« 2024年喝采尽くし | トップページ | 歌舞伎「彦山権現誓助剣」 »

浅草歌舞伎「春調娘七種」「絵本太功記」「棒しばり」

新春浅草歌舞伎 第2部 2025年1月

初芝居は若手の初々しさが嬉しい浅草公会堂へ。今年は10年ぶり、顔ぶれを20代に一新して、中村橋之助が座頭のチームに。昨年の熱気は隼人人気だったんだなあ、と振り返りつつ、愛嬌で突出する鷹之資、なかなかの曲者・左近をはじめ成長が楽しみになって満足。1F中ほど上手寄りで9500円。休憩2回で3時間半。

年始ご挨拶はきびきび中村鷹之資で、当日券で花道脇狙いの女性に手ぬぐいをプレゼント。橋之助が演目の見どころを短く解説してから、お正月らしく長唄舞踊「春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)」。曽我物の舞踊で最古だそうです。富士と紅白の梅がぱあっと華やか。
頼朝の家臣・工藤祐経を狙う五郎(尾上左近)、十郎(中村玉太郎)と、愛する義経が頼朝に追われている静御前(中村鶴松)という設定だ。仇討ちにはやる兄弟が「丹前振り」「相撲振り」から鼓の「打囃し」。七草を織り込んだ詞章にのって、静御前が「七草の合方」で千穐楽々万歳と祈り、七草をたたく。最近、個人的に注目している左近が、小柄ながらもまずまずの武者ぶり。鶴松はもはや余裕ですね。

休憩を挟んで、1部と役柄を入れ替えての連続上演が話題の時代物「絵本太功記」から、追い詰められる武智光秀一家がひたすら悲しい尼ヶ崎閑居の場、通称「太十」。2016年に文楽で観たけど、意外に歌舞伎では初でした。
本能寺の変から八日目。前半は初陣に向かう息子・十次郎(鶴松)を巡り、女3世代がそれぞれ愁嘆をたっぷりと。許嫁の初菊(左近)は泣く泣く鎧櫃を準備して三々九度。母・皐月(中村歌女之丞)、妻・操(中村莟玉)は討ち死に覚悟だけど、謀反の死に恥を避けたくて、と打ち明ける。悲痛。左近が舞踊から打って変わって、絵に描いたようなお姫様。ちょっと声が低いかな。ちらっと登場する長身の旅僧・実は真柴久吉の市川染五郎が、さすがノーブル。莟玉は派手な顔立ちが目立つなあ。
竹本が交代して後半は、蛙が鳴くなか、光秀(橋之助)が竹藪から登場、久吉と間違えてこともあろうに皐月を刺しちゃう。えーっ。皐月が苦しい息の下から謀反を責め、瀕死で戻った十次郎は敗北を報告。2人の死に、さすがの光秀も大泣きだ。と思ったら、陣太鼓の音でセットが転換。光秀は松の木に登って追手を見極め、最後のひと暴れを期すけれど、そこはお約束、颯爽と武将姿に転じた久吉、駆けつけた佐藤正清(鷹之資)と後日の決戦を約束して派手やかに幕となる。橋之助はスケールが大きくて頼もしいけど、さすがに光秀らしい凄みはまだまだ。ガンバレ!

休憩後にお目当ての松羽目物「棒しばり」。勘三郎・三津五郎コンビの名演を映像で観たけれど、こちらも舞台では初。岡村柿紅作、五世杵屋巳太郎作曲で大正5(1916)年市村座初演の長唄舞踊で、狂言のわかりやすい笑い、高度な技量で文句なく浮き立つ。
お話はシンプル。酒好きの使用人に手を焼く大名(橋之助)が一計を案じ、次郎冠者(鷹之資)が「夜の棒」を披露する隙に手を縛り、笑っている太郎冠者(染五郎)も後ろ手にいましめて外出。2人は不自由なのに凝りもせず酒蔵に忍び込み、協力してまんまと呑んじゃう。酔っ払って上機嫌で踊っているところへ、大名が戻って大騒ぎ。
なんといっても鷹之資が、ユーモラスできびきびしていて抜群。大名相手に棒を振り回したり、器用に汐汲みを踊ったり、扇子を左手から右手に投げ渡したり、喝采です。頭大きめのバランスも、古風な演目にぴったりだ。対する染五郎はすらっとしているけど、よく稽古している感じだし、橋之助も堂々としていて歌舞伎らしい。面白かったです!

ここからまた十年かけて、スターが育っていくんだなあ。空いてきた浅草寺にお参りして、穏やかなお正月を満喫。

Dsc_4810 Dsc_4811 Dsc_4832 Dsc_4836 Dsc_4859 Dsc_4847 Dsc_4868

« 2024年喝采尽くし | トップページ | 歌舞伎「彦山権現誓助剣」 »

歌舞伎」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 2024年喝采尽くし | トップページ | 歌舞伎「彦山権現誓助剣」 »