やなぎにツバメは
シス・カンパニー公演「やなぎにツバメは」 2025年3月
2024年「う蝕」が強烈だった横山拓也の新作を、2022年「ピローマン」などの寺十(じつなし)吾演出で。大竹しのぶはじめシスカンならではの豪華キャストが、ごく普通の人生の閉じ方、ありふれた老いと孤独の心のひだをカラッと描く。笑いたっぷり、軽妙で緻密な会話劇、しかも手練れ揃いの6人でテンポが抜群だ。完成度が高いなあ。いっぱいの紀伊國屋ホール、上手寄り前の方で8000円。休憩無しの1時間半強。
美栄子(大竹)が母つばめの自宅葬を終えたところ。苦労した介護も一区切りだ。つばめが営んだスナックの常連で、葬儀屋の洋輝(段田安則)、内装デザインの祐美(木野花)を20年来の親友と呼び、グループリビングを夢見る。そこへ看護師の娘・花恋(松岡茉優)と料理人で洋輝の息子・修斗(林遣都)の婚約、独立話に、別れた夫で設計士・賢吾(浅野和之)がからみ、それぞれの切実な思いが交錯して右往左往…
大竹がさすがの存在感。パートのおばさんのくたびれ感も、愛人として生きたつばめへの愛憎も、切なく可愛いらしい恋心も自由自在だ。大事なことに気づかないふりの優しくも無責任な段田、悪気はないけど終始マイペースの木野はもちろん、愛情も寛容さもあるのに追い出されちゃってトホホの浅野が実にいい味。林の一生懸命なだけに間が悪い可笑しさが絶妙で、そんな恋人を叱咤し続ける松岡は、大竹を応援するまっすぐなキャラが気持ちいい。けっこういい脇かも。
ワンセットの美栄子宅リビングは、一角につばめのスナックを再現したという設定で、回想の昭和シーンが挟まる。終盤、ツバメの巣で雛がかえる明るさ、大竹の歌に拍手! 繰り返される古い歌謡曲「胸の振り子」はなんとサトウハチロー詞・服部良一曲で1947年発表、石原裕次郎らがカバーしているとか。確かにいい曲だし、よく見つけてきたものです。美術の平山正太郎は松井るみのアシスタントだったんですねえ。