らくご「寄合酒」「代脈」「抜け雀」「ロボット長短」「品川心中」
よってたかって春らくご’22 21世紀スペシャル寄席ONEDAY 夜の部 2022年4月
ちょっと久々に有楽町よみうりホールの落語会。間違いない一之輔、三三に、馴染みのない噺家さんも加わっていて、寄席の雰囲気を味わう。やけによく受ける客席の、中央あたりで4200円。仲入を挟んで2時間半。
開口一番は 三遊亭楽太。高卒で入門して20歳そこそこらしいけど、堂々としたもの。「師匠は円楽です。腹黒いです。嘘はつきません」「初高座です(拍手)。この会場では。嘘はつきません」などと振って、角の乾物屋が気の毒な「寄合酒」。与太郎の愛されてる感じが心地良い。古風な語り口で先行き楽しみ。
しょっぱなは3年ぶりの三遊亭萬橘。やさぐれた癖の強さは変わらない。コアなファンが来ていて、やたら笑うし高座と会話しちゃうし自由だなあ。今週の村田諒太グロフキン戦の上品な観客のヒートアップ、落語だったら「受けろー」か、フラッシュ付きカメラはラウンドガールがお目当て、と話して「代脈」。先生はほかにいい仕事があって、それは噺家の考え方ね、などとくすぐりつつ、意外にさらさらと。
続いてお楽しみ春風亭一之輔が登場。落語協会は真打ち4人の披露中で、口上で女流の元ぴっかり☆・蝶花楼桃花の師匠・小朝が泣いちゃってびっくり、桃花が泣いてたのは披露目がネタおろしのせい、と笑わせて「抜け雀」。絵師と女房に振り回される、お人好しで正直な宿屋の主人の困り顔、ちょっとした間合いの仕草が愛らしくて絶品だ。衝立に描いた雀と松(待つ)に託した、でこぼこ夫婦、そして名人親子の情にしみじみ。
仲入りを挟んで、初めての林家きく麿。木久扇の弟子で、50歳くらいで風貌はごつめ。言語不明瞭な先輩の物真似は、寄席に通ってないとわからないなあ。新作「ロボット長短」は「長短」の気の長いほうの男がなんとロボットで、いちいちウインウインとまどろっこしい。巧かないけど、繰り返しが妙に可笑しい。届けに来た饅頭を取り出すところだけ、反則技にお下劣。油を差したら急に格好良く喋ったり、ユニークです。
気を取り直してトリは柳家三三。最後は普通の落語を、と最近も喬太郎で聴いた「品川心中」。板頭、紋日の解説から丁寧に入り、今日の顔ぶれや雀やロボットをちらりと入れ込みつつ、身勝手なお染と、恋仲気取りなのに世の役に立ってないと心中相手にされちゃう金蔵の関係に的を絞って。んー、身も蓋もないところが実に人間臭くて、ジャズが聞こえそうなクールな手触りは、一編の映画のようだ。いっぱしに構われたくて寝たふりする金蔵、遠浅の浜で身投げしようとするお染。人って愚かだなあ。
本日も面白かったです! 一之輔サイン入り文庫本を購入。
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