クラシックコンサート

Music Dialogue「モーツァルト弦楽五重奏曲第5番」「ブラームス弦楽録重奏曲第2番」

Music Dialogue ディスカバリー・シリーズ2022-2023 vol.3  2023年3月

対話を通じて室内楽を楽しみ、若手音楽家を応援する一般社団法人Music Dialogueの演奏会に、足を運んでみた。ヴィオラの大山平一郎芸術監督が指導し、事前にリハーサル初日が拝聴できて、聴衆も支援者ら少人数。解釈を合わせ表現を練っていく過程、なにより演奏家の息づかいが近しく感じられて、とても面白かった。

まず公開リハーサルで中目黒GTプラザホールへ。2000円、休憩を挟んで2時間強。
モーツァルト晩年の弦楽五重奏曲第5番ニ長調、冒頭のチェロが印象的な第一楽章から。ベートーベン以前の繊細な強弱や、「コク」のある音を丁寧に。第4楽章はロッシーニのオペラっぽく、第一ヴァイオリンが躍動。最後に第3楽章のメヌエットで踊る。第一ヴァイオリンは篠原悠那が可愛く伸び伸びと、第2が長身で落ち着いた感じの枝並千花、もうひとりのヴィオラが初対面だというちょっとやんちゃっぽい山本周、全体を締めるチェロは真面目そうな矢部優典。
背後のスクリーンで、ブラームスで加わるチェロの加藤文枝と、ライターの小室敬幸がリアルタイムで、大山氏のコメントなどを解説。聴衆もsli.doで書き込める仕組みに工夫がある。終了後の短い座談会で大山氏の暖かい人柄に触れ、桐朋学園では舞踊の講義があったといったお話も。

わずか3日後、築地本願寺2Fの講堂で本番。4000円、休憩を挟んで2時間強。格(ごう)天井や奥の扉(開演前にお坊さんが開けたら仏像が!)、掛け軸と洋風照明や重厚なカーテンの取り合わせが独特の雰囲気です。小さいステージをぐるり取り囲むスタイルで、貴族の館もかくや、という親密さが嬉しい。
まずリハーサルで聴いたモーツァルト、2曲目はブラームス弦楽録重奏曲第2番ト長調。雄大で恋人アガーテにまつわる音型で知られる第1楽章から、ロマ風の第2楽章をへて、軽やか、穏やかな終幕へ。ステージが近いので、かつて聴いた小澤国際室内楽アカデミー奥志賀などに比べ、格段に奏者の運動量、表現の迫力が感じられて楽しめた。終了後にまた座談会。合わせることの難しさと楽しみ。頑張ってほしいです!

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2022喝采づくし

いろいろあった2022年。エンタメを振り返ると、やっぱり特筆すべきはコンサートで、ドームを巨大ディスコに変えたブルーノ・マーズ、そして年末のピアノ一台の矢野顕子。全く違うジャンルだけど、どちらもライブのグルーブを存分に味わいました。

そしてようやく実現した、團十郎襲名の「助六」。いろいろ批判はあっても、この人ならではの祝祭感が嬉しかった。ほかに歌舞伎では「碇知盛」の菊之助、梅枝が頼もしく感じられ、初代国立劇場さよなら公演がスタートした文楽「奥州安達原」は玉男、勘十郎、玉助らが揃って充実してた。

オペラは新国立劇場で意欲作が多く、なかでもバロック初体験のグルック「オルフェオとエウリディーチェ」の、音楽、演出両方の端正さが忘れがたい。ともに読み替え演出のドビュッシー「ペレアスとメリザンド」、ヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」も洒落ていた。問題作「ボリス・ゴドゥノフ」は衝撃すぎたけど… クラシックの来日ではエリーナ・ガランチャの「カルメン」が格好良かった。

演劇は野田秀樹「パンドラの鐘」、トム・ストッパード「レオポルトシュタット」が、それぞれ今の国際情勢に通じるメッセージ性で突出していた。井上ひさし「紙屋町さくらホテル」やケラ「世界は笑う」の「表現すること」への情熱や、ともに2人芝居だった温かい「ハイゼンブルク」と不条理をねじ伏せる「建築家とアッシリア皇帝」、そして相変わらずひりつく会話劇の岩松了「クランク・イン!」などが心に残った。

