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志の輔「送別会」「モモリン」「しじみ売り」

志の輔らくご in PARCO2024 2024年1月

正月恒例・立川志の輔1ヵ月公演。今年は古稀の節目、しかも北陸・富山出身とあって、例年と比べても思いがこもる。PARCO劇場の後ろの方で7500円。休憩を挟み3時間。

開演前、公演滑り出しなのに「千秋楽です」のアナウンスがあり、登場した師匠が「お客さんにとってはそうだと思って」と解説。まずは能登の被災地へ皆の拍手でエールを送る。
年齢を意識してか、新作「送別会」から。ネタおろしなのかな。定年の日に同期ふたりが、初任給で呑んだ思い出の蕎麦屋へ。シュールな造形ではなく、誰しもうなずく昭和あるある、いかにも神田あたりの蕎麦屋あるあるが軽妙だ。すとんとサゲて、映像は「これ、まだ持っていますか?」。
続いて2014年のパルコ初演でも聴いた「モモリン」。大事な全国中継の日に、人気ゆるキャラ衣装が脱げなくなっちゃった市長。威張った人格とほんわか外見のギャップ、追い詰められ感が生む笑いは、何度聴いても鉄板だ。「ギリギリ当選の」と畳みかけるギャグが冴える。終わって、毎年独演会をしている縁だというくまモンが登場、先ほどの映像で「まだ持っていますよ」という観客に、ハイタッチのサービス。仕草が絶妙に可愛い。

中入り後は舞台を暗くして、古典「しじみ売り」をじっくりと。初めてかと思ったら2010年、正蔵さんで短いバージョンを聴いたことがあった。義賊・鼠小僧次郎吉が手下と呑んでいると、少年が蜆を売りに来る。不憫に思って全部買って川へ放させ、さらにカネを与えようとするが、少年は受け取らない。訳を聞くと、売れっ子芸者だった姉が駆け落ちした旅先で、見知らぬ親分に難儀を救われたはいいが、そのとき貰ったのが御金蔵破りの小判だと見破られて…
凍てつく朝、辛いあかぎれの手、しっかり者の少年の健気さ、粋な親分と人情のぬくもり。師匠は志ん生版と違って、手下の身代わりでなく親分自ら重い決断をさせる。世の非情に憤る一方で、自分の罪にも向き合う。きれいな涙だけで終わらせない深い演出に、ぐっと引き込まれた。江戸情緒の下座が入るものの、ひな祭りとか合唱団とかの派手な演出はなし。語りのパワーで、どこか原点回帰を思わせる高座でした。美術は堀尾幸男。
いつもの三本で締め。千社札シールのお土産付きでした~
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