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金閣寺

Bunkamura Produce2026 マルコス浄瑠璃「金閣寺」  2026年8月

1982年スペイン・バレンシア生まれ、パリ・オペラ座などに招かれている振付・演出家のマルコス・モラウによる話題の新作だ。三島由紀夫「金閣寺」から発想し、切れ味鋭いコンテンポラリーダンスに歌舞伎、文楽人形をまじえ、既存のジャンルを超えて美への憧憬と破滅の衝動を表現。
ダンスは慣れないので心配だったけど、どうしてどうして。鮮烈な身体表現が眼前に迫り、休憩を挟んで2時間がちっとも長くない。命ある者と、つくりものの人形の境が溶ける不思議。マルコスのダンスカンパニーLa Veronal(ラ・ヴェロナル)とBunkamuraの共同制作で、プロデューサーはK-BALLETなどの高野泰樹。幅広い分野のファンが集まった東京芸術劇場プレイハウスの前の方、やや下手寄りで1万5000円。

いきなり舞台前面に、すすけて穴だらけの定式幕。中村壱太郎が穴からぬっと顔を出し、自ら白粉を塗っていく。これから異界が展開するということが印象づけられる、強烈な導入だ。
幕が開くとそこは暗い焼け跡。灰が床一面を覆う。その灰を巻き上げながら、ベルリン国立バレエなどの精鋭ダンサー7人が精緻な群舞を繰り広げて圧巻。ストーリーはなく全編、美に魅入られた者が見る幻影のよう。モノクロの情景のなか、大詰めで赤い布とともに瓦礫が金箔に転じ、鮮やかに美が再生する。美術はマックス・グエンツェル。

ダンサーの超絶技巧は人間離れしていて、ときに人形ぶりを思わせる。対する壱太郎が扇を操り、キレの良い歌舞伎の技を繰り出して一歩もひけをとらない。ひとり異質な吉田玉助(左に簑紫郎、足は玉延)の文楽人形は生き生きと、しかし人ならざる存在を体現。ラストを締めて、人間の寿命を超える永遠の美を見届ける。邦舞振付は壱太郎こと吾妻徳陽と花柳源九郎。
ダンサーに抱きかかえられちゃう13歳の尾上眞秀が愛らしく、18歳のアイドル末永光も健闘。誰が何の役という前提はないそうだけど、炭になった断片を積み続ける末永が溝口、壱太郎と眞秀が金閣の残酷さとピュアさ、玉助が三島を表わす感じ。

音楽はマリア・アルナルが牽引。黒い塔風の衣装で歩き回りながら、ロベルト・ファティーニのスペイン語・カタルーニャ語詞を歌う。無調のような民族音楽のような、伸びやかで切ない歌声だ。一方、後方上手寄りに竹本拓太夫と鶴澤繁二が陣取り、力強く語ってリズムを生む。浄瑠璃は鶴澤慎治作で、詞章に禅の公案「百丈野狐」やいろは歌、経文を散りばめた。歌舞伎の竹本連中なんですねえ。
シルヴィア・ドゥラニョーの衣装は、ダンサーの白いスカートが大きく広がって美しい。欧州の民族衣装に楯の会のイメージを重ねていて、後半、ガウンが釣り上がっちゃう演出に意表をつかれる。

それにしても玉助さんや壱太郎さんが短い稽古期間、慣れない装置でこれだけの完成度とは。伝統芸能の底力、恐るべし。ロビーでは演目に合わせたカクテルもあって楽しい。
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ピカソぶっと飛ばせなくて、ごめん

東京にこにこちゃん本公演「ピカソぶっと飛ばせなくて、ごめん」  2026年8月

狭い劇場ロビーで身長192cmと、目立つ萩田頌豊与(はぎた・つぐとよ)が観客を迎える。萩田作・演出の新作は、嘘の多かった父の半生を笑いでたどる。コントをたたみかけて客席もよく反応し、全編お笑いライブのような盛り上がり。ナンセンスは嫌いではないけれど、後半の哀愁とラストの重みは消化不良ぎみか。萩田は中学2年で父の孤独死に遭遇したそうで、その衝撃は想像を絶し、消化できるわけがない。それでも描かずにはいられないということかな。劇団初進出のスズナリ、中央あたりで4500円。休憩無しの1時間半。

