなあ。さすがに耐えかねた金丸が、高いびきの安兵衛を槍で突こうとすると、見事によけられる。金丸は手をついて懇願し、ついに安兵衛も感じ入って、婿入りを決意、となりました。

中入り後、長唄の杵屋三七郎が登場。1972年生まれ、志の輔らくごの大薩摩などで活躍してるかたです。辰巳、深川、そして夏を歌う選曲。メーンの演目の雰囲気が舞台に流れて、大変効果的。
トリは春陽さんで、先輩に一番嫌な演目を聞いたら「村井長庵の雨夜の裏田圃」と言われた、自分には嫌な話はできない、とのマクラから「梅雨小袖昔八丈 髪結新三」。2015年に松緑、左団次らの歌舞伎で観た、新三内の場にあたるところ。江戸の初夏風情が味わい深い。お熊をかどわかして身代金を要求する新三だが、小悪党ぶりは控えめ。むしろ前半に追い返されちゃう親分との対比で、後半の大家の因業ぶりが痛快だ。来客にお茶も出さず、新三に初鰹をねだり、と悪党より数枚上手。とぼけた味わいと笑いが春陽さんらしかった。充実してました!

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東京大神宮寄席「め組の喧嘩」「妾馬」「亀甲縞治兵衛」

東京大神宮十七日寄席百回記念  2019年5月

飯田橋にある「東京のお伊勢さま」、東京大神宮で創建日ゆかりの毎月十七日に開催してきた寄席が、令和初回にちょうど百回を迎えたということで、足を運んだ。浪曲、音曲まで常連出演者が勢揃いだそうで、充実。この寄席の熱心なファンが集まった感じで、賑やかで雰囲気が良い。境内にあるマツヤサロン4F宴会場、自由席で予約2500円。中入りを挟んで2時間強。

元「東京かわら版」編集長の大友浩さんの挨拶の後、いきなり大好きな神田春陽の講談から。昼に芝大神宮に寄ったということで、昨秋に聴いた「め組の喧嘩」。勧進相撲の発端から歌舞伎の忠臣蔵見物へ、人情を挟まず喧嘩一直線だ。改めて、今月の歌舞伎版と比べ、江戸っ子の直情とテンポが心地いい。芝居小屋の花道にぬっと大男が現れ、腹切り途中の勘平が必死で楽屋へ逃げるあたり、目に浮かぶよう。いつものように釈台を自分で片付けてましたね。
続いて音曲は桂小すみ。小文治のお弟子さんだそうです。国費でウィーンにミュージカル留学し、音楽の先生をした後、国立劇場の寄席囃子研修などを受けたという変わり種。粋な三味線、ちょっと馴れ馴れしいしゃべりが飄々として面白い。自宅での練習を散歩中の犬が見ているとか。塩ビ管の尺八でアメイジンググレーズも。
前半最後は三代目・桂やまとの落語で「妾馬」。代々荒川住まいだとかで、明るくて勢いがある。兄や母の情でほろっとさせるけど、ベタベタしない。本寸法の古典というべきか。
中入りに演台をしつらえ、後半は浪曲から。瑞姫(たまき)、曲師は紅坂為右エ門で「亀甲縞治兵衛」。藤堂藩の杉立治兵衛が財政難を救おうと、名産の綿を使った亀甲縞の反物を売り込む。堂島の商人は厳しくて思うような値がつかず、人気の2代目團十郎に頼み込む。團十郎は意気に感じて、反物を舞台衣装の浴衣にしたうえ、芸妓衆まで動員して宣伝してくれて、大成功。團十郎家の基礎を築いた「不動の申し子」「千両役者」を取り上げた華やかさに加え、広告宣伝のセンスを感じさせる現代的なお話です。
トリは漫才で、宮田陽・昇(よう・しょう)。中国地図など記憶力を見せつけつつ、すれ違うやり取りをポンポンと。講談、古典落語とかっちりしたストーリーを聴いた後とあって、漫才という芸の自在さが面白かった。
最後は全員登場して、春陽さんのリードで三本締め。お土産は本日分も含め、百回分の根多帳コピーという貴重なものでした~
せっかくなので帰りに大神宮にお参り。大正天皇の結婚式で神前結婚式を始め、今では婚活のパワースポット。毎月17日はキャンドルナイトということで、参道が優しく照らされてました。

