きらめく星座
こまつ座40周年第146回公演「きらめく星座」 2023年4月
井上ひさしの昭和庶民伝三部作の一つを、安定の栗山民也演出で。開戦前夜、庶民は否応なく時代のうねりに巻き込まれてしまう。それでもなけなしの勇気をふるって、「人間の広告文(コピー)」をうたい上げる逞しさ、これからの苦闘を予感させる幕切れの切なさ。紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAの前の方いい席で8800円。休憩を挟んで3時間強。
舞台は昭和15年、東京浅草にあるレコード店「オデオン堂」だ。全編を彩る「青空」「一杯のコーヒーから」といった昭和歌謡が底抜けに明るいだけに、冒頭から暗闇でうごめく防毒マスクの人物などとの落差がくっきり。
父(久保酎吉)、母(松岡依都美)ら一家はみな音楽好き。貴重な卵1個で盛り上がっちゃう楽しさがある。しかし砲兵の長男(村井良大)が訓練中に逃走し、周囲の冷たい目から逃れようと、長女(瀬戸さおり)はあえて傷病兵(粟野史浩)との結婚を選ぶ。人間らしさが失われていく理不尽さに、幻肢痛を抱える粟野、そして村井を追う憲兵(木村靖司)も苦悩する。間借りするコピーライター(大鷹明良)の、「人間は奇跡」という叫びが重い。
松岡が舞台を牽引し、歌も素晴らしい。2020年の上演で、紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞しているんですねえ。美術は石井強司。
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