クラシックコンサート

北斎とジャポニズムコンサート

北斎とジャポニズムコンサート  2025年3月

文化財のデジタル保存を手がけるNTTアートテクノロジーが主催、北斎作品の高精細画像を背景に、ジャポニズムに影響を受けたクラシックを聴くという企画に参加してみた。英国からオンライン登壇の藤倉大さんと案内役の演出家・宮城聰さんの、うちとけた対談が面白かった~ 藤倉さんは北斎の生涯をテーマに新作オペラを作曲中とか。はて、どんな作品になるのか。角田綱亮指揮、東京フィルハーモニー交響楽団。家族連れが目立ち和やかなオーチャードホール、2階前のほう。無料。休憩を挟んで2時間。

以前、浮世絵のレクチャーで、印象派の画家のみならず音楽にも影響を与えた、ドビュッシーがパリの仕事部屋の壁にご存知「神奈川沖浪裏」を飾っていた、と聞いてなんだか嬉しくなった。第一部ではやはり「浪裏」に着想を得た、ラヴェルの「洋上の小舟」で、翻弄される舟に身を任せる。ピアノ曲集「鏡」の第3曲をオケ版で。続くLEOの「箏協奏曲」は抽象的で難しかったけど。
休憩を挟んで同時代のビゼー「カルメン」前奏曲、そして無敵の「ハバネラ」を清水華澄が余裕たっぷりに。トークを挟んで吉田珠代が加わり、プッチーニ「蝶々夫人」から花の二重唱「桜の枝をゆすぶって」、お馴染み「ある晴れた日に」。〆は作曲家本人の希望で、楽譜初版の表紙に「浪裏」をデザインしたことで有名な真打ドビュッシーの交響曲「海」から「風と海の対話」でした。

ロビーには高精細データによるレプリカなど。

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2024年喝采尽くし

いろいろあった2024年。特筆したいのは幸運にも蒸せかえる新宿で、勘三郎やニナガワさんが求め続けたテント芝居「おちょこの傘もつメリー・ポピンズ」(中村勘九郎ら)、そして桜満開の季節に、日本最古の芝居小屋「こんぴら歌舞伎」(市川幸四郎ら)を体験できたこと。「場」全体の魅力という、舞台の原点に触れた気がした。
一方で世界の不穏を背景に、ウクライナとロシア出身の音楽家が力を合わせた新国立劇場オペラ「エフゲニ・オネーギン」のチャレンジに拍手。それぞれの手法で戦争や核の罪をえぐる野田秀樹「正三角形」、岩松了「峠の我が家」、ケラリーノ・サンドラヴィッチ「骨と軽蔑」、上村聡史「白衛軍」が胸に迫った。

歌舞伎は現役黄金コンビ・ニザタマによる歌舞伎座「於染久松」は別格として、急きょ駆けつけた市川團子の「ヤマトタケル」に、團子自身の人間ドラマが重なって圧倒された。その延長線で格好良かったのは、演劇で藤原竜也の「中村仲蔵」。團子同様、仲蔵と藤原の存在が見事にシンクロし、舞台に魅せられた者の宿命をひしひしと。

そのほか演劇では「う蝕」の横山拓也、木ノ下歌舞伎「三人吉三廓初買」の杉原邦生という気鋭のセンスに、次代への期待が膨らんだ。リアルならではの演出としては、白井晃「メディスン」のドラムや、倉持裕「帰れない男」の層になったセットに、心がざわついた。
俳優だと「正三角形」の長澤まさみ、「峠の我が家」の仲野太賀、二階堂ふみ、「う蝕」の坂東龍汰が楽しみかな。

文楽は引き続き、東京での劇場が定まらずに気の毒。でも「阿古屋」で、桐竹勘十郎、吉田玉助、鶴澤寛太郎の顔合わせの三曲がパワーを見せつけたし、ジブリアニメの背景を使った「曾根崎心中」をひっさげて米国公演を成功させて、頼もしいぞ!

