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クランク・イン!

クランク・イン!  2022年10月

見逃せない岩松了作・演出。2020年の朗読劇「そして春になった」の後日談で、主役の座と、フラフラしている映画監督・並之木(眞島秀和がはまり役)をめぐって、誇り高い大物・羽田ゆずる(秋山菜津子)、新人ジュン(吉高由里子)という女優同士の心理戦がひりひり。本多劇場の中央あたりで8000円。休憩無しの2時間。

若い女優の死(前作のラスト)から1年後、ようやく映画の撮影が再開し、山中の隔離された空間でリハーサルが始まった。2階建てセットの左右に部屋が並び、女優らが泊まり込んでいる。残りの俳優・スタッフは向こう側の坂をくだった湖畔にある並之木夫妻(妻は登場しない)の別荘に泊まっていて、そこからのぼってくる新人(吉高)が人間関係をかき乱す。女優の死は自己だったのか、果たして映画はクランクインできるのか。

野心をチラチラさせつつ、何を考えているか分からない吉高が、なかなかいい。受けて立つ秋山はもちろん巧くて、公私のライバルと自らの年齢を意識。並之木に面倒な議論をふっかけて進行を妨げたり、不安定になっていく。並之木と付き合いの長い女優・弥生(伊勢志摩)はしっかり者で、映画を完成させたいと願いつつ、かつての女優の死に疑念を抱く。羽田に振り回されっぱなしのマネジャーたず子(のしてきた富山えり子)、並之木と付き合いながら、面倒には巻き込まれたくない若手・真里(石橋穂乃香)もまじってテンポがいい。

セットの立体感と、個室それぞれと共有スペースの出来事が同時進行する構造が面白い。美術は愛甲悦子。
客席に若い女性が目立つのは吉高効果か。自ら難しそうな新人役を希望したという説も。恐るべし。

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