顔見世「醍醐の花見」「一條大蔵譚」「玉兎」「鷺娘」「平家女護島」
吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 2025年12月
「国宝」で盛り上がった2025年の歌舞伎納めは、思い切って八代目菊五郎襲名披露の京都南座に遠征。前夜に上七軒で楽しく過ごした翌日、夜の部の口上と弁天小僧は5月歌舞伎座で観たので、舞踊目当てで昼の部へ。玉三郎を迎えた道成寺で注目された六代目菊之助が、評判通り頼もしく、次々世代への期待が膨らむ。一方、「俊寛」はあえてダブルキャストの仁左衛門ではなく勘九郎、「一條大蔵」も幸四郎で、いずれも屈折がある難しい演目を健闘し、伝承を見守る気分。2026年も楽しみだなあ。1階9列の良い席で2万6000円。休憩3回で5時間たっぷり。
幕開けは華やかに「醍醐の花見」。昨夜、偶然ご一緒した鳥羽屋里松さん登場の長唄舞踊だ。北政所(ねね、扇雀)、まつ(上村吉弥=片岡我當の部屋子)らが控えるところへ悠々と秀吉(鴈治郎)が登場、北政所より淀殿(孝太郎)を気にして笑いを誘う。加藤清正(虎之介=扇雀の長男)、福島正則(鷹之資)、曽呂利新左衛門(頓知がうまい噺家の始祖、新之介=我當の長男)を筆頭に、みなで舞う。鷹之資が群を抜く切れ味。
短い休憩を挟んで「一條大蔵譚」。2016年に亡き吉右衛門のニヒルな造形を堪能した演目だ。導入の檜垣茶屋の場に続き、大蔵館奥殿の場で忠義一途で詰め寄る鬼次郎(愛之助)・お京(壱太郎)夫妻を常盤御前(七之助)ががっつり受け止め、清盛に身を任せた真意を語る。ちょっと粋過ぎるかな。そこへ現われた一條大蔵(幸四郎)が敵役・八剣勘解由(やつるぎかげゆ、松本錦吾)を仕留め、竹本にのった語り、ぶっかえりで本性を現す。痛快というより底の知れない人間性の怖ろしさ、なお阿呆のフリは続くという孤独の深さがつくづく凄い話だ。幸四郎さん、頑張ってた。
休憩でお弁当をつつき、お楽しみの変化物2題は菊之助の清元「玉兎」から。巨大な中秋の名月にうかぶ子供のシルエットが、まず可愛い。飛び出すと赤い下がり、袖無し、鉢巻で餅つき職人の姿。「かちかち山」の老人、老婆や狸も踊り分ける。体幹がしっかりして視線に色気さえ漂い、とても12歳には見えません。楽しみ~
続いて菊五郎が、待ってました長唄「鷺娘」。実はリアルは2010年に若き七之助さんで観たくらい。三下りのしっとりした曲調にあわせ、たおやかな白無垢、引き抜きで可憐な赤い着物の町娘に変わって恋のクドキ、再び引き抜きでピンクに変わり傘尽くしを賑やかに。やがてぶっかえりで鷺の姿に戻り、のたうつセメ、絶望まで、さすが破綻のない流麗さでした。終幕の凄みはこれからかな。
短い休憩の後、近松原作の「平家女護島 俊寛」。なにせ主人公がうらぶれ、よたよたの流人で地味なんだけれど、2010年の勘三郎の汗まみれ熱演、2020年吉右衛門の虚無感は目に焼き付いている。勘九郎はキャラに暗さがあって、吉右衛門さんに近い印象。情理を備えた上司・丹左衛門(巳之助)が制止するのも聞かず、頑なな瀬尾(坂東彦三郎=楽善の長男、11月に火災で急死した片岡亀蔵の代役で)にとどめを刺しちゃう。「弘近の船」のセリフには、目の前の丹波少将(隼人)と海女の千鳥(丸顔が可愛く、クドキに激しさもある莟玉)の幸せを願うというより、自分が清盛に恨まれたせいで妻・東屋が無残に首を討たれ、尊厳のかけらもない人の世に対する絶望が強く滲む。断崖絶壁の幕切れの虚無感。なかなかでした!
襲名のちょっとシュールな祝幕は、南座用に仏トランクメーカーMOYNAT(モワナ)が提供、グラフィックデザイナー永井一正と日本デザインセンターによる原画で、連獅子がモチーフとか。ロビーには師走の風物詩、ご贔屓からの竹馬がずらり。面白かったです!

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