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破門フェデリコ

PARCO PRODUCE2024 破門フェデリコ~くたばれ!十字軍~ 2024年8月

NHK「プロフェッショナル」などのディレクター阿部修英作、劇団座敷童子の東憲司演出。13世紀神聖ローマ皇帝フェデリコ(フリードリヒ2世)の類い希な知性と権威をものともしない決断を通じて、戦争の終わらせ方を描く。主演・佐々木蔵之介のユニットTeam申の企画で、時代をとらえた意欲作だ。演出も鮮やかなんだけど、戯曲の説明調が残念だったかな。元ジャニファンで一杯のPARCO劇場、かなり前のほう中央の良い席で1万2000円。休憩を挟んで3時間弱。

フェデリコ(佐々木)はバチカンに命じられた十字軍遠征を、なんだかんだと先延ばしした挙げ句、アイユーブ朝スルタン、アル=カーミル(安定の栗原英雄)と書簡をやりとりして、エルサレムの分割統治にこぎつけ、悲惨な十字軍の終結を実現する。数カ国語を操り、数学や薬学などイスラム文明を貪欲に吸収するフェデリコの英明と、理解者カーミルとの間に大人の友情が芽生えるさまが痛快だ。
しかし教皇グレゴリウス(六角精児)は激怒してフェデリコを3回も破門。権威におののく息子のドイツ王ハインリヒ(上田竜也)が、こともあろうに父に反乱を起こして、幽閉される。このあたりから物語は史実を離れ、陰鬱になっていく。フェデリコは教皇との対立が深まり、カーミル暗殺を契機に、ついにバチカンへ兵を向けるが、ハインリヒが身をていして制止。ようやく父子の心が通じあったのに、ハインリヒは教皇の腹心・司教ベナリーボ(劇団柿喰う客の田中穂先)に討たれて…

可動式の巨大な柱、階段に、布や照明の変化でダイナミックに舞台を構成。演劇集団円の石原由宇らが「新しき言葉のコドモ」から十字軍兵士、温泉の湯まで、群舞で表現して雄弁だ。贈り物のゾウやキリンを木枠で表現するのも洒落ていた。美術は竹邊奈津子、ステージングは東京五輪開閉会式総合振付の平原慎太郎。
佐々木が相変わらずの人を食った感じで、舞台をぐいぐい牽引。六角とふたり、笑いもいい呼吸だ。侍女イザベルの那須凜が、本作の大きなテーマである知の継承者「まことの王」探しを担って、野太い存在感を発揮していた。いわずとしれた那須佐代子の次女で、都立富士出身、青年座在籍の30歳。楽しみな女優さんです。上田は大詰めの長大なラップ&ダンスなどで健闘。階段上の暗殺シーンでは、田中の身体能力に目を見張った。

プログラムを読むと、企画の発端は阿部と佐々木が、イタリア南部の世界遺産カステル・デル・モンテ城を取材したことだとか。城はフェデリコが大好きな八角形を組み合わせて建築、ユーロ硬貨に刻印されているというのも象徴的だ。八角形はエルサレムのイスラム聖地・岩のドームや紫禁城、法隆寺夢殿などにも通じるそうで、ほかにもフェデリコのびっくりエピソードが満載。18世紀啓蒙思想を先取りした「早すぎた天才」だたんですね。面白いんだけど、どうしてもお勉強要素が先に立ち、父子の相克とかはちょっと消化不良だったかな。

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