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文楽「一谷嫩軍記」「壇浦兜軍記」

第229回文楽公演 第二部 2024年12月

12月の文楽は久々に東陽町から徒歩数分、街に溶け込む感じの江東区文化センターホール。第二部はなぜか重厚な時代物2階建てで、とりわけ人形、床とも充実の阿古屋を堪能する。前の方中央で9000円。休憩を挟んで3時間半たっぷり。

眼目の「壇浦兜軍記」阿古屋琴責めの段は、タイトロール竹本錣太夫らの掛け合いを竹澤宗助、鶴澤清志郎が支え、三曲は鶴澤寛太郎が胡弓まで自信たっぷりに。初めて聴いたのは2012年、一段と頼もしい。
そして人形は、極め付け桐竹勘十郎の遊君阿古屋が、八の字の出から艶やかで大拍手。特別な役だけに左の簑紫郎、足の勘昇も出遣いで、特に足遣いがのけぞるような姿勢で主遣いの動きをとらえる苦労がよくわかる。それを受ける情理兼ね備えた重忠の吉田玉助は、じっと座っている難しい役。演奏に耳をこらすさまなど微妙な変化があって、さすがだ。責められる阿古屋よりこっちが辛いと。コミカルな岩永の吉田玉勢も安定して大満足。

それに先立つ「一谷嫩軍記」は熊谷桜の段から。熊谷陣屋の段で豊竹呂勢太夫、鶴澤清治がスケール大きく盛り上げた一方、切の豊竹若太夫はスピード感十分なものの、ちょっと迫力不足。鶴澤清介の三味線が浮いちゃったかな。相模の吉田和生、藤の局の桐竹勘壽を相手に、直実の吉田玉志が健闘し、石屋弥陀六の吉田玉也、義経の吉田勘彌も堅実。

公演の後半は横浜で、一座の皆さんの苦労は続く。ロビーには吉田簑助さんの訃報も。悲しいけれど同時代だった幸せを噛みしめ、次の世代を応援するぞ!

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