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落語「新聞記事」「えーっとここは」「ガマの油」「壺算」「粗忽の釘」

よってたかって新春らくご’24 21世紀スペシャル寄席ONE DAY夜の部  2024年1月

雪は避けられ、先輩ご夫婦をお誘いして、年始恒例の落語会。落語好きが集まった感じの有楽町よみうりホール、2F最前列で4300円。遠かったけど見通しはよく、充実のメンバーで楽しめた。中入りを挟んで約2時間半。

前座は瀧川はち水鯉(はちみり)で「新聞記事」。天ぷら屋の竹さんが襲われた記事をトンチンカンに吹聴して、「犯人はあげられた」。鯉朝さん門下(カツベンの頼光さんも!)で、丸顔ではきはき。
続いて柳家喬太郎は、銀座に有名チェーン店があるのは違和感あるな~と振ってから、案の定の新作で「えーっとここは」。上司と部下が商談帰りにカフェに入り、「前はここ、何だったけ」に始まり、オムライスはトロッか論争などの世代間ギャップで存分に笑わせてから、謎の店主がどんどんサービスしてくれて、店の裏に出たらなんと…と妄想炸裂。昨年のネタおろしからオチが変わっているそうで、相変らず自由でいいな。
続いて春風亭一之輔。正月は寄席があって忙しすぎ、前に出る林家ペーの歌が凄くて、と愚痴っぽいマクラから「ガマの油」。お約束の言い立てで拍手をもらって御礼、この口上を覚えなら他の噺5作は覚えられる、しかも口上の間は笑いが無くてハイリスクローリターン、と笑いをとり、暴走気味に酔っ払って失敗しちゃって… 上手です。

中入りを挟んで三遊亭兼好が朗らかに。お正月に高級ホテルの落語会で出演したら、宿泊客の家族連れが贅沢で、この「よってたかって」ではたいてい中継ぎ、前半ふたりが好き勝手やった後、トリにつなげる役目だなあ、と苦笑しつつ「壺算」。欺される側の、気どって電卓たたきながらアレ?て感じが可愛くて好き。
トリは柳家三三で軽妙な「粗忽の釘」 。飄々と笑わせながら、前3人のネタを自在に拾い、まさかの壺算落ち。いまや貫禄さえ漂います。見事!
皆さん高水準で、超売れっ子で、たいしたものです。

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一中節「姫が瀧四季の山めぐり」「道行三度笠」

第九回都了中の会  2024年1月

 一中節都派家元、都了中の会に初参加。伸びやかな浄瑠璃、都一中の優雅な中棹三味線、そして楽しい解説を堪能する。加賀料理の赤坂浅田で、座敷に一部座椅子、椅子を置いての80人ほど参加の演奏会。終演後の会食を含め2万円。
能の山姥ものをベースにした「姫が瀧四季の山めぐり」は、没後300年という初世都一中の詞章、先代一中(11世)の作曲。都で山姥を題材に舞っていた遊女が、善光寺詣の山中で日が暮れ、女に宿を貸してもらうと、それが本物の山姥で… 山の四季と、めぐりめぐっていく生死の表現が美しい。
休憩の後は「道行三度笠」。ご存じ近松門左衛門「冥途の飛脚」から、死罪を覚悟した梅川・忠兵衛が新口村へと落ちていくくだりで、初世の弟子の都半中、のちの宮古路豊後掾(みやこじ・ぶんごのじょう)の作曲。郭の相合炬燵といったたとえの色っぽさと、藤井寺、富田林から竹内峠へ、追い詰められた嘆きが交錯する。三度笠って渡世人のイメージだけど、江戸・京都・大阪を月3で回る三度飛脚がかぶっていたんですねえ。