無頼だった父をテーマにするのは3作目とか。佐渡から画家の夢を抱いて上京し、パリに渡ったものの成功せず、離婚結婚を繰り返し、どうやら逮捕歴もあり…。両親や兄、妻たちがどんな人物で、どんな関係だったのか、どんな仕事をしていたのか、すべては不確かなまま。なにしろ小学生のとき初めて見せられた「バトル・ロワイヤル」を、自分が監督したと言っていたとか。父の虚構に、劇作の虚構が重なっていく。

劇団といっても主宰の萩田ひとりで、全員客演の俳優が入れ替わり立ち替わり、切れ目なくギャグを繰り出してパワーがある。主人公のお笑いコンビ・エレキコミックの今立進、その兄の立川志らく門下で劇団「地蔵中毒」に参加している立川がじら、萩田にあたる息子の同じく劇団「地蔵中毒」の東野良平が安定。妻たちを演じるのは佐渡の猛女に高畑遊(劇団ナカゴー)、変な訛りの西出結、話を聞かない木乃江祐希(ナイロン100℃)、パリコレモデル!にお馴染み猫背椿。腐れ縁の友人は素朴なてっぺい右利き(ユニット・パ萬)。母などの加藤美佐江が、意味不明の飛び道具ぶりで突出していた。
額縁を並べたような美術は濱崎賢二。手持ちの白いキャンバスを次々破っていく小道具が、父の破綻を象徴するようで印象的。アフタートークのゲストは、かもめんたるの岩崎う大でした~
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落語「たけのこ」「お菊の皿」「蛸坊主」

第130回江戸落語を食べる会 2026年8月

気になっていた歌舞伎座での落語会へ。休演中に3F花篭ホールで開催し、噺にゆかりのお弁当がつく。好きな林家正蔵さんの回に足を運んだ。師匠の人柄もあってアットホームな雰囲気、演目も初めてばかりで、高野山が登場して面白かった~ 高座に向かって縦に並べた長テーブルの上手寄り、なんと先頭の席で7500円。仲入を挟んで落語が1時間半。

お菓子が配られ、ビールやシャンパンを呑みつつ待つと、いきなり下手の衝立裏から正蔵が登場し「落語協会会長です、長男のたま平は来年3月に真打昇進、親子4代は初めてらしい」と挨拶。自慢ともいえるのに押しつけがましくないところが良いなあ。「腕っこき三味線のきょうさんに来てもらった、寄席では御簾内だけど出てきて」と紹介も。綺麗な人です。
その出囃子、太鼓はなんと正蔵で、開口一番のたま平。南アルプス市からの依頼を引き受けたら出演料が9800円で、奈良の大仏様の片目がはずれて体内に落っこちて(大仏の目)…と小咄から「たけのこ」。舞台は武家の屋敷。隣りから塀をくぐって筍が生えたのでおかずにすると聞き、主人が「隣りに断りを入れろ、戦乱の世なら間者同然、手打ちにすると言ってこい」と命じる。隣家が一枚上手で「遺骸だけは渡してくれ」と返すと、「遺骸は手厚く腹の内へ、骨は高野(厠)へ納める、これは形見だ」と皮だけ持っていく… 確か2004年に6人の会で聴いたときは小学生だった。汗だくだけど明るくハキハキ、声がよく通って楽しみです。
太鼓がたま平に替わって、正蔵。歌舞伎座はいいもんです、8月第一部の牡丹灯籠は面白かった、かつて親父が二木の菓子、自分は二木ゴルフのCMに出ていて夏はラウンドして真っ黒、歌舞伎を観に行ったら7代目菊五郎に呼ばれ、顔が黒過ぎるよとお小言、あなたも真っ黒だと言ったら白塗りするからいいんだ…と、歌舞伎好きらしいマクラから、夏はやっぱり怪談と「お菊の皿」。
番町皿屋敷を教わった若い衆が廃屋敷を観に行くと、果たしてお菊の幽霊が現れ、その美しいこと。噂が広まり毎夜見物が押しかけ、出店も並ぶ事態に。9枚まで聞くと死ぬとの伝承で、皆6枚あたりで逃げ出していたが、ついに混雑で身動きとれなくなり大混乱。ところがお菊は11枚、12枚…と続け、多めに数えといた、最近忙しいから明日は休ませて、というオチ。テンポがいい。途中、客席で携帯が鳴っちゃったけど「虫の音かな」とさらり。

