「於染久松色読売」「神田祭」「四季」
四月大歌舞伎 夜の部 2024年4月
花道外側のいい席で、当代随一、半世紀をへても衰えないニザタマの熟練の色気を堪能する。よく入った歌舞伎座、絶好の花道すぐ外の席で1万8000円。休憩を挟んで3時間。
演目2本は21年2月に観た組み合わせの再演で、まず「於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」から「土手のお六・鬼門の喜兵衛」。南北ならではの陰惨な設定、悪党の所業だけど、華のある愛嬌に衰えはなく、素晴らしい。
導入の柳島妙見の場の舞台は北斎も信仰したという深川の法性寺、通称妙見堂。手代がフグを食べに行くチャリ場をテンポ良く。舞台が回って暗~い小梅莨屋(たばこや)の段で、ご両人登場。伝法な玉三郎の「悪婆」お六は台詞の緩急が絶妙、仁左衛門の喜兵衛にけだるい凄みがある。悪事の支度で緊張が高まり、カミソリをくわえたニザ様の見得に拍手。髪結の亀吉は成駒屋次男の中村福之助が手堅く。
続く瓦町油屋の場は浅草の質屋の店先。2人は行き倒れをネタに主人の太郎七(坂東家の長男、彦三郎)を脅すけど、居合わせた山家屋清兵衛(端正な錦之助)にやり込められちゃう。前段から一転、お六の愛らしさ。籠をかついで花道をすごすご引き上げる幕切れの、照れ隠しのおかしみで沸かせる。
休憩後の舞踊「神田祭」は一転して華やか。浅葱幕が落とされると、いなせな鳶頭の仁左衛門、揚げ幕からは艶やかな芸者の玉三郎が登場。帯を直しあったり、ほおを寄せたり、ご両人がいちゃいちゃするだけなんだけど、若々しく粋な風情に客席がぐっと浮き立つ。投げ節から木遣りへ、下手に陣取る清元連中も布陣が若返った感じ。筆頭の清美太夫は1980年生まれ、声に張りがあっていい。観ておいてよかった!
短い休憩を挟み、舞踊「四季」で締め。歌人で大正三美人と言われた九條武子のオムニバスだ。ぱあっと明るい長唄「春 紙雛」は豪華に菊之助、愛之助コンビ。五人囃子で萬太郎、種之助らが加わり、人形ぶりをまじえて可愛く。「夏 魂まつり」は大文字焼と竹本を背景に、茶屋の亭主の芝翫、舞妓の児太郎、若衆の橋之助、太鼓持の歌之助らが京都の夏をみせる。玉三郎の直後に観ると児太郎はまだまだかなあ。
「秋 砧」は照明を落とし、孝太郎が帰らぬ夫への情念をじっくりと。李白「子夜呉歌」を元にしたそうで、紗幕越しの月光と箏の演奏が深い。ラストはぱっと派手なアクションになって「冬 木枯」。松緑と坂東亀蔵がコミカルなみみずくに扮し、木の葉が人に変じた廣松、福之助、鷹之資、男寅、莟玉、玉太郎が躍動、彦三郎の長男の亀三郎と音羽屋の眞秀があどけなく。松緑の長男、尾上左近が中央でお人形のように可憐で、目を引いた。伝統を踏まえたファンタジーが面白かった~
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