一中節は江戸浄瑠璃の源流で、京の僧侶だった初世が還俗して、座敷芸として始めたもの。歌舞伎舞台に進出して人気を博し、稽古事となって江戸で大流行した。落語にも登場します。弟子の宮古路豊後掾が独立して豊後節を興し、宮古路文字太夫が常磐津節を、さらに一派の宮古路加賀太夫が新内節を、清元延寿太夫が清元節を興したというから、まさに音曲のルーツ。豊後掾はあまりに扇情的な芸風で吉宗に弾圧されたとか、髻を高く結う「文金風」を流行らせたファッションリーダーだったとか、逸話も豊富だ。
お父上の一中さんの博覧強記には驚くけど、了中さんもなかなかどうして。「私はアメリカ合衆国大統領の資質を完璧に備えている。第1に抜群の記憶力、第2に、えーと何だっけ」とレーガンお得意のつかみネタから、一中節と演目を解説。言霊がもたらす幸せをうたった柿本人麻呂「しきしまの大和の国は 言霊の 幸(さき)わう国ぞ ま幸(さき)くありこそ」を引用したり、大倉喜八郎から贈られた見台を紹介したり。飛鳥から江戸、明治まで、なにせ邦楽の世界は深いです!

演奏会で歌舞伎・文楽友達とおしゃべりし、地下の掘りごたつ式の座敷に移って、希望者15人ほどの食事会も。充実してました~

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浅草歌舞伎「十種香」「源氏店」「どんつく」「熊谷陣屋」「流星」「魚屋宗五郎」

新春浅草歌舞伎  2024年1月

初歌舞伎は、尾上松也ら7人が10年の節目で卒業するという浅草歌舞伎。松也、中村米吉ら古典の大役にチャレンジする俳優陣の、若々しさに未来を感じて気分が明るくなる。観客の若め、着物姿や女性ひとり客も目立つ浅草公会堂で、各部9500円。

第1部は米吉が、時代と世話とで大奮闘。可愛いイメージだったけど、いい感じで貫禄が出てきたのが発見でした。中央あたりの良い席、休憩3回を挟んで3時間半。
まず中村歌昇がお年玉年始ご挨拶で、曲芸の難しさを力説してから、竹本の浄瑠璃で、文楽で2回観た「本朝廿四孝」の十種香の1幕。花作り簑作に化けているはずが、なぜか裃姿の武田勝頼(端正な中村橋之助)を挟んで、上手座敷に恋しい婚約者・勝頼の絵姿に見入る可憐な「赤姫」八重垣姫(米吉)、下手座敷に渋い黒の着物で敵に潜入中の濡衣(坂東新悟)と、重厚な様式美だ。勝頼は本物だと知った八重垣姫が、「柱巻き」などの振りで情熱的にかき口説く。前髪の貴公子・勝頼と寄り添う姿もきれい。橋之助は格好良いので、もうちょっと存在感がほしいな。
後半は非情な父・謙信(歌昇)が登場して、勝頼を塩尻へ使いに出し、討手ふたりに後を追わせちゃう。どうする八重垣姫、というところで幕。

休憩を挟んで「与話情浮名横櫛」から源氏店の1幕。2015年の玉三郎・海老蔵、昨年のニザタマが目に焼き付いている演目だから、どうかな、と思っていたけれど、お富の米吉がなかなか粋で世話物らしい伝法さがあって、引き込まれた。対する与三郎の中村隼人は、格好つけているのは悪くないし、片岡仁左衛門に教わったという形は見栄えするんだけど、なぜか肝心の色気がない。んー、残念。
蝙蝠の安五郎の松也が秀逸。下世話な小悪党の難しい役だけど、崩れすぎていない。コメディリリーフ番頭藤八の市村橘太郎も同様で、全体が上質な印象に。終盤、多左衛門の中村歌六パパが出てくるとぐっと歌舞伎らしい空気になるのも、面白かった。

1部の〆はお目当ての「神楽歌雲井曲毬」、通称どんつく。常磐津にのった風俗舞踊で、太神楽がテーマだけに初春らしくめでたい。荷持どんつくの坂東巳之助の、足の運びからして抜きん出て格好いいのが、三津五郎譲りでさすが! 亀戸天神が舞台だけど、今回のために浅草寺の背景を新調したそうで、気合い十分だ。
まず田舎者どんつくと太神楽の親方(歌昇)、太鼓打(中村種之助)が賑やかに鹿島踊。続いて田舎侍(松也)、若旦那(橋之助)、子守(中村莟玉)も踊り、白酒売(新悟)が言い立て。歌昇の曲芸・籠毬は失敗が多く、ちょっと残念。
どんつくのリードで一同「其様ええなら、おんらもええ」と声を合わせ、だんだん速くなるところが楽しい。実は先日習っただけに、一緒にくちずさみたくなっちゃう。芸者と大工(隼人)の艶、どんつくの滑稽なおかめから、最後はどんつくと親方の黒赤尽くしで軽やかでした~

