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ジョイス・ディドナート・リサイタル

ジョイス・ディドナート ソロリサイタル  2026年5月

2015年ロイヤル・オペラ来日でのドンナ・エルヴィーラ、そして同年NYで聴いたロッシーニ「湖上の美人」が強く記憶に残るメゾのトップスター。第一声から頭上に響く美しさにもっていかれ、表現の幅広さに引き込まれる。余裕たっぷり、開口一番「グッドイブニング トウキョウ!」に始まる 気さくなMCで聴衆をつかみ、アンコールのジャズアレンジまで、米国人らしいサービス精神も横溢して、幸せいっぱいでした~ サントリーホール大ホール、前のほう上手寄りの素晴らしい席で1万9000円。休憩を挟んで2時間弱。

前半は馴染みのないイタリア古典歌曲を端正に。休憩前、ハイドンのカンタータ「ナクソスのアリアンナ」がドラマチックだ。シュトラウスのオペラでお馴染みのギリシャ神話で、恋人テセウスに置き去りにされたアリアドネの長大な語り。レチタティーボとアリア2曲ずつで、思慕、不安、怒り、絶望を存分に。
ひらひらのついたドレスから後半は緑のロングにお色直しし、お得意ベルカントのアリア。演じるのは自分の魅力に自信がある美女ばかり、というのが痛快だ。フランスもののデリラの決死の誘惑、そしてラストの「ハバネラ」の深い声に酔う。アジリタの技巧では昨年のオロペサのほうが粒立っていた気がするし、カルメンはガランチャのイメージが強いかもしれない。けれど、ディドナートがくっきりと描き出す人物の存在感は、まさに別格だ。

アンコールがまた凄くて、拍手に応えて何度も出てきて計6曲。カンザス(オズの舞台!)に生まれ、ブロードウェイを夢見た学生時代、そして2005-06シーズンMETにデビューし、大成功した悪戯小僧ケルビーノ。キャリアを振り返るような選曲で、聴衆は大喜び。タンゴやジュディ・ガーランド、なんでも弾けちゃうピアノのクレイグ・テリーがまた見事。最後の最後、客席が明るくなってクレイグがもう無理だよ、という表情になってから、なんと1曲目「カーロ・ミオ・ベン」をジャズアレンジで聴かせて大喝采でした。これぞプロ。

思えば2011年から、METのライブビューイングでずいぶん観てきた。フローレスとの黄金コンビ「ラ・チェネレントラ」の突き抜けぶり、そしてなんといっても2023年「デッドマン・ウォーキング」ラストの胸に染み入る感動。57歳にして日本では初リサイタル、しかもこの1回だけとか。聴けてよかった~
ホール内外で前日に続いてオペラ好きの皆さん、大西宇宙さんにも遭遇し、楽しくおしゃべり。
以下セットリストです。

ジョルダーニ:カーロ・ミオ・ベン(いとしい人よ)
パイジエッロ:もはや私の心には感じない
トレッリ:あなたは知っている
ハイドン:カンタータ「ナクソス島のアリアンナ」
ロッシーニ:オペラ『アルジェのイタリア女』より「ひどい運命よ!」
サン=サーンス:オペラ『サムソンとデリラ』より「私の心はあなたの声に開く」
ハッセ:オペラ『アントニオとクレオパトラ』より「恐ろしい顔をした死神は」
ビゼー:オペラ『カルメン』より「ハバネラ」
アンコール
『イタリア古典歌曲集』より「もしあなたが私を愛するなら」
ピアソラ:失われた小鳥たち
モーツァルト:オペラ『フィガロの結婚』より「恋とはどんなものかしら」
アーヴィング・バーリン :映画『イースター・パレード』より「アイ・ラブ・ア・ピアノ」
ハロルド・アーレン:映画『オズの魔法使い』より「虹の彼方に」
ジョルダーニ:カーロ・ミオ・ベン
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ウェルテル

