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FYURA(エフユラ)ワンマン

FYURA 1st LIVE~The Way 2024  2024年10月

エフユラがついに初ワンマンライブと聞いて、足を運んだ。エイベックス・アーティストアカデミーの育成企画、エフユラプロジェクトから生まれた6人組のガールズグループだ。年甲斐もなく、デビュー前ポップアイドルへの推しムードを味わう。代官山UNITのオールスタンディングで3500円+ドリンク。休憩無しの1時間半。

ファンクな楽曲、ハーモニーとリズム感は高水準。デザインがバラバラの椅子を置き、自分で出し入れする演出はそれぞれの成長も感じさせる。中でも中盤のアコースティックパートでギターも披露したk2に、説得力があった。ラストでは涙ぐんでましたね。
終盤のソロメドレーになると、Yuki、Vivyy、LUNAらはまだ成長途上かな。これまでは最年少14歳のyuzuが、ラップもこなして抜き出ていた印象だったけど、どうやら最近は反抗期!だそうです。最年長21歳のリーダーNiinaは巧いものの、ちょっと狙いすぎかな。全体に貴重な初ライブなのに、高揚感がいまいちだった気がして残念。予定になかったというアンコールは、アカペラで聴かせてくれました~
来年はいよいよデビューとのこと。ガンバレ~ 以下セットリストです。

1,NAKED
2,HANDS UP
3,サヨナラBaby Boo
4,LADY
5,TODOKANAI
6,B.Y.G
7,Thinking About You
8,Beautiful
9,MAGIC DICE~FYURA MEGA MIX
10,My Joy~soul ver.~
11,+1 
12,BE FREE
13,どうすんの?
14,真夜中のパレード
15,The Way
16、NAKED ~do or die~
アンコール:
Beautiful

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セツアンの善人

セツアンの善人  2024年10月

ベルトルト・ブレヒトの1943年初演の代表作を、白井晃の上演台本・演出で。人はカネで幸せになれるのか。格差が叫ばれる現代に通じる寓話劇、というとわかりやすそうだけど、一筋縄ではいかない。音楽劇であり、キッチュな衣装や小道具もお洒落。でも、どうもスッキリしなかったかな。翻訳はシーラッハなどで知られる酒寄進一。世田谷パブリックシアターのやや後方で9500円。休憩を挟み3時間弱。

空港を行き交う人々。水売りワン(渡部豪太)のペットボトルが散乱する。そして舞台はどこかアジアの貧民窟へ。今はなき中銀カプセルタワービルのようなセットで、シーリングファンが下がっている(美術は松井るみ)。気のいい娼婦シェン・テ(葵わかな)は、善人を探す三人の神(ラサール石井、小宮孝泰、松澤一之)に一夜の宿を提供して大金を授かり、小さなたばこ屋を買い取る。
ところが元の持ち主シン未亡人(あめくみちこ)や8人家族(小林勝也ら)にたかられ、一目惚れした飛行機乗り志望のヤン・スン(木村達成)と母(七瀬なつみ)にも利用され、やむなく架空の従兄弟シュイ・タに変装して、冷徹にたばこ工場を経営。カネを守り、ヤンとその子供とで幸せになろうと奮闘するが… 
作家はナチスに市民権を奪われて亡命、北欧を転々とする中で本作を執筆したそうで、背景には切実な西洋的博愛への疑念や、神の制裁を予感する終末観とかがあるはず。そう思うと唐突に、シェン・テはどうしたらいいのか、果たしていい結末とは?と観客に問いかける終幕が重い。

葵がやや幼いながらも、仮面の男装、長台詞で大健闘し、木村は独特の目ヂカラを発揮。狂言回しの渡部が軽快で、石井らの脱力ぶり、突如観客に語りかけちゃう小林の飄々とした曲者ぶりもいい。原作のパウル・デッサウの音楽に、ムワワド4部作などの国広和毅が訳詞・音楽監督を担当してオリジナル曲を追加し、弦や打楽器で生演奏。ロビーには触れるセット模型もありました。

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久保田利伸コンサート

TOSHINOBU KUBOTA CONCERT TOUR 2024-2025「佐藤さん、いつものでよろしいですか?」  2024年10月

2019年以来5年ぶり、久保田の王道をうたった全国ツアーだ。マニアな選曲でノレないかも?という噂も聞いてたけど、心配無用。いつも通りノリノリのファンクチューンはもちろん、しっとり甘いラヴァーズロックも、久保田のリズムとグルーブが冴えてご機嫌。映像や特効に頼らないだけに、声とバンドの力が際だって、もしかするとこれまでで一番の、上等な一夜だった。NHKホールの1F中段、けっこういい席で1万1000円。休憩無しの2時間。

