クラシックコンサート

反田恭平&JNO ショパン「ピアノ協奏曲第2番」チャイコフスキー「交響曲第4番」

反田恭平&ジャパン・ナショナル・オーケストラ 冬ツアー2026 2026年2月

寒波襲来のなか、昨年3月以来5回目、大好きな反田恭平率いる若手オケを聴く。いつにも増して反田君が躍動した印象で、生き生きとしていい。念願のフルサイズ、総勢70人のツアーとは立派! サントリーホール大ホールの中段上手寄りで1万2000円。休憩を挟んで2時間強。

開演前のステージではウェルカムコンサートがあり、爽やかにフルートでチャイコフスキー「くるみ割り人形」から「花のワルツ」テプリツキー編曲(八木瑛子、河野葉月)、チェロカルテットで可愛らしい「ウィンターワンダーランド」(水野優也、森田啓介、香月麗、佐々木賢二)。いつもながら本編への期待が高まる。
前半は反田君の弾き振りで「ピアノ協奏曲第2番ヘ短調作品21」。若く多感なショパンが初恋を描き、自身の独奏で初演したという。ソナタ形式の第1楽章から細かいピアノの技巧が際立つ。第2楽章のノクターンを思わせるキャッチーでロマンティックなソロをへて、ロンド形式の第3楽章は軽快なマズルカのリズム、華やかなフィナーレへと盛り上がった~
ソリストアンコールはショパン「マズルカ第2番ハ長調Op.56」を勢いよく。

休憩を挟んで後半はチャイコフスキー中期の代表作、「交響曲第4番ヘ短調作品36」。新婚1カ月で別居、神経衰弱に陥る苦境のなか、無慈悲な宿命と救済を描き、パトロンのフォン・メック夫人に捧げたドラマティックな曲だ。メック夫人は一度も会わないまま、年1500万円を13年間援助したというから驚き。第1楽章、強烈な運命のファンファーレから木管が大活躍。オーボエのもの悲しいソロに始まる第2楽章の憂鬱をへて、第3楽章は軽快な弦のピチカートが面白い。第4楽章で激しいシンバル、大太鼓、ティンパニの連打、民謡調のメロディに運命のファンファーレが交錯し、明るく壮大なフィナーレになだれ込む。反田君も時に跳ねちゃったりして情熱的でした~
アンコールはチャイコフスキー「白鳥の湖」組曲版Op.20aより「チャルダーシュ(ハンガリーの踊り)」で爽快。

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高橋望「ゴルトベルク変奏曲」

ゴルトベルク変奏曲 高橋望によるバッハの世界  2025年1月

寒波襲来の週末に、秩父出身ピアニスト高橋望のライフワークであるJSバッハ「ゴルトベルク変奏曲」のリサイタルへ。18世紀ドイツバロックの精密な世界にひたる。冒頭と最後のアリア、第30変奏の32曲を2回ずつ、休憩無しの80分。よく入った端正な浜離宮朝日ホール、中段上手寄りで5000円。

前週に虎ノ門B-techJapanスタジオで20人ほどの勉強会があり、望さんの解説を聴いてから参加。ザクセン駐在ロシア大使だったカイザーリンク伯爵が眠れぬ夜に気を晴らせるよう、従者ゴルトベルク向けに書いて、ルイ金貨100枚が詰まった金杯を得たという1曲。1741年に自費出版したバッハ鍵盤音楽の集大成なんですねえ。
2022年の室内楽や23年のパイプオルガン版に比べると、ピアノ1台では正直、単調で眠気を誘うと危惧したけれど、どうしてどうして。通奏低音にのせて第3、第6…と3の倍数で繰り出されるカノンが、反行形を含めつつ、同度、2度…と広がっていく。譜を思い描きながら聴くと、なにやら設計図のようだ。作曲時は2段鍵盤を想定していたそうで、激しい左右の手の交差というテクニックも求められ、それでいて舞曲風、イタリアオペラ風、賛美歌風と表情も豊か。
5曲ずつのまとまりで進み、第16変奏の序曲前に静かなインターバルがありました。アンコールはシンフォニア第12番ト短調、そしてフランス組曲第5番ト長調よりアルマンド。

