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メディスン

Medicine メディスン  2024年5月

ダブリン育ちで注目の劇作家、エンダ・ウォルシュの2021年の最新作「Medicineメディスン」を、手練れの芸術監督、白井晃の演出で。弱い者、欠けている者は見なかったことにしたい。誰しも思い当たる後ろめたさを容赦なく突きつけ、みていて苦しくなる。俳優3人の健闘に加え、後方のブースに陣取る荒井康太のドラムが、ズンズン心を揺さぶる。演劇好きが集まった感じのシアタートラム、後ろのほう上手寄りで7500円。休憩なしの濃密な1時間40分。

何か施設の一室。説明はなく、雑然とした閉鎖空間にパジャマ姿のジョン(田中圭)が入ってくる。そこへ老人の扮装の女優メアリー(奈緒)、ロブスターの着ぐるみのメアリー2(富山えり子)、ドラム奏者(荒井)がやってくる。どうやら「治療」のため、ジョンの半生の手記を「上演」するらしい。
メアリーたちは売れない役者で、次々に衣装を替えてシーンを再現、荒井が効果音を担当。古いディスコナンバーで弾けるし、俳優あるあるの笑えるエピソードもふんだん。けれどジョンの告白は、孤独で辛い。父母や級友に冷たくされ、教会で追い詰められ、声がうるさいと施設に留め置かれ、淡い恋は…  姿を見せずに監視していて、役者とジョンを操る「質問者」の声(近藤公園)が怖い。美術は二村周作。

段取りが多く、テンポの速い緻密な芝居だ。意味不明の突風とか、ト書きも相当細かいらしい。
それをこなした俳優陣が高水準で、なにより、格好悪くて弱っちい田中がはまり役。挑戦しているなあ。ジョンを理解していく奈緒のピュアな存在感に、一筋の救いがあり、効率的にバイトをこなす富山との対照が効果的だ。
荒井はなんでも出身地・青ヶ島の伝統太鼓の名手で、カメルーンで修業したとか。映画「オッペンハイマー」ばりに、音の力を見せつける。ほかに声だけで有川マコトや小林勝也ら。

ロマンティックな映画で、ミュージカル版も観た「ONCE ダブリンの街角で」の脚本家とは思えないヘビーさでした~ 最後列に白井さんの姿も。

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