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コジ・ファン・トゥッテ

コジ・ファン・トゥッテ  2024年6月

2023/24シーズンも残り2作。いわずとしれたモーツアルトの、その名も「女はみんなこんなもの」という恋愛喜劇だ。荒唐無稽、女性を教育するという現代からしたら違和感満載のストーリーを、軽快なアンサンブル17曲でねじ伏せちゃう。2008年ウィーン国立歌劇場の来日(ムーティ指揮+フリットリ!)がとても良かった印象が強い。ちなみにムーティーが無人島に持って行くオペラは、コジとファルスタッフだとか。
「キャンピング・コジ」と話題だった、このダミアーノ・ミキエレットの2011年初演版を観るのは初めて。大胆な現代への読み替えが成立するのは、それだけ浮気が普遍的テーマということか。人はしょうもなくて愚かだけど、「wise men find peace」、意地を張らずに現世の幸せを選ぶ。歌手が揃い、立体的でスピーディーな廻り舞台や、本水をばしゃばしゃする空想シーンなどがはまっていて、楽しめた。飯森範親指揮、東フィル。老若男女よく入った新国立劇場オペラハウス、中段の見やすいS席で、解説会・プログラム込み28000円。

舞台は18世紀ナポリから、現代のキャンプ場に。哲学者ならぬオーナーのアルフォンソ(ナポリ出身のバスバリトン、フィリッポ・モラーチェ)が、宿泊客のグリエルモ(我らが国際派バリトンの大西宇宙)とフェッランド(スペイン出身、プエルトリコ育ちのテノール、ホエル・プリスト)に「女は浮気するもんだ」と説き、自分の恋人たちは違うと反発する2人にゲームを持ち掛ける。出征すると偽って、アルバニア人ならぬ遊び人のバイク野郎に変装して現れ、互いの恋人である姉妹フィオルッディリージ(イタリアのソプラノ、セレーナ・ガンベローニ)とドラベッラ(ボローニャ出身のメゾ、ダニエラ・ピーニ)を口説く「パートナー交換」だ。姉妹は恋人を思いつつも、スープレット(小間使い)ならぬ従業員デスピーナ(ソプラノの九嶋香苗枝)にもけしかけられて、結局なびいちゃう。偽りの結婚式となったところで、男性陣が正体を明かして大騒ぎになるけれど、結局、元の鞘におさまる。
モリエールの影響を受けたストーリーは、失恋した歌手の妹と結婚したモーツァルトの体験を映しているのでは、とか、本作の成功以降、サリエリがモーツァルトを敵視するようになったという伝説とか、逸話が多い作品なんですねえ。

フィガロみたいなヒット曲は無いんだけど、クライマックスの二重唱はじめ、登場人物6人のシンメトリーな対比が緻密で楽しい。歌手も粒揃いで、イタリアを代表するベルカントソプラノというガンベローニは、品があって伸びやか。プリストも格好良くてロマンティストらしさがあり、徐々に調子を上げ、大西は迫力たっぷり、演技も頑張っていた。応援したい!

帰ってからバレンボイム指揮・デーリエ演出の2002年ベルリン国立歌劇場のヒッピー風や、2020年ザルツブルク音楽祭のモノトーン演出などを録画で聴き比べ。
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