終了後、近くのイタリアンで60人規模の懇親会。望さんの才気、ファンを大事にする姿勢に感服! 多士済々、見事なマジックまで繰り出され賑やかでした~

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2025年喝采づくし

2025年も素晴らしいライブパフォーマンスにたくさん出会えました。
なかでも頭抜けて凄いものを観た!聴いた!と圧倒されたのは、期せずして対照的なふたつ。クラシックの20代ふたり、クラウス・マケラ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団+アレクサンドル・カントロフ。そして御年81歳、「菅原伝授手習鑑」の15代目片岡仁左衛門による菅丞相。いや~、圧巻でした。

ジャンル別の演劇では、重厚なワジディ・ムワワド作・上村聡史演出「みんな鳥になって」の現代性、岩松了のスタイリッシュな「私を探さないで」での河合優実、蓬莱竜太「おどる夫婦」でのダンスが印象的だった。節目にもいろいろ立ち会えて、本公演に区切りをつけたイキウメ「ずれる」、大がかりな仕掛けは集大成としたケラリーノ・サンドロヴィッチ「最後のドン・キホーテ」、郷愁に終わらなかった東京サンシャインボーイズ復活公演「蒙古が襲来」がそれぞれ持ち味を発揮。ミュージカルでは閉場となる帝国劇場の「レ・ミゼラブル」ファイナルウイークも。
これからが楽しみなのは横山拓也「はぐらかしたり、もてなしたり」、加藤拓也「ここが海」。翻訳ものでは熊林弘高演出の古典的喜劇「陽気な幽霊」、サイモン・スティーブンス作・上村聡史演出の不穏過ぎる「スリー・キングダムズ」もよかった。

古典ではなんと言っても歌舞伎が、映画「国宝」で盛り上がって幸福な1年でしたね。ニザ様以外にも大イベント八代目尾上菊五郎・六代目菊之助襲名披露の極付「弁天娘」、南座に遠征した中村壱太郎「お染の五役」、次世代で鷹之資・染五郎の「棒しばり」や尾上右近の「春興鏡獅子」に拍手。中村莟玉、2026年に辰之助襲名を控える尾上左近も目立っていて期待大です。
文楽は人間国宝に加えてめでたく日本芸術院会員となった桐竹勘十郎が碇知盛、玉助が源九郎狐を遣った「義経千本桜」が素晴らしく、歌舞伎、テレビドラマでもフル回転した三谷幸喜の「人形ぎらい」も楽しかった。引き続き1年を通して、浄瑠璃の都一中さんにいろいろ教えて頂きました。
そして落語はさん喬「雪の瀬川」の粋と鮮やかさ、喬太郎「お若伊之助」の語り力。白談春はさすがに還暦目前で肩の力が抜けてきたかな。講談の春陽は落語から移した「御神酒徳利」にチャレンジ。どんどん格好良くなるなあ。

クラシックに目を転じると、オペラで加藤浩子さんのほろ酔いトークイベント立ち上げを手伝った、記念すべき年となりました。関係者の素顔、いろんな裏話を聴くのと並行して、舞台では「セビリアの理髪師」で世界のメゾ脇園彩、「ラ・ボエーム」でルチアーノ・ガンチを堪能。コンサートではマケラのほかにも、83歳リッカルド・ムーティ指揮・東京春祭オーケストラの圧倒的なイタリア魂に引き込まれ、リサイタルでリセット・オロペサ、”キング・オブ・ハイC” ハビエル・カマレナも聴けて満足。

ポップスではずっと聴きたかったファンクのCory Wongが文句なしに楽しく、星野源は奇跡的に6年ぶりツアー、追加公演最終日に行けて感動。貴重なサービス精神満載のサザンオールスターズ、Official髭男ismの爽快なスタジアム、相変わらずノリノリのEARTH WIND&FIRE+NILE RODGERS&CHICも充実していた。
ほかにもいろいろ、とても書き切れません。さあ、2026年も元気に定番、新機軸を楽しむぞ~

マケラ指揮「ブラームスピアノ協奏曲第1番」「バルトーク管弦楽のための協奏曲」

富士通スーパーコンサート クラウス・マケラ指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2025年11月

