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ジュリオ・チェーザレ

ジュリオ・チェーザレ  2022年10月

5月のグルックに続き、バロックオペラに挑戦。1724年初演、ヘンデルの史劇「ジュリオ・チェーザレ」で、歌の競演を堪能する。2020年の公演直前にコロナで急遽中止になった作品を、ほぼ当初の布陣で実現した。25周年を迎える新国立劇場オペラハウスでも、ヘンデルを取り上げるのは初めてとのこと。バロックのスペシャリストといわれるイギリスのリナルド・アレッサンドリーニ指揮、東京フィルハーモニー交響楽団。賑わいの戻った中段下手寄り、休憩2回を挟み4時間半。

時は紀元前、チェーザレ(カエサル、ノルウェーの名メゾ、マリアンネ・ベアーテ・キーランド)が政敵ポンペーオを追ってエジプトにやってくる。王トロメーオ(カウンターテナーの藤木大地)と家臣アキッラ(ヴィタリ・ユシュマノフ、ロシア出身で日本で活動するバリトン)はチェーザレと結ぼうと、ポンペーオの首を差し出すが、油断できない。王と対立する姉クレオパトラ(森谷真理、ソプラノ)が侍女リディアに扮してチェーザレに接近、2人は恋に落ちる。
やがてクレオパトラが挙兵し、捕らわれるが、死んだと思われたチェーザレが奇蹟の救出。アッキラも寝返って、トロメーオがポンペーオの妻コルネーリア(加納悦子,メゾ)に言い寄るところへ、遺児セスト(金子美香、メゾ)が攻め入り見事復讐を果たす。

バロックは楽譜にリフレインや空白が多く、退屈と思われていたけど、近年研究が進み、指揮者と歌手の綿密な設計で作曲当時の即興、装飾を復元し、人気が出てきたとか。壮麗な序曲からとろける旋律、女声中心の突き抜け感が心地よい。
森谷は二幕の「瞳よ、愛の矢よ」や三幕「我が運命に涙を流し」に高揚感がある。作曲当時カストラートが演じたパートで、メゾやカウンターテナーが活躍するのも面白かった。

またバロックはストーリーがシンプルだけに演出の余地があるそうで、今回は2011年オペラ座のロラン・ペリーの演出。2014年「ホフマン物語」などで観ている人。本作はカイロの美術館のバックヤードという設定で、現代の博物館員がうろうろしたり、所蔵品の絵画、彫刻を効果的に使ったり、窓からピラミッドが見えたりと軽妙で楽しい。特に有名な、絨毯にくるまったクレオパトラがカエサルの前に姿を現す場面の絵画がお洒落。英雄はクレオパトラの美というより、その度胸の良さに惚れたんじゃないかしら。

音楽評論家・加藤浩子さん主宰の鑑賞会に参加し、いろいろ伺えたのが良かった~ 脇筋であるコルネーリア母子の復讐談の背景には、作曲当時の英国国王派(ドイツ人のジョージ1世)とジャコバイト派(亡命中のジェームズ2世)の対立があるそうで、興味津々でした。

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