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文楽「源平布引滝」

第226回文楽公演「源平布引滝」 2023年12月

国立劇場が閉場してしまい、12月の中堅中心の本公演はTHEATRE1010で。北千住駅前の丸井の上で、結構入っており、常連さんに加えて「文楽は初めて」の声も。新しい観客を呼び込めるなら、ジプシーも悪くない。狭いながら盆もあったし。国立劇場と比べ座席の傾斜がある感じで、人形の首の角度などは難しいかもしれないけど。演目はおりしも先日旅した琵琶湖畔が舞台の、木曽義仲誕生秘話だ。人形は玉助が盤石、床は織太夫が引っ張る。中央あたりのいい席で6500円。休憩を挟み2時間半弱。

舞台は竹生島遊覧の段から。平清盛が権勢を振るう時代、源氏の重宝・正八幡の白旗を握りしめて、無謀にも琵琶湖を泳ぎわたる娘小まん(清五郎)と、その腕を切り落として湖に旗を流す平実盛(玉志)の謎の行動。人形だから可能だけど、何度観ても壮絶だなあ。床は小住太夫、團吾。

休憩後に九郎助住家の段。亡き木曽義賢の妻・葵御前(紋臣、木曽義仲の母)を匿う堅田の九郎助(文司)宅へ、敵の実盛と瀬尾十郎(玉助)が詮議にやってくる。葵の子として小まんの腕を持ち出され、瀬尾が「これ産んだか!」。実盛はまさかの「手孕伝説」を持ち出して九郎助・葵を救う(かいな)。
実盛ひとりになると、今は敵だけど、かつて仕えた源氏に寄せる思いを切々と吐露(実盛物語)。倅・太郎吉(玉彦)の呼びかけで小まんが一瞬息を吹き返す奇跡、白旗が掲げられる舞台の変化をへて、実は小まんの父だった瀬尾のあっと驚くモドリ。あげく太郎吉が義仲にとりててもらえるように、自ら首をかききっちゃう。またしても、人形だから出来る凄惨シーンだ。幕切れは、太郎吉が実盛に挑もうと綿繰車にまたがるのが可愛く、一方で、実盛は謡曲を引用したウタイガカリで、白髪を染めて義仲勢に討たれる最期を暗示する。時の流れを感じさせるドラマです。

床は後半の切場を、織太夫・藤蔵、芳穂太夫・錦糸に分けて。丁寧な語りを力強い三味線が牽引して好演。前半の笑いのところ、希太夫さんは正直イマイチで、拍手がおきなかったのは残念。人形は玉助さんがスケール大きく圧倒。玉志が終始うつむき加減で、馬にまたがるのもちょっと手間取ったのが気になったかな。
2011年に観たときは、床が今は亡きキング住太夫の笑いで拍手が起こり、実盛が玉女時代の玉男さん、瀬尾が勘十郎さん! 簑紫郎さんが太郎吉だったんですねえ… これからの飛躍に期待。

終演後は慣れない街ながら、充実の反省会でした~

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