團菊祭「暫」「土蜘」
團菊祭五月大歌舞伎 第二部 2022年5月
3年ぶりの團菊祭。團・海老蔵は2年半延期していた襲名を年末に控えて、いろいろプライベートでお騒がせのようだけど、菊之助と並びやっぱりスターは華があって、歌舞伎らしくていいなあ。まだまだコロナモードの歌舞伎座、中央前の方の良い席で1万6000円。休憩1回で2時間半。
まずは荒事中の荒事、祝祭感満載の「歌舞伎十八番の内・暫」をテンポ良く。なんと2010年新橋で、パパ團十郎で観て以来だ。鶴ヶ岡八幡宮にずらり並んだウケ武衡の左團次、腹出しの男女蔵(左團次の息子さん)、右團次ら、鯰坊主の又五郎、女鯰の孝太郎(はまり役!)が、問答無用の華やかさ。ド派手衣装で花道に登場するスーパーヒーロー景政の海老蔵は、「久しぶりの歌舞伎座」(10カ月ぶり!)「オリンピック開会式で見せた家の芸」等々笑わせつつ、ツラネも順調。声がパパに似てきたなあ。からむ鯰兄妹を「ふん」と全く相手にしないのが、実に愛らしい。
舞台中央へ進み、上手の大薩摩にのって、元気いっぱい元禄見得の睨み等々で、上品な錦之助、児太郎ら太刀下を救い、仕丁をやっつけ、幕外では「やっとことっちゃうんとこな」で悠々と六方。ああ楽しい。左團次さんの金冠白衣がゆらゆらするのは気になったけど。ちょい役で源氏の重宝をもってくる小金丸は、松嶋屋の孫・千之助。
休憩のあとはがらり変わって、重厚な松羽目もの。長唄囃子連中がずらりと並ぶ「新古典劇十種の内・土蜘」。こちらは2013年歌舞伎座開場時に、パパ菊五郎で観て以来です。前半は病床の頼光・菊五郎を平井保昌・又五郎(大活躍)が見舞い、胡蝶・時蔵が悠然と紅葉風景を舞う。
あえて暗い花道から登場する智籌(ちゆう)・菊之助が超不気味。頼光との明王問答のあと、太刀持音若・丑之助(お孫ちゃん、ますます上手!)に怪しまれちゃって、二畳台で数珠をくわえる畜生口の見得、千筋の糸を投げ投げ花道へ。引っ込みも怖いぞ!
間狂言「石神」は、番卒の萬太郎が滑稽でチャーミング。石神に化け、巫子の梅枝に抱えられちゃう小姓の小川大晴(萬屋のお孫ちゃん、三代共演は意外に初とのこと)もめちゃ可愛い。
後半は大薩摩をバックに、まず花道から格好良く、保昌と四天王の歌昇、種之助(相変わらず声がいい)らが登場。古墳にみたてた作り物を破って登場する後ジテ土蜘の菊之助と、舞台いっぱいの大立ち回りを悠然と。どこか哀しみもたたえて、見応えがあった。
ロビーには亡くなった名優の写真に、吉右衛門さんが加わっていて悲しい。一方で今月は三部、弁天小僧の尾上右近が話題とか。世代交代、頑張ってほしいです…