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わたしの書、頁を図る

紀伊國屋書店創業100周年記念公演「わたしの書、頁を図る」  2026年7月

4月「The Closet Revue」に続いて、気鋭の小沢道成作・演出・美術による音楽劇に足を運ぶ。見えている一面で人物像を決めつけちゃうことの愚かさ、誰の人生も未完の小説、というラストはエモーショナルに響く。オレノグラフィティの曲もいいんだけど、中盤の勝ち組、負け組をめぐる激しいやりとりなどがどうにも平板で、休憩無しの2時間弱がちょっと長く感じたかな。紀伊國屋ホールの中ほどで1万2500円。

床や低い棚に、雑然と本が平積みされたワンセット。図書館の設定だけど古本屋のようだ。点在する椅子に腰掛けて、売れない役者風の佐藤(木ノ下歌舞伎でお馴染み坂口涼太郎)、失業中らしき財前(元劇団四季の中井智彦)、家事から逃避する主婦風の飯島(大人計画の猫背椿)、不登校中学生の奏那(光蔦なづな)が、黙々と本を開いている。地味な職員の柳沢町子(55歳にして舞台初主演の木村多江)はそれぞれの選ぶ本から勝手に、自分と同じような孤独で冴えない人たちと思い込んでいたが、訪れた岸口慶太(味方良介)が思いがけず、町子の日常を自主映画に撮りたいと言い出し、周囲を巻き込んだことで、意外な素顔が明らかになっていき…

本のタイトルを並べ立て、いかにもな人物像に結びつけてニヤリとさせるあたりが巧い。全員が歌はもちろん、楽器を演奏する(坂口はサックス、中井がフルート、猫背は大太鼓)演出も意外性がある。岸口の言動にもう少し説得力が欲しかったかな。本がテーマだけに、プログラムは文庫本で、オリジナルカバーもつく凝りよう。
俳優陣では24歳の光蔦が瑞々しく、坂口はいつもの身体能力を発揮し、仕事ができる嫌な奴を存分に。誠実な中井がさすがの声量だ。ミュージカルの野獣役で知られた人なんですねえ。熱演の木村は大詰め、自らのトラウマをぶちまけるくだりが見せ場だけど、爆発力はいまひとつか。ロビーに木村宛の花がずらりと並んで、活躍のほどはよくわかる。

開演時、俳優陣が舞台上で黙読し始めたのに、なかなか客電が落ちないな~と思っていたら、客席通路に小沢が現れ、早口で「遅れていますがもうすぐ始まります、今のうちにスマホを切って」と喋るハプニング。お年寄りの観客の着席を待っていたのかも。優しいね。
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