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講談「木津の勘助」「め組の喧嘩」

春陽党大会  2018年11月
神田春陽さんの講談の会。らくごカフェの前の方で2000円。中入りを挟んでたっぷり2時間強。
前座は田辺いちかで「長州ファイブ 若き日の英国密航」。若き井上薫、伊藤博文らの史実をベースに、開国思想の芽生え、水夫扱いの苦労などをはきはきと。
春陽さん1席目はゲストの活動写真弁士、坂本頼光が映画の仕事で岐阜に行っていて、間に合うかハラハラしたこと、頼光さんが付き人をしていたアラカンの甥・山本竜二の居酒屋「竜ちゃん」で呑んだ話など、カルト感満載のマクラから、真打ちお披露目で聴いた「木津の勘助」。浪速の侠客の誕生談は、講談らしくて歯切れがいい。
続いてゲスト坂本頼光さん。活弁がテーマの映画に協力する苦労話から、自作アニメ「サザザさんシリーズ」へ。小池朝雄、殿山泰司、大滝秀治ら往年の映画俳優キャラに声真似をのせるのだけど、水木しげる風のタッチで、彫師やら妖怪やら、超ブラックでびっくり。本当に忙しいらしく、終わってすぐ機材をまとめて帰られました。
中入りにビールを調達。スペシャルゲストの岡大介が登場。実は坂本さんが間に合わない場合の備えて呼ばれてたらしい。若いんだけど、沖縄発祥のカンカラ三線で明治大正の演歌=自由民権時代に政府・世相を批判した演説歌を披露するんだそうです。これまた反骨かつマニアックだなあ。曲は小沢昭一も好んだという添田唖蝉坊(そえだ・あぜんぼう)の「金金節」。
ラストは春陽さんで、江戸時代の奉行や火消しについて説明してから「め組の喧嘩」。歌舞伎にもなっている町火消しと力士の喧嘩談で、啖呵の応酬だから歯切れがよく痛快だ。発端が芝神明宮境内の相撲の春場所で、騒ぎを大きくした半鐘が「遠島扱い」という決着も面白い。なんだか盛りだくさんでした~

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講談「伊東喜兵衛の死」

第八回東雲講談  2018年9月

古典芸能好きの集まりで蝋燭講談の夕べ。お馴染み神田春陽が「四谷怪談」から初めて聴く「伊東喜兵衛の死」を読む。スパイラルで、夕暮れとシーンの進行に合わせて徐々に照明を落としていき、最後は和蝋燭だけに。うわー、怖い!
講談版の四谷怪談では、歌舞伎のうような忠臣蔵の外伝という設定はなく、実録小説「四谷雑談集」に近いのだそうです。伊右衛門が与力の喜兵衛と組んで妻のお岩を追い出し、その企みを知ったお岩は失踪。喜兵衛はなんとネズミに襲われちゃう。気味悪過ぎる。お岩さんが子年生まれにちなんだ「因果」なんですね。
本牧亭女将、清水孝子さんのトークもあり、充実した一夜でした。

講談「名月若松城」「心中奈良屋」

講談どんぶり会  2017年10月

秋の一夜、創業明治10(1877)年という老舗「うなぎ両国」で開く、こぢんまりした講談の会に足を運んだ。2階の細長い座敷で。50年以上続いている会だそうで、90歳超という大ベテランのファンも! 講談3席に食事が付いて4000円。

かいがいしい若手の1席のあと、華やかな衣装の百川鶴女で、以前に神田山緑で聴いた「名月若松城」。扇子さばきも派手ですね。なんと終盤で、著名力士の手形の額が座卓に落ち、ガラスが飛び散る大ハプニング。なんとか終了して、片付ける間に、お茶とお稲荷さんが配られる。幸い怪我もなかったけれど、お店の人があんまり焦ってないのが不思議。
なんとか少しは落ち着いて、神田春陽がお得意・清水次郎長伝から「心中奈良屋」。若い日の次郎長が、旅の僧から余命短いと告げられ、やさぐれて博打打ちになるが、若い心中者を助けたことで死相が消える。喧嘩は無くて、世話物風なんだけど、次郎長の気風の良さが気持ちいい。