短い仲入で同じテーブルのかたとおしゃべり。化粧室に立った年配客の着席を、ゆっくり待ってあげて2席目へ。旬にちなんだ「蛸坊主」。上方の2代目桂三木助が8代目林家正蔵(彦六、稲荷町)に伝えた型を、弟子だった八光亭春輔につけてもらったとか。不忍池の四季折々が美しい料理屋に、高野一山の僧侶と名乗る怪しい4人が訪れ、禁じられた生臭のかつお出汁を出したと因縁をつける。そこへ鶴のように痩せた老僧が割って入り、冷静、重々しく諭すが、やがてハメモノ(三味線)で空気が一変。芝居がかって「われの面体を知らずして、よくも高野山で修行できたと言えるな、このいつわり坊主、蛸坊主」と一喝、偽坊主たちを池に投げ飛ばし、逆さに落ちて足が8本、という痛快なオチ。
途中また携帯が鳴っちゃったお客さんが席を外すと、噺を中断してスタッフに「操作を手伝ってあげて」と。神田伯山や柳家小三治に触れたりしてくすぐりつつ、売僧(まいす)の憎々しさ、老僧の語りの迫力あたりはじっくり聴かせて、さすがでした~

お弁当はその蛸のうま煮飯や酢味噌和えに、檜原村の伝統野菜おいねのつる芋(味が濃い小ぶりのじゃが芋)の煮物など。終わってからその場で食べられるけど、雨が心配なので持ち帰りにしました。お土産に雷おこしもついて、楽しい会です。
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フタマツヅキ

フタマツヅキ 2026年8月

横山拓也の2021年初演作を、演劇集団円の内藤裕子が演出。コロナ下に春風亭一之輔の配信で観て爆笑した落語「初天神」をモチーフに、ひとりの芸人と家族の情愛を丁寧に描く秀作だ。中途半端なまま老いを迎えた自分に対する苦過ぎる嫌悪、それでも切り捨てられないものを、お馴染み近藤芳正がしみじみと演じて、じんとする。IMM THEATER、前のほう下手寄りで1万円。休憩無しの1時間45分。

狭い団地のふすまの向こうから、ボソボソと噺をさらう声が聞こえる。芸人の鹿野克(近藤)はピンの漫談でそこそこ人気だったが、何を思ったか40代で落語家に転じ、マクラばかりでものにならず、今はほぼ無職の捨て鉢な暮らし。妻・雅子(元宝塚の白羽ゆり)は健気に支え続けているが、息子・花楽(溝口琢矢)はそんな父母を嫌悪していて…

ダメダメなのにプライドはあって、何かというと格好つけちゃう克の屈折を、近藤が見事に造形。腐れ縁の沢渡(枝元萌)の厚意に甘えているくせに、せっかく弟弟子の茶ノ木(加藤虎ノ介)が落語の仕事に誘っても煮え切らない。雅子はなぜ見捨てないのか、そもそもなぜ克は落語を始めたのか。ふたりの出会いからの過去を、長身の辰巳雄大、佐久間麻由がカットバックで見せていく構成が秀逸だ。
心揺さぶる初天神のシーンをへて、両親を否定していた花楽がバイト仲間の由貴(元AKBの中野郁海)と新しい家族へ踏み出そうとする姿が染みる。
近藤の巧さはもちろん、溝口、辰巳、佐久間の若手が真摯で頼もしい。美術は乗峯雅寛。
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矢野顕子トリオ

AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER  2026年8月

2022年末のリサイタル以来で、ソロデビュー50周年を迎える矢野顕子を聴きに。ジャズクラブで聴きたい!という念願かなって、スティーリー・ダン等との共演でも知られるウィル・リー(ベース)、元フュージョンバンド「スタッフ」の重鎮クリス・パーカー(ドラムス)を迎えた夏恒例のライブに足を運んだ。ブロードウェイ音楽制作のトップランナー、ヒロ・イイダもトラックで参加という超豪華メンバーだ。
オリジナルからカヴァーまで自由なレパートリー、伸びやかな演奏がとにかく楽しくて最高。いっぱいのブルーノート東京、1段高くなった下手角の、非常に観やすいボックスシートペアで1万7500円。休憩無しの1時間強。

7月リリースのニューアルバム「生きものたちへ」収録曲から始まり、「毎年このメンバー、この場所で演奏できるのは当たり前じゃない」としみじみ。物販紹介の長めMCを挟みつつ、バカラック作曲「小さな願い」、ウィルのボーカルで「Here Comes the Sun」(ビートルズのダウンロードナンバーワンだとか)など。「去年、意外とやってなかったと気がついた、身体が覚えているものです」と語って、YMO「RYDEEN」では聴衆と大盛り上がり。昨年のライブ映像は再生回数100万回突破とのこと。本編ラストは泣けちゃう名曲「ひとつだけ」、そしてアンコール「ラーメンたべたい」ではセンターでボーカルも。5日間、各2セットは大変だろうけど、まだまだ続けてほしいな!

ジャズクラブとあって、ゆったり食事できる贅沢も大きな魅力だ。コーストリオ6500円、ハーブティーとオレンジワイン、トマト、パッションフルーツのアーティストカクテル2200円などを満喫しました~ ロビーには小林聡美さんや神野三鈴さんらしき姿も。
以下、不確かですけどセットリストです。

1. 海男と瑠璃亜
2. 変わるし
3. 小さな願い
4. YOU ARE SPECIAL TO ME
5. HERE COMES THE SUN
6. THE RIVER
7. RYDEEN
8. ひとつだけ
アンコール
9. ラーメンたべたい
10. 在広東少年
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高砂会「鴛鴦襖恋睦」「建礼門院」

第3回高砂会 2026年8月

知人主催の集まりで、人間国宝・4代目中村梅玉一門の勉強会へ。歌舞伎座などでは支える立場の弟子たちが、25年祭となる大旦那、6世中村歌右衛門ゆかりの演目を披露する。2日間、3公演にわたる大役、さぞプレッシャーだと思うけど堂々たるもの。観客は応援モードだし。
物販コーナーに中村莟玉が立ち、写真撮影に応じるサービスは勉強会ならではのお楽しみだ。振付・指導は藤間宗家の勘祖、勘十郎。日本橋公会堂(日本橋劇場)の2列目といういい席で8000円。休憩を挟んで3時間弱。

「鴛鴦襖恋睦(おしのふすま こいのむつごと)」、通称おしどりは歌右衛門が、1954年の自主公演で復活した演目とのこと。古風ななかにも、羽ばたく振りやヒラヒラ羽根へのぶっかえりが楽しい。前半「相撲の場」は3人が舞台中央からせり上がり、ゆったりと長唄舞踊。遊女喜瀬川(梅寿が柔らかく)を争い、二枚目の河津三郎(2023年入門の梅大)と赤っ面の荒若衆・股野五郎(2025年に名題昇進の梅秋)が相撲をとる。負けた股野が鴛鴦を狩って、河津に血の毒をもる計略を語り、後半「鴛鴦の場」では常磐津にのせ、狩られた鴛鴦夫婦の精(梅大、梅寿)が現れて股野を翻弄する。
続いて中村梅玉、莟玉が挨拶。梅玉が「傘寿って言うなよ」と笑わせ、今回の演目への思い、関係者への感謝などを洒脱、丁寧に。

