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アレグリア

ダイハツ アレグリア ー新たなる光ー 東京公演  2023年2月

2020年に事実上経営破綻したシルク・ドゥ・ソレイユが見事復活をとげ、5年ぶりに東京公演! 個人的には7回目。待ちに待ったので奮発して、お台場ビッグトップのSS席オリジナル特典付2万2000円。トラピス(空中ブランコ)がまさに頭の真上を舞う席で、大迫力でした~ 休憩30分を挟んで2時間強。

懐かしい専用テントは家族連れ、カップルで大賑わいだ。専用入り口でブランケットやラゲージタグ、写真集、お菓子のお土産を受け取る。ビールとスナックを並ばずにスマホで注文できるスタイルになっていて、ぐんと進化してます。
開演前から客席を歩き回って盛り上げる演出は無かったものの、オープニングからきらびやかな衣装、王冠をイメージしたセットの豪華さは期待通りだ。アレグリアとはスペイン語でJOYの意味で、日本では3回目だけど内容は一新したそうです。演出ジャン・ギー・ルゴー。

大好きな無重力超絶技のトラピス、アエリアル・ストラップはもちろん、アクロバットのアクロ・ポール、パワートラック(長髪ベネズエラ人が巧かった)や伝統的なベネズエラのジャグリング、息をのむハンドバランシング&コントーションに口をあんぐり。席が良かったので、サモア陣のファイヤーナイフ・ダンスではリアルに熱が感じられたし、パワートラックはいまにも客席に飛び出してきそうだし、ドキドキ。日本語をまじえたクラウン(パブロ・ベルメホとパブロ・ゴミス・ロペスのスペインコンビ)のコミックアクトでは鞄からスノーストームが吹き出して、全身紙吹雪だらけになっちゃいました。男性の観客を舞台にあげていじるコミックアクトもたっぷり。楽しい!

鍛錬のいる出演陣をよくぞ再構築しただけでなく、相変わらずの多国籍ぶりで、チームにはウクライナもロシアも中国も。命がけの演目も多いし、見上げたプロ意識です。シンガーはスペインとブラジルの女性ふたり、バンドにはアコーディオンやチェロも。

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笑の大学

笑の大学  2023年2月

三谷幸喜の1996年初演の傑作2人芝居を、四半世紀ぶり、自らの演出で。笑いへの賛歌は、この作家の一貫したテーマ。加えて配役と、深刻になってしまった時代状況が相まって、向坂の哀愁が強い余韻を残す名舞台だ。PARCO劇場、前の方の良い席で1万円。休憩無しの2時間。

戦時色濃厚な昭和15年、警視庁取調室のワンセット。検閲係の向坂(内野聖陽)と、浅草の劇団「笑の大学」で座付作家をする椿(瀬戸康史)が対峙する。上演中止に追い込もうと執拗に難癖をつける向坂に対し、椿が抵抗して何度も書き直すうちに、台本はどんどん面白くなっていく。

映像でみた西村雅彦&近藤芳正の感動が記憶にあり、さらには同じキャストの2011年「90ミニッツ」が鮮烈だったので、どういう印象か、と思っていたら、まず想像以上に笑えた。カラスと妻のエピソードが爆笑だし、「お国のため」とか警察官とか、ねじ込んだギャグを練るうちにあれよあれよと立ち稽古になっちゃう展開のリズムがいい。繰り返しは3回まで、といった笑いの講義も。

童顔で頼りなさそうな瀬戸が、喜劇人の誇り、権力への抵抗を強靱に演じて期待通りだ。名画「ライフ・イズ・ビューティフル」(1997年)にも通じる、笑いによる人間の尊厳が力強い。昨年完走した「鎌倉殿の13人」の弟・時房でも、コメディセンスが素晴らしかったもんなあ。
加えて硬軟自在の内野が、さすがにいい味。ほぼ同い年の丁々発止だった初演コンビに対し、20歳の差があり、しかもバリッとしたスーツ姿で、末端の警官というより威圧感が先に立つ。それだけに、対話を通じて椿に共感し、虚勢が崩れていく過程の落差が大きく、幕切れ、乾いた笑いの切なさが胸に迫る。(説明過多とは思わなかったです)

閉塞感がある美術は堀尾幸男、詩情漂う照明は服部基、音楽はお馴染み荻野清子。ロビーの喫茶も復活してました。

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文楽「国性爺合戦」

第233回文楽公演 第2部 2023年2月

近松名作集と題した2月の第2部は、2015年に観た時代物「国性爺合戦」。変化に富んだ舞台が楽しい。前庭の梅が綺麗な国立劇場小劇場、前のほう中央で7000円。休憩を挟んで3時間弱。