語り芸のほうでは期せずして、喬太郎と三三で「品川心中」を聴き比べ。どちらも高水準。一之輔の脱力も引き続きいい。講談の春陽「津山の鬼吹雪」も聴きごたえがあった。

これからも、のんびりエンタメを楽しめる日々でありますよう。

エリーナ・ガランチャ リサイタル

エリーナ・ガランチャ リサイタル2022  2022年6月

2020年から2度延期になったラトヴィア出身、大物メゾがついに降臨。ホールを支配する圧巻の声量、脅威の技巧、多彩な選曲の表現力を堪能する。長身で美形、かつサバサバした印象で気持ちいい。ピアノはエディンバラ生まれのお茶目おじさんマルコム・マルティノー。すみだトリフォニーホール大ホール、かなり前のほうで1万7000円。休憩を挟んで2時間半。

第一部は白ドレスにキラキラショールで、内省的なブラームス歌曲を7曲。最初は初めてのホールで残響が強いかと思ったけど、「永遠の愛について」で、娘が語る強い愛で徐々に盛り上がって安心。ベルリオーズ「ファウストの劫罰」から、マルグリートがファウストを思う「燃える恋の思いに」で一気にドラマチックに。ピアノソロでドビュッシー「月の光」を挟み、お待ちかねサン・サーンス「サムソンとデリラ」より「あなたの声で心は開く」。2018年METライブビューイングで聴いた甘~いアリア。演技も交えつつ、半音階と高音がなんとも気持ちいい。そして少し珍しいグノー「サバの女王」より「身分がなくても偉大な方」で休憩へ。

第二部は黒ドレスとチュールに衣装替えし、チャイコフスキー「オルレアンの少女」よりジャンヌ・ダルクが悲壮感をただよわせつつ使命を歌いあげる「さようなら、故郷の丘」でスタート。迫力。ロシアものに転じ、ラフマニノフの歌曲4曲のあと、ピアノソロで温かいアルベニス「タンゴ ニ長調」。そして本編ラストは、表情豊かにサルスエリを怒濤の3曲。17世紀スペインで生まれた、台詞と舞踊を含むオペラなんですね。以前カウフマンがレハールを固め打ちしたみたいに、得意のレパートリーらしく、どんどんのってきて聴いてるほうもニコニコ。まずバルビエリ「ラバピエスの小理髪師」から「パロマの歌」をリズミカルに。土着的で陽気。続いて軍楽隊長ルペルト・チャピ「エル・バルキレロ」から「とても深いとき」で、深い低音、圧巻の高音の飛躍が凄い。最後はチャピ「セベデオの娘たち」から「とらわれし人の歌」を情熱たっぷりに。大詰め、超絶技巧の転がしで、芝居っけ十分に会場をぐるり見渡して大拍手。

スペイン気分がみなぎり、客席に期待が満ちたところでアンコールへ。「これでしょ?」って感じで、待ってましたビゼー「ハバネラ」。ウインク付き姐さん感満載。そしてまさかのプッチーニ「私のお父さん」マスカーニ「ママも知るとおり」チレアのアリアやラフマニノフの歌曲を、「もう無いわよ」とか笑わせながら、楽々と披露する大サービス。素晴らしかったです!

ホールはステージ後ろ平面にパイプオルガンが陣取る、面白い設計。ホワイエは狭かったかな。先輩夫妻に遭遇。

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ブランデンブルク協奏曲

IDホールディングスPresents ニューイヤーコンサート ブランデンブルク協奏曲全曲演奏会 2022年1月

2022年の幕開けはなんと2年も前、フローレス以来のサントリーホール。JSバッハが1721年ブランデンブルク=シュヴェート辺境伯に献呈した、10人前後の合奏シリーズです。バロックって縁が薄いけど、実はどこかで聞いたことがある、延々おっかけっこが続くメロディーが心地良い。珍しい古楽器が次々登場、楽章の間に移動したりも面白く、全く飽きなかった。大ホール中央の良い席で、休憩を挟み約2時間。

