しびれ雲
KERA・MAP #010「しびれ雲」 2022年11月
ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出。名作「キネマと恋人」と同じ牧歌的な「梟島」を舞台に、小津映画を思わせるしみじみ群像劇が胸にしみる。本多劇場のやや後方、下手寄りで8500円。相変わらずの豪華キャストで、休憩を挟んで3時間半。
時は昭和10年ごろ。夫を亡くし健気に生きる姉・波子(緒川たまき)を軸に、見守る家族(父・石住昭彦、兄夫婦の三上市朗・安澤千草、ゲイの息子・森準人)、夫の旧友たち(やぶ医者の松尾諭、ケーキ屋の三宅弘城、バー経営の尾方宣久)、気持ちがすれ違う妹夫婦(気の強いともさかりえと萩原聖人)と工場仲間(菅原永二がいい味)らの、ささやかな片思いや老親の衰えをめぐる戸惑いが、笑いをまじえつつノスタルジックに展開。迷い込んだ記憶喪失の青年フジオ(井上芳雄)が、次第に町に溶け込み、庶民の暮らしに小さな希望を灯す。
緒川が相変わらずの透明感で、独特の方言を操りつつ舞台を牽引。井上も何とも品が良くて、終盤の歌がご馳走だ。役者は皆、達者。なかでも菅原の妹・清水葉月が井上に失恋するシーンが、なんとも切なくて良かったなあ。
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