荒唐無稽な千里が竹虎狩りの段から。床まで出張っちゃう着ぐるみの虎は、前回同様、勘介さんが生き生きと。15分の休憩後、楼門の段の後はこれも前回と同じ呂勢太夫、清治コンビで盤石。錦祥女(簑二郎)が再会した老一官(文司)の姿を鏡に映す構図がスケール大きく、ツメ人形の兵士の細かい演技も面白い。
続く甘輝館の段は錣太夫、宗助が渋く。玉助さんの甘輝が登場、まさに威風堂々で、拍手が大きい。明再興の理想と錦祥女、一官妻(和生)の思いが交錯してなかなか複雑です。そして大詰め、紅流しより獅子が城の段はお馴染み織太夫、藤蔵で、セット転換も激しくダイナミック。和藤内(玉佳)が城に躍り込み、あれよあれよの女性陣の自己犠牲をへて、甘輝とともに韃靼王征伐に立ち上がる。

売店には岩手・遠野麦酒ZUMONAの国立劇場さよなら記念クラフトビールが。なんか春だなあ。

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桜姫東文章

木ノ下歌舞伎「桜姫東文章」 2023年2月

昨年、極め付けニザタマで堪能した鶴屋南北のはちゃめちゃ退廃劇を、チェルフィッシュの岡田利規の脚本・演出で。廃品が散乱するどこかの廃墟(美術は稲田美智子)にたむろする若者たちが、「そのワンオペまじむりなんで」とか「出た、またモノ扱い」とか、現代語訳の台詞を棒読みでつぶやく。さあさあさあ、と言いつつ見得に力は無く、のろのろ動く。これが現代のアナーキー、放置された者たちの物語ということか。
袖でだらだらする俳優陣の「いなげや」「ダルメシアン」等の大向こうにも脱力。休憩を挟んで3時間強が長かった。補綴・監修の木ノ下裕一は何がしたかったのかなあ。あうるすぽっとの中ほどで7000円。

清玄・権助を演じる成河の切なさ、桜姫の石橋静河の色気に期待してたけど、今回はほぼ封印。さすがに舞踊になるくだりの、2人の動きは美しかった。谷山知宏の破戒僧・残月にパワーがあり、ワルのコンビを組む長浦の武谷公雄も存在感。レゲエっぽい電子音のサウンドデザインは荒木優光。

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タンホイザー

タンホイザー  2023年2月

ワーグナーが楽劇に踏み出した1845年初演の人気作を、お馴染みヘルデンテノールのステファン・グールドが、昨夏のバイロイトでも歌ったというタイトロールで聴かせる。指揮はブエノスアイレス出身の若手アレホ・ペレス、オケは東京交響楽団。新国立劇場オペラパレスの前のほう、プログラムや解説会とセットで2万8000円。休憩2回を挟んで4時間強。

1幕、禁断のヴェーヌスベルクはオケがちょっとまったりした感じだったけど、ヴェーヌスのエグレ・シドラウスカイテ(リトアニアのメゾ)が甘美。2幕は舞台がテューリンゲンに転じて、エリーザベトのサビーナ・ツヴィラク(スロヴェニアのソプラノ)による殿堂のアリアから、テンションがアップし、合唱「大行進曲」でスペクタクルになだれ込む。
3幕が圧巻で、エリーザベトの祈りに始まり、ヴォルフラムのデイヴィッド・スタウト(イギリスのバリトン)がハープを従え、夕星の歌を朗々と。そしてお待ちかね、タンホイザーの複雑長大なローマ語り。あれよあれよと奇蹟のフィナーレとなりました~

伝説上のタンホイザーは、型破りな作曲家自身を投影しているのに対し、真面目なヴォルフラムのほうは実在した有名なミンネゼンガー(騎士歌人)なんですねえ。ベーヌスがビーナス、すなわちキリスト教以前の存在なのに対し、テューリンゲンのヴァルトブルク城が実在の世界遺産で、ルターの宗教改革ゆかりだとか、背景を習うとより面白い。

