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ジャイアンツ

阿佐ヶ谷スパイダース「ジャイアンツ」  2023年11月

作・演出長塚圭史の新作は、小劇場、劇団ならではの親密さで、ひとりの父の、息子に対する取り返しのつかない悔恨をしみじみと。このところザラザラする観劇が続いたせいか、脈絡のない幻想と脱力系の笑い、そして少しの希望が染みた~ 初めての本多劇場グループ新宿シアタートップス、後ろの方で6500円。休憩無しの2時間。 

私(中山祐一朗)が久々にばったり、あいつ(長男の岳志、ダブルキャストでこの日は大久保祥太郎)と会うところから物語が始まる。部屋までついて行って嫁(智順)とも会うが、翌日訪れると、そこには別人が住んでいる。「あなた、目玉をなくしましたね?」と話しかけてくる謎の目玉探偵(伊達暁、長塚と緑秘書の李千鶴)。お、2011年「荒野に立つ」以来だな。
あいつは頼りなくて、商売をしたり悪い仲間と付き合ったりし、やがてごみ収集の仕事にたどり着く。私はずっと息子を気にしているのに、なかなか会わず、心は隔たったまま。注文が噛み合わない喫茶店とか、なぜか平服で行ってしまったあいつの葬儀とか、現実なのか、ありえたかもしれないだけなのか、さだかでない記憶の断片。

ケイトウ(超常現象?)なんて、訳の分からない要素もあって、独りよがりになりそうなのに、その筋道立っていない感じに引き込まれる。実は家族への思いって、そうそう筋道立っていないのだから。終盤の、ポケットいっぱいのドングリのちっぽけな幸福感が、胸に残る。

中山祐一朗がそれなりに地位があって、ちょっとモテて、今は年老いてしまった父を、淡々と演じて切ない。東さんの中村まことは全く冴えないんだけど、実の父より父らしい包容力を絶妙に醸す。かき回し役は、近所のタワマンが気になってしかたない隣の大島さんの村岡希美、スプラトゥーン中毒の隣の遠藤さんの富岡晃一郎。テンポ良くナンセンスな笑いを振りまいて、素晴らしい。おばちゃんが下品にならない村岡さん、好きだなあ。

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