建築家とアッシリア皇帝
建築家とアッシリア皇帝 2022年12月
フェルナンド・アラバールによる1967年パリ初演作を、生田みゆき(文学座)の上演台本・演出で。不条理のなかに、人を裏切りへと追い込む紛争の悲劇が見え隠れし、現代を感じさせる。岡本健一と成河がたった2人で、なんと休憩を挟み3時間弱を緊張感をもって演じきって見事だ。期待はしてたけど、さらにその上をいく水準。田ノ口誠悟訳。シアタートラムの中ほど、下手端で7000円。
孤島にある日、戦闘機が墜落。ひとり生き残った男(岡本)は古代の皇帝を自称し、ピュアで不思議な力を操る先住民(成河)を建築家と呼んで、文明化しようとする。笑えるごっこ遊び、裁判の真似事が、やがて2人の支配関係を揺るがせ、皇帝が抱える闇をあらわにしていく。
とにかく俳優2人の台詞術と身体能力が高く、決してお説教臭くならない稚気、乾いた色気が素晴らしい。文明や暴力、神について饒舌に語りつつ、底流にはスペイン内戦時に父を売ったという母に対する作家の愛憎をにじませる。廃品が折り重なった美術は深尾幸男。
1974年に日本初演で皇帝を演じた山崎努が、岡本にメールで助言し、稽古場も訪れたとか。プログラムには、8月の日経コラムで山崎自ら書いた初演当時の苦闘ぶりが掲載されていて、チャレンジし続ける舞台人から舞台人への継承が感慨深い。
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