文楽「妹背山婦女庭訓」
第230回文楽公演 第二部 2025年2月
今回の文楽公演は地下鉄後楽園駅直結の文京シビックホール。吉田和生文化功労者顕彰記念の通し狂言「妹背山婦女庭訓」で、十三鐘の悲劇を描く二部に足を運んだ。1999年からほぼ完全版が復活しているそうで、2019年以来の鑑賞。玉助が遣う、抑制の効いた芝六を堪能する。大ホールは立派だけど、クラシック向きで残響にちょっと違和感があったかな。前のほう中央で9000円。休憩1回で約2時間。
物語は導入の猿沢池の段で、入鹿謀反の報を受け、藤原淡海(簑紫郎が端正に)が盲目の天智帝(ねむりの源太、勘壽)を連れだす。休憩を挟み、鹿殺しの段で漁師・芝六と長男・三作(玉彦)が藤原鎌足の役に立とうと、爪の黒い牝鹿を射ちゃう。メリヤスの黙劇風で、緊張感がある。
ここから貧しい芝六の住居での、コミカルな展開に。小住太夫・清丈、芳穂太夫・錦糸のリレーが歯切れ良い。まず掛乞の段は官女たちの珍妙な服装、集金に来たコメ屋が団扇であおいで渡した書き出し(請求書)を、大納言(ファニーな端役)が和歌と思って読み上げる。万才の段ではぼろ家を御殿と偽り、芝六親子が雅楽代わりにべれべれ万才を披露。お囃子は望月太明蔵社中。
そしていよいよ芝六忠義の段へ。千歳太夫・富助がいつも通りの熱演だ。三作が父をかばい、鹿殺しの罪で興福寺の役人に引き立てられていく。明け六つに向けて緊迫感が高まるなか、芝六は天皇への忠心を証明しようと、なんと弟・杉松を手にかけちゃって、女房お雛(清十郎)の嘆くこと嘆くこと。いやはや。そこへ威風堂々、すべてを操る鎌足(孔明、玉也)が登場して怒濤の展開に。三作があわや石子詰めの刑というところで、土中から神鏡が発見されて助命され、戻ってくる。その鏡の威徳で、帝の目も見えるように。杉松を葬る十三鐘の悲しい由来とともに、入鹿討伐への決意がみなぎる幕切れでした~
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