ウェルテル  2026年5月

新国立劇場2025-26シーズン第3作は、ジュール・マスネのフランス文芸オペラ「ウェルテル」。ロッシーニのイメージが強い脇園彩(メゾ)のシャルロット挑戦を見届ける思い。抑制に抑制を重ねつつ、3幕「手紙の歌」の恋のときめき、「涙が出るままに」の輝きへと至って見事だ。妹ソフィーのライジングスター、砂田愛梨(ソプラノ)が好対照のはつらつとした造形で頼もしい。
ウクライナ出身のアンドリー・ユルケヴィチの指揮も歌手、東フィルとかみ合ってドラマチック。前の方のいい席、解説会とプログラム込みで2万8000円、休憩2回で3時間強。

演目は2014年にMETライブビューイングのカウフマンで観て以来(いま思えばソフィーがオロペサ!)。第1幕の間奏曲「月の光」など旋律の美しさはもちろん、ブームだったというケルト吟遊詩人オシアンを引用したり、冒頭の夏からクリスマスへ子供たちの賛美歌が悲劇を暗示したり、知的で凝っている。
今回、悩めるタイトロールはNY出身で長身のリリックテノール、チャールズ・カストロノーヴォが初役で。カマレナやグリゴーロのリサイタルでも聴いた3幕「オシアンの歌(春風よ、何故私を目覚めさせるのか)」など、期待を裏切らず拍手。夫アルベールの須藤慎吾(バリトン)が格好良く締める。2幕「乾杯の歌」などの明るいジョアンとシュミットは駒田敏章(バリトン)、村上公太(テノール)。

3度目の再演となるパリ出身ニコラ・ジョエルの演出は、古典的で落ち着いたもの。背景の豊かな緑と湖、高台の眺望の映像が心地良い。
開幕前に恒例、加藤浩子さんの解説を伺う。1892年初演の本作にはオケの存在感などでワーグナー「トリスタンとイゾルデ」(1865年)の影響が強いとともに、ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」(1902年)につながっていく心理ドラマでもあると。なるほど~ そして懇親会では須藤さんがピストルを渡すところの心理の掘り下げを、またイタリア人夫君といらした砂田さんがチャンスに備える意欲を聞かせてくれて、またまた大満足でした~
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フランス放送フィル「牧神の午後への前奏曲」「ラフマニノフピアノ協奏曲第3番」「ここは素晴らしい場所」「海」「ラ・ヴァルス」「ニムロッド」

ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮 フランス放送フィル管弦楽団  2026年5月

しばらくクラシックコンサートではピアノを聴いてみようかと思い立ち、超人気の藤田真央へ。ラジオ・フランス所属オケの来日公演で、今年から首席指揮者に就任するヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮。オケはパワフルで豪華、藤田真央はラフマニノフの超絶技巧も余裕たっぷり。ちょっと押され気味で、ソロの自己主張よりもオケとの対話、一体感を楽しむよう。
休憩1回で2時間。いっぱいのサントリーホール大ホール前のほう、やや上手寄りの良い席で2万6000円。KAJIMOTO主催、サントリーホール開館40年記念参加公演。

オケは1曲目からフルートやオーボエが濃密だ。下手でふたりが鳴らすアンティーク・シンバルの幻想的なこと。ヴァン・ズヴェーデンがエネルギッシュにタクトを振る。続く藤田真央はラフマニノフを繊細に。第1楽章の長大なカデンツァで技巧が冴えわたり、終盤にかけてはロマンティック。アンコールはしっとりと。
休憩後はオケが全力でエネルギーを発揮。「海」のダイナミックさに、有名な初版スコアの「神奈川沖浪裏」を思い浮かべ、ラヴェルの変化に富んだワルツでは、かなりアグレッシブで引きずりこまれるよう。分厚いチェロ、2台のハープの輝き。アンコールは「威風堂々」のエルガーが親しい友人たちの横顔を描いた変奏曲から、弦をエレガントに。

