落語「小言幸兵衛」「加賀の千代」「品川心中」
こはる改メ立川小春志真打昇進披露興行 2023年10月
立川談春の弟子で、5月に立川流40年目にして初の女性真打となった小春志(こしゅんじ)。市馬やらさだまさしやら連日大物ゲストに招き、かつ師匠も聴いていないような大ネタに挑むという、チャレンジングな十公演の折り返しだ。この日のゲスト、春風亭一之輔が「陰のプロデューサー」だとお披露目で紹介。応援されているなあ、頑張ってほしいなあ、と思うことしきり。開演まで席でひとり単行本を広げるような、落語好きが集まった感じの有楽町朝日ホール、中段上手端で5000円。中入りを挟んで2時間強。
まず談春が、初日の口上でいきなり本人が「お招きいただき」と言い間違ってあきれた、今日の午前中に志の輔が終わったので後は適当に、などと憎まれ口をたたきつつ「小言幸兵衛」。3年ほど前に喬太郎のオンラインで聴いた笑える噺だけど、この日に談春で聴くと、いつまでも弟子にダメ出しせずにいられない自分を告白するようで、ちょっと切ない。
続いて一之輔が、洗濯を手伝って奥さんにダメ出しされる自虐ネタを振りつつ、「加賀の千代」。これも3年ほど前、一之輔のオンラインで聴いた噺だ。八五郎が可愛くて仕方ない隠居の造形が、なんともチャーミング。ダメな奴ほど可愛いんじゃないのと、ひねくれた談春をからかうような感じが、懐が深くて心地よい。客席が暗いのが談春らしい、志の輔だと真っ暗、というと、少し明るくなって、袖から談春が「これくらいでいい?」。じゃれてますな。
中入りを挟み、3人並んでご披露となり、小春志が寄せの一之輔を出待ちして、披露興行について相談したエピソード等々。談春が相変らず小言を言いつのって面倒臭く、一之輔が困るさまがリアルに可笑しい。最後に一之輔が小春志の肩をポンとたたいて、「一緒に頑張りましょ」。
というわけで締めくくりは、当の本人が「品川心中」。喬太郎や三三で聴いたことがある郭噺だ。元気ではきはきの、こはるイメージからすると難しい! 女郎と客が命がけで駆け引きする色気と凄み、どっちもどっちの愚かしさ、波音が聞こえてきそうな江戸情緒等々、正直、すべてはこれからかな、と感じたけれど、思えば一年も充電してたり、ガッツは十分だ。おめでとー。
ロビーにはのぼり旗や花が並び、前の方の席にはタカラジェンヌのようなグループもいて、華やかでした。
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