ほとんど立って演奏するのが、まず新鮮だ。ヴァイオリンとオーボエが掛け合いする第1番から、細いホルン、コルノ・ダ・カッチャに目が釘付けになる。音色は牧歌的だけど、すごーく難しそう。チビのヴィオリーノ・ピッコロやファゴットも活躍し、メヌエットに浸る。バスもヴィオローネという古楽器。続いて第4番は、素朴な縦笛のリコーダーがちょっともの悲しくて、なかなかの表現力。前半ラストは弦楽だけになって第3番。いかにもバッハという感じ。何故か避暑地の朝の雨が目に浮かぶ。第2楽章ラストにカデンツァ。
休憩を挟んで、出だしからお馴染みの第5番。横笛のフラウト・トラヴェンソが登場して、優しい音色を聞かせる。通奏低音役のチェンバロに珍しく長いソロがあって、1719年にケーテンの宮廷におねだりしたチェンバロのお披露目だったとか。これがピアノ協奏曲につながるわけだけど、こうして聴くとピアノの抑揚がいかに素晴らしいかを思いますね。続いてまた弦楽だけ、しかもヴィオラ以下、中低音メンバーだけでふくよかな第6番。今度はヴィオラ・ダ・ガンバが二人。チェロより小型で、見た目はちょっと無骨、でも音は優しい。古楽器って概して音量が小さいのかも。ラストは再び大勢でてきて、テンポの良い第2番。コルノ、オーボエ、リコーダー、ヴァイオリンのソロがつながって、空間に広がっていく。
アンコールはまさにバッハ、美しい「G線上のアリア」でした。

演奏家はゲストにヴァイオリン・ヴィオラの豊嶋泰嗣(新日本フィルのコンマス)を迎え、コルノはにこやか福川伸陽。ヴァイオリン・ヴィオラで長身の原田陽、太っちょ丸山韶、リコーダーの宇治川朝政が目立ってたかな。

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Maggio Musicale Fiorentino At-Home Concert

Maggio Musicale Fiorentino At-Home Concert 2020年4月

今度は番外編で、フィレンツェ歌劇場のガラ・コンサートをストリーミングで。日本時間4時からで、うとうとしながらだったけど。
METほど豪華、洗練されてはいないものの、温かい雰囲気。イタリアらしいアバウトさもいい。

冒頭は名誉首席指揮者ズービン・メータが、途中からマスクをとって語り、それからはグリゴーロ、ダムラウ、ヨンチェヴァら、お馴染みのスターが自宅で歌って満足。アメリカのソプラノ、リゼット・オロペーサは綺麗だな。引退したヌッチは口ずさむだけだったけど、元気な姿が見れてよかった。

自宅にシャンデリアが多かったかも。

Alexander Pereira presents.

Zubin Mehta
Krassimira Stoyanova
Nicola Alaimo
Eva Mei
Ambrogio Maestrl
Piero Pretti
Thomas Hampson
Anna Pirozzi
Vittorio Grigolo
Diana Damrau
Sonya Yoncheva
Mikhail Petrenko
Sara Mingardo
Jose Maria Siri
Ludovic Tézier, Cassandre Berthon
Francesco Meli
Cecilia Bartoli
Luca Pisaroni
Rosa Feola
Michele Pertusi
Lisette Oropesa,
Leo Nucci
Saioa Hernández Francesco Galasso
Luca Salsi,
Fabio Sartori

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At Hopme Gala

MET Opera At Home Gala   2020年4月

番外編続きで、今度はNYメットオペラのオンラインコンサート。スターが世界中の自宅から参加して、4時間も! 贅沢だなあ。

圧巻は音楽監督ヤニック・ネゼ=せガンの指揮で、合唱とオケによる「ゆけ、黄金の翼に乗って」。本番ならアンコールだよね。なんだか無性に切なくて泣けた〜 オケはほかにも「カヴァレリアルスティカーナ」「ローエングリン」と感動。

そしてサプライズ出演のディドナートは、コロナに倒れたビオラ奏者の追悼で、ヘンデルの「ラルゴ」を。もちろん名花フレミングも「オテロ」のアヴェマリアで、ルネパペはドレスデンから映画でもお馴染みの「魔笛」で、それぞれ貫禄を見せつける。

ちょっと意外だったのはポレンザーニ。弾き語りで「ロンドンデリー」、ダニーボーイを素朴にも切なく聞かせた。続いてガランチャがリガから、カメラ目線ガンガンで「カルメン」を演じ切ったのが楽しそうで、素晴らしいエンタテーナーぶりでした。ヨンチェバは「ルサルカ」を美しく。