マエストロは
1960年アムステルダム生まれ、19歳でロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の史上最年少コンマスとなり、ニューヨーク・フィル音楽監督などを歴任。オケへの要求が厳しいことで知られるとか。韓国出身の女性コンマス、パク・ジュンがひときわ情熱的で目立つ。プログラムに何人かの首席のインタビューが載っているのは珍しいかも。演奏が終わったとたん
メンバー同士よくおしゃべりしたり、パートごとに記念撮影したり、いい雰囲気だった。来日前の中国、台湾公演はカントロフとだったんですねえ。
以下セットリストです。

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 op.30(ピアノ:藤田真央)
<藤田真央(Pf)のアンコール>
ラフマニノフ(藤田真央編):ここは素晴らしい場所 op.21-7

ドビュッシー:交響詩「海」
ラヴェル:ラ・ヴァルス
<オーケストラのアンコール>
エルガー:エニグマ変奏曲から「ニムロッド」
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ジョン・バティステ

JON BATISTE A Fantastical Musical Journey   2026年5月

昨年のCory Wongに匹敵する、最高にハッピーな一夜を体験しました! ジャズ、ソウル、クラシックとなんでもござれのJon Batisteが、フロアぎっしりの聴衆まるごと、全身で音楽を満喫する。ハイレベルで飾らなくて自由、だから笑顔いっぱい。ちょっと年齢層高めのShibuya Spotify OーEAST、オールスタンディングで1万2000円。休憩無しの1時間半。

2024年夏にキャンセルをくらって以来、待ちに待った単独ライブ。整理番号120番台で、下手寄り一段上がった手すりの素晴らしいスペースを確保。赤いグッズTシャツも着込み、ビール600円を飲みながら待つ。15分ほど遅れて何かトラブル?と思った矢先、なんのその、1曲目が始まったらピンクシャツのジョンがぽーんと飛び出してきて、そこからはノンストップだ。

アフリカンなリズムでがんがん踊ったかと思うと、シンプルな「幸せなら手をたたこう」でクラップクラップ、川口千里含むツインドラム、パーカッションと4人で延々とリズム合戦。一転して上手のピアノに座り、ベートーベン「運命」を流麗なジャズアレンジで聞かせ、サンプラーを操る。バンドメンバーのパーカッション、おじさんギター、そして超パワフルなコーラスのDeszが、1曲ずつリードをとって盛り上がり、さらに上手袖からスタッフIDを提げた優しそうなおじさまを連れてきて、なんとMy Fatherと紹介して歌わせちゃう。えーっ

お馴染み「BIG MONEY」で聴衆とさんざん踊り、ジョンもご満悦。お洒落なThe Impressionsの「It's All Right」やコカ・コーラとの豪華タイアップ曲をへて、メロディカを持ち出しベートーベン「エリーゼのために」。続くモーツアルト「トルコ行進曲」でバンドメンバーが思い思いにパーカッションなどを手に集まってくると、なんと全員フロアに降りてきた! ハーメルンの笛吹き男よろしくジョンを先頭に、聴衆をかき分けかき分け練り歩いて、もうカオス… そのまま会場後方のドアから消えていきましたとさ。バンドはほかにギター×2、ずんずん響くベース+キーボード、ホーン☓2。

予定調和のアンコールなんか無しのエンディングに、口あんぐり。大好きな「Do It All Again」「Butterfty」をやらなかったことなんか、すっかり忘れて、「あー、楽しかった~」と大満足で会場を出たら、建物裏に人だかりが。そこではジョンとバンドが演奏を続けていて、この人たちは始めたら終われないのね~と2度ビックリ。ニューオーリンズスタイルと言うべきか。お腹が空いたので駅に向かったけど、このあと全員で渋谷の街に繰り出したらしい。いやー、素晴らしい。また来てね!

