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パリのアメリカ人

松竹ブロードウェイシネマ「パリのアメリカ人」 2021年10月

番外編で2015年NYで観たミュージカル「An American in Paris」の映画化を鑑賞。本物のバレエダンサーならではの、重力を感じさせない流麗なダンスと、お洒落な美術が素晴らしくて、来日を心待ちにしてたけど、スクリーンでも十分楽しめた! 東劇で3000円、休憩無しの2時間。

懐かしいブロードウェイ・プロダクションによる、2018年のLDNウェストエンド公演(Dominion Theatre)を撮影したもの。NY観劇時と同じ、主人公ジェリー・マリガン役のロバート・フェアチャイルド、リズ役のリャーン・コープの2人が、ジョージ・ガーシュウィンの名曲にのって自在に歌い、踊るのが、まず感激だ。これだけのレベルのキャストは、なかなかいないかもと再認識。
ほかの主要キャストはLDN版で、恋敵アンリ・ボーレル役のハイドゥン・オークリーが堂々とミュージカルらしく、またパトロン、マイロ・ダヴェンポートのゾーイ・レイニーにすらっとして色気がある。友人のピアニスト、アダム・ホックバーグのデイヴィッド・シードン=ヤングは達者な演技派ぶり。

華麗な演出・振付はクリストファー・ウィールドン。NY観劇時の席は見切れ気味だったので、ディズニー版「アラジン」等のボブ・クローリーによるスタイリッシュな美術・衣装を、大スクリーンで存分に楽しめたのが収穫だ。舞台中央にぽつんと置いたピアノから始まり、解放を象徴する巨大なフランス国旗、プロジェクションマッピングを駆使して流れるように転換する洒落たパリの街並み、そして忘れがたい俯瞰で表現する川岸、などなど。アンリの空想で展開するキラキラ豪華ショーとか、終盤、圧巻の長尺ダンスシーンを彩る現代美術風のセットは、スケールが大きくて美しい。

さらに字幕のおかげで、ラ・ボエーム風王道ラブストーリーというだけでない、戯曲の深みも味わった(台本クレイグ・ルーカス)。アメリカ人のジェリーとアダムはパリを解放した側であり、解放された側、すなわち暮らしを蹂躙されながらレジスタンスを支援してきたアンリたちの苦衷をわかっていない。そのジェリーとアダムも、心身に従軍の傷を負っている… アダムがアンリに「リズの気持ちはわかってるんだろ」と諭すところや、マイロが身をひいてリズを励ますシーンに、しみじみ哀愁が漂う。
帰ってアマゾンプライムで、1951年の映画版「巴里のアメリカ人」(ヴィンセント・エミリ監督、ジーン・ケリー主演)を復習。映画版と比べても舞台版は、現代アメリカを意識していて深かったのね。ちょっとシニカルなマイロとアダムが、フランス気質をからかうような台詞が、客席によく受けていて、そのへんはロンドンらしかったのかな。

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