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オーランド

オーランド  2024年7月

ヴァージニア・ウルフの1928年出版のファンタジーを、岩切正一郎翻案、栗山民也演出で。400年の時と性別を超えるオーランドの遍歴という奇想を、51歳の宮沢りえが軽やかに。生きることの違和感、焦燥が普遍的だ。PARCO劇場、前の方で1万1000円。休憩を挟んで2時間半。

冒頭、がらんとした舞台奥に浮かぶ、若きオーランドのシルエットがまず美しい。エリザベス女王の寵愛を受け、外交官として海外へ渡って放浪。ある朝目覚め、鏡の奥から歩いてくるドレスをまとった自分と対面するシーンが、なんとも鮮やかだ。漂泊の孤独、どんどん変化してく人々、社会。そして、ずっと高いところに居続ける樫の木(美術は二村周作、照明は服部基・おざわあつし)。終盤、戦争の悲惨を見せつける展開(映像は上田大樹)はちょっと唐突な気もしたけど、演出家のメッセージがストレートだ。

宮沢はほぼ出ずっぱりで、膨大かつ詩的なモノローグを語りきる。現代に至って、車を運転し「気をつけなさいよ!」と怒鳴っちゃったり。2017年のサラ・ルール翻案、白井晃演出「オーランドー」での多部未華子も溌剌と前向きでよかったけど、宮沢の持ち前の品の良さ、透明感は、やっぱり希有だなあ。
めまぐるしく多数の役をこなすコロスの4人がまた、存在感抜群。要所で笑いも誘う。なんといっても詩人ニックなどの山崎一の引き出しの多さ、余裕に、改めて驚嘆する。河内大和は下世話なエリザベス女王や娼婦を、ウエンツ瑛士は暑苦しいハリエット皇女や歩くガイコツを怪演。ウエンツは2022年「てなもんや三文オペラ」のヒロインも良かったし、まだまだ楽しみ~ 谷田歩がオーランドの夫になる船乗りボンスロップなどで、バランスのいい重々しさを発揮。

下手でヴァイオリンの越川歩が演奏し、ステージングは安定の小野寺修二。それにしても栗山さん、休み無しだなあ。

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