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フィデリオ

METライブビューイング2024-25 フィデリオ 2025年4月

久々のMETライブビューイングをオペラ好き仲間の鑑賞会で。シーズン第5作はライブビューイング初登場のベートーヴェン「フィデリオ」だ。2008年に小澤征爾指揮、デボラ・ヴォイド主演のウィーン国立歌劇場の来日で、また2018年に新国立劇場20周年記念公演のカタリーナ・ワーグナーによる衝撃演出で観た、いろいろと印象深い演目。新国は飯守泰次郎指揮、フロレスタンはその後、急死しちゃったステファン・グールドだったなあ。
そして今回、豪華な歌手陣と合唱、ベートーヴェンらしい勧善懲悪と成長のドラマを満喫する。ヘルシンキ出身で現代音楽も得意なスザンナ・マルッキ指揮。東劇の中央あたり、20人以上の団体割引で3200円。休憩を挟んで3時間。

全編がこれぞベートーヴェン、歌手も交響楽の一部という印象で、ロマン派の香り。1幕ラストの合唱「おお、なんという喜び」、そしてフィナーレの大合唱「万歳、この日この時」の高揚感は、20年後の第九の先駆けといえそう。同時に「魔笛」に影響を受けた「教養小説」であり、セリフで進行する軽快な歌芝居でもある。
フランス革命の16年後に初演しており、激動の時代に無実の者の救出という正義のテーマは、切実だったのだろう。これがベートーヴェンの唯一のオペラになったのは、娯楽作品に興味がなかったからとかで、不道徳なものは書けない、「フィガロの結婚」は嫌いと言っていたらしい。英雄的なレオノーレは理想の女性なのかな。

なんといってもお目当てのレオノーレ役、リーゼ・ダーヴィトセン(ノルウェー出身のソプラノ)が期待通りだった。注目のドラマティックソプラノで、身長188㌢、アスリートのような骨格。声量と強さがあり、かつ柔らかくて朗らか。1幕「悪者よ、どこへ急ぐのか~来たれ、希望よ」など高音の輝き、ドスの効いた野太さがいい。なんと双子を妊娠中で、梯子を登ったりしてびっくり。この公演後に産休に入り、復帰後は「トリスタンとイゾルデ」が決まっているとか。
相手役フロレスタンの新星デイヴィッド・バット・フィリップはイギリスのリリック・テノール。2幕、いきなり高音で至難の「おお、ここはなんと暗いのだ!」を聴かせ、繊細さも併せ持つ。リーゼとロンドンの同演目で共演していて、息もぴったり。
リアリストの看守ロッコはお馴染みドレスデン生まれの名バス、ルネ・パーペ。声は衰えたかもしれないけど、墓掘りに迷いを見せる二重唱など、人間味のある演技がさすがだ。悪役ドン・ピツァロのトーマス・コニスチュニー(ポーランド出身のバス・バリトン)も今が全盛期の演技派で、メリハリある美声で1幕「ああ、今こそチャンスだ!」など屈折を表現していた。ほかに若いカップルで瑞々しいイン・ファン、マグヌス・ディートリヒ。

プロダクションは2000年制作、ドイツのユルゲン・フリム(1941-2023)演出版で、メトでは5回目の再演。時代を20世紀前半、フランコ独裁政権時代のスペインにして、ファシズムの恐怖を身近に現出させる。とはいえ読み替えのわかりにくさはなく、舞台を縦横いっぱいに活用し、何層の積み重なる監獄、地下牢への高い梯子がダイナミック。大詰めで監獄の壁が上がって広がる青い空が美しい。

そして印象的だったのは、挨拶した総裁19年目のピーター・ゲルブの静かな怒りと覚悟。政治的な理由での拘束や解放といった本作のテーマについて「、「まさに今の世界が必要としている作品。そういう意味で完璧」と言い切っていた。

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