ひときわ楽しかったのはダムラウかな。フランスの自宅キッチンから、夫のテステと「ドン・ジョバンニ」を歌い上げ、最後は2人の息子さんも登場。アラーニャもクルジャクと「愛の妙薬」を、自宅なのにがんがん動き回ってコミカルに歌い上げてて、可愛かった。なかなか歌い終わらないハヴィエル・カマレナも爆笑。ほかにカウフマン、なぜか夫婦ともスタジオからだったネトレプコ、期待のリセット・オロペサ、イザベル・レナード、ピアノ弾き語りのエリンモーリーらと盛り沢山でした。

ちょっと雰囲気を感じる自宅、metの模型や押隈が面白かった。

1 Peter Mattei  ドン・ジョバンニ
Stockholm Archipelago, Sweden 
2 Roberto Alagna and Aleksandra Kurzak  愛の妙薬
Le Raincy, France
3 Anita Rachvelishvili サムソンとデリラ
Tbilisi, Georgia
4 Michael Fabiano オネーギン
Bonita Springs, Florida
5 Renée Flemingオテロ
Virginia
6 The Metropolitan Opera Orchestra カバレリア・ルスティカーナ
7 Joyce DiDonato セルセ「オンブラ・マイ・フ」
8 Jonas Kaufmann ユダヤの女
Munich, Germany
9 Marco Armiliato(指揮者ピアノ)
Lugano, Switzerland
10 Ambrogio Maestri アンドレア・シニエ
Lugano, Switzerland
11 Erin Morley 愛の妙薬
New Haven, Connecticut
12 Michael Volle タンホイザー
Berlin, Germany
13 Elza van den Heever マラン・マレ
Montpellier, France
14 Matthew Polenzani  ロンドンデリー「ダニーボーイ」
Pelham, New York
15 Elīna Garanča カルメン
Riga, Latvia
16 Orchestra ローエングリン
17 Bryn Terfel and Hannah Stone ”If I Can Help Somebody" Mahalia Jackson
Wales
18 Jamie Barton ドンカルロ
Atlanta, Georgia
19 Quinn Kelsey ドンカルロ
Toronto, Canada
20 Angel Blue  ルイーズ
Alpine, New Jersey
21 René Pape 魔笛
Dresden, Germany
22 David Chan(コンサートマスター) タイスの瞑想曲
Closter, New Jersey
23 Ildar Abdrazakov ロミオとジュリエット
Moscow, Russia
24 Joseph Calleja ロミオとジュリエット
Mellieha, Malta
25 Golda Schultz つばめ
Bavaria, Germany
26 Anthony Roth Costanzo ガウラのアマディージ
New York, New York
27 Sonya Yoncheva ルサルカ
Geneva, Switzerland
28 Orchestra+Chorus ナブッコ「行け、我が想いよ、金色の翼に乗って」
29 Nadine Sierra ボエーム
Valencia, Spain
30 Piotr Beczała トスカ
Zabnica, Poland
31 Diana Damrau and Nicolas Testé ドンジョバンニ
Orange, France
32 Lawrence Brownlee 清教徒
Niceville, Florida
33 Gunther Groissböck 無口な女
Lugano, Switzerland
34 Yusif Eyvazov
Vienna, Austria
35 Isabel Leonard ウエスト・サイド・ストーリー「Somewhere」.
New York, New York 
36 Ailyn Pérez and Soloman Howard ルイザミラー
Chicago, Illinois
37 Lisette Oropesa 悪魔のロベール
Baton Rouge, Louisiana
38 Nicole Car and Etienne Dupuis タイス
Paris, France
39 Stephen Costello and Yoon Kwon Costello ファウスト
New York, New York
40 Javier Camarena 海賊
Zurich, Switzerland
41 Anna Netrebko ラフマニノフ6つの歌「歌うな、美しい女よ」
Vienna, Austria