凄いものを聴いてしまった。評判は耳にしていたけれどこれほどとは。新星クラウス・マケラ29歳が、2027年に首席指揮者に就任予定の名門ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(アムステルダム、1888年創立)を相手に、実に楽しそうにソリストそれぞれの音を際立たせる。その前にはピアノのアレクサンドル・カントロフ28歳が変化に富むソロを披露して、圧巻!これだからリアルのコンサートはたまりません。サントリーホール大ホールの中ほどやや上手寄りで3万8000円。休憩を挟んで2時間。カジモト招聘。

まずブラームス「ピアノ協奏曲第1番ニ短調op.15」。カントロフがオケと調和しながら、弱音をひときわ繊細でくっきりと。だからこそ盛り上がりの大編成のオケを圧する激しさ、迫力がずしんと響く。合間に椅子に手をついている姿がアンニュイなのも面白い。フランス出身。2024年パリ五輪の開会式で、大雨の中でラベル「水の戯れ」を弾いた人だったんですねえ。
ソリストのアンコールは名曲リスト編曲のワーグナー「イゾルデの愛の死」。もっていかれた~

そして休憩の後はバルトーク「管弦楽のための協奏曲」。にこやかで躍動感あるマケラの先導で、特に管楽器それぞれがもれなく美しく、色とりどり。鮮やかで見事な洗練。
アンコールはJ.シュトラウスⅡ「ハンガリー万歳!」で大盛り上がり。マケラは2027年、シカゴ交響楽団音楽監督に就任予定なんだなあ。楽しみ~

客席ではなんとすぐ前にオペラの師匠が。こういう偶然も楽しいものです。
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ヴォクス・ルミニス

調布国際音楽祭2025 ヴォクス・ルミニス「Bach Dynasty~華麗なるバッハ一族の音楽」 2025年6月

オペラ好きの会でお話を聴いた鈴木優人さんがエグゼクティブ・プロデューサーを務める音楽祭へ。ベルギーの声楽アンサンブルの初来日公演だ。終始淡々と、天上から降り注ぐような古楽の調べにひたる希有な体験。音響の良い調布市文化会館たづくり・くすのきホール、中央上手寄りで8000円。休憩を挟んで2時間。

長身のリオネル・ムニエが歌手兼指揮でグループを率い、ソプラノ4人、アルト2人、テナー3人、バス2人が曲によって組み合わせや配置を変えながら、バロック時代の宗教音楽モテットなどを紡いでいく。ことさら張り上げることなく、声が響きあう完成度の高い合唱だ。それぞれ達者でソロも素敵だけれど。支えるのは控えめな鈴木さんのオルガンと、ブノワ・ヴァンデン・ベムデンのチェロみたいな古楽器ヴィオローネ。オルガンは前半後半で機材をチェンジしてましたね。
プログラムは中部ドイツでオルガン奏者や作曲家を輩出した、バッハ家の系譜をたどるもの。時代がくだるにつれ、パートが追いかけるフーガや繰り返しが徐々に複雑になって、曲も盛り上がっていくのが興味深かった。本編ラストは18世紀の大バッハ、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの長大なコラール! 西洋音楽の父。

アンコール前にはムニエさんが挨拶。鈴木さんはハーグ音楽院時代からの友人で、ヴォクス・ルミニス初期のCDにも参加したこと、パパ鈴木雅明とバッハ・コレギウム・ジャパンの録音に影響を受けてきた、と語って温かい拍手。アンコールでは17世紀のヨハン・ミヒャエル・バッハに戻り、メンバーが舞台上と客席三か所に分かれて歌唱。人生のはかなさ、来世の希望を歌って、ルター派では葬儀での演奏が多いとか。まさに教会のような空間でした~
以下、セットリストです。