のっけからオーディエンス全員で踊っちゃって、beautiful peopleはパーティー気分。ミドルテンポでは「まあ、ゆっくり座って」とじっくり聴かせ、大ヒット曲は会場全体で歌う。MCも「佐藤さん、いる?」「はーい」「タマは?」「にゃー」とノリが良い。セットリストを考えていたNYのホテルの騒ぎをDJが再現したり。
高水準のバンドとシンガーは柿崎洋一郎(Key)、Gakushi(Key)、オオニシユウスケ(G)、森多聞(B)、DJ DAISHIZEN(DJ)、白根佳尚(Dr)、YURI(Background Vocal)、ジュニーク・ニコール(Background Vocal)、YUHO(Background Vocal)。
可愛い似顔絵、茶系がお洒落なTシャツなどを購入。来年のデビュー40周年は、深夜のバーでツアーの企画が進んでいるとか。楽しみ~

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以下セットリストです。一部ネットに出ているけれど、これから行かれるかたはネタバレ注意!

 

 

1,TAWAWAヒットパレード
2,Boogie Ride
3,Angel
4,So Beautiful
5,天使と悪魔
6,Green Light~青信号~
7,Wat's The Wonder?
8,LA・LA・LA LOVE SONG
9,the Beat of Life
10,Missing
11,WHAT YOU WON'T DO FOR LOVE
12,Indigo Waltz
13,FUN FUN CHANT
14,LOVE RAIN ~恋の雨~
アンコール:
15,OPENING JAM
16,Oh, What A Night!
17,Always Remain

夢遊病の女

夢遊病の女 2024年10月

新国立劇場2024/2025シーズンの開幕、しかもロッシーニ、ドニゼッティと並ぶ歌唱第一ベルカントの巨匠、ベッリーニを初上演とあって、解説付き鑑賞会に足を運んだ。7月に代役を引き受けたクラウディア・ムスキオ(イタリアのソプラノ)ら歌手陣が高水準で、オケも演出もバランスがよく、大満足。メランコリックで長い旋律、美しいレガートを堪能した~ 厳しいので知られるイタリアオペラの名匠マウリツィオ・ベニーニが指揮、東京フィルハーモニー交響楽団。休憩を挟んで3時間。中央やや上手寄りで29700円。

序曲はなく、のっけから舞台裏の合唱で引き込む。本作で合唱は終始、伴奏というより村人=世間を表現し、アリアと交互に場面を進めていく役割です。スイスを象徴するホルンが鳴り、小さな村はアミーナ(ムスキオ)とエルヴィーノ(イタリアのテノール、アントニーノ・シラグーザ)の結婚に湧いている。アミーナの大アリア「優しいお友達、今日は最高の日」、エルヴィーノとの無伴奏二重唱「僕はそよ風にも嫉妬する」が美しい。新領主ロドルフォ(バスの妻屋秀和)が身分を隠して訪れ、投宿した部屋にアミーナが迷い込む。ロドルフォは夢遊病と気づいて部屋を出るけれど、見つけた村人たちには病気の知識がなく、不実だと非難、エルヴィーノも動揺して結婚取りやめを宣言しちゃう。
2幕はエルヴィーノが元恋人のリーザ(ソプラノの伊藤晴)との結婚式へ向かうところへ、ロドルフォがアミーナの潔白を説く。村人たちも加わりワイワイ騒ぐなか、なんと高い水車小屋の屋根に夢遊状態のアミーナが現れる。同じ正気でないとはいえ、狂乱の場とは違ってリリカルなアリア「ああ、そんなに早く萎れるなんて」をたっぷりと。そのひたむきな愛に、エルヴィーノは疑いをとく。

初演の主役コンビが、広い音域のジュディッタ・パスタ、近代テノールの祖ジョヴァンニ・バッティスタ・ルビーニだったため、その技量を前提に難曲になったとか。特にアミーナの大アリアはベルカント・ソプラノの極北だそうだけど、1995年生まれとまだ20代のムスキオが、柔らかく伸びのある声、素晴らしい技巧で圧倒。見た目も美しく、これからが楽しみ~ もちろん60才のシラグーザも、聞く人を幸せにする明るさが衰え知らず。妻屋は余裕たっぷりのモテ役(実はアミーナの父?)がはまり、1幕「この心地よい場所には来たことがある」などを聴かせ、入浴シーンでは笑いも。アミーナの養母テレーザの谷口睦美(メゾ)は、マエストロ・ベニーニに「これまで共演した中でベストのテレーザ」と言われたそうです。凄い!

