リア王
PARCO PRODUCE2024 リア王 2024年3月
昨夏も「桜の園」を観たショーン・ホームズの、予想を裏切らない先鋭的な演出で、今度はシェイクスピア。4大悲劇に数えられ、2019年に英ナショナル・シアターのライブ映像で観て、あまりの救いのなさに唖然とした演目だ。分断と戦争が現実となってしまった今となっては、裏切る側の怨念、それに気づかない側の罪深さが、普遍的で重い。散りばめられたブラックな笑いもまた、暗澹を救えない。
段田安則、浅野和之はじめ豪華キャストが期待通り安定の演技。松岡和子訳。東京芸術劇場プレイハウスの前のほう、上手寄りで1万1000円。休憩を挟んで3時間強。
ポール・ウィルスの美術・衣装は現代風で、前半が白、後半が黒、幕切れがまた白を基調とし、コントラストが鮮やかだ。だだっ広い空間に無味乾燥なコピー機やウオーターサーバー、パイプ椅子が点在し、冷え冷えとした空疎が全体を支配する。前半は後方が紙になっていて、人物がベリッと破って退場したりし、後半でははるか上方の蛍光灯が点滅し、雷鳴など不安を表現。
タイトロールの段田は横暴・尊大、だけど子供っぽくて孤独な、オーナー経営者然とした造形がくっきり。重臣・グロスター伯爵の浅野に期待以上の存在感があって、有能な番頭を思わせ、後半の後悔が余計に切ない。そのグロスターを手ひどく陥れる庶子エドマンド・玉置玲央が、差別を抱えた負の鮮烈さで突出。我慢ならずにリアをたたき出しちゃう娘・江口のりこと田畑智子は、揃いのピンクのワンピースなんか着ちゃって、残酷なのにどこか愛嬌が漂う。
浮浪者トムを装って、なんとか父グロスターを救おうとするエドガーの小池徹平は、持ち前の透明感を発揮して、エドマンドといいバランスだ。リアを支え続けるケント伯爵・高橋克実が男前。脇も充実していて、執事オズワルド・前原滉の気の毒な振り回され振り、太っちょ道化の平田敦子のなけなしの励ましに存在感があった。ほかに上白石萌歌、入野自由、盛隆二。
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