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ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~


ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~  2024年8月

2000年のスティーブン・ダルドリー初監督映画を、2005年にエルトン・ジョン作曲でミュージカル化し、ローレンス・オリヴィエ賞、トニー賞を受賞。評判だった2017年初演日本版の、再々演に足を運んだ。期待通りの秀作。
まず子役ビリー、マイケルの堂々たる歌と踊りに大拍手。子供が未来の希望を体現するだけに、大人たちが味わう1984-85年炭鉱ストの挫折、取り残される者の寂しさがくっきりして、胸に迫る。舞台ならではの感興もあり、休憩を挟んで3時間10分がちっとも長くない。子供連れが賑やかな東京建物ブリリアホール(豊島区立芸術劇場)の前のほう、やや上手寄りの良い席で1万5500円。

ボクシングを習うビリー(クワトロキャストでこの日は春山嘉夢一)は、偶然クラシックバレエ教室のウィルキンソン先生(ダブルで安蘭けい)に才能を見いだされ、名門ロイヤルバレエのオーディションを目指す。でもお父さんジャッキー(ダブルで益岡徹)らは大反対で…

まず炭鉱町のマッチョな気風(なにせセリフは博多弁!)と、バレエのミスマッチが素朴に面白い。劇時間は1年にも及んだスト期間と一致していて、1幕の力強いSolidarityでは衝突する労働者、警官たちと、みるみる上達していくビリーのバレエ熱が交錯。石炭業の衰退は米ラストベルトにも似て抗い難いけど、階級社会だけに労働者の誇りは強烈だ。だから2幕でビリーを思い、なけなしの誇りを捨てようとするジャッキーと、カンパする仲間の姿が染みる。争議に敗れたのち、労働者たちが高らかに合唱するOnce We Were Kingsは、レミゼばりの感動です。

そんな1年の間のビリーの成長が、また素晴らしい。オーディション行きを禁じられたときのAngry Danceでは、タップで激情を表現。照明の影の演出も効果をあげる。2幕に至ると、オールダービリー(トリプルで元四季の永野亮比己)とSwan Lake Pas de Deux(マシュー・ボーンオマージュ!)で、夢のようなフライングを見せ、ちぐはぐだったオーディションの最後には、Electricityでなぜ踊るのか、内面の衝動を吐露。やがて亡くなった母への執着も乗り越えていく。健気だなあ。

脇も達者。特にビリーに恋する親友マイケル(クワトロで西山遙都)がコミカルで、いいアクセントだ。自分を解き放つExpressing Yourselfや、ラストでビリーを見送る姿の切ないこと。
ジャッキーの無骨なDeep into The Ground、ウィルキンソン先生のしみじみThe Letterも泣かせる。益岡はさすがの安定感。2021年「蜘蛛女のキス」以来の安蘭も、煙草スパスパで声が野太く、ダメ夫と寂れた町に縛られている哀愁を漂わせて格好良い。ちょっと認知症のおばあちゃんエトナ(ダブルで阿知波悟美)が笑いを誘いつつ、Grandma's Songがたくましくて拍手。スタイルもいいし。兄トニーはダブルの吉田広大。
フィナーレではみなチュチュ姿で登場して、ケッサクでした~

ダルドリーは「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」「めぐりあう時間たち」の監督で、2012年ロンドン五輪開閉会式のプロデューサー。しっかりしているはずです。脚本リー・ホール、振付ピーター・ダール、翻訳は常田景子。帰宅してから、2014年ミュージカル化10周年記念公演(歴代27人のビリーが一挙登場)をビデオでチェックしたら、かなり忠実でした。

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