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冒険者たち

KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト第一弾 冒険者たち~JOURNEY TO THE WEST~  2022年2月

神奈川芸術劇場芸術監督の長塚圭史の上演台本・演出。西遊記の一行が神奈川に迷い込んだという設定で、各地の伝承をたどる。手作りドタバタはまるで学園祭なんだけど、成河はじめ芸達者俳優陣の愛らしさ、おおらかさが微笑ましい。共同演出は大澤遊。中スタジオの前の方、やや上手寄りで4800円。休憩無し1時間半。

成河の前説のあと、三蔵法師(柄本時生)が横浜日の出町で行き倒れ状態に。ミニシアター「ジャック&ベティ」から出てきた陽気な道祖神に導かれ、大蛇になっていた白馬・玉龍(佐々木春香)、ウーバーイーツ配達員で同棲中の沙悟浄(長塚)、スカジャンに刺繍している孫悟空(菅原永二)と再会していく。三蔵が戸塚・影取池の蛇に影を食われちゃって、弟子たちが大山詣りにすがったりと神仏習合で大騒ぎ。ほかにも鶴見の蛇も蚊も祭り、川崎・夜光町の弘法大師、相模原・目久尻川の河童、江ノ島の弁財天、小田原の二宮金次郎、箱根の湯立ての獅子舞らが入り乱れて… よく調べたもんです。 

成河が駅伝沿道の人から神様まで早替りしまくりで、抜群の運動量。どこまで器用な人なのか。チンピラだけどお師匠さんを慕う菅原に色気があり、佐々木(1997年生まれ、東京乾電池)がすらりと闊達で、楽しみ。猪八戒はB級グルメを食べ歩いていて、インスタ画像のみで登場、笑いを誘ってました。左右に各種の楽器を並べ、音楽の角銅真実が次々に演奏していくスタイル。

終わって長塚、柄本、佐々木が緩くアフタートーク。長塚はオーディションで佐々木を選び、乾電池つながりに気づいてなかった、柄本は冒頭の「ああ」が言いにくい、成河はギターまで弾けて凄い、等々。劇場運営にあたってまず地元を応援するって、長塚さん、堅実だなあ。県内7都市を巡演。
北京冬季五輪を中継中のアトリウムでは、中華街とコラボしたという西遊記がテーマの春節ランタンが綺麗。柄本明さんが観にきてました~

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Singin’ in the Rain 雨に唄えば

Singin’ in the Rain 雨に唄えば 2022年2月

1952年ジーン・ケリーの名作映画を、忠実にミュージカル化したロンドン版。3回目の来日だ。1月の中止をへて、なんとか開幕。14トンという土砂降りの雨と、アダム・クーパーによる有名過ぎるタップはもちろん、バックステージものとしても痛快で、文句なしにニコニコしちゃう。
幅広い観客が集まった東急シアターオーブ、前のほう下手寄りで1万5000円。休憩を挟んで3時間半が、ちっとも長くない。作詞作曲は映画版のアーサー・フリード、ナシオ・ハーブ・ブラウン、演出はジョナサン・チャーチ。

1920年代、ドン(クーパー)とリナ(貫禄のジェニー・ゲイナー)は無声映画のスターカップルと思われてるけど、ドンにその気はなく、駆け出し女優のキャシー(シャーロット・グーチが可愛い)と恋に落ちる。トーキー初期、悪声のスターを吹き替えるという苦肉のドタバタが可笑しい。またドンは俳優として実は自信がなく、キャシーの才能を認めて成功を願うところが気持ちいい。

古風なダンスシーン、キラキラ銀幕スターの華やかさ、キャシーの気の強さ、「失敗したらボードヴィルに戻るさ」という相棒コズモ(小太りのロス・マクラーレン)の脳天気さ。明るい心でいれば、雨も歓迎という人生観が舞台に溢れる。
前方5列は水しぶきが飛んでくるので、黄色いポンチョ付きのハッピーレインシートでした~ オンラインでトレーナー5500円を来場者の20%割引で購入。

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さまよえるオランダ人

さまよえるオランダ人  2022年2月

ご存じワーグナー楽劇の原点とされる名作。指揮と主要キャストが全員交代、しかも開演前にマリー役が降板して急遽、金子美香が袖で歌い、舞台上では再演演出の澤田康子が演技する、との説明が。この2年いろいろあり、つい昨日は文楽が開演直前に中止になったばかりだけど、これもまた初めてのパターンでびっくり。
でも後半、高水準の歌唱で大満足でした! イタリアのガエタノ・デスピノーサ指揮、東京交響楽団。新国立劇場オペラハウスのやや前、上手寄りで1万9800円。休憩をはさみ3時間弱。

なんといっても2幕、ゼンタのバラードから田崎尚美(二期会のソプラノ)が高音を響かせ、舞台を牽引。ぽっちゃりながら、アイドルに憧れてた幼さがでていて、楽しみだなあ。連られるようにオランダ人の河野鉄平(クリーブランド音楽院大出身のバス)が調子をあげ、目力鋭く渾身の演技。ふられ役エリックの城宏憲(二期会のテノール)も3幕のカヴァティーナなどで声が伸び、華やかさもあって、重唱はなかなかの迫力だ。財宝に目がくらんじゃう父ダートラントは安定の妻屋秀和(バス)。2幕の明るい糸紡ぎの合唱、3幕の迫力ある水夫の合唱も心地良い。

2015年にも観たマティアス・フォン・シュテークマンの演出は、舞台いっぱいに広がる不穏な赤い帆など、シンプルかつダイナミック。ラストでゼンタが幽霊船とともに沈んじゃった直後の、繊細なハープの美しさと、救われたのに絶望するしかないオランダ人の苦悶が余韻を残す。美術は堀尾幸男。ひびのこづえの衣装は、村娘の赤い靴下とかワンポイントが可愛い。

今回も屋外でコーヒーなどを出していました。さすがに寒かったけど!

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