音楽では、加藤和彦の足跡を描いた秀逸なドキュメンタリー映画「トノバン」をきっかけに、「黒船来航50周年」と銘打った高中正義のコンサートに足を運べて、感慨深かった。もちろん肩の力が抜けた感じで上質だった久保田利伸や、エルトン・ジョン作曲のミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」(日本人キャスト)、クラシックでいつもニマニマしちゃう反田恭平&JNO、脇園彩のオールロッシーニのリサイタルも楽しかった~ 

このほか落語の柳家喬太郎、立川談春、講談の神田春陽は安定感。
2025年、社会も個人としても、舞台に浸れる有り難い環境が続くことを切に祈りつつ…

JNOベートーヴェン「コリオラン」「交響曲第2番」「ピアノ協奏曲第5番」「ピアノ協奏曲第4番より第2楽章」

反田恭平 Japan National Orchestra 2024夏ツアー 2024年9月

ピアニスト反田恭平がプロデュースする楽しみなコンサート。若いソリスト集団がきびきびとして、客席も応援ムードで気持ちが良い。ステージ後方までよく入ったサントリーホール大ホール、前のほう上手寄りで8000円。休憩を挟み2時間。

プログラムはオールベートーヴェン。反田くん指揮で、まず序曲「コリオラン」作品62。30代半ばのベートーヴェンが、人気の悲劇に刺激を受けて作曲し、原作者に献呈したとか。ハ短調で重苦しく、ラストの繊細なピチカートが格好良い。
続いて交響曲第2番ニ長調作品36。弦楽器の膨らみから、木管の変化、第3楽章の力強いスケルツォを経て、複雑なリズムの終章へと、変化に富む。

休憩後はセンターにピアノをすえて、ピアノ協奏曲第五番変ホ長調「皇帝」作品73。反田くんの弾き振りは、華やかな技巧を披露しつつ、時折立ち上がりピアノに乗り出すように指揮していて、大忙しだ。フランス革命に騒然とするウィーンの地下室で、独奏とオケがアンサンブルする形式を生み出し、ロマン派以降の協奏曲につながったという。そんな合奏が盛り上がる第1楽章、穏やかな第2楽章、続いて第3楽章はピアノとオケがやりとりしながら、力強く加速していく。大拍手。
アンコールはピアノ協奏曲第4番ト長調作品58より、第2楽章Andante con motoでした~

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ブダペスト交響楽団「セビリアの理髪師」「リスト ピアノ協奏曲第1番」「チャイコフスキー 交響曲第5番」

ハンガリー・ブダペスト交響楽団 2024年6月

炎のマエストロ小林研一郎指揮、ピアノは2001年生まれ22歳の亀井聖矢(まさや)という期待のコンサート。年配のかたが多く温かい雰囲気の武蔵野市民文化会館大ホール、前の方の良い席で7000円。休憩を挟み2時間。

のっけからコバケンが、独特のとつとつとした口調で、50年にわたるオケとの縁を語る。30代になっていた1974年の第1回ブダペスト国際指揮者コンクールで、120曲の課題曲からベートーベンとロッシーニを引き当て、第一位となって飛躍したそうで、まずその「セヴィリアの理髪師序曲」を朗らかに。お馴染みヴァイオリンとヴィオラのユニゾンの第1主題が美しい。
続いてピアノを前方に移して、すらっとした亀井君が登場。技巧が華やかなリスト「ピアノ協奏曲第1番変ホ長調」を存分に。1楽章、弦楽器に続く導入からパワフルだ。楽器の応酬が美しい2楽章に続き、3楽章はトライアングルとの掛け合いを可愛く。そこから4楽章にかけて、アクションもどんどん大きくなり、ペダルを踏む足にも力がこもって盛り上がる。
拍手鳴り止まず、何やら話していたコバケンがバイオリンのかたと一緒に座っちゃったと思ったら、なんとピアノソロのアンコールで「ラ・カンパネラ」。力任せの感じもあったけど、たいしたスターぶりです。2022年に若手登竜門のロン・ティボー国際音楽コンクール第1位、飛び級の桐朋学園大をへて独カールスルーエ音楽大に在籍とのこと。精力的にツアーもこなす。伸び伸び活躍してほしいなあ。