歌手は「リング」などで聴いてきたグールドはじめ、粒ぞろい。なかでも余裕たっぷりのスタウトが印象的だった。もうけ役の牧童で新国立劇場合唱団メンバーのソプラノ、前川依子が拍手を浴びてました。プロダクションは2007年初演のハンス・ペーター・レーマンの演出で、4度目の上演、私が観るのは3回目。透明な柱が美しくて好きな演出だけど、そろそろ新演出も、という感じかな。

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METライブビューイング「めぐりあう時間たち」

METライブビューイング2022-23 めぐりあう時間たち  2023年2月

マイケル・カニンガムの小説で1999年ピュリッツァー賞、映画版で2002年にアカデミー主演女優賞を獲得した原作を、ケヴィン・プッツがオペラ化。しかもルネ・フレミング(ソプラノ)、ケリー・オハラ(ソプラノ)、ジョイス・ディドナート(メゾ)の三大歌姫が競演とあってワクワク。
「ダロウェイ夫人」をモチーフに80年の時をへて、3人の女性それぞれの転機となった一日が重なる。視覚的な同時進行の妙と、響きあう音楽が物語を雄弁に表現し、ラストの三重唱に思わず涙。音楽監督ヤニック・ネゼ=セガンが指揮、グレッグ・ピアスが台本を書き、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー「となりのトトロ」をヒットさせたフェリム・マクダーモットが演出と、なにからなにまで刺激的だ。2022年12月10日の上演。新宿ピカデリーで3700円。休憩1回を挟み3時間20分。

登場するのは、1923年イギリスに生きる不安定な作家ヴァージニア・ウルフ(ディドナート、映画版はニコール・キッドマン)、1949年ロサンゼルスで「ダロウェイ夫人」を読む平凡な主婦ローラ・ブラウン(オハラ、映画版はジュリアン・ムーア)、そして1999年ニューヨークでエイズの元恋人を世話するジャーナリスト、クラリッサ・ヴォーン(はまり役のフレミング、映画版はなんとメリル・ストリープ)。それぞれに行き詰まりを感じ、許されない恋心と死の誘惑を思い、それでも生きていくことを歌い上げる。

音楽は場所と時代に合わせて、時にジャズ調だったり多彩。歌手が期待通り聴かせる。特に大詰めのオハラの真に迫る表情は、さすがミュージカル女優。ほかにクラリッサのパートナーにきびきびしたキャスリーン・キム(韓国系米国人のソプラノ)、元恋人に艶っぽい声のカイル・ケテルセン(米国のバスバリトン)。

花束いっぱいの生花店やキッチンが色鮮やか。ディドナートの周りの手紙を書く女性たち、そしてマンハッタンの雑踏などのアンサンブルの見せ方も美しい。
案内役の女優クリスティーン・バランスキーがゲルブ総裁らにインタビュー。

バッハ名曲演奏会

IDホールディングスPresents ニューイヤーバッハ名曲演奏会 2023年2月

2回目のニューイヤーでバロックに浸る。初めてサントリーホールの壮大なパイプオルガンを聴くことができ、大感激でした~ 大ホール、前のほう中央のいい席で。

まず国内外で活躍する大木麻理さんのオルガンソロで。のっけからお馴染みトッカータとフーガで、5898本ものパイプが鳴る鳴る。4段手鍵盤と足鍵盤を駆使しての超絶技巧は、相当な重労働だ。さらにトランペットの斎藤秀範さんが加わって、荘厳かつ素朴に。
休憩後は昨年も聴いたブランデンブルク協奏曲から。2本のヴィオラを軸に合奏が楽しい6番、各3本のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが生き生きと合奏する3番。そして西山まりえさんのチェンバロ協奏曲となる5番。リーダーの崎谷直人さんは神奈川フィルハーモニー管弦楽団の前ソロコンサートマスターで、ウェールズ弦楽四重奏団などで活躍しているそうです。
ほかいろいろな組み合わせで登場するのは、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ビオラ・ダ・ガンバ。若手から新日本フィル、神奈川フィル、N響の奏者、古楽コンサートをプロデュースするベテランまで多彩です。
以下プログラムです。

トッカータとフーガ ニ短調
「目覚めよと呼ぶ声あり」
カンタータ156番「わが片足すでに墓穴に入りぬ」 第1曲シンフォニア
カンタータ「楽しき狩りこそわが悦び」第9曲「羊は安らかに草を食み」
カンタータ「神の時こそいと良き時」より第1曲「ソナティナ」
小フーガ ト短調
協奏曲第4番 ハ長調
ブランデンブルク協奏曲
 第6番 変ロ長調
 第3番 ト長調
 第5番 ニ長調

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