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雨の傍聴席、おんなは裸足…

大パルコ人⑤オカタイロックオペラ 「雨の傍聴席、おんなは裸足…」  2025年11月

作・演出の宮藤官九郎がPARCO劇場と組み、2009年から続けるロックオペラ「大パルコ人」シリーズに初参戦。4年ぶり新作はドラマ「しあわせな結婚」も秀逸だった阿部サダヲ、松たか子による法廷劇、といっても歌とギャグ満載。短い休憩を挟んで2時間半、ひたすらバカバカしい大騒ぎで盛り上がりっぱなし。芸達者たちが本気出すと、こんなに面白いのか! ファン集結の感があるPARCO劇場、割と前のほう上手寄りで1万2000円。

2042年の渋谷、国内初のホール型民営裁判所。生中継されるのはミュージカル俳優・獅子頭吠(阿部)の15年も続いている離婚裁判だ。裁判長(藤井隆)はキラキラ衣装でまさかのフライング。阿部が欠かせないものを歌いあげながら、加湿器を抱えて登場すると、対する妻の演歌歌手・観音院かすみ(松)は真っ赤な着物に番傘で客席を練り歩く。コテコテに振り切っていて、何をやっても見事。
開演20分で休憩!となり、あれよあれよで物販へ。藤井が客席に降りてきて、裁判で使う木槌(ガベル)を模したペンライトを売り歩く。後半、これで夫婦どちらかを応援して、という趣向。休憩後に2時間ぶっ通し、手練れの荒川良々らが伸び伸び暴れる。宮藤、よーかいくん、三宅弘城はバンド演奏もあって実に楽しそう。ストーリーははちゃめちゃだけど、天才の息子・立憲(ラストの歌がさすが説得力ある峯田和伸)の親権争いがホームドラマに着地するところはクドカンらしいな。

あー、楽しかった、と終わって外へ出ると、渋谷は師走の気配。

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春陽「暗闇の丑松」「忠僕元助」

春陽党大会   2025年11月

神田春陽の独演会シリーズへ。ますます硬軟自在で楽しい。いつもの神保町らくごカフェ、自由席で3000円。

弟子のようかんが着替えてないなあ、と思っていたら、新入りの前座。本当に読んでいるのを初めて見ました。ガンバレ。
そして春陽登場。最近、NHK「熱談プレイバック」で長嶋茂雄の回に出演したのが話題。熱烈なタイガースファンだから「裏切り者ってメールが来た」と笑わせてから、「天保六花撰 暗闇の丑松 おかじ殺し」。お馴染みの悪党ものから、今回は河内山宗俊の一の弟分、丑松の悲劇を。いったん板前に戻り、元売れっこ芸者の恋女房お半、息子と暮らしていたのに、強欲な姑がお半に横恋慕した侍にそそのかされ、こともあろうに邪魔な息子を手にかけちゃう。 それを聞いた丑松が姑、侍を手にかけ、再び旅に出る。初めて聴いたくだりだけど、なんとも怖いお話を立て板に水で。

休憩を挟んで助演は年末恒例、活動写真弁士の坂本頼光だ。ロケ地の奈良で、阪妻の記念碑的作品「雄呂血」の封切100年記念上演会に出演、四男・田村亮さんがゲストだったという報告があり、映画はチャップリンもどきモンティ・バンクスのアクション喜劇「無理矢理ロッキー破り」。淀川長治がバンクスを大好きで、対談で筒井康隆が贋チャップリンと呼ぶのをやんわり否定していたとか。続いて人情物「親」。なんと簡易保険加入を促す政府広報的な作品。監督の清水宏は松竹蒲田出身で、小津安二郎と終生の親友、子どもを自然に撮るので知られたとか。確かにじんわり。よく見つけてくるなあ。
ラストは春陽で、この季節らしく「赤穂浪士外伝 忠僕元助」。なんと2012年に初講談、もちろん春陽さんで聴いた演目だ。思えば春陽さん、すっかり偉くなりました~ お話は討ち入り前日。源五右衛門が浪人になっても仕えてくれた元助に、仕官がかなったが連れて行けないと暇を出すが、元助は頑として聞き入れない。この押し問答がめちゃくちゃ可笑しいんだけど、ついに討ち入りだとわかって水盃からは、しみじみ。翌朝、元助は引き揚げる浪士にミカンを配り、その後は出家、故郷安中で20年かけて四十七士の石像を彫ったと。面白かったです!