休憩のあとは、こちらも民族風味がキャッチーなチャイコフスキー「交響曲第5番ホ短調」。1楽章でクラリネットが重々しい「運命の主題」を奏で、ポーランド民謡の旋律も。低弦に始まる2楽章はホルン、オーボエが美しい。ワルツの3楽章をへて、4楽章は「運命の主題」を軸にこれでもかと壮大に。コバケンは振り返り、客席後方を眺めちゃって、雄大な大地がみえるよう。ロシアは難しい情勢だけど、文化に罪は無いものね。
大拍手のあと、コバケン流で、とコメントして、ブラームス「ハンガリー舞曲」! ゆったりとした導入から徐々に熱を帯び、スカッと幕となりました~

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脇園彩リサイタル

脇園彩メゾソプラノ・リサイタル 2024年3月

昨秋の「ノルマ」が見事だった脇園彩の、メゾらしいオールロッシーニのリサイタルへ。しかも代表作「セビリアの理髪師」など喜劇ではなく正歌劇(悲劇)を選び、ロールデビューの準備など、明確な意図を感じさせる知的なプログラムだ。リズミカルな歌曲は、名声と恋に彩られた作曲家の人生を掘り下げている感じかな。
後半ちょっと疲れた箇所もあったけど、まっすぐ響く芯の強い声と驚異的なアジリタ、長身で姉御っぽい魅力を堪能。まさに充実期に巡り会う幸運を思う。ピアノはコレペティトールとして著名劇場に関わり、著名歌手からの信頼も厚いというミケーレ・デリーア。紀尾井ホールの前のほう、中央の良い席で6000円。休憩を挟んで二時間。

幕開きはナポリ時代のオペラ「湖上の美人」から聡明なヒロイン、エレナ登場のアリア。2015年METで極め付けディドナートを聴いた夢心地が蘇る。ロッシーニが恋人イザベラ・コルブランを前提に書いたとか。脇園さん、はまり役です。
同時期の歌曲を挟み、オペラ「イングランドの女王エリザベッタ」冒頭の女王のアリアで技巧が炸裂。10月にパレルモのマッシモ劇場でロールデューするそうで、練り込み中ですね。ちなみにこのオペラの序曲は「セビリアの理髪師」序曲に転用されているとか。ロッシーニがオペラ引退後のパリ時代、私的サロンのために書いた「音楽の夜会」の楽しい歌曲のあと、前半ラスト「湖上の美人」のフィナーレは、2オクターブを超える音域とジェットコースターのような超絶技巧を堂々と。聴衆いやがおうにも盛り上がる。

休憩を挟んで後半は、珍しい歌劇「ビアンカとフェリエーロ」からズボン役の将軍ファッリエーロの凱旋のアリア。こちらは夏に、生地ペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティバルでロールデビューを予定しているとのことで、またまた技巧満載。そして息つく暇なく「オテッロ」のデズデモーナの長大なアリアを、叙情たっぷりに。オペラ歌手だなあ。
いったんピアノソロとなり、ロッシーニが晩年、パリの自宅サロンなどで披露した小品集から。よく知られたオペラの旋律がオムニバスになっていて、題名を言いながら弾くスタイルが楽しい。大詰めはナポリ時代に戻って、歌劇「マホメット2世」から敵将への愛と祖国ベネツィア領ネグロポンテに対する義務に引き裂かれるヒロイン、アンナのアリア。オペラ終盤の高ぶる感情を、三連音で切々と。ラストは再び「ビアンカとファッリエーロ」から、クライマックスで死を覚悟したファッリエーロのアリア。めまぐるしい音の動きをドラマチックに聴かせました~
オペラは暗譜、歌曲は譜面台を置くスタイルでした。

これだけでも十分だけど、そこは脇園さん、アンコールもたっぷり。お待ちかね喜劇から定番「セビリアの理髪師」からロジーナのアリア、そして同時期の「イタリアのトルコ人」からヒロイン、ヒィオリッラ(ソプラノ!)のアリア。そして20世紀初頭の米国で、オペレッタやミュージカルでも活躍したハーバートを1曲。サービス精神あふれるエンタテナーぶりに感服しました。

ロッシーニは誕生日が1792年の2月29日。プログラムには「昨日は58回目の誕生日だった」と洒落た紹介も。ロビーでは同僚やエンタメ仲間と会いしました。
以下セットリストです。