テアトロ・レアル、バルセロナ・リセウ大劇場、パレルモ・マッシモ劇場との共同制作。バルセロナの演劇一家に育ったバルバラ・リュックの演出は、幕開けの見事なモダンダンサーたちが、劇中でもアミーナの周囲で踊るユニークなもの。閉鎖的な村で育った貧しい孤児アミーナの抑圧、不安を視覚で強調していて、面白い。東京に先立つマドリード初演ではラストもショッキングだったけれど、今回は曲の印象を優先する指揮者の提案で修正したようです。

終演後の懇親会はいつもながら大盛り上がり。ムスキオは気さくで、ラストの高所での歌唱について「腰に命綱があって怖くない」とケロリ。一方、シラクーザは30年以上一線で活躍する秘訣を「レパートリーを守ること」、なんと来年「ラ・ボエーム」のロドルフォデビューだそうで「ようやくその時が来た」と。これぞ一流。
情報センターではベッリーニの自筆譜ファクシミリ(肉筆模写)、朽ちた梁を歩く演技で一世を風靡したジェニー・リンドの肖像など、貴重な展示がありました。

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台風23号

Bunkamura Production 2024「台風23号」 2024年10月

赤堀雅秋作・演出の新作は、冴えない市井の人々のどん詰まりを、緻密、容赦なく描いて息苦しい。あまりにありふれた生き辛さを、ありふれたとしてしまっていいのか… 初めてのTHEATER MILANO-Za、なかほどで1万2000円、休憩無しの2時間。

大型台風が近づき、謎の飼い犬被害も続く不穏な海辺の町。中央に石段、手前にベンチと灰皿、上手にスナック(美術はBOKETA)。雑雑しいワンセットは3月の「ボイラーマン」に似ているけれど、あのお洒落さはない。のっけから宅配配達の森田剛が、独特の声を張り上げてギリギリの日常をぼやき、終幕までずっと、登場人物それぞれのイライラが、舞台を支配する。
ダブル主演の間宮祥太朗演じるヘルパーの田辺は、長身イケメンで親切で嘘くさい。鋭いところのある老人・古川(佐藤B作)と不安定な娘・智子(木村多江)、見て見ぬ振りの中間管理職の夫・井上(藤井隆)が抱える確執の根深さ。スナックのママ・菊池(秋山菜津子)は自らの病い、そして恋人・星野(赤堀)との関係にびくびくしていて…

宅配や介護の現実も、やたらとふかす煙草も、便利で歪んだ社会の縮図。観る者にそれぞれの身勝手さを突きつける。終盤、客席を海に見立てた上がるはずのない花火が、ダイナミックな照明で一瞬、爽快。でもそれとて、戦火を思わせて背筋がぞくっとする。秋山・赤堀のパチンコ論争のしょうもなさが、唯一といっていいほどの軽みかな。
俳優陣は達者なだけに、ちょっと濃密過ぎ。そのなかで菊池の娘・宏美の伊原六花が、期待通りの伸びやかさで貴重。ほかに警官の駒木根隆介がリズムよく、いい人キャラを発揮してました。

2023年春開業の東急歌舞伎町タワーはめちゃくちゃ賑やかだけど、周辺も含めて舞台を味わう環境としてはどうかな。6Fまでのアクセスも難あり。

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落語「錦の袈裟」「替り目」「ぞろぞろ」「雁風呂」

特撰落語会  2024年10月

安定感抜群のメンバーで、満足度が高い四人会。特にこの日は小遊三さんがチャーミングだったかなあ。杉並公会堂、前の方で4500円。昼夜2回の夜の部で、休憩を挟み2時間強。

前座は市馬門下の柳亭市助で「子ほめ」。はきはきしているけど、集中力続かず。柳家三三が登場したところで復活。余裕たっぷりに、だいぶ前に正蔵さんで聴いた「錦の袈裟」。職人たちが評判をとろうと、質屋の錦の下帯で吉原へ乗り込み、和尚の袈裟を借りて参加した与太郎がもてちゃう話。下品にならない案配が巧い。続いてベテラン三遊亭小遊三77歳で「替り目」。亭主が酔って人力車に乗ったのが自分の家の前、とバカバカしい導入から、女房との他愛ない口喧嘩へ。ベロベロなのに呑ませろ、つまみは食べちゃった、じゃあおでんを買いに行け、江戸っ子は焼き豆腐はヤキ、がんもどきはガンって言うんだ… 酔いどれの可愛げと世話女房ぶり、寄席でさらっと、という肩の力が抜けた風情がいいなあ。