ヨハン・バッハ(1604–1673、J.S.バッハの曽祖父、エアフルト系の始祖)
「われらの生は、影のごとし」「ふたたび心に安らぎを」
ヨハン・ミヒャエル・バッハ(1648–1694、アルンシュタット系のカントル=聖歌隊のリーダー=兼オルガニスト、J.S.バッハの母方の叔父で義父=娘のマリア・バルバラが最初の妻。深く敬愛していた)
「主よ、私はあなたの救いを待ち望みます」「愛する日よ、ようこそ」「さあ、私たちは新しい年に踏み出します」「持っているものをしっかり保て」
ヨハン・クリストフ・バッハ一世(1642–1703、J.S.バッハの父方の大叔父でオルガニスト、少年時代のJ.S.バッハを引き取った音楽的養育者)
「人よ、女より生まれし者」「あなたは恐れることはない」「愛する神よ、私たちを目覚めさせてください」
ヨハン・ルートヴィヒ・バッハ(1677–1731、マイニンゲン家系の遠縁で作曲家兼楽長、J.S.バッハがライプツィヒで作品を写譜・演奏)
「神の御子イエス・キリストの血」「これこそ私の喜び」
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750、大バッハ)
「イエスよ、わが喜び」
アンコール:
ヨハン・ミヒャエル・バッハ「われらはこの世で70年の命」 

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エリーナ・ガランチャ・リサイタル

エリーナ・ガランチャ メゾソプラノ・リサイタル2025

2022年に続き、ラトビア出身のメゾ、ガランチャの来日リサイタルに足を運んだ。スケールが大きい歌唱と舞台映え、特にカルメンでの自在な表現力を堪能する。夫君でラトビア国立交響楽団芸術監督・カレル・マーク・チチョン指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団。サントリーホール大ホール、中央あたりで2万8000円。休憩を挟んで2時間。テイト・コーポレーション企画招聘。

前半のオケは馴染みのない曲も多かったけれど、定番「サムソンとデリラ」で徐々に高揚。後半はブルーのドレスから鮮やかな赤と黒に着替え、カルメン気分がぐっと盛り上がる。貴重なハバネラの初稿版に続き、色っぽさから悲劇までハイライトを悠々と。ステージを歩き回ったり、オーケストラの演奏中は下手寄りの椅子にいたり、演技も存分に披露してました。
ロビーではクラシック好きな知人たちに遭遇。
以下セットリストです。

グリンカ「ルスランとリュドミラ」序曲(オーケストラ)
チャイコフスキー「オルレアンの少女」より「さようなら、故郷の丘」
マスネ「タイース」より瞑想曲(オーケストラ)
サン=サーンス「サムソンとデリラ」より「あなたの声で心は開く」
同「バッカナール」(オーケストラ)
グノー「サバの女王」より「身分がなくても偉大な方」

スペインの3つのパソドブレ(オーケストラ)
~マルキーナ・ナロ「エスパーニャ・カーニ」、サンティアゴ・ロペ「ジローナ」、マヌエル・ペネーリャ「山猫」よりパソドプレ
ビゼー「カルメン」ハイライト
~ハバネラ初稿版
 前奏曲(オーケストラ)
 ハバネラ「恋とはいうことを聞かない鳥」
 第3幕への序奏(オーケストラ)
 セギディーリャ「セビーリャの城砦の近くに」
 第4幕への間奏曲(オーケストラ)
 カルタの歌「無駄ね、不吉な答えを避けようと」
 第2幕への間奏曲(オーケストラ)
 ボヘミアの歌「響きも鋭く」
アンコール:
ルぺルト・チャピ サルスエラ「セベデオの娘たち」より「カルセレラス」
アウグスティン・ララ「グラナダ」(チチョン アレンジ)
フランチェスコ・パオロ・トスティ&サルヴァトーレ・ディ・ジャコモ「マレキアーレ」

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ハビエル・カマレナ

ハビエル・カマレナ  2025年5月

21世紀の”キング・オブ・ハイC”日本初ソロコンサートと銘打った、メキシコ出身テノールの聴きに。メト・ライブビューイング映像「連隊の娘」のアンコールで知られる。2019年に聴いたフローレスのような煌びやかさとは違って、柔らかい声でごく普通に、するっと難曲を決めちゃう。よく入った東京オペラシティコンサートホール、表情がよく見える前の方下手寄りで1万8500円。休憩を挟み2時間強。

