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紙屋町さくらホテル

こまつ座第142回公演 紙屋町さくらホテル  2022年7月

井上ひさしの1997年、新国立劇場こけら落とし初演作を、再演を重ねてきた鵜山仁の演出で。演劇賛歌と、深い劇構造に引き込まれた。千葉哲也がスケール大きい演技も素晴らしい。紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAの、中段下手寄りで8000円。休憩を挟んで3時間強がちっとも長くない。

昭和20年5月の広島、紙屋町ホテルのワンセット。新劇の名優・丸山定夫(髙橋和也)と元宝塚スター園井恵子(文学座の松岡依都美)が移動演劇さくら隊として宿泊し、オーナーで日系二世の神宮淳子(七瀬なつみ)、従姉妹の正子(内田慈)、泊まっている言語学者・大島(白幡大介)、ピアノがうまい玲子(神崎亜子)ら素人を使い、急ごしらえで「無法松の一生」の1シーンを上演しようとする。そこへ淳子を見張る特高刑事・戸倉(文学座出身の松角洋平)、天皇の密使で海軍大将・長谷川(たかお鷹)、長谷川を見張る陸軍中佐・針生(千葉哲也)が紛れ込んで…

「宝石」たる生身の俳優への愛情、方言に対する愛着がまず文句なく楽しい。歌あり踊りあり、戸倉が思わず演技にのめり込んじゃったり、園井が宝塚の演技パターンを実演したり、笑いもたっぷりだ。観ているほうは、この3カ月後の運命を知っているから、淳子が強制収容に怯えつつ、精一杯舞台を務めようとする姿に涙する。「すみれの花咲く頃」がこれほど染みるとは。
もう一つの軸として、ともに正体を隠している長谷川、針生がまさに、終始演技しているという二重構造、発言にいちいち裏のある感じがスリリングだ。幕開けとラストに戦後、巣鴨プリズンで二人が再会するシーンがあり、深い悔恨、戦争責任とは何か、生き残った者が何をすべきかを考えさせる。井上戯曲、重いです。

たかおが毅然として、さすが味わい深いのはもちろん、長身で無骨な松角がなかなかの切なさだ。女性陣はみな伸び伸び。初演の顔ぶれは森光子や大滝秀治だったんですねえ。
ロビーでは「残したいこまつ座作品」の投票も。

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