日を改めて第2部を鑑賞。松也の頼もしさを実感した。休憩3回で4時間。
この日の年始ご挨拶は、中村種之助が上手に。そして幕開けは「一谷嫩軍記」から熊谷陣屋1幕。2012年先代團十郎の名演にはじまり、吉右衛門、芝翫、幸四郎、仁左衛門と観てきた演目だ。初役の歌昇は、亡き吉右衛門譲りの幸四郎から習ったとのこと。花道の出、竹本にのった「物語」、「制札の見得」と武張った感じは頑張っていたけど、大薩摩が入っての幕切れは、涙が先にたって虚無感、余韻が物足りないかな。10年、20年かけて磨いていくのでしょう。
妻相模の新悟、藤の方の莟玉、義経の巳之助(大河ドラマの円融天皇だものなあ)も健闘。後半でやはり、弥陀六実は宗清の歌六パパが出てくると、一気に舞台が締まる。

続く「流星」は、種之助がひとりで務める黙阿弥作詞の清元舞踊。リズミカルで巧いし、なんとも愛嬌があっていい! 流星が牽牛と織女に、雷夫婦の喧嘩を報告する、というそれだけなんだけど、なんと端唄にかぶれた亭主、威勢良く鳴らせという女房のいさかいがヒートアップし、子供の雷が止めに入り、隣の婆雷まで闖入するさまを、面を付け替え付け替え踊り分けて、思わず笑っちゃう。

最後は黙阿弥作「新皿屋舗月雨暈」から魚屋宗五郎を2幕で。2016年に芝翫襲名直前のパパ橋之助で観た、生世話ものだ。宗五郎の善人ぶりが寅さん的な愛おしさで、松也がうまく造形。妹お蔦の死に沈んでいたが、同僚のおなぎ(米吉)から、お家騒動に巻き込まれた非道な経緯を聞いて怒り心頭、禁酒の誓いを破ってどんどん酩酊しちゃう。あげく酒樽で格子を壊し、花道で見得を切るあたりが痛快だ。
後半は泥酔して磯部の屋敷に乗り込み、岩上(悪役もいける巳之助)相手に大暴れ。家老(歌昇)に「酔って言うんじゃございませんが」と台詞を聞かせる。終盤、酔いから醒めたらすっかり恐縮して、殿様(隼人)に詫びられて納得しちゃう展開はあんまりだと思うけど… 女房おはまの新悟が、典型的な世話女房ぶりでなかなかの安定感。もうちょっと背が低かったらバランスがいいのになあ。

ロビーの一角に気取ったフォトスポットを設けたり、終演後に皆で並んで、能登半島地震への寄付を募ったり、花形らしくて良かったです!

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志の輔「送別会」「モモリン」「しじみ売り」

志の輔らくご in PARCO2024 2024年1月

正月恒例・立川志の輔1ヵ月公演。今年は古稀の節目、しかも北陸・富山出身とあって、例年と比べても思いがこもる。PARCO劇場の後ろの方で7500円。休憩を挟み3時間。

開演前、公演滑り出しなのに「千秋楽です」のアナウンスがあり、登場した師匠が「お客さんにとってはそうだと思って」と解説。まずは能登の被災地へ皆の拍手でエールを送る。
年齢を意識してか、新作「送別会」から。ネタおろしなのかな。定年の日に同期ふたりが、初任給で呑んだ思い出の蕎麦屋へ。シュールな造形ではなく、誰しもうなずく昭和あるある、いかにも神田あたりの蕎麦屋あるあるが軽妙だ。すとんとサゲて、映像は「これ、まだ持っていますか?」。
続いて2014年のパルコ初演でも聴いた「モモリン」。大事な全国中継の日に、人気ゆるキャラ衣装が脱げなくなっちゃった市長。威張った人格とほんわか外見のギャップ、追い詰められ感が生む笑いは、何度聴いても鉄板だ。「ギリギリ当選の」と畳みかけるギャグが冴える。終わって、毎年独演会をしている縁だというくまモンが登場、先ほどの映像で「まだ持っていますよ」という観客に、ハイタッチのサービス。仕草が絶妙に可愛い。