休憩を挟んで、「平家物語 建礼門院」から洛北大原寂光院。新国劇「王将」で知られる北条秀司作の新歌舞伎だ。1969年に歌右衛門の建礼門院徳子、2世中村鴈治郎の後白河法皇で初演し、8世福助時代の梅玉は高倉帝で出演したとか。今回はなんと31年ぶりの上演で、川崎哲男(元松竹常務で東京交響楽団理事長の岡崎哲也)が演出。難しい会話劇だけど、セリフがわかりやすくて引き込まれた。
舞台は山奥の寂光院。幕が開くと、おぼろに花が咲き乱れる書割(新制作!)が美しい。壇ノ浦の合戦後、心ならずも生きのびた建礼門院(梅乃)が隠棲するところへ突然、舅の後白河法皇(梅蔵)が訪ねてくる。
法王は源平の戦乱をあおったものの権力を掌握できず、深く悔いて門院に詫びる。門院は激しく反発するが、やがて法王を赦し、すがすがしい表情に。平清盛の娘に生まれ、高倉帝に嫁いで栄華を極めたお嬢様が、平家滅亡の辛酸をなめ、我が子・安徳帝を死なす悲劇をへて、恩讐を超えていく…

1995年に歌右衛門と島田正吾が上演した際、1964年生まれの梅蔵は舞台上で花びらを散らしながら、感動していたという。粘り強い芸の継承に感嘆。ちょっとしたハプニングをものともせず。右京太夫に中村魁春門下の春江が助演し、阿波内侍に梅寿。附け打ちで山崎徹、長唄三味線に鳥羽屋里松の姿も。カーテンコールでは俳優全員で挨拶となりました。

客席には歌右衛門の芸養子で、人間国宝の中村東蔵さんや一中節宗家・都一中さんもいらして、華やかでした~
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radio days

821森綾バースデーライブradio days  2026年8月

ライター森綾さんのライブは、ジャズ、ポップス、オリジナルと余裕たっぷり。前半は1曲ごとにエッセイ朗読を挟んで、波瀾万丈の来し方とラジオへの愛着をしみじみと。ラストのABBAから明菜ちゃんという流れがツボでした!
バンドも充実していて、ピアノの広田圭美、パーカッションの山下由紀子さんによるユニット227。「美の巨人」テーマ曲などを手がけているとか。2部から早大ハイソサエティオーケストラのバンマスだったサックスの横田寛之、アンコールにはチェロの小宮哲朗が参加。そして聴衆が温かでした~ キーストンクラブ東京で5500円、席料500円+オーダー(カレーが美味しい)。休憩を挟んで2時間弱。
以下セットリストです。

1st radio days エッセイのナレーションと歌〜あの頃、ラジオから未来が聞こえてきた
1,ジャコビニ彗星の日〜ラジオで笑顔は伝わらない
2,Smile〜ジャズ親子と出会った
3,Satin doll〜オーディションする側になった
4,さよならの言葉〜ラジオのことを書くことになった
5,上を向いて歩こう〜おもちゃみたいなラジオを買った
6,壊れかけのradio
2nd
1,Spain(インスト)
2,In the red(オリジナル)
3,One note samba
4,Cheek to cheek
5,Newyork state of mind
6,Newyork Newyork
7,Dancing queen
アンコール
1,北ウィングクラシック
2,もう一度チェロを弾いて(オリジナル)
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ディア・エヴァン・ハンセン

ディア・エヴァン・ハンセン   2026年8月

2017年トニー賞6部門を受賞し、21年に映画化されたブロードウェイミュージカル。注目の日本版に足を運んだ。孤独と、「除け者の人生」への不安を抱えた高校生たち、うまく向き合えない親たちの痛みを、丁寧に描いていて切ない。ありのままの自分という存在の残酷さ、愛おしさ。スティーヴン・レヴェンソンの脚本を小山ゆうなが翻訳・演出。3月に開業したEXシアター有明の観やすい1F、やや後ろの方で1万4000円。休憩を挟んで3時間。主催はホリプロ・テレビ朝日。

人付き合いが苦手なエヴァンは、セラピストの指示で自分宛の手紙を書き、心の内を吐露する。ところが問題児の同級生コナーが手紙を取り上げ、そのまま命を絶ってしまう。コナーの父母は遺された手紙を読んで、ふたりが親友だったと誤解。エヴァンがとっさに話を合わせたことで、嘘が嘘を招いていき…

