ガラパコスパコス
COCOON PRODUCTION2023「ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~」 2023年9月
ちょっと久々の観劇は、気になっていた「劇団はえぎわ」のノゾエ征爾作・演出。2010年初演、30代で書いた代表作だそうで、「ハイバイ」っぽい欠陥だらけの群像を、どこかキッチュに。世田谷パブリックシアターの、なんと最前列上手端で1万500円。休憩無しの2時間。
物語はコミュニケーション不全で、派遣ピエロで食いつなぐ太郎(竜星涼)が、特養を迷い出た認知症のまっちゃん(高橋恵子)とはずみのように共同生活を始めちゃうところから始まるドタバタ。2人を取り巻く人々と言えば、実は関係が崩壊している兄夫婦(藤井隆、山田真歩)とつきまとう不気味な後輩(ノゾエ)、下心ありありの派遣会社の上司(青柳翔)と太郎を気遣うチャーミングな部下(芋生悠)、向かいに住む壊れかけた同級生(瀬戸さおり)と不倫の末に結婚した担任教師(菅原永二)、まっちゃん失踪のせいでクビになって、なぜかジェットコースターに乗りにいく施設職員(山本圭祐、山口航太)… ひとり残らず、どうしてこうも不器用なんだろう。
セットなシンプルな黒い壁と床。そこに登場人物が、チョークでどんどんいたずら書きしていくスタイルは、街頭芸っぽくて面白い(美術は乗峯雅寛)。初演以来の演出らしく、無造作に見えて緻密。観客の視点を固定しない、ライブの演劇ならではだ。
まっちゃんの認知症がどんどん悪化して、目が離せない太郎は欠勤続きで追い詰められていく。状況はけっこうリアルで悲惨。なのに終盤のベタな展開に、思わず苦笑しちゃう。「いつくしみ深き」から、人間の進化を唄う「ボレロ」の行進、壁が倒れて、みな一台のバスに乗っての「We Are The World」だもんなあ。無駄に明るい隣の外国人(駒木根隆介が日本語ゼロで)とか、なぜかいつもバスに乗れない女(中井千聖)とか、ちょっと不条理な笑いのスパイスも効果的。その分、老いって退化なのか?といった、テーマのヒリヒリ感は薄めかな。
俳優陣では髙橋が、ほとんどまともに話さないのに、一貫してさすがの上品さを見せつける。長身が映える竜星くんも健闘していて、髙橋とデュエットしたり、仮面のようなピエロの化粧を落としてもらったりするシーンで切なさを表現。そんな太郎を見守る芋生が可愛くて、これから楽しみな女優さんです。小柄な山田がキレキレで存在感があり、ボレロのシーンでひときわノッているのが可笑しかった。ドラマ「ブラッシュアップライフ」の研究所の先輩なんですねえ。藤井、菅原も安定し、中井、青柳、そしてもちろん駒木根も曲者ぶりを発揮。
開幕前、ロビーでの飲食が復活していて、ビールもありました~
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