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マケラ指揮「ブラームスピアノ協奏曲第1番」「バルトーク管弦楽のための協奏曲」

富士通スーパーコンサート クラウス・マケラ指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2025年11月

凄いものを聴いてしまった。評判は耳にしていたけれどこれほどとは。新星クラウス・マケラ29歳が、2027年に首席指揮者に就任予定の名門ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(アムステルダム、1888年創立)を相手に、実に楽しそうにソリストそれぞれの音を際立たせる。その前にはピアノのアレクサンドル・カントロフ28歳が変化に富むソロを披露して、圧巻!これだからリアルのコンサートはたまりません。サントリーホール大ホールの中ほどやや上手寄りで3万8000円。休憩を挟んで2時間。カジモト招聘。

まずブラームス「ピアノ協奏曲第1番ニ短調op.15」。カントロフがオケと調和しながら、弱音をひときわ繊細でくっきりと。だからこそ盛り上がりの大編成のオケを圧する激しさ、迫力がずしんと響く。合間に椅子に手をついている姿がアンニュイなのも面白い。フランス出身。2024年パリ五輪の開会式で、大雨の中でラベル「水の戯れ」を弾いた人だったんですねえ。
ソリストのアンコールは名曲リスト編曲のワーグナー「イゾルデの愛の死」。もっていかれた~

そして休憩の後はバルトーク「管弦楽のための協奏曲」。にこやかで躍動感あるマケラの先導で、特に管楽器それぞれがもれなく美しく、色とりどり。鮮やかで見事な洗練。
アンコールはJ.シュトラウスⅡ「ハンガリー万歳!」で大盛り上がり。マケラは2027年、シカゴ交響楽団音楽監督に就任予定なんだなあ。楽しみ~

客席ではなんとすぐ前にオペラの師匠が。こういう偶然も楽しいものです。
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チェーホフを待ちながら 

まつもと市民芸術館プロデュース チェーホフを待ちながら  2025年11月 

MONO代表の土田英生がアントン・チェーホフの「ヴォードビル」と呼ばれる一幕劇4作を潤色し演出。随所に代表作の「かもめ」「三人姉妹」「桜の園」のモチーフを散りばめていて楽しい。KAAT神奈川芸術劇場大スタジオの中央いい席で6000円。休憩無しの1時間半。

がらくたが雑然と並ぶ一角で、男女が待っているところに現われたゴドー。でも待っていたのはチェーホフなんだけど…。オムニバスの「熊」「煙草の害について」「結婚申込」「余儀なく悲劇役者」は、いずれもすれ違う会話が何とも言えないおかしみを生む。死んでいる人は自分が死んでいることを知らない、人ってそうだよね。ナンセンスで微笑ましく、どこか希望がある。
出演陣がみな達者。けが休演のみのすけに代わって土田が登板し、猫のホテル・千葉雅子とのコンビは4月に岩松了さんら演出家の演劇ユニット「チーム徒花」で観て以来。演技もこなす劇作家の芝居って面白いなあ。中でも延々演説をぶつ、飛び道具・山内圭哉が爆笑。ほかにMONOの金替康博、ナイロン100℃の新谷真弓、シアターランポン主宰の武居卓。

客席にはケラリーノ・サンドロヴィッチ、緒川たまき夫妻も。 

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ヴォイツェック

パルコ・プロデュース2025「ヴォイツェック」  2025年11月

ドイツのゲオルク・ビューヒナーによる1830年代の未完戯曲で、ベルクの現代オペラ版で知られる物語。英国のジャック・ソーンが翻案した2017年初演作を、小川絵梨子が上演台本・演出で丁寧に。設定を冷戦下1981年のベルリンに移し、不穏な社会情勢と、ひとりの平凡な男の自己崩壊を描く。人間性を破壊するのは貧困か抑圧か。翻訳は高田曜子。東京芸術劇場プレイハウスの中ほどの席で1万1500円。休憩を挟んで2時間半。

ヴォイツェック(森田剛)は英国から西ベルリンに派遣されている兵士。愛妻マリー(伊原六花)、赤ん坊との暮らしをなんとか楽にしようと、トンプソン大尉(冨家ノリマサ)の髭剃りを引き受けたり、マーティン医師(栗原英雄)の薬物試験に参加したり、いじらしい。しかし薬物の副作用や戦闘体験のPTSD、幼少期に母(伊勢佳世)と離れた心の傷から、やがて精神の均衡を失っていく。
なんとなく目を背けたくなるような陰惨さを覚悟していた。確かに暗いものの、印象は意外にすんなり。生活苦など多かれ少なかれ、現代人が抱える葛藤とシンクロする普遍性があるし、宙づりの分断都市に生き、国家の対立に翻弄される個人の息苦しさも現代的だ。じわじわとヴォイツェックの脳内世界に引き込む演出も巧み。

タイトロールの森田は持ち前の不安定さが、予想通りのはまり役。伊原に貧困を生き抜くひたむきさが滲み、人間味があっていい。オペラでは浮気しちゃうらしいけれど、ソーン版は夫の狂気から逃れようとするだけで、繊細な造形。脇も達者で、中でも同僚兵士アンドリュースの浜田信也が、妙に飄々としてさすがの存在感だ。
抽象的な美術は横原由祐。ちなみにオペラ版が「ヴォツェック」なのは、筆者の手稿でyがzと読み違えられたまま定着したそうです。
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歌舞伎「當年祝春駒」「歌舞伎絶対続魂」