終演後はお隣らとおしゃべりしながら、お銚子に焼鳥、うな丼で満腹。びっくりしたけど、楽しかったです。

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講談「徳川天一坊」

第6回たっぷり!神田春陽   2017年8月

前座なし、ゲストなし、春陽さんひとりの「長講 徳川天一坊」を聴く会。固有名詞の多い話だけど、リズムがあって聴きやすい。らくごカフェ、自由席の後ろの方で2000円。中入りを挟み2時間。

黙阿弥の歌舞伎でもお馴染み、強烈な悪漢物語のうち、今回は大詰めの4話「紀州調べ」より「伊豆味噌」までを一気に。
ピカレスクロマン部分ではなく、悪を追い詰めていく大岡越前守チームの「刑事」たちの捜査ぶり、さらに大岡夫婦と一人息子があわや切腹、果たして捜査結果の知らせは間に合うのか!というくだりだ。緊迫の連続で、力が入る。目線が時々、天井や左右に揺れるのが気になるけどスピード感は十分。
そして天一坊の正体が明らかになってからの、認めてしまった松平伊豆守の慌てぶり、大岡にゴマをする小役人ぶりは、笑いがたっぷり。面白かったです。

講談「貧乏業平」「潮来の遊び」

講談協会定席皐月  2017年5月

日本橋亭講談夜席へ。遅れて後半だけだったけど、1時間半でお得な1000円。

まず気風のいい女流の一龍斎貞寿。4月に真打に昇進したばかりだそうです。昨夜、ドアノブに目をぶつけた痛そうな話、でもネタはお岩さんじゃないです、と笑わせてから「貧乏業平」。出世する前、若き日の紀伊國屋文左衛門は美形だけど貧乏で、貧乏業平とあだ名されてた、その蔵から、骨董屋が安く古道具を仕入れるけれど、なかなか儲からない、といったお話。

続いてお目当ての本日の主任・神田春陽が登場。いつものように軽妙に語り始めて「潮来の遊び」。下総を舞台にした長~い侠客もの「天保水滸伝」の一部だけど、お話はまるきり落語「明烏」。飯岡助五郎の召し捕りを笹川繁蔵に内通した質屋・荒生(あらおい)の留吉の息子、留次郎が堅すぎるので、遊びに連れて行く…。これは普遍的な、憧れの展開ということかな。しつこ過ぎず、程よい色気。

講談「徳川天一坊」

講談「徳川天一坊」より「網代問答」 2017年1月

伝統芸能好きが集まる遅い新年会で、トークショーのあと神田春陽さん。聴くのは2回目の「網代問答」。

自称吉宗のご落胤・天一坊に、幕臣がすっかり丸め込まれている。ひとり大岡越前守が、なんと人相から!疑念を持ち、一味の参謀・山内伊賀亮を追及する。飴色網代蹴出しの駕籠の乗るのは、宮家の乗物なのでけしからん、等々。
いわゆる大岡裁きではなく、大岡の指摘を次々論破していく伊賀の、悪の魅力が眼目の名場面とのこと。ただ前回に比べて、今日は滑らかさが今ひとつだったかな~

よみらくご「寄合酒」「やぶのなか」「礒の鮑」「短命」「七段目」「宗悦殺し」

第9回よみらくご新春スペシャル~権太楼、成金に吠える~  2017年1月

気になっていた落語芸術協会二ツ目による人気ユニット「成金」に、主流派・落語協会のベテラン柳家権太楼がコメントする、盛りだくさんの会。若手の勢いが文句なしに楽しい。熱心なおじさんファンの掛け声が目立つ、よみうり大手町ホール、上手寄りやや後ろの方で3900円。中入りを挟み3時間弱。

