ボイラーマン
赤堀雅秋プロデュース「ボイラーマン」 2024年3月
作・演出の赤堀雅秋が新境地。いつものスナックでのウダウダはなく、どこか住宅地の街角を行き交う一夜の人間模様がお洒落だ。登場人物みな欠点だらけなのはお馴染みだけど、幸せになりたい気持ちが切々と胸に迫る。田中哲司はもちろん、最近評判で観たかった安達祐実がいい存在感。芝居好きが集まった感じの本多劇場、2列目の中央いい席で8500円。休憩無しの2時間。
凍てつく冬、古いマンションを挟むY字路と石段のワンセット(舞台装置は池田ともゆき)。ずっと甲州街道に出る道を探している「ボイラー関係」の中年男(田中)が、すれ違う人々に翻弄される。
喪服の女(安達)と落としたイヤリングを探してやり、連れの喪服の男(曲者・水澤紳吾)に疲れた感じを見てとって、煙草を差し出すシーンとか、近頃のボヤ騒ぎにキリキリしている孤独な中年女(村岡希美)を、キャバ嬢の若い女(乃木坂46の樋口日奈)、入れあげている若くもない男(薬丸翔)らと散乱したゴミ袋を拾ってなだめちゃうシーンがクール。
何故か電話ボックスに立てこもる老人(でんでん)を隣人の小柄な女(小柄な井上向日葵)が救いにくるけど、実は女のほうが救われているとか、都会の寄る辺なさもくっきり。淡々とした一夜に、遠くの派手な火事が挟まるのが効果的だ。声が大きくてやる気のない警官に赤堀。
俳優陣はみな安定の演技。なかでも村岡の、嫌な感じと愛嬌のバランスが絶妙だ。好きだなあ。樋口の自然な伸びやかさは発見かも。
180ページのパンフに戯曲を収録していて大サービスです。
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