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フローレス コンサート

ファン・ディエゴ・フローレス テノールコンサート  2019年12月

年の瀬に、楽しみにしていたフローレスのコンサートへ。METライブビューイングでお馴染み、1973年ペルー生まれの華麗なロッシーニ唄いだ。サンフランシスコ出身のクリストファー・フランクリン指揮、オケは若々しい東京21世紀管弦楽団。音響抜群のサントリーホール、上手寄り前の方で3万2000円。
フローレスといえば、MET「チェネレントラ」など、超絶技巧とアンコールのイメージが強い。期待通り、ハイCを軽々と決めてくれる。カウフマンや若手グリゴーロと比べると、迫力というより繊細な印象だ。2部構成で、まず得意のロッシーニに始まり、ドニゼッティからヴェルディ。休憩後はノリノリのレハール、マスネ、劇的なグノー、そして定番プッチーニと、幅広い名アリアを聞かせてくれました。
そしてアンコールはやおら椅子が持ち出され、なんとギターの弾き語りをたっぷりと。いやー、サービス精神も素晴らしいです。楽しかった!
以下セットリストです。

・ロッシーニ:オペラ《ラ・チェネレントラ》より 序曲
  Sinfonia from Rossini (Rossini)
・ロッシーニ:歌曲「さらば、ウィーンの人々よ」
  “Addio ai Viennesi” (Rossini)
・ロッシーニ:《老いの過ち》より「ボレロ(黙って嘆こう)」
  “Bolero(Mi lagnerò tacendo)”, from Peches de Vieillesse (Rossini)
・ドニゼッティ:オペラ《ドン・パスクワーレ》より 序曲
  Sinfonia from Don Pasquale (Donizetti)
・ドニゼッティ:オペラ《愛の妙薬》より「人知れぬ涙」
  “Una furtiva lagrima”, from L’elisir d’amore (Donizetti)
・ドニゼッティ:オペラ《ランメルモールのルチア》より
「わが祖先の墓よ……やがてこの世に別れを告げよう」
  “Tombe degli avi miei… Fra poco a me ricovero”, from Lucia di Lammermoor (Donizetti)
・ヴェルディ:オペラ《ルイーザ・ミラー》より 序曲
  Ouverture from Louisa Miller (Verdi)
・ヴェルディ:オペラ《第一次十字軍のロンバルディア人》より
「私の喜びで彼女を包みたい」
   “La mia letizia infondere” , from I Lombardi alla crociata (Verdi)
・ヴェルディ:オペラ《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》より
「あの人から遠く離れて…燃える心を…おお、なんたる恥辱」
  “Lunge da lei… De’miei bollenti spiriti… O mio rimorso” , from La traviata (Verdi)
・レハール:オペレッタ《微笑みの国》より「君はわが心のすべて」
  “Dein ist mein ganzes Herz”, from Das Land des Lächelns (Lehár)
・レハール:オペレッタ《パガニーニ》より「女性へのキスは喜んで」
  “Gern hab’ich die Frau’n geküsst”, from Paganini (Lehár)
・レハール:オペレッタ《ジュディッタ》より「友よ、人生は活きる価値がある」
  “Freunde, das Leben ist Lebenswert”, from Giuditta (Lehár)
・サンサーンス:オペラ《サムソンとデリラ》より バッカナール
  Orchestral Bacchanale from Samson and Delilah (Saint Saens)
・マスネ:オペラ《マノン》より「消え去れ、やさしい面影よ」
  “Ah fuyez, douce image” , from Manon (Massenet)
・グノー:オペラ《ファウスト》第3幕より「この清らかな住まい」
  “Salut! demeure chaste et pure”, from Faust (Bizet)
・マスカーニ:オペラ《カヴァッレリア・ルスティカーナ》より 間奏曲
  Intermezzo, from Cavalleria Rusticana (Mascagni)
・プッチーニ:オペラ《ラ・ボエーム》より「冷たい手を」 
“Che gelida manina”, from Labohéme (Puccini)

ENCORES~
・コンスエロ・ベラスケス:「ベサメ・ムーチョ」 ”Bésame mucho” / Consuelo Velázquez
・キリノ・メンドーサ・イ・コルテス:「シェリト・リンド(愛しい人)」 ”Cielito Lindo” / Quirino Mendoza y Cortés
・トマス・メンデス:「ククルクク・パロマ」”Cucurrucucú paloma” / Tomás Méndez
・アウグスティン・ララ:「グラナダ」 ”Granada” / Agustin Lara
・G.プッチーニ:オペラ《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」 “Nessun dorma”,from Turandot / Giacoo Puccini
・チャブーカ・グランダ:シナモンの花 ”La flor de la canela” / Chabuca Granda