仲入後は柳家花緑で、小さん話やディスレクシア話から、2020年に志の輔らくごで聴いた「ぞろぞろ」。わらじが次々出てくるシュールな発想とめでたさが気持ちいい。トリは桂文珍。見台はなしで、駄洒落や神戸知事の時事ネタと、相変らず程よい皮肉っぽさで笑わせてから「雁風呂」。水戸黄門一行が掛川の茶屋で昼食をとり、見事な屏風絵が土佐派将監光信の筆とみるが、松に鶴でなく雁がねの意味がわからず、居合わせた上方商人と供に絵解きをさせる。函館の「一木(ひとき)の松」と言って、渡り鳥が松の根元に柴を落とし、またくわえて帰る、地元の者が残った柴で供養の風呂を焚き、旅人の疲れを癒やすのだ…との解説で、黄門様が感心して名を問うと、米市を興し町人の分を超えると闕所処分(財産没収)になった豪商・淀屋辰五郎の倅で、柳沢美濃守に貸した三千両を受け取りに行くと… 珍しい知的な噺で、悠々とした語り口が絶妙でした~

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藤原定家with三人姉妹

藤原定家with三人姉妹  2024年10月

友人の誘いで、矢野誠が女声3人のコーラスをアレンジし、オリジナル曲を聴かせるユニット「藤原定家with三人姉妹」のライブへ。童謡風からジャズまで変化に富んだ演奏だ。スペシャルゲストはなんとブレッド&バター(兄)の岩沢幸矢! MCでは日本ポップス史を彩るレジェンドの名前が次々飛び出してびっくり。聴衆を含め、大人の余裕という感じ。吉祥寺MANDAーLA2で、5000円+ドリンク。休憩含め2時間。

編曲とピアノの矢野さんは桐朋学園出身、南沙織から井上陽水、ユニコーン、サニーデイ・サービスまで、きら星のような作品を手がけているかたで、矢野顕子の元夫。SF味のある「そろそろ日が暮れる」、インストの「波の音」「赤い屋根の別荘」などがお洒落だ。
奥さんのひらたよーこは劇団青年団出身の女優でもあり、平田オリザの元妻ときいて、またびっくり。長身で低音、リズム隊としても大活躍する。谷川俊太郎の詩に曲をつけた「かえる」のぶくぶく音や、「おすもうの歌」が童謡風で可愛い。よーこさんを含む女声コーラスは三人とも個性的で、白神直子は小柄で高音に透明感があり、舞台の歌唱指導やラジオDJも手がける。ベレー帽の葛岡みちは武蔵野音大出身、歌と並んで矢野さんとのキーボードデュオインストも、メリハリが効いて格好良い。
そして休憩後に登場した岩澤はなんと81歳! 矢野さんのプロ初仕事が1970年大阪万博で、そこで歌ったのが兄弟デュオのブレバタだったそうです… さすがミスター湘南、ボーターTシャツで登場し、甘い声で「マリエ」「Juliannne」「空いっぱい」をたっぷりと。近頃注目のシティポップスとして、再評価されているんですねえ。ヨット遊びで財津和夫が8ミリを撮っていて船酔いしたとか、井上陽水、林立夫、後藤次利…とか、さらり語っちゃうおしゃべりが、凄いんだけど全く偉そうでなく、チャーミング。
ドラマチックな「河」で盛り上がり、プロデューサーの寺本さんら聴衆もノリノリ。ラストの「あなたにとどけよう」の明快なメッセージ、そしてアンコール、アフリカンリズムアレンジの「上を向いて歩こう」で爽やかな気持ちになりました。揃いの赤白の布ブローチが可愛い衣装デザインは、小田原市国府津(こうづ)の古谷友子。
以下セットリストです。

1,みちみちみちくさ
2,ガード下のニューオリンズ
3,かえる
4,おすもうの歌
5,そろそろ日が暮れる
6,雪国
7,一面の夕焼け
8,波の音
9,マリエ
10,Julianne
11,空いっぱい
12,河
13,すわっちゃだめだ
14,赤い屋根の別荘
15,あなたにとどけよう
アンコール:
16,上を向いて歩こう
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