この日は前半に期待通り、「チェネレントラ」の超絶技巧のアジリタ、「連隊の娘」のハイC9回をたっぷり聴かせ、休憩を挟んで後半はお馴染み「ルチア」や「ウェルテル」のカヴァティーナを切々と。歌唱2曲ごとにオケ1曲の構成で、アンコール2曲は故郷メキシコの女性作曲家、そしてバスク生まれ作曲家のサルスエリから。
テノールというとあざとく押しまくるイメージだけれど、カマレナの表現はそのテクニックの割に素朴で含羞が漂って、むしろ拍子抜けするほど。お辞儀も丁寧。これからどんな役柄を歌っていくのかな。表情豊かな園田隆一郎の指揮、オケは東京フィルハーモニー交響楽団。クラリネットのアレッサンドロ・ベヴェラリも目立ってましたね。
ホワイエにはオペラ好きで知られる著名作家らの姿も。

1,エロルド「ザンパ」序曲
2,グノー「ロメオとジュリエット」より「ああ、太陽よ昇れ」
3,ドニゼッティ「ラ・ファヴォリート」より「王の愛妾?…あれほど清らかな天使」
4,ロッシーニ「セビーリャの理髪師」序曲
5,ロッシーニ「チェネレントラ」より「必ず彼女を見つけ出す」
6,ドニゼッティ「連隊の娘」より「ああ友よ!なんと楽しい日!」
7,ヴェルディ「運命の力」序曲
8,ヴェルディ「十字軍のロンバルディア人」より「彼女の美しい心に」
9,ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」より「わが祖先の墓よ」
10,マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
11,マスネ「ウェルテル」より「春風よ、なぜ目覚めさせるのか」
12,チレーア「アルルの女」より「フェデリーコの嘆き」
アンコール:
13,マリア・グレベール「私の愛しい人」
14,パブロ・ソロサバル「港の居酒屋」より「そんなことはありえない」

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ムーティ指揮東京春祭

東京・春・音楽祭2025 リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ  2025年4月

初めての春祭、大看板となっている中堅・若手精鋭メンバーによるスペシャルオケの2日目。御年83才、ムーティ・マジックに酔いしれた。ラッキーにも上手前方の席から見ていると、指揮台にも後ろの手すりにももたれず、二時間弱。今更ながらオケって指揮で変わるんだなあ。いっぱいの東京文化会館で1万9000円。

ムーティさまは21年目を迎える春祭のうち、なんと11年も来日しているとか。今回はオール・イタリア・プログラム! 前半はお馴染みのオペラで、「ナブッコ」からトロンボーンが響き、感涙必至の定番「カヴェリア」でぐっと引き込む。ドラマティックな「運命の力」の金管、木管まで、歌心満載。たえずリズムを刻むのではなく、要所だけ膝も使って、ためたり引き出したり。これが情感というものか。

休憩後は初めて聴く演目で、「コンテンプラツィオーネ(瞑想)」(1878)はムーティーが是非、と推した選曲だとか。大指揮者トスカニーニが夭折したカタラーニを敬愛し、代表作から長女(ホロヴィッツ夫人の姉)をワリーと名付けたほどで、ムーティはそんなトスカーニの孫弟子にあたる。弦と、そこからの管とのやりとりが繊細だ。
「ローマの松」はローマ三部作のひとつで、4つの松の名所から都市の空気、歴史を感じさせる。滑り出しは市民公園となっているボルゲーゼ荘の木立で、遊ぶ子供が賑やか。カタコンブ(地下墓所)はフルート、トランペット、ホルンがローマ帝国に弾圧されたキリスト教徒の聖歌を聴かせる。続いてローマを一望するジャニコロの丘となり、クラリネットが静謐に、満月の光に浮かぶ帝国の栄光と衰退を表現。幕切れはローマ帝国の幹線アッピア街道となり、不気味な低音から長いクレッシェンドで、夜明けの霧の向こうから進軍するローマ軍が現われる。ラストは18人ものバンダのトランペットがアイーダばりに、勇壮なファンファーレを響かせて圧巻。
コンマスの郷古廉(N響第1コンマス)はじめ、オケがこのうえなく楽しそうなのもむべなるかな。実行委員長・鈴木幸一氏や財界人、ムーティ追っかけでウイーンまで行った知人に遭遇しました~
以下セットリストです。