以下、一部不明のセットリストです。

1,TELL THE TRUTH
2,FREEDOM
3,BOOM FOR REAL
4,Worship
5,If You're Happy and You Know It 
6,Wherever You Are
7,Symphony no. 5 Stomp
8,Unknown song
9,Unknown song
10,I Need You/Ray
11,BIG MONEY
12,It's All Right
13,Be Who You Are
14,My Favorite Things/ Für Elise
15,Alla Turc Blues
16,Love Riot

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文楽「二人禿」「生写朝顔話」

文楽令和8年5月公演 第一部・第二部  2026年5月

文楽5月公演は北千住THEATRE1010で。「生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)」は2017年、2021年以来3度目。1部、2部の通しでチャリ場「笑い薬」も入り、桐竹勘十郎の萩の祐仙、吉田玉助の立花桂庵の滑稽コンビが躍動して楽しい。前のほう、やや下手と中央でそれぞれ9000円。1部が休憩2回、2部が休憩1回でともに3時間強は、さすがに疲れたけど。

うららかな春の島原遊郭を舞台にした「二人禿」で幕開け。「朝顔話」は広島の大内家のお家騒動を背景に、悲恋の宮城阿曽次郎(吉田和生)と深雪(吉田勘彌)が「君の名は」に通じるすれ違いを繰り返す。ジェットコースターのように翻弄されるからこそ、深雪の一途さが際だつドラマだ。
片岡仁左衛門ゆかりという真葛が原茶店の段で、かき回し役となる怪しい医者の祐仙、桂庵が登場してわかりやすい。偽の惚れ薬を巡るどたばたで笑わせる。桂庵のかしらが「鼻うごき」なのも面白い。続く岡崎隠れ家の段は、家屋セットの上手が往来。通常と反対の「逆勝手」で、山科閑居のパロディとか。こういうリテラシーが古典を楽しくするんだなあ。
明石浦船別れの段で三度目のすれ違い。深雪がかつて宇治川で受け取った金の扇を、阿曽次郎へ投げ返すスペクタクルを、豊竹呂勢太夫、鶴澤清治が盛り上げる。床の裃に波模様をあしらっているのがお洒落だ。弓之助屋敷の段は豊竹靖太夫、鶴澤清志郎が、死を覚悟した深雪のクドキと出奔をしっかりと。

後半、薬売りの段の軽妙な豊竹希太夫、鶴澤清馗が聴きやすく、浜松小屋の段で盲目となった深雪=朝顔の悲哀と、乳母浅香(吉田簑二郎)の自己犠牲を、竹本織太夫・鶴澤燕三→竹本小住太夫・鶴澤清丈が丁寧に。
期待の島田宿笑い薬の段は竹本千歳太夫、豊澤富助が力演。勘十郎が器用に茶をたて、笑い転げて苦しむさまをたっぷりと。宿屋の段のすれ違いをへて、大井川の段でダイナミックに幕となりました。
終演後は文楽仲間と恒例、玉助夫妻を囲む食事会。有り難うございました~
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ボズ・スキャッグス

Boz Scaggs ONE FOR THE ROAD− BLUE NOTE TOKYO COLLECTION −  2026年5月

洋楽好きの友人に誘ってもらってボズ・スキャッグス来日公演。「Silk Degrees」発売50周年記念のダンディな佇まいとヒットナンバーを堪能する。来日は24回目、ご本人は来月82歳。たっぷり2時間半!をほぼノンストップ、声は艶やかでギターも弾いて、まだまだ元気です。少し音程を低くしているかもしれないけど、2年前にも聴いた友人は「むしろ巧くなっているかも」と。
3月に開業したばかりのSGCホール有明、3700席が同年代で大賑わい。驚いたのは音響設備が抜群で、聴きやすいこと。世界初d&b社のイマーシブオーディオシステムだそうで、4階バルコニーまでオペラハウスのような構造もいいのか。大会場のなかでは突出して秀逸。ここならまた来たいぞ。1階下手寄り、前方のいい席で1万7000円。

