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ハイゼンベルク

HEISENBERG(ハイゼンベルク)  2022年8月

「FORTUNE」などのサイモン・スティーブンスの秀逸な二人芝居を、小田島創志訳、初見の古川貴義(箱庭円舞曲)演出で。終始突拍子なく失礼な女、ジョージー42歳と、振り回される男、アレックス75歳。コミカルでテンポのいい会話から、後悔と虚しさだらけの人生を、それでも心楽しく生きていく思いがたちのぼって、じんわり。芝居好きが集まった感じの中野ザ・ポケットで8800円、休憩無しの90分。製作はconSept。

ロンドンの駅でベンチに座るアレックス(平田満)に、ジョージー(小島聖)が後ろから近づき、唐突にキスするところから、2人のやりとりが始まる。ジョージーがアレックスの営む肉屋に押しかけてきて、デートする羽目になって… ジョージーの容赦ない突っ込みにたじろぎつつ、惹かれていくアレックス。
「君を愛し始めているみたいで、そうなって欲しくない。俺はそうなって欲しくない。絶対そうなってはいけない。だからそうならないようにしているんだよ、今、今こうやって。俺はもう行くぞ」「ここあなたの家なんだけど」「分かってる」。ごく当然で選択肢などないはずだった、長く冷え冷えとした孤独に差し込む、一筋の、けれど決定的な光。

ジョージーが打ち明けていく家族のことは、なんだか虚実判然としない。大人だから、カネの話も出てくるし、先の約束なんてもちろんない。けれど、とうとうニュージャージーに行き着いて2人が踊る、ぎこちないダンスの切なさ。「もしも、もう1週間一緒にいて、って私が頼んだら、一緒にいてくれる?」
タイトルはドイツの物理学者ハイゼンベルクの「不確定性原理」にちなむ。二つの離れた粒子の運動量や相関関係を、正確に測り決定することはできないそうで、本作ではこんなものと決めつけていた人間性も、いつだって変わりうるという、静かで強いメッセージにつながる。実は体調のせいで、ところどころちょっと眠かったんだけど、戯曲を読んで納得。

小島が膨大な台詞をものともせず、生き生きと魅力的で、危うくて、いい。対する平田は冴えなさ加減、絶妙の間がさすがだ。セットは簡素で、暗転のたび俳優2人が袖で着替え、ベンチなどを出し入れする。美術はお馴染み乗峯雅寛。
交互登板のはずだった、もう一組の演出家・キャストがコロナで中止となり、貴重な上演でした。帰りに中野駅周辺をぶらぶら。

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