ヴェルディ:歌劇「ナブッコ」序曲
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
レオンカヴァッロ:歌劇「道化師」間奏曲
ジョルダーノ:歌劇「フェドーラ」間奏曲
プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」間奏曲
ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
カタラーニ:「コンテンプラツィオーネ」
レスピーギ:交響詩「ローマの松」

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リセット・オロペサ

旬の名歌手シリーズⅩⅢ リセット・オロペサ ソプラノ・コンサート 2025年4月

評判のニューオーリンズ生まれ、キューバ系の名花リセット・オロペサを聴く。細身の美人なのに響き渡る声量、当世屈指というコロラトゥーラの技巧、弱い高音もしっかり響いて安定感がある。難曲・長大なアリアばかりだったけど喜怒哀楽、自由自在。
気取らず愛嬌ある立ち居振る舞いや、聴衆それぞれに歌いかけるさまにも好感がもてる。P席に向かって後ろ向きに歌うとまろやかに聴こえるし、ラストはひざまずく演技も披露。これからもいろいろな役に挑戦するんだろうなあ。前半は黄色と黒、休憩を挟んで後半はシルバーのドレスが素敵。
指揮はベルガモ生まれのコッラード・ロヴァーリス。東フィルは新国オペラと掛け持ちのせいか、いまいちだったかな… そのせいか本編に全力投球ということか、アンコールは無し。NBS・日経主催。ちょっと空席もあったサントリーホール、大ホールの中ほどいい席で1万9000円。
以下セットリストです。

モーツァルト「後宮からの逃走」より〝どんな責め苦があろうとも〟
ロッシーニ「セミラーミデ」より序曲 (オーケストラ)
ベッリーニ「清教徒」より〝私は美しい乙女〟
ロッシーニ「ギヨーム・テル」より〝ついに遠のいてしまった〟~〝暗い森〟
マイアベーア「悪魔のロベール」より〝ロベール私の愛する人〟
ヴェルディ「シチリア島の夕べの祈り」より序曲(オーケストラ)
ヴェルディ「リゴレット」より〝慕わしい人の名は〟
グノー「ロメオとジュリエット」より〝私は夢に生きたい〟

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北斎とジャポニズムコンサート

北斎とジャポニズムコンサート  2025年3月

文化財のデジタル保存を手がけるNTTアートテクノロジーが主催、北斎作品の高精細画像を背景に、ジャポニズムに影響を受けたクラシックを聴くという企画に参加してみた。英国からオンライン登壇の藤倉大さんと案内役の演出家・宮城聰さんの、うちとけた対談が面白かった~ 藤倉さんは北斎の生涯をテーマに新作オペラを作曲中とか。はて、どんな作品になるのか。角田綱亮指揮、東京フィルハーモニー交響楽団。家族連れが目立ち和やかなオーチャードホール、2階前のほう。無料。休憩を挟んで2時間。

以前、浮世絵のレクチャーで、印象派の画家のみならず音楽にも影響を与えた、ドビュッシーがパリの仕事部屋の壁にご存知「神奈川沖浪裏」を飾っていた、と聞いてなんだか嬉しくなった。第一部ではやはり「浪裏」に着想を得た、ラヴェルの「洋上の小舟」で、翻弄される舟に身を任せる。ピアノ曲集「鏡」の第3曲をオケ版で。続くLEOの「箏協奏曲」は抽象的で難しかったけど。
休憩を挟んで同時代のビゼー「カルメン」前奏曲、そして無敵の「ハバネラ」を清水華澄が余裕たっぷりに。トークを挟んで吉田珠代が加わり、プッチーニ「蝶々夫人」から花の二重唱「桜の枝をゆすぶって」、お馴染み「ある晴れた日に」。〆は作曲家本人の希望で、楽譜初版の表紙に「浪裏」をデザインしたことで有名な真打ドビュッシーの交響曲「海」から「風と海の対話」でした。

ロビーには高精細データによるレプリカなど。

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