冬のライオン
冬のライオン 2022年3月
映画「ホワイトナイツ」などのジェームズ・ゴールドマンによる、1966年初演作を小田島雄志訳、森新太郎演出で。佐々木蔵之介はじめ豪華キャストが、まるで創業社長家、俗物揃いのドタバタ相続争いを笑い混じりに繰り広げて、国家レベルの橋田ドラマという感じ。欺しあい傷つけ合ってきたけれど、老いて腐れ縁がトホホな、夫婦というものの不思議。東京芸術劇場プレイハウス、中段やや上手寄りで9500円。休憩を挟み2時間半。
時は12世紀、あるクリスマス。プランタジネット(アンジュー)朝初代のイングランド王ヘンリー2世(佐々木)は不仲の古女房エレノア(高畑淳子)と3人の息子リチャード(加藤和樹)、狡猾なジェフェリー(永島敬三)、劣等生ジョン(後の欠地王ですね、浅利陽介)をシノン城に集める。若い愛妾アレー(葵わかな)、気取ったフランス王フィリップ2世(水田航生)もからみ、虚々実々の駆け引きを繰り広げる…
高畑がまさかのサングラスの登場から、さすがに威厳たっぷりだ。なにせ公然と夫に対する反乱を企てたり、十字軍に参加したりの女傑。さしずめ駅前ビルを何棟も経営していて、大相撲桟敷席の常連、といったところ。この戯曲では幽閉の身だから、ね~自由にしてよ~とどこか愛嬌もあり、憎み合いつつ縁は切れない佐々木と、終盤、並んで語り合うシーンでしみじみさせる。巧いなあ。ストレートプレイ初の葵も勝ち気そうで健闘するも、この妻に対抗するには可愛すぎるかな。
息子たちも頑張ってたけど、どうしても浅利が突出しちゃうのは否めない。できが悪い子ほど可愛いんですねえ。
お馴染み堀尾幸男の美術は、壁に血糊の跡らしきものがみえて殺伐。壁掛けからの出入りが面白い。シンプルな衣装はゴウダアツコ。
シェイクスピア史劇は14世紀のプラタジネット朝最後の王・リチャード2世から始まるけど、戯曲は共通言語としてのシェイクスピアを踏まえている感じ。特に、嘘に満ちた人生は舞台、人は皆役者、現実もまた虚像というニヒルな態度が印象深い。1968年の名作映画版も観てみたいな。
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