出だしはブルースっぽいなかにも、Slow Dancerなどお馴染み曲で盛り上げる。キーボードやサックスがソロを披露して、バンドも余裕たっぷり。MCは最低限、演出もミラーボールぐらいと落ち着いています。終盤Lowdownで熱量があがり、アンコールはさすがのスタンディング。まさかのダブルアンコールでチャックベリー。サックスが「ダック・ウォーク」して、楽しく終わりました。
バンドはウィリー・ウィークス(ベース)、ジョン・ヘリントン(ギター)、ジェイムソン・ロス(ドラムス)、マイケル・ローガンSR(キーボード)、エリック・クリスタル(サックス&キーボード)、ブランリー・メジアス(パーカッション)。


会場で同級生にばったり会って二次会へ。後からほかの洋楽好きさんたちも行っていたことがわかり、同世代っていいなあと。会場はテレビ朝日が展開するエンタメ施設「TOKYO DREAM PARK」の一角。風は強いけど海が近く、周辺はドラえもんだらけで楽しかった~
以下セットリストです。

1, What Can I Say
2, Sierra
3, Drowning in the Sea of Love
4, Slow Dancer
5, It All Went Down the Drain
6, It's Over
7, Harbor Lights
8, Call That Love
9, Thanks to you
10, Radiator 110
11, Somebody Loan Me a Dime
12, Lowdown
13, Breakdown dead a head
Encore:
14, We're all alone
15, Lido Shuffle
16, You Never Can Tell

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團菊祭「鬼一法眼三略巻」「助六由縁江戸桜」

團菊祭五月大歌舞伎 夜の部 2026年5月

初代の孫・尾上左近改め三代目尾上辰之助襲名のめでたい舞台。24年振り名跡復活の祝幕は、昨年4月に「無筆の出世」での共演を観た講談師・神田松鯉が贈ったもので、「青龍」が若々しい。今回は河東節「十寸見(ますみ)会」メンバーのおかげで最高の下手桟敷席で、ド派手な団菊「助六」も堪能。歌舞伎の今と明日を感じる。40分の休憩1回を挟んで4時間でも長くない。2万円。

まず襲名披露狂言で、時代物浄瑠璃「菊畑」。源氏方の奴・智恵内(尾上松緑)と、 実は御曹司牛若丸の虎蔵(新・辰之助)が正体を隠し、平家方についている鬼一法眼(坂東彦三郎)から兵法書「六韜三略(りくとうさんりゃく)=虎の巻」を奪おうとする。後段の「一條大蔵譚」に比べてあまりかからない場面なのは、兄弟の腹の探り合いが複雑なせいか。明るい菊の花壇や主役主従の色気、「勧進帳」を踏まえた折檻のくだりなど見所が多いのになあ。
正体を知りながら虎蔵を思って突っ走る皆鶴姫に、赤姫らしい中村時蔵、敵役の笠原湛海に、辰之助を生まれた頃から知っているという坂東亀蔵が出て、
劇中で揃って口上となり拍手。辰之助は二十歳にしては線が細すぎる気もするけど、芝居心がある印象だ。ガンバレ。2019年の中村莟玉襲名もこの演目だったんですねえ。

休憩で届けてもらったお弁当を頂き、いよいよ祝祭感満載の「助六」。先代の市川團十郎から何度か観たけど、十三代目の助六と八代目尾上菊五郎の揚巻という当代随一の顔合わせは初めてだ。13歳・市川新之助の口上からわくわく。ケタ違いにパワフルで、あっけらかんとお茶目な江戸情緒を満喫する。
助六の出端は期待通りの伊達男ぶり。今回はイヤホンガイドを借りたので、江戸紫の蛇ノ目傘には團十郎家の替紋「杏葉(ききょう)牡丹」がついていて、必ず紋が上に来るように回す、という解説に感心したり。対する菊五郎は女形本職の玉三郎に比べると凜として、そこがまたゴージャス。
野暮だけど大物の髭の意休は市川男女蔵、妹分の白玉も時蔵と、それぞれ代替わり。くわんぺら門兵衛の松緑が、いなせな福山かつぎの辰之助にからんじゃうのはご愛敬だ。注目は通人・里暁の尾上右近。股くぐりでなんと得意の海老反りを披露するわ、引っ込みでは連獅子での団菊との縁や「右近左近だったよしみ」とお祝いを語るわ、やりたい放題でテンポがいい。先日まで大河ドラマで難しい足利義昭を演じていたし、なかなか曲者になってきたなあ。白酒売で愛嬌ある中村梅玉、満江で中村雀右衛門が締める。