「ラ・ラ・ランド」「グレーテスト・ショーマン」のコンビ、ベンジ・パセックとジャステイン・ポールによる音楽が美しく、かつ複雑。難曲続きだけど、俳優陣は健闘だ。ダブルキャストで、この日のタイトロール柿澤勇人、コナーの妹の松岡茉優が、「窓越しに手を振る」「誰かが見つけてくれる」などで、青春の屈託を繊細に表現する。特に印象的なのは、生活に追われエディが見えていなかった母・堀内敬子の「大きな家 小さな私」、裕福だけどコナーを持て余したまま失ってしまった父・石井一孝の「グローブの慣らし方」。それぞれの激しい後悔を歌う。ほか同級生に須賀健太と元音楽座の高野奈々、コナーに長身の立石俊樹、コナーの母にマルシア。

地味な会話劇だけど、回り舞台と温室みたいな磨りガラスの壁というシンプルなセットを、たくさんのモニターで取り囲んで、大劇場をうまく使う。狭い親子・友人関係の閉塞と、モニター上で瞬く間に広がる無責任なSNS投稿との対比が効果的だ。抑制的に振る舞う登場人物の内面を、影のようなダンサーたちが増幅、可視化してお洒落。磨りガラスの向こうに見え隠れする人影も、とりまく人々を印象づけて巧い。辛い物語だけに、終盤のリンゴ園の明るさが染みます。美術は文学座の乗峯雅寛、振付・ステージングは松田尚子。

EXシアターは初めて。ロビーに開放感がある一方、テーブルは少ないかな。高額転売の席を特定・公表して本人確認するものものしさは、ダブルキャストの吉沢亮人気もあるかも。

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アメリカン・ドリーム

PARCO PRODUCE 2026 アメリカン・ドリーム  2026年8月

楽しみにしていた三谷幸喜作・演出の新作。「赤狩り」に直面した映画人たちの選択という重いテーマを、笑いたっぷり、あくまで軽妙に描く。思想・信条の自由と仕事仲間を守ること、天分たる創作を貫くこと、そのどちらにも誇りはある。名作「笑の大学」にも通じるギリギリの設定、そして優れたクリエーターを葬っちゃう集団的愚行への怒りが、なんだかきな臭い現在とあいまって胸に響く。
小日向文世はじめ練達の俳優陣が、緻密な会話の応酬を余裕たっぷりに。ひとり20代のりりしい中川大志も、なかなかのコメディセンスを発揮し、可愛げがあっていい。それにしても三谷さん、つくづく映画ファンだよなあ。よく入ったPARCO劇場、3列目のほぼ中央という良い席で1万2000円。休憩無しの約2時間。

非米活動委員会の委員2人(中川、安定の浅野雅博)が陣取るホテルの1室。売れない女優(関谷春子)、「マイスター」と呼ばれる亡命ドイツ人作家(山崎一)、売れっ子監督(浅野和之)、高名な脚本家(小日向)を順に呼び入れ、業界の誰がコミュニストなのかを明かすよう、あの手この手で迫っていく。
山崎が意味不明の弁舌で暴走し、委員を煙に巻いちゃうさまが痛快。小日向の知性、したたかさに品があり、立場を異にするものの才能ある浅野に言葉をかけるシーンが深い。中川が追及する側なのにどんどん、いち映画ファンになっちゃって、「アボットとコステロのコメディに救われた」とか言い出し、愛らしくて得な役。関谷の苦闘に、華やかな業界の裏側もにじむ。
セットで控え室の映像を示す仕掛けが面白く、終盤、窓に広がるキラキラしたハリウッドの夜景が染みる。アメリカの夢はどこへいったのか。美術は松井るみ。

登場人物にはモデルがあるとのこと。ワシントンの公聴会で証言を拒否して(いわゆるハリウッド・テン)投獄されたものの、別名義であの「ローマの休日」を書いた脚本家ダルトン・トランポ、公聴会翌日に米国を捨てた巨匠ブレヒト、「エデンの東」などの功績で1998年にアカデミー名誉賞を受賞したときまで、転向した過去にブーイングが出たという監督エリア・カザン… 映画人それぞれの歩んだ道のりを、もっと知りたくなります。