開演に少し遅れて、若手5人が並んだトーク中に滑り込む。互いにプレッシャーをかけあったところで、トップバッターは82年生まれの春風亭昇也。自身は妻帯者で、師匠昇太を結婚させるミッションとかをハキハキ語り、「寄合酒」。町内の呑み会で、それぞれ肴を調達しようとするが、カネが無い。乾物屋を荒らし、空き地でとんだ拾い物。さらに贅沢な出汁を捨て、お燗番が肝心の酒を飲んじゃう。人物が多いせいか、やや説明調だけど、嫌味がなくて手堅い。
続いて81年生まれの瀧川鯉八。落語理論には3つあって、談志「業の肯定」、枝雀「緊張と緩和」、そして昇也(人は毎回違うらしい)「会話の妙」、この3つ目に逆らいます、と振って新作「やぶのなか」。新婚夫婦と妻の弟、その恋人の日常シーンの嚙み合わなさを、それぞれへのインタビュー形式で。
鯉昇さん門下とは思えないシュールな語り口で、個性は突出しているけど、私にはねちっこ過ぎるかなあ。
そして88年生まれ柳亭小痴楽。細身で髪がフワフワのイケメンだ。意外にイヤらしくスナック体験を語って、「礒の鮑」。隠居に作法を教わり、吉原に出掛けた与太郎がトンチンカンを繰り広げるオウム噺。若いのに崩れた色気がある。5代目痴楽の長男で恵まれながら、破門されたり二ツ目昇進直前に父を亡くしたりと逸話が多い人だそうで、やんちゃキャラに期待。
ここで権太楼が登場し、余裕の「短命」。ご隠居から「夫の命を縮めるいい女」の話を聞いた男が、家に帰って女房から茶碗を差し出され… 
ずいぶん前に志らくで聴いて、あまり印象に残らなかった噺だけど、この人にかかると間合い、適度な色っぽさが巧い。

中入り後は76年生まれ、おにぎり顔の桂宮治。家族持ちで30過ぎに入門したとかで、「師匠の後はやりにくい」「イケメンはイケメンなのに面白い、と言われるけど」と繰り返し、自信満々の前半組に比べて遠慮気味だ。「国立演芸場の隣」国立劇場での観劇の話題からお馴染み「七段目」。盛り上がるところで下座が入り、「初めてなんです~」と戸惑っちゃう。素直な明るさは、本日いちばん噺家らしいのでは。楽しみ。
トリは昨秋に聴いてびっくりした、お待ちかね講談・神田松之丞。眼鏡をはずし、83年生まれとは思えないふてぶてしさで「扇の的くらいで、と思ってたんだけど」とつぶやき、円朝の創作の経緯から、なんと「宗悦殺し」。喬太郎さんや講談・春陽さんで聴いたことがある。凄惨なシーンに引き込む力が凄い。ちょっと運びが重すぎるかなあ。

いったん下げた緞帳を開いて全員が並び、権太楼さんの講評。昇也には「昇太譲りの軽さがいい。下ネタをもっと軽く」、鯉八には「わかりません」と一言、小痴楽には「ネタはいくつ?」「7、80」「今のうちに200は覚えて、絞っていけ」と厳しく、宮治には「歌舞伎そんなに好きじゃないでしょ」とばっさり(実は「道灌」のつもりが、権太楼さんにけしかけられてチャレンジしたらしい)、「いや、だから芝居に走らないところがいい、そのままの勢いで」、そして松之丞には「評判通り巧いねえ、演芸界を背負ってく人」。師匠の温かさに触れ、手締めで幕となりました。

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講談「木津の勘助」「浜野矩随」

講談協会定席 神無月 2016年10月

思い立って日本橋亭講談夜席へ。1800円。
宝井琴調「出世の富くじ」の途中から滑り込む。貧乏武士が年の瀬の湯島天神で富くじを買い、なんと千両をあてるが、賢い妻に諭され、くじを燃やしちゃう。それが評判を呼んでトントン出世。かつて助けた小僧と再会する、気持ちのいい話。くじを当てたときの喜びようやら、巷の噂の芸能ネタやら笑いが多く、いつもながら気風がよくて、格好いい。
中入り後は一龍斎貞友で「木津の勘助」。2年前に春陽さんで聴いた演目だ。ぽっちゃりして愛嬌がある。

主任はお目当ての神田春陽で、怪しいテレフォンカードと談志さん、伊香保のとんだお宝といったマクラから「浜野矩随(のりゆき)」。腰元彫り名人の息子なのに、なかなか腕が上がらない矩随が、いつも2朱で買ってくれる若狭屋にさんざんけなされて死を覚悟。しかし母から形見にと請われ、精魂込めて彫りあげた観音が傑作となり、若狭屋が50両の値をつける。その間に母が息子の身代わりにと自害する驚きの展開。矩随は悲嘆を乗り越え、名人となっていく。落語にもなっている演目ですね。退路を断って開眼する、芸に通じる壮絶な話を、テンポよく聴かせてくれました。