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マリア・カラス

「マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ」特別上映会 2019年8月

番外編で、伝説の歌姫のガラ・コンサート映像をスクリーンで。モノクロ、モノラルながら柔らかい歌声、なんといってもオーラが凄い。銀座ブロッサムで2500円、休憩なしの2時間。
1958年12月パリ・オペラ座デビューとなった、レジオン・ドヌール勲章受章者共済会のための慈善コンサートだ。「トスカ」第2幕を含み、現存するなかで最も完全な形で絶頂期の姿を伝えているという。指揮はオペラ座主席指揮者ジョルジュ・セバスティアン、オペラ座国立劇場管弦楽団・合唱団。
ナレーターがガルニエ宮の外の模様から、フランス大統領ルネ・コティの入場を伝え、幕開けはラ・マルセイエーズ演奏。三連符でお馴染みヴェルディ「運命の力」序曲の後、いよいよ中央後方の幕からカラスが登場する。ヴァン・クリーフ&アーベルのダイヤのネックレスが綺羅びやか。
前半は後ろに合唱を従えたアリア集で、いきなり十八番のベッリーニ「ノルマ」から「反乱を教唆する声だ」「清らかな女神よ」「儀式はこれで終わった」「ああ!初めの頃の誠実な愛が」。52年コヴェントガーデン、56年メトデビューで歌い、スカラ座の女王から世界のディーバに飛躍した極めつけの演目だという。ローブをかき寄せつつ、超絶技巧のコロラトゥーラを存分に。続いてヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」から「行っていいわ…」「恋はバラ色の翼に乗って」「ミゼレーレ」。ロッシーニ「セビリアの理髪師」序曲を挟んで「今の歌声は」。
そして圧巻は後半、セットを組んで上演した「トスカ」第二幕だ。美人ですらりとした立ち姿に加え、憎しみなど強靭な表現力を味わえる。「歌に生き、愛に生き」の感動、そして幕切れのセリフ。スカルピア男爵のティト・ゴッビ(バリトン)、カヴァラドッシのアルベール・ランス(オーストラリアのテノール)と手を携えて、カーテンコールに登場した姿は、意外に控えめでした。
ちなみに1958年といえば、1月にカラスがローマ歌劇場降板というスキャンダルを起こした年。グロンキ大統領ら著名人が臨席しており、不調をおして出演したものの、客席から口笛(野次)を浴び、大臣らが45分も説得したのに結局、1幕で中止となった。さらに今回の映像のオペラ座コンサートは、世紀の恋・海運王オナシスと接近した場でもあったという。ドラマだなあ。
客席にはブリジット・バルドー、ジェラール・フィリップ、シャンソン歌手ジュリエット・グレコ、ジャン・コクトー、作家ルイーズ・ド・ヴィルモランらも訪れ、欧州各国のテレビ中継で100万人が観たそうだ。まさに伝説。