・歌劇『湖上の美人』より「おお暁の光よ」
  ”O mattutini albori” from La donna del lago
・「ひどい女」 Beltà crudele
・「吟遊詩人」 Il Trovatore
・歌劇『イングランドの女王エリザベッタ』より「私の心にどれほど喜ばしいことか」
  ”Quant'è grato all'alma mia” from Elisabetta Regina d'Inghilterra
・「約束」 La promessa
・「誘い」 L'invito
・歌劇『湖上の美人』より「胸の想いは満ち溢れ」
  ”Tanti affetti in tal momento” from La donna del lago
・歌劇『ビアンカとファッリエーロ』より「アドリアのために剣を取るなら」
  ”Se per l'Adria il ferro strinsi” from Bianca e Falliero
・歌劇『オテッロ』より「柳の歌〜祈り」
  ”Canzone del salice〜Preghiera” from Otello
・『老いの過ち』第9巻より 「我が最期の旅のための行進曲と思い出」 (ピアノソロ)
  “Marche et Réminiscences pour mon dernier voyage” from Péchés de vieillesse
・歌劇『マホメット2世』より「神よこの危機のさなかに」
  “Giusto ciel in tal periglio” from Maometto II
・歌劇『ビアンカとファッリエーロ』より「お前は知らぬ、どんなにひどい打撃を」
  “Tu non sai qual colpo atroce” from Bianca e Falliero
【Encore】
・歌劇『セビリアの理髪師』より「今の歌声は」
  “Una voce poco fa” from Il Barbiere di Siviglia
・歌劇『イタリアのトルコ人』より「これより馬鹿げたことはないわ」
  “Non si dà follia maggiore” from Il Turco in Italia
・V.ハーバート:Art is calling for me

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反田恭平&ジャパン・ナショナル・オーケストラ

反田恭平&ジャパン・ナショナル・オーケストラ コンサートツアー2024  2024年2月

去年秋、大雨の中で聴いた東大寺奉納公演以来、五か月ぶりに反田恭平&JNO(ジャパン・ナショナル・オーケストラ)の コンサートへ。若さ溢れるオケと、指揮者・反田くんのオケへの愛情、キラキラしたピアノで幸せ一杯だ。ファンが集まった感じのサントリーホールのなんと3列目、指揮とピアノがよく見える上手寄りで8000円。休憩を挟んで2時間。
前半は意欲的に、まずラヴェルの組曲「クープランクの墓」(管弦楽版)。一次大戦で亡くなった友人6人の追悼がテーマだそうで、6曲の変化にメリハリがあり、木管が活躍。大がかりな舞台転換があって、2曲目は技巧派プーランクの「 ピアノと18の楽器のための舞踏協奏曲『オーバード』FP51a」は、なんとヴァイオリン不在でヴィオラがトップ。冒頭から響く金管楽器のファンファーレも重々しい。ピアノは上手側に鍵盤が向く配置になり、ティンパニとの激しい打楽器対決など手元がよく見えて面白かった。それにしても指揮とピアノ、忙しすぎ。

休憩を挟んで後半は、聴いて安心なモーツアルト。3曲目はお馴染み「歌劇『ドン・ジョヴァンニ』序曲 K.527」。舞台の華やかさと衝撃が目に浮かぶ。反田くんは将来オペラを指揮したいので序曲から勉強しているそうだ。いつか聴くぞ! また舞台転換があって、ラストはドラマティックに「 ピアノ協奏曲第20番ニ短調」。ピアノが中央、客席に背を向ける配置になり、今度は右側からじっくり。なんて美しい音楽。

アンコールもまずモーツァルトで、「クラリネット5重奏曲イ長調」2楽章。セットを下手に寄せ、JNOの5人が立って演奏。イタリア出身のクラリネット、ベヴェラリの表情が豊かで、和やかな空気が会場に満ちる。舞台上の椅子に座って見守る反田くんもいい。
そして反田くんがピアノソロで「シューマン(リスト編曲)献呈」を披露。シューマンが歌曲集「ミルテの花」で、妻クララに送ったシンプルな原曲を、リストが装飾たっぷりに編曲したという、超絶技巧が満載。音の粒が優しく、キラキラと立ち上って宝石箱のようでした~

