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台風23号

Bunkamura Production 2024「台風23号」 2024年10月

赤堀雅秋作・演出の新作は、冴えない市井の人々のどん詰まりを、緻密、容赦なく描いて息苦しい。あまりにありふれた生き辛さを、ありふれたとしてしまっていいのか… 初めてのTHEATER MILANO-Za、なかほどで1万2000円、休憩無しの2時間。

大型台風が近づき、謎の飼い犬被害も続く不穏な海辺の町。中央に石段、手前にベンチと灰皿、上手にスナック(美術はBOKETA)。雑雑しいワンセットは3月の「ボイラーマン」に似ているけれど、あのお洒落さはない。のっけから宅配配達の森田剛が、独特の声を張り上げてギリギリの日常をぼやき、終幕までずっと、登場人物それぞれのイライラが、舞台を支配する。
ダブル主演の間宮祥太朗演じるヘルパーの田辺は、長身イケメンで親切で嘘くさい。鋭いところのある老人・古川(佐藤B作)と不安定な娘・智子(木村多江)、見て見ぬ振りの中間管理職の夫・井上(藤井隆)が抱える確執の根深さ。スナックのママ・菊池(秋山菜津子)は自らの病い、そして恋人・星野(赤堀)との関係にびくびくしていて…

宅配や介護の現実も、やたらとふかす煙草も、便利で歪んだ社会の縮図。観る者にそれぞれの身勝手さを突きつける。終盤、客席を海に見立てた上がるはずのない花火が、ダイナミックな照明で一瞬、爽快。でもそれとて、戦火を思わせて背筋がぞくっとする。秋山・赤堀のパチンコ論争のしょうもなさが、唯一といっていいほどの軽みかな。
俳優陣は達者なだけに、ちょっと濃密過ぎ。そのなかで菊池の娘・宏美の伊原六花が、期待通りの伸びやかさで貴重。ほかに警官の駒木根隆介がリズムよく、いい人キャラを発揮してました。

2023年春開業の東急歌舞伎町タワーはめちゃくちゃ賑やかだけど、周辺も含めて舞台を味わう環境としてはどうかな。6Fまでのアクセスも難あり。

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