金閣寺
Bunkamura Produce2026 マルコス浄瑠璃「金閣寺」 2026年8月
1982年スペイン・バレンシア生まれ、パリ・オペラ座などに招かれている振付・演出家のマルコス・モラウによる話題の新作だ。三島由紀夫「金閣寺」から発想し、切れ味鋭いコンテンポラリーダンスに歌舞伎、文楽人形をまじえ、既存のジャンルを超えて美への憧憬と破滅の衝動を表現。
ダンスは慣れないので心配だったけど、どうしてどうして。鮮烈な身体表現が眼前に迫り、休憩を挟んで2時間がちっとも長くない。命ある者と、つくりものの人形の境が溶ける不思議。マルコスのダンスカンパニーLa Veronal(ラ・ヴェロナル)とBunkamuraの共同制作で、プロデューサーはK-BALLETなどの高野泰樹。幅広い分野のファンが集まった東京芸術劇場プレイハウスの前の方、やや下手寄りで1万5000円。
いきなり舞台前面に、すすけて穴だらけの定式幕。中村壱太郎が穴からぬっと顔を出し、自ら白粉を塗っていく。これから異界が展開するということが印象づけられる、強烈な導入だ。
幕が開くとそこは暗い焼け跡。灰が床一面を覆う。その灰を巻き上げながら、ベルリン国立バレエなどの精鋭ダンサー7人が精緻な群舞を繰り広げて圧巻。ストーリーはなく全編、美に魅入られた者が見る幻影のよう。モノクロの情景のなか、大詰めで赤い布とともに瓦礫が金箔に転じ、鮮やかに美が再生する。美術はマックス・グエンツェル。
ダンサーの超絶技巧は人間離れしていて、ときに人形ぶりを思わせる。対する壱太郎が扇を操り、キレの良い歌舞伎の技を繰り出して一歩もひけをとらない。ひとり異質な吉田玉助(左に簑紫郎、足は玉延)の文楽人形は生き生きと、しかし人ならざる存在を体現。ラストを締めて、人間の寿命を超える永遠の美を見届ける。邦舞振付は壱太郎こと吾妻徳陽と花柳源九郎。
ダンサーに抱きかかえられちゃう13歳の尾上眞秀が愛らしく、18歳のアイドル末永光も健闘。誰が何の役という前提はないそうだけど、炭になった断片を積み続ける末永が溝口、壱太郎と眞秀が金閣の残酷さとピュアさ、玉助が三島を表わす感じ。
音楽はマリア・アルナルが牽引。黒い塔風の衣装で歩き回りながら、ロベルト・ファティーニのスペイン語・カタルーニャ語詞を歌う。無調のような民族音楽のような、伸びやかで切ない歌声だ。一方、後方上手寄りに竹本拓太夫と鶴澤繁二が陣取り、力強く語ってリズムを生む。浄瑠璃は鶴澤慎治作で、詞章に禅の公案「百丈野狐」やいろは歌、経文を散りばめた。歌舞伎の竹本連中なんですねえ。
シルヴィア・ドゥラニョーの衣装は、ダンサーの白いスカートが大きく広がって美しい。欧州の民族衣装に楯の会のイメージを重ねていて、後半、ガウンが釣り上がっちゃう演出に意表をつかれる。
それにしても玉助さんや壱太郎さんが短い稽古期間、慣れない装置でこれだけの完成度とは。伝統芸能の底力、恐るべし。ロビーでは演目に合わせたカクテルもあって楽しい。
