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2023年喝采尽くし

2023年は遠出したエンタメが充実しました!
なんといっても11月のボローニャ歌劇場「ノルマ」。ドラマティックな歌唱と演奏、初のびわ湖ホールの素晴らしい景観と、脇園彩さんらが来てくれた懇親会まで、めちゃくちゃ楽しかった。
そして夏の内子座文楽。勘十郎、玉男、和生と人間国宝揃い踏みの鏡割りに始まり、座頭沢市に玉助で「壺坂観音霊験記」。書き割りが倒れちゃったりして、手作りの芝居小屋感も満喫した。
番外編で、反田恭平率いるJapan National Orchestoraの東大寺奉納公演も。大仏前の野外特設会場で、あいにくの土砂降りとなったけど、貴重な経験でした~

伝統芸能では残念ながら国立劇場が閉場となり、掉尾を飾る文楽は極め付け「菅原伝授」。藤太夫が舞台袖から「待てらう」と呼ばわり、偉丈夫・松王丸の玉助が登場して拍手。記念の公演での大役、めでたい限り。
歌舞伎は定番「妹背山婦女庭訓」の後半で菊之助、梅枝、米吉が並び、芝翫が未来への期待を語って感慨深かった。思いがけず隣に劇場の設計・監修に当たったかた(御年93歳!)が座られ、おしゃべりしちゃう思い出も。ほかに4月の歌舞伎座では、毎公演一世一代の感があるニザタマコンビの「切られ与三」を堪能。
落語はコロナ明けを実感した5月浅草の談春「お若伊之助」、小春志真打昇進披露で面倒をみる一之輔「加賀の千代」が印象的だった。講談は日本シリーズにやきもきしつつの春陽「清水次郎長伝」が面白かった。

世界で暗い話題が続くなか、演劇は戦争の大義を問うデイヴィッド・へイグ「My Boy Jack」を上村聡史が演出、重く響く名作だった。前川知大「人魂を届けに」はローンオフェンダーの絶望とそれを受け止める覚悟が鮮烈で、新たな代表作に。新鋭では加藤拓也「いつぞやは」が、亡き友への思いを淡々とスタイリッシュにつづり、橋本淳ら俳優陣も高水準だった。安定のこまつ座、NODA・MAP、阿佐ヶ谷スパイダース、岩松了さん、そして四半世紀ぶり三谷幸喜演出の「笑の大学」も。

コンサートは35周年エレカシの、不動のライブハウス感がさすがだった~ もちろんユーミン、ドリカムも満喫。
いろいろ先の見えない2024年だけど、どうかひとつでも多く、ワクワクの舞台に出会えますように!

JNO東大寺奉納公演

東大寺開山良弁僧正1250年 御遠忌慶讃 東大寺奉納公演 2023年10月

奈良を拠点に、反田恭平が率いるJapan National Orchestora(株式会社!)が、自ら主催する公演。なんと東大寺大仏殿の前庭の野外特設会場で。雨天決行のところ、あいにくの土砂降りとなってしまい、2000人近い熱心な観客が、入口で記念品と共に配られたポンチョに身を包んで、滝行のように聴くというシチュエーション。野外用の貸し出し楽器を使ったとのこと。それでも雨音と同時に鐘の音が聞こえたりして、世界で活躍する若い音楽家たちのエネルギーと、雄大な古都の歴史を思う貴重な時間。2万円。

まずショパン「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ作品22」の協奏曲バージョン。反田氏の祈りのようなピアノソロから、ホルンのファンファーレで、民族舞曲ポロネーズに至る展開がダイナミック。ロシア支配下のポーランドを思う曲だものなあ。オーボエの荒木奏美らが活躍。奉納ということで、大仏に向けてピアノを配置していた。
休憩を挟んで後半は、ブラームス「交響曲第1番ハ短調 作品68」。ブラームスが偉大なベートーヴェンを意識したか、完成に20年をかけたという最初の交響曲。ホルン、テューバ、ファゴットが多めの編成で、短調から長調に至る雄大な演奏。岡本誠司は果敢にコンマスソロ。

開演前には二月堂まで足を運び、文楽でお馴染み、初代別当の伝説で知られる良弁杉も観ました~

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Music Dialogue「モーツァルト弦楽五重奏曲第5番」「ブラームス弦楽録重奏曲第2番」