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心中天の網島

まつもと市民芸術館プロデュース 木ノ下歌舞伎「心中天の網島」アクセシビリティ版  2026年8月

旗揚げ20周年を迎えた大好きな木ノ下歌舞伎。文楽で3回ほど観た近松の名作を、木ノ下裕一監修・補綴、元FUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介が演出・作詞・音楽を手がけるミュージカル仕立てで。笑いと軽快な音楽とともに、紙屋治兵衛(日髙啓介)・紀伊國屋小春(2001年生まれの湯川ひな)の未熟さ、決してロマンチックではない死の無様さ、だからこそ普遍的、いつでも誰にでもありそうな人の愚かさをクリアに描く佳作だ。
糸井は1977年生まれ、2019年の「摂州合邦辻」も秀逸だった。「天の網島」は9年ぶりの再々演だそうで、今回は字幕や音声ガイドなど鑑賞サポートがあり、その点でもいろいろ興味深かった。木ノ下さん、チャレンジしているなあ。いっぱいの吉祥寺シアター、中段やや下手寄りで5000円。休憩無しの2時間。

開幕前に木ノ下が舞台上を歩きながら、セットの構造などを丁寧に説明。劇中では左右のモニターに台詞だけでなく、「ソフトロック、柔らかく歪んだエレキギターの音色」など糸井による曲調の解説まで投影される。キャストのひとりとして手話通訳の田中結夏が、立ち位置を変えながら違和感なく演技。古典なのであえて古い手話を使ったりしたとか。ミュージカル「SIX」などを担当した舞台手話通訳の専門家なんですねえ。こういう工夫がどう受け止めれるのか興味があったけど、始まったらすっかり劇に引き込まれちゃった。

物語はお馴染みの心中もの。これまでは賢い妻おさん(2022年「だからビリーは東京で」で観た伊東沙保)と不倫相手・小春の、憎いはずなのに互いを思いやる行動、なけなしの女の意地が見どころと思っていた。本作はそれもあるけれど、おさんが出ていって出口を失った治兵衛と小春の道行が、歌とダンスのパワーもあって、破滅しかないのに子供っぽくふざけていて、なんだか切なかった。だからこそ心中シーンの激しい川音が、容赦なくて恐ろしい。
いつもながら江戸と現代の混在が効果的。網の目模様のシンプルなセットで、衣装などは現代的なんだけど、ここぞという見せ場ではセリフが古風な浄瑠璃に転じ、バイオリンを使って太夫と三味線が語って、ドラマチックだ。俳優陣は赤い衣装を羽織ってコロスを兼ねる。水の都・大坂を歩く橋づくしのくだりでは視界が飛躍し、ベニス、サンフランシスコ、現代のレインボーブリッジとか出てきちゃって、今に通じる物語性が際立つ。しっかり者のおさんが封建時代とはいえ、父の命令で別れさせられちゃうのがモヤモヤしてたけど、ラストシーンでちょっと納得。

出演陣はみな達者。伊東が毅然とし、湯川は可憐でイメージ通り。おさんの母と河庄女将の西田夏奈子が、歌もバイオリンもこなして存在感たっぷり。思えば「合邦辻」の母おとくもよかったな。ベテラン大鷹明良がおさんの父・五左衛門と恋敵・太兵衛でさすがの巧さ。ほかに治兵衛の兄・粉屋孫右衛門で安定の武居卓、丁稚で緒方壮哉。
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本気でAOR NIGHT