プログラムにはプロデューサー織田紘二が一文を寄せている。男気ある芸風で人気を博した初代から、40歳で早世する1カ月前に「オリちゃん、友だちだよな」と言われたという回顧が感慨深い。
この日は歌舞伎座建て替えを手掛けた清水建設の首脳陣が河東節登場とあって、客席にはビジネスマンが多い印象。知人に見つかっちゃってました~
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37.2℃~微熱~vol.6

37.2℃~微熱~vol.6  2026年5月

ちょっと怪しい雰囲気の中野富士見町、すごく怪しい雰囲気のビル地下にあるイベントバー、ニューサンナイに足を運んでみた。この日は東京NSC出身の太っちょ俳優・遊佐亮介以下、総勢6人による台本無しの即興芝居(インプロビゼーション)。10分程度のコント6本を畳みかけ、短い休憩後、長めに1本。お笑いコンビ「ぷぅ」の小柄なはな(太田プロ)と「デンコーセッカ」のソバージュ柳木ガリ(ワタナベエンターテインメント)の爆発力、パフォーマンス集団「おしゃれ紳士」西川康太郎の気取った技巧、遊佐の知性などで楽しめた。ちょっとした設定の間違い、オチのつかない手違いもスリリング。自由席は20、30代の男女でいっぱい、知り合い同士も多いようで開演前から盛り上がる。アフタートーク込み3700円+ドリンク600円。休憩を挟んで3時間。

遊佐がインプロの前提などを説明してから、肩ならしは観客から〆のセリフをもらって3人ずつでバトル。2組とも制限時間1分以内に〆にたどりつけず、まさかのドローで腰砕け。
気を取り直し、ひとりずつ最近の出来事を語って、その中の単語をヒントに芝居に入る。ガリの「ヤンキー」から「不良の友情」は、はなのギルティ炭酸 NOPEが可笑しく、ガリが咄嗟にパンチを繰り出してさすがだ。劇団「イルカ団!!」の金髪・岡田果歩「身長173㌢」から「就活生173番の玉の輿」は、ワルの跡取り西川に色気がある。はなの戦場カメラマン「自転車」から「つぶれかけたジム」は、遊佐&ガリのまさかの熱唱と、可愛いはぎのりなのうるさい!に爆笑。西川のミュージカル「つられる」から「釣られた鯵の恩返し」が秀逸で、はな演じる猫とガリの鯵のなんともいえない愛嬌に加え、岡田の女神、遊佐のネプチューンが意外な展開力を発揮。最後ははぎの「いい奴にみられたい」から「恋人を亡くしたバンドマン」。遊佐が細かい芝居をみせ、感動の再生と思いきや、幽霊はぎのが調子っぱずれで見事にオチとなりました。
短い休憩を挟んで後半は、「好きすぎて滅!」をモチーフにアイドルグループの苦い解散と、ファン遊佐の熱意による再結成談。辣腕プロデューサーのガリがいかにもの造形で、西川、はな、岡田がワンコーラス踊ってへとへとなのが可笑しかった。終始絶妙なキーボードはミュージックディレクター今安志保。

休憩後、ステージ上にテーブルを出してアフタートーク。それぞれのシーンで何を考えていたか、ネタばらしが面白い。はぎのがトークで意地悪キャラを披露し、のんびり岡田と好対象。抽選で観客が「推し」の出演者にドリンクやカレーをおごれる、というシステムに驚く。たぶん地下アイドルやお笑いって、こういう雰囲気なんだなあ。いろいろ面白かった!

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