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広島ジャンゴ

COCOON PRODUCTION2022 広島ジャンゴ2022  2022年4月

作・演出の蓬莱竜太がシアターコクーン初登場、天海祐希はじめ役者も揃った人気作だ。変哲ない町工場の人間関係が突如、西部劇にシフトしちゃう荒唐無稽な設定で、簡単に揺れ動く集団心理と、それに対する個人のささやかな抵抗を切なく描く。笑いあり立ち回りありの大劇場にふさわしいエンタメ性、天海の絶対トップぶりが痛快な秀作だ。通路後ろ、やや下手寄りのいい席で1万1000円。休憩を挟んで3時間弱。

気の弱い木村(鈴木亮平)は工場長(仲村トオル)から宴会への全員参加を強要されるが、職場に溶け込まない山本(天海祐希)はにべもない。目覚めるとなぜか山本はさすらいの子連れガンマン・ジャンゴ、自分はなんとその馬(!)ディカプリオになっており、水を独占する横暴な町長(=工場長)に立ち向かっていく羽目になる。

無理な設定を成立させちゃう蓬莱マジックが、まず見事。藤原竜也と鈴木が、なんと小6を演じた2019年「渦が森団地の眠れない子たち」を彷彿とさせる。
天海が疲労の色濃い山本と、クールなヒーロー凄腕ジャンゴとの振幅で、舞台をぐいぐい牽引。圧倒的に格好良い。対する鈴木があくまで馬として扱われちゃっう情けなさで存分に笑わせつつ、はまり役の善人ぶり、その陰で長年抱える姉(ずっと事務員姿の土居志央梨)の自殺を止められなかったという傷を、繊細に見せる。
敵役・仲村が、こちらもはまり役のこわもて感を発揮。高い橋からの演説で町民を操り、状況を逆転させるシーンが衝撃だ。まるでチャップリン「独裁者」。西部劇だから悪は滅びるんだけど、何が正義かなんてわからないという町長のリアルな叫びは、今だからこそ重要と思わせる。
情報に流されがちな集団の正義よりも、いま目の前にある小さな困りごとに手を差し伸べたい、というラスト、希望のスポットライトが胸に染みます。山本の娘が獣医を目指す、という落ちも効いてた。

ほかに悪役グループで工場長の妻に池津祥子(大人計画)、そのクズの弟に野村周平、悩む社員夫婦に藤井隆と中村ユリ。西部劇パートでジャンゴの娘になかなか個性的な芋生悠、ジャンゴの昔なじみで酒場の女主人に堂々とした宮下今日子ら。ミュージシャンは熊谷太輔ら。

写実的な美術は愛甲悦子。広島市の財団の依頼で地元劇作家と共作した、2017年初演作のリメイクだそうです。客席にはケラさんご夫妻はじめ、評論家っぽい人もちらほら。

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