オルフェオとエウリディーチェ
オルフェオとエウリディーチェ 2025年12月
2022年の初バロックオペラ体験で、勅使河原三郎演出に感動したグルック。再演を加藤浩子さんの鑑賞会で。登場人物3人、休憩1回で2時間とコンパクトななかに、音とダンスと花の美が詰まっている。今回は園田隆一郎がタクトをとり、より深化した印象。東フィル。新国立劇場オペラハウス、ちょっと前寄り下手側で、解説・プログラム込み2万8000円。
歌手陣は亡き妻エウリディーチェの新星ベネデッタ・トーレ(イタリアのソプラノ)が、一途に夫に呼びかける三幕「なんて残酷な瞬間、ひどい運命」など、ニンフらしく瑞々しくて良い。なんとか妻を冥界から復活させようとするオルフェオは、初演のカストラートからサラ・ミンガルド(イタリアのアルト)になって柔らかく、まとまりがある。現在、真のアルトは数少ないそうで、終幕近い「エウリディーチェを失って」(悲しいけどハ長調)はオケと息が合ってドラマチック。夫婦を救う愛の神アモーレは躍進中の杉山由紀(メゾ)が魅力的に。そういえばソロが女声だけのオペラは初めてかも。
舞台上で黒子に徹する合唱は一幕「エウリディーチェよ、あなたの美しい霊魂が」から賛美歌を思わせる美しさ。1762年初演の本作は啓蒙思想を背景に、装飾的なアリアを抑えてドラマに比重を置いた「改革オペラ」で、オケも大活躍だ。園田さんがSNSで「オケ付きレチタティーヴォが多い。公演前に必ず楽屋で全てのレチタティーヴォを真剣に口ずさんでからピットに向かう」と書いてました。凄いな。
元ネタのギリシャ神話は、現存する世界最古のオペラの題材になったほどポピュラーで、19世紀にはオッフェンバックがパロディ「地獄のオルフェ(天国と地獄)」を書いている。本作では依頼主マリア・テレジアの意をくんでハッピーエンドにアレンジ。のちに娘マリー・アントワネットの招きでパリ版も書いており、二幕の冒頭や「精霊の踊り」など舞曲が多いのはフランス流とのこと。なるほど。
踊りといえば初演同様、アーティスティックコラボレーター佐東利穂子率いるモダンダンスが盤石だ(ダンサーはウクライナ、オーストリア、スペイン出身)。勅使河原演出としては改めて、シーンを表わす花の表現も秀逸で、一幕の墓碑、二幕の暗い地獄の洞窟、その後の白い野原、ドレスの飾りなど溜息が出る。勅使河原さん、再演では珍しくずっと稽古場で演技をつけたそうで、カテコにも登場。キリッとした立ち姿が際だってました。
終演後は園田さんを囲む懇親会へ。10月のイベントに続いて最後まで付き合ってくださり、ますますファンになっちゃう。帰宅後、加藤さんに教わったパリ・オペラ座ピナ・バウシュ演出版を配信でちらっと。歌手とダンサーが文楽よろしく、ふたり1組でそれぞれのキャラクターを表現するのが面白い。もちろん振付、ダンサーは高水準。ヘンゲルブロック指揮。オペラはつくづく贅沢な総合芸術で、いろんな発想が可能。それだけに実現するハードルの高さを思うと、鑑賞できるのは幸せだなあ。

« Metis 20th tour | トップページ | スリー・キングダムズ »
「オペラ」カテゴリの記事
- 2025年喝采づくし(2025.12.31)
- オルフェオとエウリディーチェ(2025.12.07)
- ラ・ボエーム(2025.10.11)
- セビリアの理髪師(2025.06.03)
- フィデリオ(2025.04.26)
コメント