夏の砂の上
夏の砂の上 2022年11月
松田正隆(マレビトの会代表)の1999年の戯曲を、栗山民也が演出。一貫して無抵抗な男の、どこへも向かわない暮らしを淡々と。田中圭がはまり役だ。世田谷パブリックシアター、やや後方で8500円。休憩無し2時間。
長崎にあるごく平凡な民家の居間のワンセット(美術は二村周作)、ある夏のできごと。治(田中)は造船所の倒産で失業。かつて息子を4才でなくしていて、妻・恵子(西田尚美)とは別居状態だ。コンビニ弁当をひとり食べる姿がわびしい。そこへ妹・阿佐子(松岡依都美)が強引に、娘・優子(山田杏奈)を預けていく…
断水という理不尽なエピソードが、散々な治の境遇を象徴する。気のいい同僚の陣野(尾上寛之がいい味)が妻の恋人とわかっても、どうにもならない。だからこそ突然日常に入り込んだ優子のみずみずしさが、眩しく映る。2人で土砂降りの雨をたらいに貯めるシーンは、ひととき希望を感じさせる、いいシーンだ。もっとも現実は甘くない。行くなと叫べるくらいなら、こうなっていない、ということか。
山田が初舞台とは思えない存在感で、楽しみだ。キムタクのドラマでボクシング部員だった子ですね~ 出番は少ないけど、身勝手で欺されやすい阿佐子の造形も見事。照明の変化が美しかった。
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