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カラカラ天気と五人の紳士

シス・カンパニー公演 カラカラ天気と五人の紳士  2024年4月

別役実の1992年初演作を、30歳の加藤拓也が演出。加藤演出の不条理劇と言えば、2021年の安部公房「友達」がものすごく怖かったけど、今回はほがらかな印象だ。豪華俳優陣がシュールな設定、何も成し遂げない虚しさをテンポ良く演じる。よく入ったシアタートラム、後ろの方で1万円。休憩無しの1時間強。

ビジネスマン風の男たち5人が、棺桶を担いでやってくる。仕切り屋の紳士3(小手伸也)が懸賞のハズレ(不正解)1等賞でもらったものだ。これを使うには誰かが死なないと、と気弱な紳士4(野間口徹)に白羽の矢を立て、調子を合わす紳士1(藤井隆)、2(溝端淳平)、5(堤真一)と、よってたかって柱に登らせたり、感電させようとしたり。そこへ女1(高田聖子)、2(新感線の中谷さとみ)が登場、大荷物を広げて整理し始める。どうやら懸賞のアタリ(正解)1等賞で、青酸カリを手に入れたと…

セットはなぜかリアルな地下鉄の駅(松井るみ)。しかし一向に車両はやってこず、アナウンスもない。ベンチに浮浪者の女(徳高真奈美)が座り込んで、ときどき不穏な音でヴィオラを鳴らすだけ。
ずっと死を巡る会話でざらざらするものの、噛み合わなさが軽妙なので、笑いの多い時間が続く。終盤になって「カラカラ天気続きで喉が渇いていて」といったセリフがあって、急に、戦争か核汚染から逃げているシェルターなのか、と思え、背筋がゾクッとした。そう考えると、女性二人が決然と駅を出て、破滅へ突き進んじゃうのに対し、男たちの右往左往するばかりで外界と向き合わず、こともあろうに女性が遺していった荷物を物色したりするさまが、何とも寒々しい余韻を残す。
俳優陣は人物の背景も互いの関係性も白紙のまま、ポンポンと会話を進めて巧い。特に堤の煮えきらなさに説得力がある。

プログラムに、べつやくれいが寄せた文章で、父・別役実が新聞掲載のエッセイに「娘が二人いる」と嘘を書いていたエピソードが。いや~、不条理劇の巨星恐るべし。

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