Music Dialogue ディスカバリー・シリーズ2022-2023 vol.3  2023年3月

対話を通じて室内楽を楽しみ、若手音楽家を応援する一般社団法人Music Dialogueの演奏会に、足を運んでみた。ヴィオラの大山平一郎芸術監督が指導し、事前にリハーサル初日が拝聴できて、聴衆も支援者ら少人数。解釈を合わせ表現を練っていく過程、なにより演奏家の息づかいが近しく感じられて、とても面白かった。

まず公開リハーサルで中目黒GTプラザホールへ。2000円、休憩を挟んで2時間強。
モーツァルト晩年の弦楽五重奏曲第5番ニ長調、冒頭のチェロが印象的な第一楽章から。ベートーベン以前の繊細な強弱や、「コク」のある音を丁寧に。第4楽章はロッシーニのオペラっぽく、第一ヴァイオリンが躍動。最後に第3楽章のメヌエットで踊る。第一ヴァイオリンは篠原悠那が可愛く伸び伸びと、第2が長身で落ち着いた感じの枝並千花、もうひとりのヴィオラが初対面だというちょっとやんちゃっぽい山本周、全体を締めるチェロは真面目そうな矢部優典。
背後のスクリーンで、ブラームスで加わるチェロの加藤文枝と、ライターの小室敬幸がリアルタイムで、大山氏のコメントなどを解説。聴衆もsli.doで書き込める仕組みに工夫がある。終了後の短い座談会で大山氏の暖かい人柄に触れ、桐朋学園では舞踊の講義があったといったお話も。

わずか3日後、築地本願寺2Fの講堂で本番。4000円、休憩を挟んで2時間強。格(ごう)天井や奥の扉(開演前にお坊さんが開けたら仏像が!)、掛け軸と洋風照明や重厚なカーテンの取り合わせが独特の雰囲気です。小さいステージをぐるり取り囲むスタイルで、貴族の館もかくや、という親密さが嬉しい。
まずリハーサルで聴いたモーツァルト、2曲目はブラームス弦楽録重奏曲第2番ト長調。雄大で恋人アガーテにまつわる音型で知られる第1楽章から、ロマ風の第2楽章をへて、軽やか、穏やかな終幕へ。ステージが近いので、かつて聴いた小澤国際室内楽アカデミー奥志賀などに比べ、格段に奏者の運動量、表現の迫力が感じられて楽しめた。終了後にまた座談会。合わせることの難しさと楽しみ。頑張ってほしいです!

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バッハ名曲演奏会

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2回目のニューイヤーでバロックに浸る。初めてサントリーホールの壮大なパイプオルガンを聴くことができ、大感激でした~ 大ホール、前のほう中央のいい席で。

まず国内外で活躍する大木麻理さんのオルガンソロで。のっけからお馴染みトッカータとフーガで、5898本ものパイプが鳴る鳴る。4段手鍵盤と足鍵盤を駆使しての超絶技巧は、相当な重労働だ。さらにトランペットの斎藤秀範さんが加わって、荘厳かつ素朴に。
休憩後は昨年も聴いたブランデンブルク協奏曲から。2本のヴィオラを軸に合奏が楽しい6番、各3本のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが生き生きと合奏する3番。そして西山まりえさんのチェンバロ協奏曲となる5番。リーダーの崎谷直人さんは神奈川フィルハーモニー管弦楽団の前ソロコンサートマスターで、ウェールズ弦楽四重奏団などで活躍しているそうです。
ほかいろいろな組み合わせで登場するのは、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ビオラ・ダ・ガンバ。若手から新日本フィル、神奈川フィル、N響の奏者、古楽コンサートをプロデュースするベテランまで多彩です。
以下プログラムです。

トッカータとフーガ ニ短調
「目覚めよと呼ぶ声あり」
カンタータ156番「わが片足すでに墓穴に入りぬ」 第1曲シンフォニア
カンタータ「楽しき狩りこそわが悦び」第9曲「羊は安らかに草を食み」
カンタータ「神の時こそいと良き時」より第1曲「ソナティナ」
小フーガ ト短調
協奏曲第4番 ハ長調
ブランデンブルク協奏曲
 第6番 変ロ長調
 第3番 ト長調
 第5番 ニ長調

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