吉例顔見世大歌舞伎 夜の部  2025年11月

顔見世で、三谷幸喜作・演出の三谷かぶき三作目の初日に。ノンストップの笑いで歌舞伎俳優のコメディセンスを存分に引き出し、舞台人のほろ苦さ、心意気をみせる手腕はさすが。松本幸四郎、片岡愛之助、中村獅童という鉄板トリオはもちろん、次世代の中村莟玉、市川染五郎、中村鶴松、急きょ代役の橋之助らが生き生きして頼もしい。知人のおかげで10列中央の特等席で2万円、35分の幕間を挟んで3時間。

幕開けは長唄舞踊「当年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)」を短く。正月興行大詰「対面」の前に付けた曲がベースだ。門付け芸人・春駒に身をやつした曽我十郎(中村橋之助)、五郎兄弟(元気に中村萬太郎)が、小林朝比奈(扇雀の息子の中村虎之介)の手引きで工藤館を訪れ、「めでたやめでたや 春の始の春駒なんぞは」と祐経(中村歌六)に踊りを披露。「女のよれる黒髪に」と大磯の虎(下げ髪の中村米吉が華やか)らのクドキに続き、「淡竹(はちく)の竹馬 先のけ先のけ」と賑やかに。

休憩後は「歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)幕を閉めるな」。ベースは東京サンシャインボーイズが1991年に初演、数々のトラブルに見舞われながら「マクベス」をやり抜くバックステージ群像劇の傑作だ。ドラマ化、再演をへてコロナ禍の2022年には戯曲さながら、三谷が代演に次ぐ代演で乗り切り、テレビ中継での観劇でさえハラハラした。
歌舞伎版の設定は延享年間、伊勢の芝居小屋。座付作者・冬五郎(幸四郎)、頭取・三保右衛門(中村鴈治郎)、座元・半蔵(愛之助)らが忙しく準備する。演目は前年に大阪の人形浄瑠璃で大当たりをとった傑作「義経千本桜」の「四の切」。無断で歌舞伎化したら、よりによって原作者の竹田出雲(市川男女蔵)と弟子の半二(鶴松)が観に来ることに。しかも看板役者で忠信役・小平次(獅童)は泥酔、静御前のいせ菊(ごつ過ぎる坂東彌十郎が伸び伸びと)はアゴが外れていて、若手の赤福(中村歌之助)は自信喪失。そのうえ義経役のスター虎尾(染五郎)は馴染みの遊女(なかなか粋な坂東新悟)を出せとごり押し、いせ菊はキーとなる小道具の鼓を取り違え…
幸四郎の必死さ、愛之助のちゃらんぽらん、獅童の飛び道具ぶりが見事な当て書きだ。危機を救う五十鈴の苔玉に華があって素晴らしく、今回は意地悪な鶴松にも存在感。染五郎が見習い番吉との2役で大活躍だ。早替りで拍手を待つケレンがあればもっといいかも。
現代劇から骨つぎ玄福の浅野和之が期待通りの怪演で、真面目な大道具方の阿南健治とともに爆笑を誘う。飄々とした鴈治郎が歌舞伎らしい重しとなり、出番を削られたあやめの市川高麗蔵、そもそもお呼びでないベテラン琴左衛門の松本白鸚(座ったまま)が大物ながら役者の業を醸し出す。
バックステージものだけど、大詰めは回り舞台で表の劇中劇になだれ込み、さすがの爆発力。2025年のエンタメを代表する映画「国宝」の小ネタも散りばめ、大拍手でした~
開幕前にはホワイエを歩く三谷さんが観客から声をかけられ、客席にはサッカー日本代表監督の森保一さんの姿も。

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名手久詞LIVE

名手久詞 昭和50年50歳 Special Birthday Live 2025年11月

ピアニスト、ナッティさんのバースデーライブで南青山MANDALAへ。サポートしているGospelチームのメンバーで満員だ。休憩無しでたっぷり3時間。5000円にドリンク、おつまみを追加して7100円。
ご本人の弾き語り、ハーモニカをまじえた「ピアノ・マン」でスタート。 GGB新宿(Dir.長谷川繁)がお馴染み「Fire」で勢いをつけ、後藤美幸&Miyuki Family Gospel Singersが「When I Think About The Lord」を熱唱。メンバーもそれぞれ巧い。水帆&Shout Praise+は男性ソロのあと、「Hallelujah Salvation&Glory」で聴衆を巻き込み、サプライズで奥さん、お嬢さんからの花束贈呈。最後は司会を兼ねていた横浜 Fun★key Singersが昭和歌謡と洋楽をつなげたり、CMソングを畳みかけて笑い一杯。ラストは皆で「That's What Friends Are For」を歌ってお開きでした。

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