本気でAOR NIGHT 2026夏 1st  2026年8月 

音楽通の友人のおかげで初めて参加。凄腕のプレイヤーが揃って、名曲を存分に聴かせる贅沢な一夜です。メンバーは増崎孝司(Guitar)、種子田健(Bass)、小笠原拓海(Drums)、中島オバヲ(Per)、友成好宏、初参加の草間信一(Key)、竹上良成(sax)、MCも兼ねる三谷泰弘(Vo)。「部活」と称して肩肘張らない余裕たっぷりの雰囲気。5月のライブに行ったBozに始まり、ディスコヒットのCheryl Lynn、ロック寄りのDoobie Brothersなどでご機嫌だ。
三谷さんはハーモニーなどでエフェクターを利用。ちょっと不調も。MCではGeorge Bensonのレコーディングの面白エピソードなども紹介して、楽しい。アンコール前には種子田さん、友成さんの誕生祝いも。
だいたい同年配で女性が多め。立ち見もいる目黒BLUES ALLEY JAPAN、前のほうのテーブル席で7000円、シートチャージ550円とワンドリンク。休憩無しの90分。

以下セットリストです。

M1 Lowdown (Boz Scaggs)
M2 We’re In This Love Together (Al Jarreau) 
M3 Take Me To Your Heaven (Wilson Bros) 
M4 Turn Your Love Around (George Benson) 
M5 You Need A Hero (Pages) 
M6 Him (Rupert Holms)
M7 Kid Charlemagne (Steely Dan) 
M8 Got To Be Real (Cheryl Lynn) 
M9 Takin' It To The Street (Doobie Brothers) 
M10 What Cha' Gonna Do for Me (Chaka Kahn) 
Encore
M11 Cryin' All Night (Airplay)
M12 Africa (Toto)

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講談「山田青龍軒」「細川茶碗屋敷」「お紺殺し」

噺小屋in池袋 葉月の独り看板 神田春陽 2026年8月

ちょっと久しぶりに神田春陽。人情ものと怖い話をたっぷりと。客演の林栄一のサックス演奏もあって贅沢でした。東京芸術劇場シアターウエスト、二列目中央当たりの良い席で3800円。仲入を挟んで2時間。

前座はいつもの神田ようかんで「三家三勇士」より「山田青龍軒」。敵討ちに赴く途中、中間が偵察した道場の面々が卑劣で…。自信が増した感じで頼もしい。めくりを忘れて突っ込まれていたけど。
春陽さん1席目は、クルーズの仕事で北米に行って船酔いになったり帯状疱疹にかかったり、でも昨日は野球観戦に行った…などと話して、「細川茶碗屋敷」。ストーリーはお馴染み落語の「井戸の茶碗」で、登場人物が善人ばかりで爽やかだ。50両を受け取る受け取らないで、長屋の4畳半なのに刀と槍を持ちだして…と、軽妙に笑わせる。落語だとオチは「娘を磨くのはよそう、また小判が出るといけない」だけど、こちらは青井戸の茶碗を田沼意次に献上して屋敷を賜った、という由来を語っていました。

仲入後のゲストは、なんと山下洋輔トリオに加わって活躍したサックスの林栄一! 「春陽さんはライブに来てくれる、挨拶ぐらいなんだけど」と言って、淡々とひとりで演奏。うねるようなフレーズ、鋭い高音は76歳とは思えません。後半、スタンダードの「スマイル」を混ぜたり自由自在だ。これがチャップリン作「モダン・タイムス」のテーマ曲だと思うと、先日文楽で「まちの灯」を観たこともあってなんだか感慨深かった。
続いて春陽さん2席目。林さんがいきなりフリーからスタートしたと聞くと、弟子に基本を教えなくてもいいのかな、などと呟いて「新吉原百人斬」から「お紺殺し」。吉右衛門で観た河竹新七作の歌舞伎「籠釣瓶花街酔醒」の元ネタだ。この日の話は享保年間の事件の前日譚にあたり、あばた顔の次郎左衛門の父親、佐野次郎兵衛の悪行を描く。次郎兵衛は上州・佐野の絹商人として成功していたが、ある年の瀬、江戸から帰る戸田の河原で、かつて捨てたお紺と再会し、だまして川へ突き落としちゃう。寒々とひとけの無い河原、お紺の悲惨な容貌。春陽さんが迫力満点だけに、怖いのなんの。やがて親の因果が子に報い…というところで幕となりました。涼をとるには怖すぎでした~

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