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四月大歌舞伎「与話情浮名横櫛」「連獅子」

鳳凰祭四月大歌舞伎 夜の部 2023年4月

歌舞伎座新開場十周年と銘打った公演。毎公演一世一代の感がある、貴重な40年来のニザタマコンビ「切られ与三」に、初歌舞伎座の知人夫妻と足を運ぶ。2022年に延期となり、なんと今回は直前の3日間、御年79歳の人間国宝・片岡仁左衛門が体調不良で中止しただけに、登場シーンから盛り上がりがひとしお。お着物、外人さん、アーティストっぽいかた等々で賑わう1F中央前の方、良い席で1万8000円。休憩2回で3時間半。

眼目の「与話情浮名横櫛」は木更津海岸見染の場から。お江戸育ちのお富・坂東玉三郎の貫禄、そして与三郎・仁左衛門の軽やかな若旦那ぶりが盤石だ。2015年に観た市川海老蔵(当時)は、ちょっと無理してたもんなあ。
ニザ様、「やっとお上からお許しがでて」と客席に降りて(コロナ禍以来初らしい)、ぐるりと歩いちゃって大拍手。実子に跡取りを譲ろうと、わざと放蕩している気の良さがにじむ。そして運命の出会い! じっと無言で見つめ合ってからの練り上げられた流れ、タマ様の「いい景色だねえ」がまさに、と思える。潮干狩りの浮き立つ空気や、幇間(市村橘太郎)、鳶頭(代役で坂東亀蔵がきびきび)のいかにもな造形も楽しい。
一転暗くなって、上演は珍しいという赤間源左衛門別荘の場。やや身も蓋もない展開ながら、シルエットになった二人の年齢を感じさせない色っぽさ。この場を出してドラマとして盛り上げようという心意気が感じられる。
休憩を挟んでいよいよ源氏店の場。タマ様の粋な落ち着きぶり、対するニザ様のほうは、タカリのくせに育ちの良さがのぞく拗ねた感じがさすが。音楽的なセリフ回しが見事だ。なんでも細い足を、コンプレックスからトレードマークにしようと思った演目とか。滑稽な藤八(片岡松之助)がいいバランスだ。
左團次さん休演で多左衛門に回った河原崎権十郎も、大店の番頭にはまっていて立派。チンピラ蝙蝠安の片岡市蔵はちょっと卑屈過ぎたかな。

長めの休憩の後、本興行では初という尾上松緑、左近親子の「連獅子」。これがなかなかの見物でした。17歳左近ちゃんの必死さ、指先にこめた力。松緑の家族というと、どうしても複雑な心情を連想しちゃうんだけど、そんなことは関係ないラストの毛振りパワー! 客席も途切れなく拍手を送ってた。そういえば2018年、当時13歳のいっぱいいっぱいの染五郎にも感動したなあ。
加えて間狂言「宗論」の権十郎、板東亀蔵にメリハリと品があって大満足。杵屋勝四郎以下の長唄陣、笛や太鼓も何故かイケメン揃いでした。

大向こうがようやっと全面解禁となり、十周年記念緞帳の東山魁夷「夜明けの潮」の青緑も爽やか。地下を含め、お土産もいろいろ新調されていて、芝居見物を満喫しました~

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