中入り後は舞台を暗くして、古典「しじみ売り」をじっくりと。初めてかと思ったら2010年、正蔵さんで短いバージョンを聴いたことがあった。義賊・鼠小僧次郎吉が手下と呑んでいると、少年が蜆を売りに来る。不憫に思って全部買って川へ放させ、さらにカネを与えようとするが、少年は受け取らない。訳を聞くと、売れっ子芸者だった姉が駆け落ちした旅先で、見知らぬ親分に難儀を救われたはいいが、そのとき貰ったのが御金蔵破りの小判だと見破られて…
凍てつく朝、辛いあかぎれの手、しっかり者の少年の健気さ、粋な親分と人情のぬくもり。師匠は志ん生版と違って、手下の身代わりでなく親分自ら重い決断をさせる。世の非情に憤る一方で、自分の罪にも向き合う。きれいな涙だけで終わらせない深い演出に、ぐっと引き込まれた。江戸情緒の下座が入るものの、ひな祭りとか合唱団とかの派手な演出はなし。語りのパワーで、どこか原点回帰を思わせる高座でした。美術は堀尾幸男。
いつもの三本で締め。千社札シールのお土産付きでした~
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流白浪燦星

流白浪燦星(ルパン三世) 2024年1月

 歌舞伎好きからよかったと聞き、新作歌舞伎「流白浪燦星」を配信で鑑賞。おなじみモンキー・パンチ「ルパン三世」を、戸部和久のオリジナル脚本・演出で。戸部氏は2019年「風の谷のナウシカ」が良かった、歌舞伎脚本・演出の戸部銀作の息子さんですね。ナウシカ同様、原作へのオマージュと「楼門五三桐」「青砥稿花紅彩画(白波五人男)」など歌舞伎の名場面をうまくミックスしていて、楽しめる。原作の無常観とかハードボイルド感とか、もうちょっと大人っぽさが欲しいとは思ったけど。2023年12月23日、新橋演舞場での公演。休憩2回を挟み3時間半。4220円。

時は安土桃山時代。御所から「卑弥呼の金印」入手のカギとなる宝刀「雄龍丸」を盗み出した大泥棒・流白浪燦星(片岡愛之助)と次元大介(なんと市川笑三郎)が、対となる「雌龍丸」を持つ初代・石川五右衛門(尾上松也)に対決を挑む。のっけから南禅寺山門の「絶景かな」の名シーン!  大川端風の峰不二子(市川笑也)、さらに因縁の銭形刑部(市川中車)が登場して、お馴染みの追かけっこに。
金印の超常パワーが欲しい太閤・真柴久吉(いまだに北条時政をからかわれる坂東彌十郎)と近習・長須登美衛門(中村鷹之資がりりしく)、そしてカラクリ人形で大金持ちとなった唐句麗屋銀座衛門(安定の市川猿弥)も刀を狙う。牢名主九十三郎(現役最高齢93才の市川寿猿さん!「四千両」ですね)の手助けで、つかまっていた五右衛門を釜茹での刑から救い出した流白浪は、五右衛門なじみの傾城・糸星太夫(尾上右近、実は長須の姉)が金印をつかさどる「饒速日(ニギハヤヒ)一族」の生まれ変わりと知って…。

早替り、登場人物そろってのだんまり、「籠釣瓶」オマージュの豪華な花魁道中、天下一の大泥棒の名をかけた流白浪と五右衛門の本水を使ったバシャバシャ立廻り、さらに幕切れは格好良く五人男から稲瀬川勢揃いのツラネ。もちろん盆やセリも駆使して、歌舞伎ならではの演出が盛りだくさんだ。お馴染みルパン主題歌とかを和楽器で聴かせるのも楽しい。なんやかんやで斬鉄剣の誕生秘話というおまけも。