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グリゴーロコンサート

ヴィットリオ・グリゴーロ テノールコンサート  2018年12月

パヴァロッティの再来と称され、2月のMETライブビューイング「トスカ」が最高だった1977年生まれのテノール。その来日に足を運んだ。イタリア男らしいサービス精神とナルシストぶりが文句なく楽しい! 来年予定の生オペラが楽しみです。アーチ・エンタテインメント主催。やや空席があるサントリーホール大ホール、中央の前の方で強気の3万2000円。休憩を挟み2時間。
クラシックリサイタルは1曲ごとに歌手と指揮者が出入りするのが興ざめだけど、今回は曲を追うごとにグリゴーロがヒートアップして飽きさせない。楽々と華やかな声量、表現はもちろん、あり合せの小道具やオケ後ろの通路まで使ってガンガン演技し、歌い終われば臆面なく前方上手の熱心な追っかけに「キャー」を、また2階下手の男性客に「ブラボー」を要求。アンコールではタオルを裂いて投げちゃったり、ベタな演歌歌手か! オペラの良さを広めてほしい、と真面目に語ってたのも印象的でした。
お馴染みを並べた選曲もわかりやすくて、のりのり。前半はイタリアのアリア、後半はフランスもの。指揮はローマ出身で日本で公開講座もしているマルコ・ボエーミ。伴奏は若手を集めた感じのフェスティバルオーケストラ東京。
以下はセットリストです。
第1部
ヴェルディ:オペラ「リゴレット」より「あれかこれか」
ヴェルディ:オペラ「リゴレット」より「女心の歌」
ドニゼッティ:オペラ「ドン・パスクワーレ」序曲
ドニゼッティ:オペラ「愛の妙薬」より「人知れぬ涙」
プッチーニ:オペラ「マノン・レスコー」間奏曲
プッチーニ:オペラ「ラ・ボエーム」より「冷たき手を」
ヴェルディ:オペラ「ナブッコ」序曲
ヴェルディ:オペラ「トロヴァトーレ」より「見よ、恐ろしい炎を」
第2部
マスネ:オペラ「マノン」より「目を閉じれば」(夢の歌)
グノー:オペラ「ロメオとジュリエット」より「ああ、太陽よ、昇れ」
サン=サーンス:オペラ「サムソンとデリラ」より「バッカナール」
マスネ:オペラ「ウェルテル」より「春風よ、何故私を目覚めさせるのか」
ビゼー:「アルルの女」第2組曲より「ファランドール」
オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語」より「クラインザックの歌:むかしアイゼナッハの宮廷に」
encore
プッチーニ:オペラ「トスカ」より「星は光りぬ」
カプア/カプッロ「オー・ソレ・ミオ」

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内田光子シューベルトピアノ・ソナタ第4番、第15番、第21番、サラバンド

内田光子ピアノ・リサイタル シューベルト・ソナタプログラム  2018年11月

秋の一夜、透徹したピアノの音に浸る。そんな感じのコンサートに足を運んだ。サントリーホール大ホール、中央やや上手寄りのいい席で1万4000円。休憩を挟んで2時間弱。
きっかけは村上春樹との対談本で小澤征爾が「度胸がある」等々絶賛していたこと。2017/18シーズンはシューベルトのピアノ・ソナタシリーズとして12作品を選び、ロイヤル・フェスティバル・ホール、ウィーン楽友協会、カーネギーホールなどで演奏会を開催。ラトル指揮ベルリンフィル、サロネン指揮シカゴ響、ドゥダメル指揮ロサンジェルスフィルと共演したとか。凄すぎます。
細い長身で、年末には70歳になるとは思えない、颯爽とした感じで登場。おもむろに赤い布で持ってきたメガネをかけ、ときにメガネを直しながら、わりあい淡々と進行。残念ながら私は猫に小判ながら、余白の部分から強靭な集中力が伝わってくる。
曲目はまず第4番イ短調D.537。のっけからシチリアーノ(符点リズム)の粒だった音が、石畳をいくよう。ピアノってヨーロッパの香りがする、なんて思う。華麗。3楽章を弾き終えて、拍手に答えて小さくうなづく仕草は、なんだか可愛らしい。
いったん袖に引っ込んで、第15番ハ長調D.840。通称レリーク(遺作)の、シューベルトが完成した2楽章まで。低音のリズムや広がっていく高音が、明るくて染みる。
休憩20分の間に、ホワイエで偶然出会った知人とおしゃべり。席に戻ると、2階の上手席に報道カメラが大勢来ていて何事かと思ったら、なんと美智子さまがいらしたのでした。満場のスタンディングオベーションに静かに答えていて、当たり前ながら上品~ 
親交があるとかで、再登場した内田光子は美智子さまを見上げ、胸に手を当てて挨拶してから、第21番変ロ長調D.960。わずか31年の人生を駆け抜けた作曲家の、最後のピアノソナタ4楽章をたっぷりと。親しみやすい童謡のようなメロディーと、複雑な転調、鮮やかな起伏に引き込まれました~
アンコールはバッハ「フランス組曲5番」よりサラバンド(3拍子の舞曲)。英国籍でデイムの称号を受けているとか、作品に対する深く知的な解釈で2度もグラミー賞を得ているとか、パートナーがブレア外交の支柱ロバート・クーパーだとか、いろいろ情報はあるけど、今夜はとにかくシンプルに贅沢した!と思えて、大満足しました。

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