文楽「絵本太功記」「勧進帳」
第232回文楽公演 2部・3部 2026年2月
今回の文楽東京公演は、春節気分の横浜、初のKAAT神奈川芸術劇場第ホール。短いながらも花道をしつらえて、還暦を迎えた吉田玉助、渾身の弁慶を堪能する。それに先立ち、人形の人間国宝3人が揃い踏みの尼ヶ崎と豪華な1日。2部は休憩1回3時間で9000円。3部は休憩無し1時間強で5000円。
まず2部は苦悩し続ける武智光秀(明智光秀)をドキュメンタリー風に描く、通し狂言「絵本太功記」の後半。文楽で2回、歌舞伎で1回観ているけれど、首都圏では約20年振りのという瓜献上の段もついて面白い。
本能寺の変から4日たった六月六日妙心寺の段から。奥は竹本織太夫、鶴澤燕三。ちょっと癖が出てきたかな。主君を討った光秀(吉田玉男)を許せない老母さつき(吉田和生)が、風呂敷包みひとつで家出しちゃうのを、家臣が家財道具をかつぎ、慌てて追いかけるのが可笑しい。光秀は切腹を覚悟するが、家臣の四王天田島頭(吉田玉佳)と息子十次郎(吉田玉勢)にとめられる。
日本芸術院会員が発表になったばかりの玉男さん、衝立に太い筆で時世の句「順逆無二門 大道徹心源 五十五年夢 覚来帰一元(順逆二門無し 大道心源に徹す 五十五年の夢 覚め来たって一元に帰す=従うのも逆らうのも人として行くべき道かどうかだ。生涯は夢と悟り、全ては根本に帰る)」を書いたり、参内のため烏帽子に改めて馬にまたがったりして立派。いつもの勢いは今ひとつだったかも。
休憩を挟んで六月九日瓜献上の段。明るい大物浦の光景に詩情が漂う。中国大返し途中の真柴久吉(豊臣秀吉、映画出演も果たした桐竹勘十郎)に、百姓に化けた田島頭が近寄るものの見破られる。
そして妙見講(日蓮宗の集まり)が賑やかなさつきの侘び住まいに、登場人物が集結する六月十日夕顔棚の段。豊竹希太夫、竹澤團七が聴きやすい。続いて同じ日、眼目の尼ヶ崎の段、通称太十(たいじゅう)へ。前半、ゆったりした豊竹呂勢太夫、迫力の鶴澤清治がおおいに盛り上げる。切の豊竹若太夫、鶴澤清介は渋いんだけど、迫力不足がいかにも残念。物語は光秀が西行もどき(僧に化けた)の久吉を竹槍で襲うが、さつきが身代わりになっちゃう悲劇。初陣だった凜々しい十次郎も瀕死の手負いで、さしもの光秀も大落シ。豊竹座系東風特有の豪快な旋律とのこと。大詰めはセットが一転して、広大な海と松をバックに、両雄が京都山崎・天王山での決戦を期して幕。
客席入れ替えがあって3部は文楽名作入門と銘打ち、お楽しみ「勧進帳」。重苦しい2部とうってかわって、まず爽やかな松羽目に救われる。床は竹本錣太夫、豊竹藤太夫、竹本小住太夫、鶴澤藤蔵、鶴澤清志郎らずらり7丁7枚が並んで、客席から感嘆の声。スマホで詞章を眺めなつつ、音楽劇を楽しむ。
人形はなんといっても2014、2020年に玉男で観た弁慶がいよいよ玉助に。2022年、大阪での玉助を見逃していて初めてだ。特別に出遣いの左は2部から大活躍の玉勢、足は後半が吉田玉路。義経に端正な吉田簑紫郎、冒頭に名乗りがある富樫は吉田玉志。歌舞伎から移した名場面が、二杯道具(背景の転換)を含めてトントンと進み、終盤の太棹大合奏が迫力だ。ラスト、花道に合わせて行きつ戻りつ、たっぷりの飛び六方に大拍手でした~

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