役者陣は愛之助が真っ赤な羽織に「ふーじこちゃーん」とノリノリで、軽薄な感じがぴったり。松也に色気があり、やけに格好つけるところ、右近とのからみもいい。これから歌舞伎の中心を担う役者として期待! 2幕目冒頭で演目を解説する親切な通人は、まさかの緑のマモー姿で衝撃。堂に入った片岡千壽さん、秀太郎さんのお弟子さんなんですね~ 寿猿さんがお元気で、次元に「むしりが似合うじゃねえか」と言ったりするのはめでたいけど、五右エ門役者の思い出は澤瀉屋の現状を思うとちょっと複雑。

深読みするとニギハヤヒは古代、神武の大和朝廷に破れた出雲系王権を思わせる。歌舞伎の五右衛門はもともと、秀吉の明出兵で戦死した宋素卿の遺児というトンデモ設定だし、アウトロー視点が歌舞伎とルパンの世界観を結びつけているんだなあ。一方、猿弥さんのロボット長者ぶりや、報復の連鎖を絶ち、朝鮮出兵を終結させるというテーマは現代的で、作り込んでいます。金印に至る設定が難解で、観ていて集中力が途切れちゃったのは残念だったけど。

ちなみに配信の仕組みはわかりにくく、かなりイライラした。決して安くないのだし、使い勝手の改善を強く希望。利用したのは歌舞伎オンデマンド連携の配信プラットフォーム「MIRAIL(ミレール)」。ほかにHuluも。

2023年喝采尽くし

2023年は遠出したエンタメが充実しました!
なんといっても11月のボローニャ歌劇場「ノルマ」。ドラマティックな歌唱と演奏、初のびわ湖ホールの素晴らしい景観と、脇園彩さんらが来てくれた懇親会まで、めちゃくちゃ楽しかった。
そして夏の内子座文楽。勘十郎、玉男、和生と人間国宝揃い踏みの鏡割りに始まり、座頭沢市に玉助で「壺坂観音霊験記」。書き割りが倒れちゃったりして、手作りの芝居小屋感も満喫した。
番外編で、反田恭平率いるJapan National Orchestoraの東大寺奉納公演も。大仏前の野外特設会場で、あいにくの土砂降りとなったけど、貴重な経験でした~

伝統芸能では残念ながら国立劇場が閉場となり、掉尾を飾る文楽は極め付け「菅原伝授」。藤太夫が舞台袖から「待てらう」と呼ばわり、偉丈夫・松王丸の玉助が登場して拍手。記念の公演での大役、めでたい限り。
歌舞伎は定番「妹背山婦女庭訓」の後半で菊之助、梅枝、米吉が並び、芝翫が未来への期待を語って感慨深かった。思いがけず隣に劇場の設計・監修に当たったかた(御年93歳!)が座られ、おしゃべりしちゃう思い出も。ほかに4月の歌舞伎座では、毎公演一世一代の感があるニザタマコンビの「切られ与三」を堪能。
落語はコロナ明けを実感した5月浅草の談春「お若伊之助」、小春志真打昇進披露で面倒をみる一之輔「加賀の千代」が印象的だった。講談は日本シリーズにやきもきしつつの春陽「清水次郎長伝」が面白かった。

世界で暗い話題が続くなか、演劇は戦争の大義を問うデイヴィッド・へイグ「My Boy Jack」を上村聡史が演出、重く響く名作だった。前川知大「人魂を届けに」はローンオフェンダーの絶望とそれを受け止める覚悟が鮮烈で、新たな代表作に。新鋭では加藤拓也「いつぞやは」が、亡き友への思いを淡々とスタイリッシュにつづり、橋本淳ら俳優陣も高水準だった。安定のこまつ座、NODA・MAP、阿佐ヶ谷スパイダース、岩松了さん、そして四半世紀ぶり三谷幸喜演出の「笑の大学」も。

コンサートは35周年エレカシの、不動のライブハウス感がさすがだった~ もちろんユーミン、ドリカムも満喫。
いろいろ先の見えない2024年だけど、どうかひとつでも多く、ワクワクの舞台に出会えますように!

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